女帝が引っかき回すお話   作:天神神楽

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今のガチャで特等が当たりました。
姉ヶ崎Sレア二枚。
前の楓さん二枚といい今回の姉ヶ崎二枚といい、この小説を書くようになってから、良いのが当たるようになった。
あとはふみふみ。
ちなみに、この四枚を当てるのに、一万円かかっていないというのが奇跡。


飲み回

ライブから一夜明け、興奮冷めやらぬ346プロ。そんな346プロの中にあるスタジオに、エレーナ達《TITANIA》は来ていた。

「文香ちゃん、昨日はよく眠れた?」

「それが、興奮してしまったのか、あまり眠れませんでした」

そう言いながらふぁ、と恥ずかしそうにあくびをする文香。案の定、そんな文香の仕草にメロメロなエレーナ。

「というか、どうしてエレーナさんも楓さんも、昨日あんなにお酒を飲んでいたのにいつもより元気なんですか?」

文香の言うとおり、エレーナと楓はいつも以上に肌がつやつやしていた。

「ほら、私はロシア人の血が入っているから」

「私はオッドアイですから」

理由になっていない理由で、誤魔化す先輩二人。文香はそれ以上訪ねることは出来なかった。

「こんばんは、エレーナさん、楓ちゃん、文香ちゃん」

そこにやってきたのは川島瑞樹。今日のラジオ《MAGIC HOUR》のパーソナリティである。

「お久しぶりです、瑞樹さん。今日はよろしくお願いします」

「えぇ。それにしても、昨日は大盛況だったみたいね。聞いたわよ? ロシアから華耶さんの想い人が来たんでしょう?」

「ふふふ、そうですよ。華耶さんったら、今回もアタックしきれなかったのよ? それでね……」

「エレーナ?」

その声はヒドく恐ろしいものだった。ギシギシと聞こえるようにぎこちなく振り向くと、菩薩様のような笑みでエレーナのことを見つめていた。

「それ以上いったら……、分かってるな?」

「D、Da……」

思わずアナスタシアのような返事をしてしまうエレーナ。それに満足したのか、華耶は怒れる菩薩オーラを消した。しかし、文香だけでなく、楓と瑞樹も華耶から離れていた。

「あら、どうかしましたか皆さん?」

「い、いえ、何でも……。そ、それじゃあブースに入りましょうか!」

「は、はい!」

「触らぬ神になんとやら」

華耶の視線から逃れるために、三人はブースに入っていった。

「じゃ、じゃあ私も……」

「あ、エレーナ。言っておくけど、やり過ぎないように」

いつもの華耶に戻った華耶は、エレーナに釘を刺す。そんな華耶にエレーナは、何も言わずに親指をグッと立てて応えた。

「皆さんこんばんは。真夜中のお茶会にウェルカーム。このラジオは346プロダクションからゲストをお呼びして、お話を楽しむ番組です。今日と明日の間の《MAGIC HOUR》、私と一緒に楽しみましょう?」

イントロの後に《まじめ》のコーナーも早々に終わる。

「さぁ、今日のゲストはスペシャルシークレットゲストよ。昨日初ライブを大成功で終えた《TITANIA》の三人よ」

「皆さん、まじあわわー。《TITANIA》のリーダーを務めています、エレーナ・パタノヴァです」

「皆さん、まじあわ~。ゲストとして来るのは初めてですね。高垣楓です。そして、次は私達の可愛い後輩さん」

「ま、まじあわ、です。鷺沢文香です。二回目ですが、よろしくお願いします」

「はい、と言うわけで、今夜は《TITANIA》から、エレーナ・パタノヴァさん、高垣楓ちゃん、鷺沢文香ちゃんの三人と一緒にお送りするわ。早速お話に移りたいところだけど、その前に恒例のティータイムのコーナーよ。三人とも別々のものを持ってきたみたいだけど……というか、エレーナさんと楓ちゃん、大荷物ね」

