女帝が引っかき回すお話   作:天神神楽

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アーニァのセリフは、各自でのうない再生して下さい。
アーニァへの愛があれば、可能なはず。私は出来る。
ふみふみ、ふみふみしたい。
う、浮気じゃねーし


撮影会のち勧誘

美嘉達のライブが終わり数日。エレーナは庭でお菓子を食べていた。三村かな子と緒方智絵里と一緒に。

「う~ん、かな子ちゃんのお菓子は絶品ね~。今度一緒に作りましょうね。私もお菓子作り好きなのよ」

「そ、そんなエレーナさんとだなんて!?」

「駄目?」

コテリと首を傾げて聞いてくるエレーナに、かな子はタジタジである。智絵里にいたってはおどおどしていた。

「はい、智絵里ちゃんも、アーン」

「ふえっ!? あ、あーん」

クッキーを差し出され、戸惑いながらもそれを食べる智絵里。エレーナはそんな小ウサギのような智絵里にキュンキュンしていた。

「あらあら~! ねぇ、次はなに食べたい? あーもう! 今度は私が作ったお菓子食べてね!」

「はぅはぅ~」

抱きしめられて頬ずりまでされた智絵里は、目をぐるぐるとさせてしまった。それを見ていたかな子は苦笑いである。

そんな三人の所に、同じく三人組が近付いてきた。

「かな子ちゃんと智絵里ちゃんはっけーん! って、エレーナさん!?」

二人と一緒にエレーナ(E:智絵里)がいることに、のけぞる未央。そして、そんな未央に手を振るエレーナ。

「どうしたのかしら? あ、三人もお菓子食べる? とはいっても、かな子ちゃんのだけど、いいかしら?」

「もちろんです。今日のもよく出来たんですよ!」

「じゃ、じゃあ……」

三人は戸惑いつつもシートの上に座る。

「あ、美味しい」

「よかったー、あ、こっちのも美味しいですよ」

凛の小さな感想に、かな子は笑みを浮べる。

しばらくのんびりとしていると、何か気にしていた凛が口を開く。

「ねぇ、未央。私達、何しに来たんだっけ?」

しばしの沈黙。凛の視線の先にはビデオカメラ。

「…………。あーっ!?」

仕事を思い出し、慌てて、かな子にカメラを向ける未央。かな子は落ち着いてお菓子の紹介などをして無事に終わる。続いて智絵里の番だったのだが、おどおどとしてしまっていた。

そんな智絵里から、エレーナは用意していたカンペを取り上げてしまった。

「え、エレーナさん、返してくださいぃぃ……」

「だーめ。智絵里ちゃんの素直な気持ちを言えばいいの。ほら、四つ葉のクローバー」

バスケットの中から、クローバーの形のクッキーを智絵里に渡す。

「あ、四つ葉のクローバー……ふふっ、良いことあるかも」

可憐な笑みを浮べながら、そのクッキーを口に入れた。その様子はしっかりと未央がカメラに収めていた。

「へっ? も、もしかして、今の撮ってましたか!?」

「うん、バッチリ!」

「とっても、可愛い笑顔でしたよ!」

そのことに気が付き、智絵里は顔を俯かせてしまった。そんな智絵里の頭を優しく撫でる。

「お疲れ様、智絵里ちゃん。とっても素敵でしたよ。お疲れ様」

「そ、そうでしたでしょうか?」

「うん。智絵里ちゃんの可愛らしさ、しっかりと通じましたよ」

エレーナの微笑みに、智絵里は緊張していた体から、フッと力を抜く。

そんなところに、やってくる人物が一人。

「見つけましたよ、エレーナ」

「あら、見つかっちゃった。それじゃあ私はこれで。あ、アーニァちゃんの映像は、可愛く撮ってあげてね」

そう言うと、華耶に連行されていくエレーナ。

「全く……最近は大人しいと思ったらこれです」

「そんな、まだ時間はあるでしょう?」

「きちんと待機していて下さい」

キラリと眼鏡を光らせる。それにはエレーナも大人しくせざるを得ない。

ズルズルと引きずられながら連れて行かれたのは、プロダクションの撮影スタジオ。今日は、雑誌の撮影である。

エレーナが引きずられながらスタジオに入ると、全員がエレーナの方を向き、戸惑った。それはそうである。天下のトップアイドルが、ズルズルと首根っこを捕まれて引っ張られているのである。

