魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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真犯人

「うん……やっぱり、イクスだったね……私の知り合いが、貴女のことを探してるの。マリアージュっていう凶悪犯から、守るためにって」

 

イクスヴェリアの名前を聞いて、スバルはそう言った

それを聞いたイクスヴェリアは、申し訳なさそうにうつ向いた

それを見たスバルは、イクスヴェリアを抱き上げた

 

「あ、あの……なにを……」

 

「しっかり掴まっててくださいね。脱出しますよ! レンヤ!」

 

「はい!」

 

イクスヴェリアを抱き上げたスバルは、レンヤと共に脱出を開始した

その頃、地上の消防隊が展開している駐車場に、一台の車が停車

中から、ルネッサが出てきた

ルネッサは、轟々と燃えているマリンガーデンを見て、ニヤリと笑みを浮かべた

そこに、サウンドオンリーと表示された通信ウインドウが開き

 

『ルネ、聞こえてる?』

 

とティアナの声が聞こえた

それを聞いたルネッサは、ハッとして

 

「はい、聞こえています。ランスター執務官」

 

と答えた

そして

 

「今、どちらに?」

 

と問い掛けた

すると、ティアナは

 

『見える位置に居るわ。1時の方向、距離300って所に居るわ』

 

と告げた

それを聞いたルネッサは、言われた方向に視線を向けて、目を細め

 

「……あ、確認しました」

 

と右手を上げた

言われた方向と位置ら辺に、右手を上げて振っているティアナを見つけたからだ

すると、ティアナが

 

『今から内部に突入して、イクスヴェリアの確保に向かうわ』

 

と言った

それを聞いたルネッサは

 

「そんな……危険では?」

 

と言った

 

『大丈夫。災害救助部隊に居たことあるから、慣れてるわ。それに、今が最後にして最大の好機……今イクスヴェリアを保護すれば、マリアージュのことが分かるはずだから』 

 

ルネッサの言葉にティアナはそう答えると、マリンガーデンに突入した

それを見送ったルネッサは

 

「行かれたか……」

 

と呟くと、車のトランクの中から大きめのバッグを取り出して、開けた

 

「耐熱防護服……問題無し……弾薬……残り十分」

 

ルネッサはそのバッグから取り出した耐熱防護服を着ると、中から実弾拳銃を取り出した

彼女は魔力を有しておらず、管理局許可を得て実弾拳銃を装備しているのだ

 

「稼働マリアージュは、残り78……」

 

そう呟くと、暗い瞳でマリンガーデンを見ながら

 

「これは、明けの星だ……再び起きる戦いで、破壊と再生を……」

 

と呟いた

その数秒後、後ろから一発の魔力弾がルネッサに直撃した

 

「がはっ!?」

 

撃たれるとは思っていなかったルネッサは、大きく吹き飛ばされた

そして、困惑した表情で

 

「撃たれた……? 後ろから!?」

 

と呟いた

そこに

 

「独り言は、演技じゃなかったんだ……」

 

とティアナの声が聞こえた

それを聞いたルネッサは、動かない体を何とか動かして、声が聞こえた方に体を向けた

そこには、右手にクロスミラージュを持ったティアナが居た

 

「ランスター執務官……!? 先ほど、中に……!」

 

と驚いていると、ティアナは

 

「私の学生時代からの、得意技……」

 

とだけ呟いた

それを聞いたルネッサは、察したように

 

「高速移動……いえ、幻術……」

 

と言った

それを聞いたティアナは、頷いて

 

「そ……あっちが、偽物で、こっちが本物……」

 

と言って、クロスミラージュを向けた

それを聞いたルネッサは

 

「お見事です……」

 

と賞賛した

先ほど撃ち込んだのは、スタンバレット

動けないのは分かっているので、大人しくしながら

 

「何時、私が怪しいと?」

 

とティアナに問い掛けた

すると、ティアナは

 

「108隊舎の時……トレディア・グラーゼの名前で出た時……少し寂しそうにしてた……」

 

と言った

それは、あのホテル火災の後だった

ティアナとルネッサは、陸士108部隊の隊舎に寝泊まりして、会議していた

その際に、故郷の話に繋がり、トレディア・グラーゼの名前が出た時に、ほんの僅かにルネッサの表情が変わったことを、ティアナは見逃さなかったのだ

 

「だから、調べさせたわ……ルネ、一緒に居たんでしょ? トレディア・グラーゼと」

 

「……血は繋がっていませんが、親子でした……」

 

ティアナの問い掛けに、ルネッサはそう呟いて語りだした

ルネッサの産まれ故郷、ヴァイゼンは長い間紛争が起きていた

最初は民族紛争だったが、管理局が接触してからは、反管理局と管理局肯定派で争っていた

そしてトレディア・グラーゼは、その反管理局派の幹部の一人だったのだ

 

「動機は、彼の意思を継いだの?」

 

「……端的に言えば、そうですね……」

 

ティアナの問い掛けに、ルネッサはそう言うと、再び語りだした

ルネッサはその戦いの最中に、流れ弾で負傷し、部隊とはぐれた

そこに、人権団体が現れてルネッサを保護

ルネッサは、ミッドに来た

最初は、平和な世界を信じようと思った

だが、結局変わらない世界だと分かった

人間は、何処でも戦い、傷付けあい、殺しあう

特に、三年前のゆりかご事件でそう痛感したそうだ

そして、トレディアが発掘したマリアージュとイクスヴェリアの存在を知ったルネッサは、今回の事件を計画

人々に、知ってほしかったそうだ

戦う意味の虚しさを

 

「……もっと、貴女と話し合うべきだったわ……」

 

「話し合っても、変わらなかったかと……」

 

ティアナの言葉に、ルネッサはそう答えた

その後、ティアナはルネッサを護送隊に引き渡し、本来ならばまだ入院中のはずの裕也と共に、マリンガーデンに向かったのだった


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