魔法少女リリカルなのは 集う英雄達    作:京勇樹

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おまけです
一部ネタバレがあります
それでもイイという方々、読み進めてください
かなりダークな表現があります


ちびっ子冬也

ワールドブレイク事件

または、JS・R事件が解決してから、数ヵ月後

隊舎が再建されて、隊員達は隊舎に戻っていた

そんなある日、フェイトと冬也は揃ってある倉庫に居た

なぜこの二人が倉庫に居るのか

二人が倉庫に居るのは、部隊隊長のはやてから機動六課が回収したロストロギアの確認を頼まれたからだ

 

「ごめんね、冬也……こんなことを頼んで」

 

「構わんさ……手は空いていたからな」

 

フェイトが済まなそうに言うと、冬也は微笑みながら返答した

そして、ある棚を確認していたら、不自然な空きがあった

 

「む………ん?」

 

それを探していると、冬也は足下に懐中時計が落ちているのを見つけた

 

「これか」

 

冬也が拾おうとすると、それに気付いたフェイトが慌てた様子で

 

「待って、冬也。封印が解けかけてるかもしれないから、迂闊には!」

 

フェイトが制止した時には既に、冬也はその懐中時計を拾っていた

冬也がフェイトの方に視線を向けた時、懐中時計の蓋が開き、針が逆回りに動き出した

 

「む!?」

 

「冬也!?」

 

部屋の中を強烈な光が襲い、フェイトは視界を覆った

少しすると光が収まり、フェイトはゆっくりと目を開いた

そして、フェイトの視界に入ったのは、ブカブカの服を着た一人の少年が居た

見た目年齢は9歳位だろうか

落ちている服から察して、冬也だろうとは分かる

しかし、フェイトは冬也の目に光が無いことに気付いた

嫌な予感がしたが、フェイトは取り合えず

 

「ねえ、それを渡してくれるかな?」

 

と問い掛けた

すると少年は、ゆっくりと懐中時計をフェイトに手渡した

フェイトはそれを受けとると、簡易封印を施してから

手を伸ばして

 

「掴まって?」

 

と言った

少年は言われた通りに、フェイトの手を掴んだ

それを確認して、フェイトは少年を抱き上げた

が、あまりの軽さに驚いた

 

(軽すぎる……!)

 

彼女は少年と歳の近いエリオとキャロを育てているために、平均体重を熟知している

しかしどう感じても、少年の体重は平均体重より遥かに軽かった

フェイトが驚愕で固まっていると、少年は首を傾げていた

それに気づいて、フェイトは笑みを浮かべて

 

「大丈夫だよ」

 

と言ってから、倉庫から出た

それから数十分後、フェイトははやてとなのはの居る部隊隊長室に居た

 

「ようするに、その少年はロストロギアによって若返った冬也さんってことか?」

 

「うん。懐中時計型ロストロギア、仮称リターンだね」

 

はやてからの問い掛けに対して、フェイトは片手で少年

冬也を抱えながら答えた

なお、今の冬也はエリオの予備の陸士服を着ている

そして、フェイトが表示させたウィンドウには件のロストロギアの詳細なデータが表示されている

 

「効果は対象の時間を一時的に戻すみたいで、持続性は対象によって変わるみたい。調べじゃあ、最低で一日から三日程まで」

 

フェイトがそう説明すると、はやて達は冬也に視線を向けた

それに気付いたのか、冬也はフェイト、なのは、はやての順に三人を見てから

 

「………僕の次の運用場所は、どこ?」

 

と問い掛けた

それが、この状態になった冬也の初めての言葉だった

それを聞いて、はやて達は息を飲んだ

幼い子供だというのに、絶望しきった暗い目

そして、余りにも軽い体重

何よりも、服を着せた時に見えた、夥しい傷痕

最後に、今のセリフ

そこから、三人はこの時の冬也がどういう扱いを受けていたのかを察した

冬也は兵器としと扱われていたのだ

それも、目が絶望に染まるほどに

歯を食い縛り、フェイトは微笑みを浮かべて

 

「しばらくは、戦場に出なくていいからね?」

 

