魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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二人の休暇1

「裕也、街に行くわよ!」

 

「む、む?」

 

執務室に戻ってくるなりの言葉に、裕也は思わず首を傾げた

いきなりだったこともあったが

 

「ティアナ……確か、忙しいと言ってなかったか?」

 

時空管理局の執務官という役職は、非常に少ない

時空管理局全体の人数の内、約1%にも満たないとされている

その理由が、試験の難しさだ

今や執務室として知られるフェイトだが、そのフェイトも実は試験で一度落ちている

その執務官試験は、年に一度行われる

その試験に参加するのは自由で、参加人数は毎年約100人は参加する

しかし、合格率は1%以下

何せ、執務官は危険な職務である

危険な敵地に一人で潜入し、敵を無力化し捕縛する

その敵がどういう罪を犯しているかも判断しなければならないために、法律にも詳しくないといけない

故に、試験はペーパー試験と実力試験の二種類が行われる

その二つを合格しない限り、執務官にはなれないのだ

なおその試験を、ティアナは一発合格している

 

「いいのよ。ハラオウン提督に、一週間の休暇貰ったから」

 

ティアナはそう言いながら、机の上に置いてあった車の鍵を取った

そして、再度

 

「それじゃあ、街に出るわよ」

 

と言ったのだった

そして十数分後、ティアナが運転する車は街中を走っていた

もちろん、服装は私服に着替えている

 

「裕也……確か、一人暮らししててバイトしてたって言ってたわよね?」

 

「ああ……それがどうした?」

 

窓の外を見ていた裕也に、ティアナは問い掛けた

そして、裕也の答えを聞いて

 

「貴方の教養も見させてもらったわ……貴方、学校に通ってたこと、あるわよね?」

 

と問い掛けた

すると、裕也は

 

「ああ……私立の学校に通っていたな……一応、生徒会の末席にも在籍したことがある」

 

と答えた

すると、ティアナが

 

「だったら……」

 

と言った

それは言外に、普通に生きることも出来たのでは?

と問い掛けていた

しかし、裕也は

 

「それは無理だな……何せ、俺は長くは生きられなかった」

 

と言った

 

「……え?」

 

予想外だったからか、ティアナは視線を裕也に向けた

すると、裕也は

 

「俺に施された強化施術……それは、著しく俺の寿命を短くした……どんなに頑張っても、約二十年が限界……そう言われていた」

 

と語った

それを聞いたティアナは

 

「……今は、どうなのよ?」

 

と声を震わせながら、問い掛けた

すると、裕也は

 

「調べてないから分からないな……」

 

と呟いた

それを聞いたティアナは、内心で

 

(今度、診察させましょう)

 

と誓った

そして、二人が乗った車が到着したのは、雑貨店だった

 

「雑貨店?」

 

「そ。貴方の生活用品を買うのよ」

 

ティアナはそう言って、躊躇いなく入店した

そして数十分後、二人して両手に買い物袋を持って出てきた

 

「手慣れていたな、ティアナ」

 

「兄さん、買い物下手だったからね」

 

裕也の問い掛けに、ティアナは買い物袋を車に積みながら答えた

そして、裕也を見て

 

「さて、次行くわよ!」

 

と意気込んだ

その後、二人は服も買いに行った

 

「裕也、背も高いしスタイルも良いから、何でも似合うわね」

 

「そうか?」

 

ティアナの誉め言葉に、裕也は首を傾げた

裕也の身長は約180ある

更に、裕也は全体的に細身だが、無駄なく鍛えられている体つきである

様々な服を着るが、ティアナの読み通りに何でも似合っていた

今だが、黒を基調にした長ズボンに紺色の半袖ワイシャツを着ている

その服を着たまま、一度帰宅することにした

二人の休暇は、始まったばかりである


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