ヴェルウィードホテル裏手
そこは火が殆ど無く、それに伴って消防隊員も居なかった
そこに、非常ドアを蹴破ってマリアージュが出てきた
マリアージュは、着ていた服を脱ぎ捨てて
『僚機達……我らの王と創主トレディアは、ここには、居ない……探せ……』
と呟いて、一歩踏み出した
その瞬間、マリアージュの両手両足を光が縛った
『これは……捕縛魔法……』
「一応勧告します……無駄な抵抗をやめて、投降しなさい」
マリアージュが現状を把握していると、靴音を立てながらティアナが現れて、投降するように勧告した
するとマリアージュは、そんなティアナとバインドを見て
『なるほど……これは、脱出は不可能のようだ』
と機械的に言った
それを聞いたティアナは、油断無く構えながら
「賢明な判断ね……マリアージュ、貴女を連続放火殺人罪で逮捕します。抵抗しなければ、貴女には弁明の機会が……」
と何時もの、事務的なことを言おうとした
しかし
『我らマリアージュは、破軍の兵……マリアージュが、虜囚の辱しめを受けることは無い……』
とマリアージュが言った直後、片手が弾けた
それを見たティアナは、驚きで目を見開き
「なっ……腕から出血!?」
と声を上げた
しかし、すぐに怪訝な表情に変わって
「いや、違う……黒い粘着質な液体に……?」
と呟いた
そう言っている間にも、マリアージュの体は少しずつ崩れていく
だがマリアージュは、平然と
『創主トレディアとイクスを探し出せ、僚機達よ……例え我が身朽ちようとも、生み出した炎は……天を焦がす』
と言った
この時点でティアナは、マリアージュの体から流れ出していた液体の正体に気付いた
それは
「燃焼剤……!」
ティアナがそう言った数瞬後、爆発が起きた
そして数十秒後、少し離れた地点に、ティアナは呼吸を荒く座り込んでいた
そこに、ルネッサが駆け寄り
「ランスター執務官! ご無事で……治療は……」
と問い掛けながら、肩に掛けていたバッグを地面に下ろした
それに対して、ティアナは首を振りながら
「ちょっと危なかったけど……大丈夫よ……」
と答えた
それを聞いたルネッサは
「あれは……一体……」
と激しく燃え上がっている炎を見た
するとティアナは
「ねえ、ルネッサ……マリアージュは一度捕まえたけど、体が崩れて自爆しました……今も燃えてます……って言ったら、信じる?」
とルネッサに問い掛けた
すると、ルネッサは
「ランスター執務官の言葉なら、私は信じます」
と言って、ティアナに肩を貸して立たせた
すると、ルネッサは
「これで……この事件は、終わるのでしょうか……」
と呟いた
だが、それを聞いたティアナは首を振って
「終わらないわね、確実に……」
と確信していた
それを聞いたルネッサが、問い掛けるように視線を向けると
「さっきのマリアージュ……自分のことを、破軍の兵……それに、僚機達とも言っていたわ……あれは明らかに、量産し使い捨てにされることを前提にされてた……つまり、マリアージュはまだ居る……」
と言った
そして
「それに、マリアージュが言っていたトレディアとイクス……この二つが、マリアージュに深く関わりがある……ルネ、聞いたことある?」
とルネッサに問い掛けた
するとルネッサは、僅かに間を置いてから
「いえ、聞いたことありません」
と返答した
それを聞いたティアナは
「そう……」
と言ってから、僅かに黙考した
そして
「その二つを、本局に照合するように依頼。もし出なければ、無限書庫で検索を」
「は! すぐに!」
ティアナの指示を受けて、ルネッサは走っていった
それを見送ると、ティアナは
「…… 。今、動けそう?」
と何処かに、通信を繋げたのだった