アインハルトと剣士郎の朝食が終わると、スバルの車で近くの管理局施設に向かった
二人はそこで、なぜ今回のことをしたのかを聞かれ、そして反省文を書いた
特にアインハルトは、被害届は出されていなかったとは言っても、やったことはほぼ傷害罪に当たる
剣士郎はそんなアインハルトを止めるために、許可区域外で魔法の無断使用と更には夜間の出歩きをしていた
そのことに関して、反省文を書いた後は廊下で椅子に座っていた
その時初めて、アインハルトは剣士郎が自分と同じ学校に通っていると気付いたのだが
「……一応言っておくが、クラスメイトだからな?」
剣士郎のその言葉に、固まった
その反応に、剣士郎は
「やっぱり、覚えてなかったか……更に言うが、初等部の頃にも何回か同じクラスになって、図書館でも顔を合わせてるぞ」
と追い討ちした
その言葉に、アインハルトはまるで錆びたロボットフィギュアのようにギギギと顔を反らした
そこに
「ほれよ」
とノーヴェが、アインハルトの首筋に缶ジュースを押し付けた
それに驚いたアインハルトは、椅子から跳ねるように飛び上がって構えた
そんなアインハルトに、ノーヴェは
「意外と抜けてるな、覇王様」
と意地の悪い笑みを浮かべた
その後、二人に缶ジュースを手渡すと、ソファーに座った
そして、アインハルトと剣士郎を交互に見て
「しっかし、お前ら本当にまだガキだったんだな……聖ヒルデ魔法学校中等科一年のアインハルト・ストラトス。同じく、緋村剣士郎」
と言った
確かに、既に二十歳間近のノーヴェからしたらまだ子供だろう
しかし、ノーヴェが驚いたのは他にもあった
「そんなガキが、あんな動きが出来るとわな……」
それは、二人の体捌きだった
アインハルトだけでなく、剣士郎の動きもノーヴェからしたら、歳不相応だった
「……個人差は有りますが、俺も彼女も、過去の人物……俺は、古代ベルカ戦乱期に人斬り抜刀斉と呼ばれた先祖の記憶と使っていた流派……飛天御剣流に関する知識を受け継いだんです……」
剣士郎はそう言って、アインハルトを見た
すると、アインハルトは
「……私は、戦乱末期の覇王イングヴァルトの記憶を中心に技を……」
と言った
それを聞いたノーヴェは、一度頷くが
「待て……人斬り抜刀斎だと?」
と剣士郎を見た
人斬り抜刀斎
その名を、ノーヴェは知っていた
実を言えば、姉妹の一人
ディードは、その人斬り抜刀斎の技術を使わせる予定だった
しかし、その人斬り抜刀斉の遺伝子データと記録が余りにも不確かで、廃案になったのだ
その人斬り抜刀斎と呼ばれた人物が、剣士郎の先祖
「……その傷は?」
「記憶を受け継いだ人のみに出る物です……恐らく、先祖が受けた傷でしょう……強い恨みと執念が込められた傷は、簡単には消えないそうですから……普段は、これを使って隠してますが」
ノーヴェの問い掛けに答えながら、剣士郎は肌色の掌サイズの薄い湿布のような物を貼った
確かに、傷は見えなくなった
それを見たノーヴェは、アインハルトに視線を向けて
「で、お前さんは……古代ベルカの王の血筋を倒して、最強を目指す……だったか?」
と問い掛けた
すると、アインハルトは頷き
「でなければ……彼の無念が報われません! 愛した人を守れなかった、助けられなかった彼の無念が!」
と慟哭した
そこから剣士郎は、アインハルトが戦乱末期の覇王の記憶を受け継いでいると気付いた
そしてそれが、アインハルトを縛っている原因だとも
「……なあ、お前さ……ストライクアーツの世界一、目指さないか?」
ノーヴェのその言葉に、アインハルトは固まったのだった