テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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クッソ長いです。今までで一番長いです、詰め込みました、そのせいでいちいちシリアスだったりギャグだったり温度差激しいですが、どうぞお付き合いください(笑)

これで完結です。

笑いあり涙あり鬱ありのハチャメチャ恋愛ストーリーですが、楽しんでいただけると幸いです。


スミラとフレーリット プロポーズ大作戦編

フレーリットは自分の執務室に赴き、鍵のかかったデスクの引き出しを施錠し、中の物を取り出した。手のひらの上に乗る小さな箱だ。ずっと引き出しにしまっていたので、埃一つついていないそれは、フレーリットが20歳になった時に母親からプレゼントされたものだった。もちろんこうしてずっとしまっていたということは、いつか使う日に、と母が自分に渡した結婚指輪だ。

 

「…まさか本当に、これを使う日が来るとはね…」

 

箱を開け、中に入っている指輪をフレーリットは取り出した。受け取った時は、心底いらないと思ったものだ。母の顔色を窺い、なんとか顔に出さずに済んだが、その時の自分は最高に微妙な感情をしていた。「20歳の祝いにコレですか母上」やら、「うっわ…、ナニコレすっごくいらない…」や「まるで早く結婚しろと無言で言われているような微妙すぎる圧力プレゼント」や「ていうかサイズどうすんの?」とかいう事は胸の奥深くにしまっておき、とりあえずずっと所持していたが、あの時の自分を蹴りたい、今はそんな気持ちだった。

 

小さくも可憐に、優雅に存在を放つアイオライトの宝石がついた、輝く銀の輪は、今思えば最高の指輪だった。

 

「そういえばサイズは何か母上が言ってたな…、なんだったっけ…」

 

その時はまるで興味がなかったため適当に聞き流し、すっかり忘れてしまった。まぁいいか、とその場で流す。

指輪は勿論2つある。自分用は無造作にズボンのポケットにしまい、渡す用のものは大切に懐に入れた。

 

 

 

 

 

まだ時刻は18時過ぎ。当然部下達はまだ仕事をしている時間帯である。そうでなくても夜中も交代交代で仕事をしているが。

 

「…今日はあいつらは解散させるか…。僕がいれば問題ないし、それに、この仕事ももう少しで終わりそうだしね」

 

フレーリットは机のペン立てに置いてあるダーツの矢をとると、ダーツボードに投げた。そのダーツボードには世界地図が貼ってあり、矢は真っすぐに、海洋都市ラメントに突き刺さった。

 

(いよいよロピアスと開戦だ。スミラと生きる、平和な世界を作ろう。そのために、すぐに終わらせてやる。電撃作戦で行くぞ)

 

部下クラークと、その娘サーチスの担当するシュタイナー研究所での、才能に秀でた研究員を引き抜き構成した、”光軍”の連中も大分成長してきた。流石、彼女は光術のエリートなだけはある。あとは、複合光術を出来る者を増やしていくだけだが最近どうも他の研究に熱をかなり注いでいるらしい。彼女には今、微塵にも興味がないので好きにさせている。

 

あのような天才肌のタイプの人間はどうにも何を考えているか自分には理解出来ない。だが天才肌故に、少し放っておいても好奇心とその圧倒的な頭脳で、また複合光術のように、画期的な技術を生み出してくれる者だから、便利なものだ、とフレーリットは冷めた想いであの23歳の若い白髪の女研究員を思い出した。今まで女性という身分だけで注目されず埋もれていた彼女の才能を見出したのは、他でもない自分だった。それ以来、サーチスからは心酔されているのは自覚していた。むしろ、それならありがたいものだ。それ即ち、優秀な戦争への技術革新と、忠実な部下が出来たのだから。あまり周りや家族からも褒められ慣れていない、才能を埋められていたという境遇故に、褒めれば褒めるほど伸びるという彼女の成長特徴を見抜き、目はかけてきた。それよろしく、彼女はメキメキと才能を開花して行き、こうして一個中隊である特殊軍隊、光術を専門とする光軍を任せているわけだが。

 

 

 

まだスミラと出会う前、彼女に話したものだ。彼女の研究資料を黙読し添削している傍らに、夢は何ですかと彼女に聞かれた時だった。

 

『んー、宿敵ロピアスを叩き潰す。ついでにアジェスも属国にしてやる。我が国スヴィエートが、全世界を支配する。そんな世界を作ることかな』

 

