そして、数日後の早朝。場所は、近くの公園にて、ヴィヴィオとノーヴェが走り込みをしていた。
「悪いな、ヴィヴィオ……この間」
「いいよ……あの先輩、何かあるんでしょ?」
走り込みを終えると、ノーヴェはヴィヴィオに謝罪し、ヴィヴィオは確信した様子でそう問い掛けた。
「……あいつはな、ヴィヴィオと同じ、古代ベルカの血統なんだ……しかも、あいつは正統な血筋……覇王の血筋だ」
「覇王……聖王と縁が有ったっていう……」
ノーヴェの説明を聞いて、ヴィヴィオは呟くように、読んだ本の内容を思い出した。
「あいつな……ご先祖の記憶を持ってて、それで悩んでるんだ……後悔にまみれた過去の記憶に……」
「……それって、緒王戦乱期の?」
ヴィヴィオの問い掛けに、ノーヴェは頷いた。
「でも、救ってやってくれとか、そーゆーんでもねぇんだよ。まして、聖王や覇王がどうこうでもない」
「わかるよ、大丈夫」
ヴィヴィオはそう言って、噴水に視線を向けた。
もしかしたら、ゆりかご事件に思いを馳せているのかもしれない。
「でも、自分の生まれとか何百年も前の過去の事とか……どんな気持ちで、過ごしてきたのとか……伝えあうのって難しいから、思いっきりぶつかってみるだけ!」
ヴィヴィオはそう言うと、ノーヴェに向き合って
「仲良くなれたら、教会の庭や会わせたい子が居る……」
と呟いた。それを聞いたノーヴェは
「庭か……あそこはいいな……」
と頷いた。そして
「悪いな。お前には、迷惑かけてばっかりだ」
と軽く謝った。
だが、ヴィヴィオは
「迷惑なんかじゃないよ! 友達として信頼してくれるのも、
と満面の笑みを浮かべた。
そしてヴィヴィオは、グッと拳を掲げて
「だから、全力全開で頑張る!」
と宣言した。
ほぼ同時刻、アインハルトは目を覚ました。
その原因は、見ていた夢だった。ご先祖たる覇王イングヴァルトの後悔の記憶。
愛する聖王を止められず、死に行くのを見送ることしか出来なかった、一番辛い記憶。
(いつもの夢……一番悲しい、覇王の記憶……)
アインハルトは起き上がると、全身の姿勢を確認するために使っている姿見の前に立ち、拳を姿見に突き付けた。まるで、自身に問うように。
それから、時は経ち正午過ぎ。
場所は、廃棄倉庫区画。
既に、ヴィヴィオ達は到着していた。そこに
「お待たせしました。アインハルト・ストラトス、参りました」
スバルやティアナ達に連れられて、アインハルトが現れた。
その後ろには、剣士郎もいる。
「来ていただいて、ありがとうございます。アインハルトさん!」
ヴィヴィオがそう言いながら頭を下げると、アインハルトは複雑そうな表情を浮かべた。
その流れを変えるためか、ノーヴェが周囲を指差しながら
「ここは、救助隊の訓練でも使う場所でな。既に話は通して、施設の破壊許可は貰ってある。だから、二人とも本気でやっていいぞ」
と教えた。それを聞いたヴィヴィオは、近くを浮いていたクリスを掴み
「もちろん、本気で行くよ」
と宣言した。その直後
「セイクリッド・ハート! セットアップ!」
ヴィヴィオは、バリアジャケットを展開し、アインハルトに相対した。
それを見たアインハルトも
「武装形態」
と短く呟き、バリアジャケットを展開した。
それを見たリオが
「おお! アインハルト先輩も、大人モードだ!」
と興奮していた。
そしてノーヴェは、二人がバリアジャケットを展開したのを確認してから
「いいか? ルールはこの前と同じで、魔法無しの一本勝負だ」
と二人に確認した。
「はい」
「大丈夫」
二人が頷くと、ノーヴェは高々と片手を上げて
「試合、開始!!」
と宣言した。