「あ、おはようございます。ほらー、まだ時間じゃないじゃない」

「そういう問題ではありません」

「はーい、着替えてきまーす」

華耶に手を振りながら、更衣室に移動していくエレーナ。そんなエレーナにため息をつきつつ、手のかかる妹に手を焼く姉のような表情を浮べていた。

「華耶さん。お疲れ様です」

「あら、楓さん。ごめんなさい、エレーナがまた悪い癖を発症してしまって」

水着に着替えた楓が、華耶に挨拶をしに来た。

「やはり、楓さんは素敵ですね。よく似合っています」

楓が着ている水着は、黒のビキニとパレオ。今は上に一枚は負っているが、真っ白な楓の肌にはよく似合っていた。

「ふふ、ありがとうございます。でも、あのエレーナさんと一緒となると、女のとして自信を失ってしまいます」

そう言いつつも、クスクス笑っているので、実際は楽しみにしているのだろう。

「でも、まさか本当にユニットを組めるとは驚きました。流石は346プロ一のプロデューサーですね」

「どうやら、久しぶりに本気を出すそうで。であれば、彼女のマネージャーが手を抜くわけにはいきませんから」

そういう華耶は誇らしげで、楓はそんな華耶を見て微笑む。

「ふふっ、流石は女帝《ツァリーツァ》の恋女房。いえ、流石は皇帝《ツァリー》様ですね。世界最強のコンビです」

《ツァリーツァ》であるエレーナを支えた華耶は、皇帝《ツァリー》と呼ばれている。女性である華耶は不本意なのだが、それをエレーナがたいそう気に入ってしまい、世界中に定着してしまったのである。

「その言い方は……」

「あら、ごめんなさい。でも、華耶さんだってそんなに綺麗なんですから、デビューすればいいのに」

「そうよねー? 華耶さんったら恥ずかしがり屋さん」

楓の提案に、いつの間にか着替え終わっていたエレーナが後ろから華耶に抱きついた。

「……私はプロデュースする側ですので」

「でも、華耶さん宛のインタビューでも、顔出しNGだったじゃない。せっかく綺麗なお顔を見せる絶好の機会だったのに」

「アイドルのプロデュースの話なのですから、私が顔を見せる必要はありません」

「もぅ……、いつもこうなんだから。楓ちゃんももったいないと思いますよね?」

「ふふっ、今日の所は許してあげましょう。さ、お仕事といきましょうか」

楓は上着を脱いで、カメラの前に立つ楓。まずは一人ずつである。

エレーナはそんな楓の撮影の様子を見ていた。真っ白なビキニの胸の下で腕を組みながら。

「さすが、せくしぃね」

「というか、上着くらい来て下さい。風邪ひきますよ」

「大丈夫よ、この部屋温かいし。それで、どうかしら? 私のツァリーさん?」

「……とてもお似合いです。流石は私のツァリーツァさんです」

否定するのを諦めた華耶は、むしろ乗っかっていった。

「ありがと、華耶さん」

「エレーナさん、次、お願いします!」

楓の撮影が終わり、次はエレーナの番である。華耶に投げキッスをしながら撮影をしにいった。

入れ替わりに楓が華耶の元にやってくる。

「お疲れ様です、楓さん」

「華耶さんこそ。エレーナさんのお相手は大変そうですわ」

「えぇ……本当に」

そう呟く華耶は、どこか遠くを見ていた。それを見ない振りをして、楓はエレーナの撮影風景をみることにした。

エレーナは、カメラマンの指示を受け、様々なポーズをとる。たまに、少し過激なくらいなものもあるが、幻想的といえるほど美しいエレーナがそのポーズをしても、決して下品ではなく、禁断の果実に手を伸ばしているかのような風景となっていた。