嘘ではなかった。本当にそれは、当時のフレーリットの本心だった。仕事一筋で走り抜け、先祖の恨みを晴らすべく、臥薪嘗胆してきたのだ。皇帝として、ふがいない、いつまでもあの憎きロピアスなんぞに負けてたまるか、その想いだけがフレーリットを突き動かしていた。

 

フレーリットは資料を捲り、変わらず読みふけった。

 

『陛下っ、なんて素晴らしい心得なのでしょう。その想いはスヴィエート全国民が抱いている夢といっても過言ではありません。流石はこの国そのもの、スヴィエートの象徴であらせられる方です』

 

サーチスは恍惚の表情で彼を見つめた。相変わらず資料しか見てないがそれは自分が書いた資料なのだ。それ程目をかけられていると思うと、堪らなく嬉しかった。

 

『んー、まぁ、そりゃどうも。あれ?ここって誤字?』

 

適当に生返事をし、黙々と読み進んでいったが、明らかに誤字と思われる部分を発見し、フレーリットはそれを指摘し、マーカーで塗った。

 

『えっ!?すみません!どこですか!?』

 

『ホラここ、駄目だよ僕に提出する用の資料は完璧でなくちゃ。それが君の仕事なんだから』

 

ペシペシ、と資料の紙をボールペンで叩く。確かに、これは完全なる自分の確認ミスだった。サーチスは酷く落ち込む。

 

『もっ、申し訳ございません…!私なんて事を…!今すぐ手直しして―――――!』

 

『いいよまだ読みたいから。細かい添削や、提示資料不足とかはまた後で別途で指示する。以前より大分読みやすくなってきたし、分かりやすいからね。君はよくやっているよ、サーチス』

 

立ち上がり、今すぐにでも訂正を、と逸る彼女をやんわりとフレーリットは抑える。

 

『…っ、勿体ないお言葉でございます…!』

 

サーチスは顔を赤らめ、うつむいた。その様子をフレーリットは一瞥し、思った。やはりこいつは褒めれば褒めるほど伸びるタイプの人間だな、と。3つ年下だが、ある突出した才能、科学部門ということに関してだけは本当に目を見張るものが、彼女にはある。

 

『うん、まだ粗削りだが、君は十分ダイヤの原石だな。用意して欲しい機材などがあったら言うように。手配しよう』

 

『はっ、はい…!』

 

『もっと自分の才能を信じろ。そしてこの国、スヴィエートに尽くせ』

 

添削し終わった資料を彼女に差し出し、そう言った。裏は全く無かった。本当に、この国に役に立つ人材だと思ったのだ。

 

『フレーリット様……、あぁっ、ありがとうございます…。何と身に余る光栄でしょうか。これほど本望なことはありません。捧げます、この身全てを、スヴィエート(あなた)に――――――!』

 

 

 

とは言ったものの、今ではあの夢は夢であって夢ではない。勿論それなりの制裁をロピアスにはするつもりだ。目には目を歯には歯を、というのは実行させてもらう。ただ全てを支配するとなればそれは、戦争が長引くことを意味する。そして、そうなれば、自分は更に仕事が激務になっていくだろう。スミラといる時間が減るし、それでは彼女が望む、平和な世界など、到底作ることはできない。彼女に少なくとも治癒術師の能力が欠片でもあると判明した今、全世界を掌握してまで戦争など続けたくはない。そう、むしろ早く終わらせて、スミラと共に正式に夫婦になりたい。そうフレーリットは望んでいた。

 

「第二次世界大戦も、プロポーズも、必ず成功させるさ」

 

そう言い、踵を返すと、彼はスヴィエート城を後にした。

 

 

 

一方花屋フローレンス前路地裏監視ポイントでは。

 

「ふぁ~、今日のフローレンスの営業も終わっちゃった事ですし、暇っすねー…。相変わらず平和だし」

 

アンディは、家の2階に上がってしまい、もう姿の見えないスミラを恋しく思いながらそう欠伸と愚痴をこぼした。

 

「そう言うな。まだ明かりはついてる。彼女は起きてるし、就寝中もポイントで交代で仮眠しつつ監視だぞ」

 

ラルクもそう言いつつ、クロード屋のロールケーキを頬張った。アンディにおつかいさせた新作ロールケーキだ。

 