「えぇ。昨日、頂いたとっておきのを。文香ちゃんのも、私からのプレゼントよ。ね、文香ちゃん?」

「は、はい。私はブドウジュースです。とっても美味しいと紹介されました」

「これは……山梨の甲州葡萄の最高級ジュースね。となると、二人のも気になるわね」

「私は《ヴォール・ロマネ・プルミエ・クリュ・クロ・パラントゥー’05》よ(どん)」

「私は《喜久水 特別大吟醸 朱金泥能代 醸蒸多知》です(どどん)」

「「…………………………」」

堂々とお酒を持ち込んできた二人に、瑞樹はスタッフ達を見る。スタッフ達は苦笑いをしつつも首を縦に振った。

そうこうしているうちに、エレーナは大きなワイングラスを二つ。楓はお猪口と徳利を準備していた。それを和気藹々とお互いにお酒を入れていた。

「流石、日本で一、二ともいう日本酒ね。なんて芳醇な香り」

「それを言うなら、流石は幻のワインです。お花畑にいるようで、うっとりしてしまいます」

「瑞樹さんはどうします? パーソナリティだから、お酒は控えますか?」

「え、えぇ。流石に控えさせてもらうわ。本当なら、飲んでみたいお酒ばかりだけど」

二人が持ってきたお酒は共に最高級。346プロの酒飲みの一人である瑞樹でも飲んだことのないものであった。

「じゃ、じゃあ私は文香ちゃんのブドウジュースを貰うわね」

「は、はい。お注ぎしますね」

はっと文香は用意されていたグラスにジュースを注いだ。

「それじゃあ、《TITANIA》の初ライブ大成功を祝してかんぱーい」

「「「かんぱーい!」」」

チンとグラス(一名お猪口)を鳴らし、乾杯した。

「あぁ……まさしくお花畑だわ。何だか、またルジェさんに会いたくなるわ」

「ほぅ……」

「二人ともー……って、駄目ね。完全に幸せに浸っちゃってるわ。それじゃあ、文香ちゃんにくじを引いてもらいましょうか」

「は、はいっ」

トリップしている二人を放っておいて、瑞樹は文香にくじの箱を渡す。

「じゃかじゃかじゃかじゃか……」

「これですっ。えっと……きゅんきゅんする話?」

「それなら私が話すわ!」

急に戻ってきたエレーナ。文香は驚いていたが、日頃の付き合いで慣れている瑞樹はそのまま進行する。

「はいはい。それじゃ、エレーナさんが説明してね。それでは、スタート!」

「きゅんきゅんした話よね。まぁ、10秒で終わらせるなら、文香ちゃんが、『ふみっ!?』って言ったときなんだけど、それじゃあ怒られちゃうから、別の人の話をするわ」

そう言うと、エレーナはブースの外をチラリと見る。瑞樹はどうしたのかと気になったものの、エレーナが話し続けてしたので止めようとはしなかった。

「昨日の打ち上げにね、私のヨーロッパ公演をプロデュースしてくれた方が来てくれたの。それも、わざわざロシアからね」

「その方って、イヴァン・ヴィッテさんかしら?」

「えぇ。あ、一応説明しておくと、イヴァンは、ヨーロッパ公演の段取りの殆どを取り仕切ってくれた人よ。それで、打ち上げの最後の方で、私とイヴァン、どっちの方がお酒を飲めるのかって話になったの」

「……イヴァンさんって、ロシア人よね?」

「えぇ。それで、私だってロシア人を父に持つ女。負けてられないから、完膚なきまでに打ち破ったの」

自信満々に言うエレーナだが、このモデルのような体のどこにそんな力があるのか、瑞樹には理解出来なかった。

「それで、ここからが本題なんだけど、酔いつぶれたイヴァンを、華耶さん、あ、私の《ツァリー》さんね。華耶さんが介抱していたんだけど……」

もったいぶるように話を区切るエレーナ。ブースの外では華耶がスタッフに押さえられていた。

「その時イヴァンが華耶さんに膝枕をせがんで、それをしてあげてたの。口では困ったようなこと言っていたけど、華耶さん、すっごく優しい笑みを浮かべていたの。あの時の華耶さんの顔、とっても素敵だったわ。思わずキュンキュンしちゃったわ」

そう目を閉じるエレーナ。パッと見では思い出に浸っているように見えるが、実際はブースの外で菩薩から鬼に変わった華耶から視線を逸らしているだけであった。

「そ、それじゃあ判定はー?」

ピンポンピンポーn。

「あら? 途中で途切れたけど成功かしら。まぁ、後ろを見さえしなければ本当に素敵なお話だったものね」

「あの時の華耶さんは、本当に素敵な笑顔をしていました。思わず写真を撮ってしまいましたし。ほら」

楓が出したスマホには、イヴァンのことを嬉しそうに膝枕する華耶の姿。エレーナの言うとおり、その姿は確かに素敵なものであった。

「ふふふ、確かにキュンキュンしちゃうわね。……後ろは見たくないけど。ま、まぁ、見事に成功したので、この後の時間は自由に使っていいわよ。今日は拡大スペシャルだから、たっぷりお話ししてちょうだい」

「あ、エレーナさん、ワインつぎますね」

「楓ちゃんもお猪口が乾いちゃってるわ」

話をしろと言われているのに、酒に興味がいっているエレーナと楓。

「だから、話をしろって、言ってるでしょーが!!」

「んー、それじゃあ昨日のライブの話をしましょうか? それとも、文香ちゃんがふみふみしたときの話? これなら三時間くらい話せるわ」

「なんですか、ふみふみって……。ともかく、ライブについてね?」

「そうねー、今回のライブは《TITANIA》初ライブって形になったけど、文香ちゃんと一緒に初めて出たライブでもあるわね」

「そっか。エレーナさんと楓ちゃんは何度か一緒にライブに出ているものね」

以前見たライブ衣装の間違いがあったライブ以外にも、エレーナと楓は一緒にライブに出ている。そのため、半分ユニットだと言われていたのだが、本当にユニットを結成したときは、やっぱり、という意見と、文香を加えたことに対する称讃がネットの掲示板に溢れていた。