「では、楓さんも一緒にお願いします」

一人ずつの撮影も終わり、今度はエレーナと楓とのツーショットである。腕を組んだり、抱きついたりと、色々なポーズを撮っていく。

「一端休憩でーす。お二人は着替えて下さい」

今度は二人で意匠を変える。水着から今度はドレスに着替える。楓は新緑の色のドレス。エレーナは真っ赤なドレスである。二人とも装飾は多くはないが、彼女たち自身がドレスを輝かせ、同じく彼女たちも輝いていた。

ドレスに着替えたまま、二人は紅茶を飲んでいた。服装と相まって、二人のいる空間がファンタジー空間のようになっていた。

「ふふ、不思議な気分です」

「あら、楓ちゃん、ドレスお似合いよ。お姫様、というよりも妖精さんみたい」

「そういうエレーナさんは貴族のお嬢様みたいです。どちらかというと、姫騎士という感じですけど」

長い銀髪を綺麗に結い上げ、いつもよりも鋭い目つきは楓の言うとおり、騎士とも見えるものであった。

「なら小道具で剣とか用意してもらおうかしら。ユニット名は《TITANIA》かしらね」

「じゃあライブは真夏の夜にやらないといけませんね。後輩さんたちにも協力してもらいましょう」

「でも、それならライブは来年になっちゃうわね。だって、ヴァルプルギスの夜は過ぎちゃったもの。だから、今年やるなら《A Midsummer Night’s Dream》じゃないと駄目ね。来年は、そうね《Walpurgis Night》、いえ、《Вальпургиева ночь》ってタイトルでやらないと。ふふ、魔法使いの夜ね」

「あ、でもそれではどちらかがロバの首をかぶらないといけませんね。ロバの耳と尻尾でも付ければいいのかしら? 華耶さん、そこのところどうなのでしょう?」

散々好き勝手話していた二人が、華耶に話を振る。それまでジト目で見つめていた華耶は、今までよりも深いため息をつく。

「……お二人が博識なことはよく分かりました。……いいんじゃないでしょうか。お二人とも、そういう遊び、お好きですし。とくにエレーナは」

「そうだけど、女王様も魅力的ね。あと、楓ちゃんのコスプレ姿も」

「まぁ、案として参考にさせてもらいますが」

しっかりと二人の会話をメモしていた華耶であった。

 

 

 

ドレスでの撮影を終え、そのドレス衣装のままインタビューを受けていた。

「……そうですか。そう言えば、撮影前に面白いお話をしていましたが……」

「お話? ……あぁ、《夏の夜の夢》のことですか? あれはちょっとしたおふざけですよ。面白そうではありますけど」

先程撮影前に話していたユニット名についてなどである。

「あれはエレーナさんと遊んでいただけなのですけど。でも、ちょっと詩的でステキ。ふふふ……」

二人は完全にワザと遊んでいたのだが、衣装が二人とも似合いすぎていたので、周りのスタッフからも好評だったのである。

「ははは、では話を戻しまして最後に。お二人のユニット、《TITANIA》(仮)は、どのようなユニットにしていきたいでしょうか」

最後の質問に二人とも少し考える。そして考えがまとまると、先にエレーナから答える。

「そうですね。歌を聴いて下さったお客様が、聞き終わった後幸せになってもらえるような、そんな歌を歌いたいです」

「私もですね。あと、ライブでは夢の中に迷い込んでもらえるような、そんな幻想的なライブもやってみたいです」

二人の回答を聞くと、記者はお礼をいって帰って行った。

「お疲れ様でした、エレーナさん」

「楓ちゃんこそお疲れ様。あ、そうだ。楓ちゃん、この後予定あるかしら?」

「いえ、ありませんが、何かあるんですか?」

楓が聞き返すと、エレーナがニヤニヤと笑い出す。

「実はね……、アーニァちゃんのデビューが決まったみたいなの!」

一足先に武内Pから聞き出していたエレーナは、心底嬉しそうにしていた。

「本人達には今日発表するみたいだから、こっそり忍び込んでビックリさせようと思ってるんだけど、楓ちゃんも一緒に来ない?」

楽しそうなお誘いであったが、果たして自分も行っていいのやらと、華耶の方を向く楓。

「武内プロデューサーには許可を取っています。……少々気の毒でしたが」

エレーナが出て行った後、エネドリとスタドリをいくつか差し入れしたそうで。

相手方の了解も取っていたということもあり、一緒に行くことにした。着替えようとすると、何故かエレーナに止められた。

「この衣装のままで行くの。言ったでしょ? ビックリさせるって」

それに驚いたのは楓である。しかし、こうなったエレーナが自分を曲げないのはよく理解していたため、更衣室に背を向ける。スタイリストから上着を受け取り、スタッフに挨拶をしてから、スタジオを出る。

