ノーヴェが試合の開始を宣言した直後、最初に動いたのはヴィヴィオだった。
ヴィヴィオは前回と同様に、一気に肉薄すると拳を繰り出した。
だが、その拳の重さは前回の比では無かった。一撃を貰ったアインハルトは、大きく後ろに飛ばされた。
「つっ!?」
その一撃にアインハルトは驚愕し、視線をヴィヴィオに向けたのだが、その時既にヴィヴィオは再び肉薄していた。
それを見たアインハルトは、牽制を含めてショートフックを放ったが、ヴィヴィオはしゃがんで回避し、アインハルトにボディーブローを直撃させた。
「ぐっ!?」
「まだ!!」
アインハルトは一度距離を取ろうとしたが、ヴィヴィオはそれを許さず肉薄した。
(なぜこの子は、こんなに頑張る……? シショウの前だから? 友達の前だから?)
(前はダメだったから、きちんと伝えるんだ……これが、私のストライクアーツだって!!)
ヴィヴィオは自身の気持ちを込めて、アインハルトに繰り出した。
アインハルトは両腕を交差させて、その一撃を防いだが、余りの重さに押し飛ばされた。
「くっ!?」
アインハルトはバランスを崩しかけたが、すぐに建て直して構えた。
そこに、ヴィヴィオは更に連撃を叩き込もうとしたが、アインハルトは蹴りで牽制。腰を落として、構え直した。
アインハルトからしたら、ヴィヴィオの実力は予想外だった。
しかし、全体的な腕前はアインハルトの方が上。
アインハルトは一瞬の隙を突いて、ヴィヴィオの顔に拳を叩き込んだ。
その一撃に、ヴィヴィオは態勢を崩すものの
「ああぁぁぁ!!」
雄叫びを上げながら、アインハルトに拳を繰り出した。
だがアインハルトは、体のひねりを使ってヴィヴィオのその一撃を受け流し
「覇王……断空拳!!」
必殺の拳を、ヴィヴィオに叩き込んだ。
直撃を受けたヴィヴィオは、廃屋に激突した。
それを見たノーヴェは、右手を上げて
「そこまで! 勝者、アインハルト!!」
と勝者を宣告した。
その時、ティアナが
「ねえ、あそこって確か……剣士郎居なかった?」
とスバルに問い掛け、それを聞いたスバルはダッと駆け出した。
そして
「陛下は問題ありません。少しすれば、目を覚ますかと」
「彼もだね……幸い、頭も打ってない」
スバルの手により、ヴィヴィオと剣士郎が廃屋から救助されて、ディードとオットーが診断していた。
ヴィヴィオは、剣士郎がクッションになって大したことはなく、剣士郎はヴィヴィオと廃屋に挟まれたことによるダメージで、気絶していた。
「なんて、運の悪い……」
「というより、緋村先輩はなんであそこに……」
巻き込まれた剣士郎に、コロナとリオはそう呟いた。
すると、ノーヴェはアインハルトに
「どうだった、ヴィヴィオは?」
と問い掛けた。
それに、アインハルトは答えようとしたが、突如として足から力が抜けて倒れそうになった。
「あらら」
それを、ティアナが咄嗟に支えたが
「す、すいません」
とアインハルトは謝罪し、立とうとしたが、どうも上手く立てなかった。
「無理しなくていいよ」
と倒れそうになったアインハルトを、今度はスバルが支えた。そんな自身に、アインハルトが困惑していると
「ああ、ヴィヴィオの攻撃が効いてきたんだな。最後に、ヴィヴィオのフックが顎にカスってたのが、時間差で来たんだな」
とノーヴェが指摘した。
そう、ヴィヴィオはアインハルトの拳が直撃したのとほぼ同時に、ヴィヴィオはフックを繰り出していたのだ。
その一撃はアインハルトの顎を掠めていて、直撃こそしなかったものの、時間差でダメージが足に来たのだ。
そしてアインハルトは、スバルに支えられながらも
「……前回の言葉を、謝罪します……遊びと言ったことを……」
と言いながら、ヴィヴィオを見た。そして、何とか立てるようになったので、ヴィヴィオの近くに膝を突いて
「……改めまして、アインハルト・ストラトスです……以後、よろしくお願いします」
と名乗りながら、ヴィヴィオの手を握った。
それを見たノーヴェが、意地の悪い笑みを浮かべながら
「それ、起きてる時に言ってやれ」
と言ったが、アインハルトは
「……今は、恥ずかしいので無理です……」
と顔を赤くした。
こうして、新たな始まりが幕を開けた。