「じゃあ、今度は文香ちゃんに聞いてみましょうか。この二十五歳児コンビと一緒になって、何か感じたことはあるかしら?」

「え、えっと……エレーナさんも楓さんも、346プロダクションを象徴するアイドルです。そんなお二人と一緒にやっていけるのか、何度も悩みました。いえ、今でも悩んでいるのかも知れません」

今までの雰囲気とは一転して、真面目な話となる。これにはエレーナと楓も、静かに見守ることにした。

「それでも、エレーナさんが私にしかない素敵なものを見つけていこうって言ってくれたんです。だから、私はお二人と一緒に活動して、お二人に負けない素敵なものを見つけていきたいなと思ったんです」

「「「……………………」」」

文香が話し終えると、ブースの中は静かになる。そんな様子に文香はあわあわとしてしまう。

「ねぇ、瑞樹さん。私、今、すっごくキュンキュンしちゃったんだけど」

「私もよ。これが、ふみふみしたふみふみなのね。わかるわ」

「文香さん、ふみっ、って言って下さい(真顔)」

「ふ、ふみっ!? あっ」

年上三人は、文香の健気な姿に撃沈していた。

「あぅぅぅ……」

「ふふふ、二人の後輩さんは、とっても可愛いことがよく分かったわ。さ、そろそろお酒を置いて、お二人も話してね。はい、エレーナさん」

「私? んー、それじゃあユニット名について話しましょうか」

「ユニット名といえば《TITANIA》ね。由来は確か」

「はい。シェイクスピアの《夏の夜の夢》の妖精の女王です。エレーナさんと一緒に撮影をしているときにお話していたのを採用したんです。その時ちょうどドレスを着ながらお茶を飲んでいましたから、ついつい話し込んでいたら、雑誌のインタビュアーの方が取り上げてくれて」

「あとは、文香ちゃんと近代の翻訳文学についてよくお話していたから、丁度いいって華耶さんが決定したの」

「それに、エレーナさんは《ツァリーツァ》ですし、ピッタリですよね。実は私はロバの耳をつける予定なんですよ」

「何というか……三人とも凄く知的なのね。というか、楓ちゃんがロバなの?」

「はい。エレーナさんがタイターニア、私はロバになったボトムですね。文香さんは何でしょうか?」

「文香ちゃんは何か好きな登場人物はいる?」

「わ、私は小妖精のパックが好きです。ちょっと気の抜けたところが面白いので」

「それじゃあ文香ちゃんは可愛い妖精のコスプレね。今度のライブはその衣装でやるから、今ラジオを聞いているリスナーの皆さん、文香ちゃんがフリフリのフェアリー衣装に身を包んでいる姿を想像して待ってて下さいね」

「はいはい。何だか《TITANIA》の意外な一面を知ることが出来たところで、そろそろ時間になっちゃったわね」

色々な話をしているうちに、あっという間に時間は過ぎる。

「もうエンディング? 私、ブースから出るのが怖いから、このまま続けていたいのだけれど」

「私もこのままお酒を飲んでいたいのですが」

「全くもう……この二十五歳児コンビは……。もういいわ。文香ちゃん、最後の挨拶お願いね」

二十五歳児コンビ+二十八歳児に無茶振りされる十九歳。

「ふぇ!? え、えと……。エレーナさんと楓さんに置いていかれないよう、私も精一杯頑張りますので、《TITANIA》のことを応援して下さい。少しでも、皆さんに夢をお届け出来ることを願っています」

「はい、しっかりとした挨拶ありがとう。それじゃあ今夜のお茶会を彩ってくれたのは」

「これから楓さんと一緒に《ドメーヌ・ロマネ・コンティ’85》で乾杯の予定です。良ければ瑞樹さんも来て下さいね。エレーナ・パタノヴァと」

「これからマスターの美味しい料理と可愛い文香ちゃんを愛でながら乾杯しようと思います。高垣楓と」

「そ、そんなこと初めて聞きました……、鷺沢文香と」

「是非ご一緒させてもらいます。パーソナリティの川島瑞樹でした」

色々ありつつも無事にラジオが終わる。しかし、四人、というかエレーナは中々外に出ようとしなかった。

「……出たくないわぁ」

「そんなこと言ってないで、早く打ち上げに行くわよ。その《クロ・パラントゥー》もお店に行く頃には飲み頃になっているでしょう?」

「そこに行く前に明王様に成敗されちゃうわよー!」

「それは自業自得でしょうが! それよりも、そんな当たり年のワイン、一生に一度飲めるかどうか分からないんだから、もたもたしないの!」

瑞樹としても、ワイン好き垂涎のワインが待っているとなっては、少々正気を失っていた。

「さ、私達は一足お先にマスターのお店に行きましょうか。文香さんは初めてでしたよね?」

「は、はい。お話には聞いていたので、とても楽しみです」

文香もブース越しに眼鏡を光らせている華耶が怖かったので、素直に楓について行った。楓も楓で、自分の一升瓶とエレーナのワインを持っていっていた。

案の定、エレーナと華耶はマスターの店に到着するのが遅れるのだった。その間、楓と瑞樹は《クロ・パラントゥー》で乾杯をしており、文香はマスター特製の料理をご馳走されていたのであった。

 


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