いくら上着を着ているとは言え、ドレスを着たエレーナと楓が事務所の中を歩いていれば、そりゃ目立つというものである。シンデレラプロジェクトルームに行く途中途中、アイドルたちが二人の姿に興奮していた。

「じゃあね、文香ちゃん。あとでオススメの本、持っていくから」

「は、はいっ。わ、わたしもとっておきの本を持っていきますね」

緊張しつつも笑顔で答えてくれた文香を抱きしめたい衝動を抑えつつ、シンデレラプロジェクトルームに到着する二人。

「あぁ、やっぱり文香ちゃんは可愛いわぁ。ふみふみしたい」

「そんなことをしたら泣いてしましますよ。失礼します」

ため息をつきながら部屋の扉をノックする。女性の返事が返ってきて、扉が開けられると、千川ちはやが二人を迎えてくれる。

「お疲れ様です二人とも。それにしても凄い格好ですね」

来ることは知っていたが、まさかドレス姿で来るとは思っていなかったらしく、流石に笑みが引きつっていた。

「ふふっ、みんなを驚かせたくて。どうやら成功みたいね」

「はは……たしかに驚きましたけど」

そう言いつつ、ちひろは二人のことを奥の部屋に案内する。そこでは武内Pが仕事をしていたのだが、ちひろと同じように、二人の服装に驚いていた。

ちひろが二人に紅茶を出してから下がろうとすると、エレーナが彼女を止める。

「みんなが来る間、みんなの話を聞きたいわ。武内Pはお仕事のようですし、ちひろさんに。お時間大丈夫?」

「……分かりました。お付き合いします」

ちひろは自分の分の紅茶を淹れると、二人の向かいのソファに座る。

「それで、皆さんのお話でしたね。皆さん、とてもよく頑張っています。レッスンなどはまだまだ苦労しているみたいですけど、それでも頑張っていますよ」

「よかった。でも、ようやく本格的にスタートするんですね。他の子達の話も進んでいるんですか?」

これは武内Pに向けた言葉である。

「……はい。まだ企画段階ではありますが」

「さすが優秀なプロデューサーさんね。ちょっと固いのが玉に瑕だけど」

「固いのに瑕とは、これいかに」

何かが楓の琴線にふれたのか、クックックと笑う楓。どうすれば良いのか困っている武内Pに、エレーナが一つのメールを見せる。

「これは?」

「そんなプロデューサーさんへのご提案。再来月の私のライブのバックダンサーに、誰か二人、このプロジェクトから回して欲しいの」

「……アナスタシアさん達をですか?」

アナスタシアの姉であるエレーナからの提案ということで、一番確率の高いと思われる返答をする武内P。しかし、意外にもエレーナは頷かなかった。

「うーん……確かにアーニァちゃんたちとは一緒にステージに乗りたいけど。もちろん、メンバーの中で難しいのなら、断ってくれても構わないわ。そうね、この後発表するときに、伝えても良いかしら?」

