魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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シスターズ1

翌日、朝

ベルカ自治区聖王教会本部

そこの敷地内を、一人の長い茶髪が特徴の少女

ディードが歩いていた

そしてディードは、楽しそうに談笑している老人の一人に歩み寄り

 

「ディレットさん、御体の調子は良さそうですね」

 

と声をかけた

すると、その老人は

 

「ほっほ、聖王様のお導きじゃて」

 

と朗らかに答えた

実はその老人は、少し前に体調を一度崩してしまい、心配していたのである

 

「その様子なら、来週のクッキーパーティーは大丈夫そうですね」

 

「ああ。あんたら駆け出しシスターには、まだまだ負けんさ」

 

「期待してます」

 

ディードはそう言うと、軽く目礼してから離れた

駆け出しシスターというのは、ディード達を指している

今保護観察処分中の戦闘機人の内の三人は、聖王教会でシスターとして所属しているのだ

とはいえ、一人疑問符が着くのだが

そして、ディードが一人の子供に声を掛けた時

 

《ディード、今いいかな?》

 

と聖王教会所属となった二人目から、念話が繋がった

ディードの双子の姉妹、オットーだ

 

《オットー、どうしたの?》

 

《話しが二つ。ご機嫌な話と仕事の話。どっちから聞きたい?》

 

ディードが問い掛けると、オットーはそう返した

それを聞いたディードは

 

《ご機嫌な話から》

 

と言った

ここで場所は変わり、聖王教会騎士団本部のある給湯室

そこに居るオットーだが、シスター服……ではなく、燕尾服

つまり、執事の格好をしていた

その理由だが、どうやら彼女はシスター服というよりも、スカートが肌に合わないらしい

それは恐らく、彼女がボーイッシュなのが理由の一つとして挙げられるだろう

だから、シスター服ではなく燕尾服を着ているのだ

 

「今日届いた茶葉、今年の中で一番の出来だ。お茶の時間を楽しみに」

 

ディードの問い掛けに、オットーは紅茶の準備をしながらそう返答した

今彼女がしているのは、シスター・カリムのための紅茶の準備である

もはや、シスターよりも執事としての仕事の方をしているという自覚もある

 

《それは良かったわ……それで、仕事絡みは?》

 

「ランスター執務官からの依頼だ。古代ベルカに関する文献の捜索だ。ただ、僕の知識に該当するデータが見つからないんだ」

 

ディードの再度の問い掛けに、オットーがそう言った

すると、ディードは

 

《それは困ったわね……そうなると、騎士カリムの預言書と同じか、それ以上か……》

 

と困ったように言った

それを聞いて、オットーは

 

「だから僕は、この後に無限書庫に調べものに行こうと思ってる」

 

《その方がいいわね……そうなると、外出許可は?》

 

「これから……というより、今から」

 

オットーはそう言うと、紅茶セットを乗せたカートを押し始めた

向かう先は、カリムの執務室である

 

「どうぞ」

 

「失礼します、騎士カリム」

 

カリムが促すと、オットーがカートを押して入室してきた

そしてオットーは、紅茶を注ぎながら

 

「今日の茶葉は、今年の中では一番の出来です」

 

と言った

それを聞いたカリムは、書類にハンコを押して

 

「それはいいわね」

 

と言った

そして、オットーからカップを受け取ると、匂いを嗅いで

 

「ん……いい香り……」

 

と言った

そして、オットーに視線を向けて

 

「オットーも、執事姿が板に付いてきたわね」

 

と誉めた

それを聞いたオットーは、恭しく一礼しながら

 

「恐縮です」

 

と返した

そして、少し間を置くと

 

「それとこの後なのですが、外出許可を頂きたいんです」

 

とカリムに言った

それを聞いたカリムは、不思議そうに

 

「いいけど、どうしたの?」

 

と問い掛けた

すると、オットーは

 

「ランスター執務官からの依頼で、無限書庫に調べものをしに行きたいんです」

 

と説明した

それを聞いたカリムは、微笑みを浮かべて

 

「そう、いってらっしゃい」

 

と言った

それを聞いて、オットーは

 

「補佐と護衛は、シスター・シャッハ不在のため、ディードがすることになっています」

 

と語った

すると、カリムは

 

「シャッハとセイン、キチンとしているかしら?」

 

と窓の外を見た

その頃、その二人は

 

「あー……暑い……」

 

多くの信徒や同じ修道騎士達と共に、砂漠を歩いていた

 

「サバクツノゼミも元気に鳴いていますし、午後になるにつれて、もっと暑くなりますよ」

 

「マジですかぁ、シスター・シャッハ……」

 

シャッハの言葉を聞いて、セインは肩を落とした

今彼女達を含めた修道騎士隊は、同僚達と共に聖地巡礼をしている信徒達の護衛中である

 

「信徒の方達の中には、年老いた方も多くいます。ですが、元気でしょう? それなのに、貴女はなんですか」

 

「あたしゃ、一部機械なんですがね……」

 

シャッハの言葉に、セインは小声で反論した

そしてシャッハは、セインを見ながら

 

「それに、さっきからなんです? チラチラと後ろを見て」

 

と指摘した

それに対し、セインは

 

「あぁ、いや……」

 

と言葉を濁した

そんなセインを叱ろうと、シャッハが口を開こうとした

その時

 

「待った、シスター・シャッハ! ちょっちストップ」

 

とセインが制止した

しかも、シャッハが問い掛けるよりも早く

 

「一回荷物下ろすよ」

 

と言って、背負っていたリュックサックを下ろして、後ろに走り出した

 

「後ろ! 真ん中辺りのご婦人!」

 

とセインが声を掛けたのは、中心付近を歩いていた一人のお婆さんだった

年齢は、70代後半と言ったところだろうか

 

「顔色悪いけど、大丈夫?」

 

「あぁ……平気だよ……つっ」

 

セインの言葉に返答した直後、そのお婆さんは倒れそうになった

それを、セインが間一髪で支えて

 

「やっぱり……」

 

と呟いた

 

「本当に大丈夫だよ……」

 

お婆さんはそう言うが、余りにも顔色が悪い

 

「婆ちゃん、無茶はいかんよ」

 

「んだんだ。シスターに背負ってもらいな」

 

そのお婆さんの言葉を聞いたらしく、近くに居た人々が口々にそう言った

そこに、遅れてやってきたシスター・シャッハがやってきて

 

「どうやら、軽度の熱中症のようですね。シスター・セイン」

 

とセインを見た

その意味を理解し、セインは

 

「あいよ。ほれ、お婆ちゃん」

 

とお婆さんに背中を向けて、しゃがんだ

そして、お婆さんを背負うと

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

と言って、歩きだした

そして、ふと後ろを向いて

 

「次の休憩所までは、後少しだから! 水や飲み物もたくさん用意してあるからねぇ!!」

 

と教えたのだった

 


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