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ある日の夜
場所 はやての部屋
薄暗い室内の窓際に当麻が一人立っていて、外を眺めていた
「俺も………とんでもない所に来たんだな……」
そう言っている当麻の表情は、懐かしんでいるのか……なんとも言えない表情をしていた
すると、空気が抜ける音がしてドアが開いた
「あれ? 当麻くん。まだ起きてたんか? もう12時過ぎとんで?」
「おう、はやてにリイン」
そう言って入ってきたのは、もちろん部屋の主である、はやてだ
その肩にはリインは乗っていて、眠そうにしている
「ほれ、リイン。寝るならベッドで寝てな」
「はいですぅ………」
リインはフワフワと飛んで、ベッドの近くに行くとパジャマに着替えて、早速寝たのだった
「で、当麻くん。なにしてたん?」
「んぉ? まあ、俺も波乱万丈な半年を歩んだなーと思ってな」
「ほうほう、どんな人生を?」
「ん~、最初のほうは覚えてないけど、錬金術師と戦って右腕が肩から切れたり」
「え?」
「学園都市最強のレベル5と戦って、全身から出血したり」
「えっと?」
「
「はい?」
「それに、ローマ正教の宗教上でのシスターを助けたり、アビニョンでの暴動の原因と戦ったり」
「………」
「学園都市での大運動会でローマ正教の支配から、学園都市を守るために走り回ったり」
「………」
「学園都市に侵入してきた魔術師に着いてって、呪いを解いたり」
「こっちは単純な人助けやね……」
「世界に20人しか居ない聖人の一人と戦って、病院に入院もしたし」
「っていうか、病院の回数多くない?」
「後は………おお! イギリスの女王に呼ばれて、バッキンガム宮殿に行って、お茶をご馳走になって、話をしたな」
「ちょい待ちい! あきらかに、一般人が会えるレベルやない!」
「んでそこから、第二皇女と騎士派の引き起こしたクーデターに巻き込まれて、第二皇女と戦ったな」
「あー、あの事件かー………って、それも関わってるんか!?」
突っ込みのオンパレードである
「んで、あの第三次世界大戦だったな」
「なんで当麻くんが、第三次世界大戦のど真ん中に居たのか、すっごい気になるんやけど?」
はやての疑問も、もっともである
「まぁ、全部に共通してるのがな」
「ん?」
「俺がやりたかったからなんだ」
「当麻くんが、やりたかったから?」
「ああ、俺はな……俺の手の届く範囲で、誰かが傷つくのが……不幸になるのが、嫌だったんだ」
当麻の言葉にはやては、無言で当麻を見つめた
当麻の表情はとても真剣で、とても優しい表情だった
「だから俺はな、周りが言う無茶を何度もやったんだ」
当麻は言いながら右手を握って、窓から空を見つめた
はやてはその顔を見つめていた
(かっこええなぁ………ってあれ? なんや? なんか、胸がドキドキする……)
そう思うとはやては、両手で胸元を押さえた
「どうした、はやて?」
気付けば当麻が、はやての顔を覗き込んでいた
しかも、かなり近い
(ち、近っ!)
しかも、このタイミングではやては、あの一件を思い出した
以前、当麻の右手の幻想殺しによって、はやてのバリアジャケットが破れた、あの<腕試し>を
それを意識したはやての顔が、一気に真っ赤に染まった
(あ、あかん! 今確実にあたしの顔、真っ赤になっとる!!)
「どうした、はやて? 顔が赤くなってるが?」
顔が赤くなったはやてを心配したのか、当麻がさらに顔を近づけた
「だ、大丈夫や!!」
気付けばはやては、拳を当麻に繰り出していた
そしてその拳は見事に、当麻の腹部にクリーンヒットした
「ぐふぅ! ふ、不幸だ…………」
当麻の脳内では、なぜかゴングの音が鳴り響いていた………