魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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休暇6日目、裕也とティアナの二人は仕事の準備に取りかかっていた

 

「ティアナ、これか?」

 

「あ、ありがとう」

 

裕也が差し出した物を受けとると、ティアナはそれをカバンに仕舞った

そして、ティアナは

 

「裕也、作られたIDは?」

 

と問い掛けた

すると、裕也は

 

「大丈夫、ここにある」

 

と胸ポケットから出した

それを見たティアナは

 

「なら、大丈夫ね」

 

と頷いた

その後も二人は、準備を続行

そして、夜

 

「んー……これで、大丈夫ね」

 

とティアナは、背伸びしながら言った

すると、裕也が

 

「ああ……明後日から、よろしく頼むな。ティアナ」

 

と軽く頭を下げた

 

「ええ、よろしくね」

 

そう返答した後、二人で夕食を作って食べた

そして就寝

したのだが

 

「これは……」

 

その日ティアナは、不思議な夢を見た

普通夢というのは、本人の記憶整理からなる思い出しである

しかしティアナは、そんな光景は知らなかった

今見ているのは、大型機内部

そのサイズは、管理局で採用されているヘリよりも大きい

内部には、よゆうで30人は乗れるだろう

しかし中に居るのは、僅か数名

しかも全員、仮面を装着している

その時、ジリリリリと警告音が鳴り響き

 

『予定降下ポイントに到着! 後部ハッチ、開放!』

 

と放送がされた

その直後ハッチが開き、広大な空が見えた

そこから、かなりの高高度に居ることが分かる

その時、一人の男が

 

「おら、先に行け。化け物が……俺達の安全を確保してこい」

 

と白地に血の涙を彷彿させる仮面を着け、頭から黒いマントを被った人物を、前に押した

すると、その人物は

 

「了解……」

 

と短く答えた

その声を聞いて、ティアナは驚いた

 

「裕也!?」

 

その声は間違いなく、自身の副官になった青年

裕也だった

しかも、今より若い

少年と言っても、差し支えないだろう

そして裕也は、ハッチの縁に立つと

 

「スエサイド1……降下する」

 

と言って、何の躊躇いもなく飛び降りた

しかも、最高時速300kmを記録するガンヘッドダイビングだ

その域の速度となると、グングンと地面が近づいてくる

そして、ある高度に達した時に着地態勢に入った

だが、一切減速せずに着地した

それを見たティアナは、絶句した

まさか、一切減速しないで着地するとは、予想していなかったのだ

普通、時速300kmで着地したら、人は無事では済まない

しかもそこに、次々と魔法や魔力弾が着弾

爆発を起こした

だが数秒後、マントが無くなっただけの裕也が爆発の中から現れた

そして、両手に刀を抜刀

最前衛の一人を、腰から両断した

そこから裕也は、一人で戦闘を続行

たった三十分程で、約100人の敵を殲滅した

それから十数分後、先程見た他の人員がパラシュート降下してきて

 

「よう、ご苦労だったな。化け物」

 

「後は、俺達が引き継ぐ。てめぇは消え失せろ」

 

と一方的に言って、剣や杖を構えて進んでいった

それを見送り、裕也はある場所に歩み寄った

そこには、裕也が胸元を刺して倒した敵の遺体があった

だがその敵は、大体10代前半の少年だった

裕也は、その敵の目を閉じさせると

 

「恨むなら、俺を恨め……呪うなら、俺を呪え……全て、背負おう……」

 

と言って、その戦場から離れた

その後もティアナは、裕也の記憶を見続けた

ある時は、敵に包囲された味方を助けるために単独で突撃した

だが、そんな裕也に掛けられた言葉は

 

「来るのが遅いんだよ、化け物が!?」

 

「なぜ、もっと早く来なかった!?」

 

「貴様が遅かったせいで、あいつは死んだ!!」

 

感謝の言葉ではなく、罵詈雑言だった

だがそれは、ティアナから見たら誹謗中傷に他ならない

裕也は、困難な作戦を成功させていた

むしろ、誉め称えられて然るべきだった

だが、誰も裕也の功績を認めなかった

 

「なんでよ……」

 

ティアナは思わず、そう呟いた

そうしている間にも、記憶は流れる

ある時には、制服を着て学校に通っていた

またある時は、エプロンを着けて喫茶店で働いていた

 

「本当に、喫茶店ね……」

 

ティアナがそう呟いた直後、突如として視界が炎に染まった

それは、大規模戦争だった

相手は、数万人規模の軍勢

それに対して、こちらはたった数百人

余りにも、絶望的な戦力差

しかしそれを、覆す戦術があった

裕也という戦術が、数と言う戦略を崩していく

だが、無傷という訳にはいかない

少しずつ、裕也は被弾していく

そんな時、敵地の真ん中で裕也は脚を止めた

それは、戦場に於いては致命的な隙

その隙を逃さず、裕也に魔法や魔力弾が殺到

大爆発を起こした

だがその直後、その爆発の中心地から炎の柱が立ち上った

それを見たティアナは、気づいた

裕也が、切り札を切ったのだと

 

「炎の魔神……」

 

ティアナがそう呟いた瞬間、煙を突き破って炎が走った

その炎に焼かれて、数十人の敵が火達磨になって倒れた

そして裕也は、更に奥へ進んだ

敵の首魁が居る、最奥へ

そして裕也は、使えば死ぬと知っていた魔導具を発動

その命と引き換えに、敵首魁を倒した

一連を見たティアナは、両手で顔を覆い

 

「報われないじゃない……」

 

と漏らした

その時、不思議な浮遊感と共に

 

『……アナ………』

 

と声が聞こえ始めた

そして数秒後

 

「ティアナ!」

 

ティアナは裕也に、揺すり起こされた

 

「ゆ……うや?」

 

「魘されていたが、大丈夫か?」

 

ティアナが肩で息をしていると、裕也は労るように言った

そして裕也は、ティアナの呼吸が落ち着くまで待ってから

 

「落ち着いたか?」

 

と問い掛けた

それにティアナが頷くと、裕也は

 

「朝食が出来たから、食べるぞ」

 

と言って、離れようとした

そんな裕也の腰に、ティアナは抱きついた

そんなティアナに、裕也は不思議そうに視線を向けた


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