と言った

すると、冬也は不思議そうに首を傾げ

 

「……兵器なのに?」

 

と問い掛けた

その端的な言葉に、三人は歯を鳴らした

フェイトに至っては、もし目の前に当事者が居たら、ザンバーで斬っただろう程に怒りの感情が湧いた

だが、冬也には気付かれないように笑みを浮かべて

 

「冬也は兵器なんかじゃない……人間だよ」

 

と告げた

だが冬也には分からなかったらしく、冬也はコテンと首を傾げた

それを見て、フェイトは微笑みながら空いてる手で冬也の頭を撫でた

冬也は撫でられるがまま、目を細めている

そんな光景を見ながら、はやてが

 

「そういえば、フェイトちゃん。片手で冬也さんを抱えとるが、重くないんか?」

 

と問い掛けた

その質問を聞いて、フェイトは一瞬顔をしかめてから

 

「はやて、抱いてみて」

 

と言って、はやてへと冬也を差し出した

それを聞いて、はやては

 

「ウチ、そんな力無いで?」

 

と言いながら、冬也を抱き抱えた

次の瞬間、はやては目を見開いた

そして、言葉を震わせながら

 

「ちょい待ちぃ……なんや、この軽さは(・・・・・・・・)?」

 

と呟いた

それを聞いて、それまで殆ど黙っていたなのはが驚いた様子で

 

「え? そんなに軽いの?」

 

と問い掛けた

なのはからの問い掛けに対して、フェイトは頷いてから

 

「これを見て」

 

と言って、ポケットから一枚の紙を取り出して手渡した

 

「これは?」

 

「先に医務室でしてきた、簡易的な診断書」

 

なのはが紙を広げながら問い掛けると、フェイトは端的に答えた

 

「診断書? ………っ!?」

 

フェイトの言葉の真意が分からなかったらしく、なのはは首を傾げた

だが紙を見た次の瞬間、なのはは目を見開いて固まった

そして、その診断書を握り潰した

 

「なのはちゃん……何キロやて?」

 

はやてが問い掛けると、なのはは肩を震わせながら

 

「体重………25㎏」

 

と答えた

 

「25㎏!? そんな、ありえへんやろ!! 後、10㎏近くはないとおかしいわ!」

 

なのはの説明を聞いて、はやては思わず声を荒げた

はやての知る限り、今の冬也の見た目年齢

9歳の平均体重は、おおよそ40㎏程だ

だが、今の冬也は約半分程しかない

そこから考えられるのは、栄養が極端に足りなかったことだ

事実、なのはが握り潰した診断書には栄養失調の文字があった

それを思い出したのか、フェイトははやてに抱かれてる冬也に顔を近づけて

 

「冬也……質問いいかな?」

 

と問い掛けた

そして、冬也が頷くと

 

「冬也の一日のご飯は、何回で、どのくらいだった?」

 

と問い掛けた

すると冬也は、迷わずに

 

「一日一回……このくらいの、レーション」

 

と小さい掌を広げながら答えた

それを聞いて、フェイトは爪が食い込む程に拳を握り締めた

冬也の説明通りなら、冬也に与えられた食べ物は通常サイズの半分のレーションだけ

しかも、それを一日一個だけ

足りない

足りるわけがない

冬也はそれを一日一個与えられただけで、苛酷な戦場に投入された

普通だったら、栄養失調で死んでしまう

しかし、冬也に与えられた能力がそれを許さなかった

それは

 

《魔力が続く限り、不死》

 

という能力

それに付随するように、超速再生と回復もある

だから冬也は、即死級のダメージを受けても死ななかった

死ねなかった

しかも聞いた話では、昔は痛覚もあったらしい

治ってる最中も、激痛が走っていたらしい

しかし、戦場では動きを止めたら被弾が集中するだけ

だから、痛くても動き続けないといけない

生きながらの地獄

生き地獄

そんな場所で、冬也は生き続けた

まともに人間の扱いをされずに、兵器として扱われて

その頃の冬也が、今目の前に居る

もう遅いかもしれないが、自分達に出来ることをしよう

三人はそう決めた

 


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