「…………分かりました。エレーナさんの意見と私の方の判断で、結果をお伝えします」

「はい。お願いしますね。あ、そうだ。まだ武内Pには聞いていませんでしたね」

「何を、ですか?」

エレーナにそう言われても、とくに思い当たるフシはない。

「私達の衣装、どうかしら? 男性の方の意見も聞きたいわ」

そういうとエレーナは楓と一緒に立ち上がり、上着を脱いでドレス姿を武内Pに見せる。何故か楓もノリノリで、エレーナと一緒に手を広げてポースをとっている。

「よ、よく、お似合いです」

「ふふっ、ありがとうございます」

言葉少なな答えだったが、エレーナはそれで満足だったらしい。その後も話していると、プロジェクトのメンバーが部屋に戻ってきたようだった。

「じゃあ、私達は最後に出るので、ここで待っていますね」

「早くデビューを教えてあげて下さい」

二人に送られ、武内Pは14人にデビューが決まったことを話し始めた。

今回デビューが決まったのは、卯月・凛・未央の三人と、アナスタシアと美波の二組である。

そのことを告げられたメンバーは、ワッと歓声を上げる。しかし、他のメンバーはまだであることを聞いて、その歓声が止んでしまう。すこし、空気が重くなる中、武内Pはエレーナ達を呼んだ。

「みんなお疲れ様。撮影終わりで直行しちゃったから、こんな格好で失礼するわね」

「それと、デビューおめでとうございます」

楓の言葉に、今度は素直に喜べない。しかし、エレーナの次の言葉にメンバーは顔を上げた。

「再来月の私のライブ。楓ちゃんもゲストで出てくれるのだけれど、そのライブでの一曲、今度発売する《NEWWORLD》のステージに二人バックダンサーとして乗って欲しいの」

「それって……」

エレーナの言葉に、みくがぽつりと呟く。

「そうよ。貴女たちの中から二人、バックダンサーとして踊って欲しいの。この曲、結構激しいダンスもあるし、ステージの雰囲気もあるから、出たい子は軽いオーディションをさせてもらうわ」

エレーナの突然のバックダンサーへの誘いに、メンバーは驚愕する。

そんな中、みくが真っ先に手をあげる。

「でるにゃ! せっかくのチャンス、無駄にしないにゃ!」

みくを皮切りに、杏などの一部を除き、何人かが手をあげた。

「ふふ。じゃあ、ダンスレッスンを撮影しておいた映像があるから、プロデューサーさんに渡しておくわ。明日の10時にみんなのお話を聞きたいんだけど、大丈夫かしら?」

「はい。明日のレッスンは午後からですので大丈夫かと。みんなも大丈夫かしら?」

「「「はいっ!!」」」

それを聞いたエレーナは後を武内Pに引き継がせる。その後解散したとき、エレーナはアナスタシアを手招きする。

「どうしたですか、わふっ!?」

近寄ってきたアナスタシアを、エレーナは抱きしめた。そしてそのままアナスタシアの頬にキスをする。

「CDデビューおめでとうアーニァちゃん」

「お姉ちゃん……、はい! ありがとう!」

エレーナに褒められて満面の笑みでエレーナに抱きつくアナスタシア。そんな妹の頭を撫でながら、着替えるために一端皆と別れた。

「相変わらず意地悪ですね、エレーナさん」

「あら? 私は落ち込む前に発破をかけてあげただけよ。なんせ、私は後輩ちゃん大好きっ子なんだから」

そういうエレーナに、楓は苦笑する。

「楓ちゃんはこの後どうするの? 今夜アーニァちゃんおめでとうパーティーするけど、一緒にどうかしら?」

更衣室で着替えながら言われたが、楓はいいえと首を横に振る。

「せっかくのお祝いなんです。姉妹水入らずでお祝いしてあげて下さい」

「そうかしら? 分かったわ、それじゃあ精一杯盛大にお祝いしてあげなくっちゃね」

着替えを終え、楓と別れたエレーナは、待ち合わせをしていたカフェに向かう。そこでは先に支度を終えていたアナスタシアが待っていた。

「お待たせ、アーニァちゃん。美波ちゃんは?」

「今日は二人で楽しんで、と言ってくれました。だから、今日はお姉ちゃんと一緒です!」

二人っきりなのは久しぶりなため、アナスタシアはエレーナと二人っきりでいられることが嬉しいようだ。

「なら、今日はパーティーね。今日はアーニァちゃんが大好きなもの作ってあげる。何がいい?」

「私、お姉ちゃんのボルシチ食べたいです! あとあとっ!」

「あらあら、じゃあ、商店街で色々選びましょうか」

興奮するアナスタシアと手を繫ぎながら、商店街に向かったのだった。

 


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