「お前らいつもこんな勤務態度でやってたのか…。司令やトーダさんに見つかったら大目玉だぞ…」

 

イースは気の抜けた彼らを横目にはぁ、とため息をついた。

 

「む…、新作ロールケーキ…これかなり美味いな…。リピート確定…」

 

「まぁ気持ちは分かる。スミラさん隠れて1階のカーテン閉められてクローズすると、全く見えないからな。はっきり言って暇だ」

 

テリーも持ち込んだ簡易ダンベルを持ち、トレーニングしながら同意する。

 

「お前ら真面目にやれよ。僕らも調査完了して監視に入ってからは暇で仕方がないが、真面目なラルク、お前まで…」

 

「あ、イースさんそれは仕方がないっすよ。先輩この前すきっ腹にカツサンド食って腹壊してたんでケーキしか受け付けない体になってるんすよきっと、ホラよく言うじゃないですか。甘いものは別腹って」

 

(まぁその原因おもいッきり俺のせいなんすけど)

 

と、アンディは心の中で付け足す。

 

「おいその言い方はやめろアンディ。まるでいつもケーキで生活してるみたいに。きちんと家では食べている」

 

「ハァ~?いうて同棲してる彼女に全部任せてるんでしょ?」

 

「いやあの子とは一か月前に別れた」

 

「アァン!?なんなんすかそれ!彼女出来ない俺に対する当てつけですか!?あんなに可愛かったのに!」

 

「家事が全然なんだ。それに、全く俺の事を理解してくれない」

 

「なんて贅沢な奴なんだ…」

 

イースは呆れた。

 

「お前意外と図々しいのな…。真面目故か?」

 

「畜生なんなんだよこの差は…!?」

 

テリーの言葉に大いに同意し、アンディは歯ぎしりした。このクソ真面目な先輩には女の影が割と絶えないが、よく消えてはまたできる、みたいな事を繰り返している。顔はいいし誠実で真面目、そしてこれからも給料に期待が出来るオーラはあるので、そのせいだろうか。しかしアンディは、どうもフレーリットのように尊敬はできず、むしろ先輩には嫉妬全開であった。どうしたら女性にモテるのか、みたいな指南本をなけなしの新卒給料で購入したりもしている。(それでも普通の仕事よりは国の諜報機関という身分、給料はいい方だが女性に見栄を張るために大体貢いで終わる)

 

「あー、それにしてもスミラさんって可愛いですよぇ…」

 

「いきなりどうした」

 

「いや、俺この前ついうっかり直接コンタクトとっちゃったんですけど、その時にお話ししたんですよ。めっちゃくちゃいい匂いしました。いやホンットマジで。甘ったるくてキツい、とかそんなんじゃないんですよ、とにかくいい匂いなんです」

 

アンディはうっとりしながらあの匂いを思い出した。ふわぁ~と脳内をいつのまにか支配されるようなフローラルな花の香り。彼女はいつも花に囲まれているせいか、とてつもなく魅力的な匂いがするのだ。近くにいるだけでも癒されるような、そんな香りだ。いい匂いすぎて彼女自身が香水やアロマのような効果を持っている、そんな気がしてならない。絶対司令もスミラさんのそんな部分に少なくとも惚れている、アンディは確信していた。

 

「ホントお前…怖いもの知らずだな…バレたら司令に殺されるぞ…」

 

「バレなきゃいいんすよ。それに何故か最近俺司令に避けられてる気がしてるっス」

 

「それって…、バレてる…のか?」

 

イースのつっこみを無視し、アンディは語りだした。

 

「薔薇の、ローズ系のフローラル香りってい言うんですかね。一回嗅いだら忘れられないッスよ」

 

「だがな、綺麗な薔薇には棘がある、って言うぞ」

 

「は?スミラさんにそんな棘あるわけ…」

 

「あの人、昔働いていた酒場の酔っぱらった客にセクハラされて、キレて回し蹴り食らわせたらしい。蹴られた客は泡吹いて倒れたってよ」

 

「回し蹴り」

 

「この前ハウエルさんから聞いた噂じゃ司令もそれ何回も喰らってるらしい。蹴りだけじゃなくてビンタとかも。本人喜んでるみたいだが」

 

「喜んでる」

 

アンディとラルクは口をあんぐりさせながら復唱した。若干スミラ、そしてフレーリットに対して幻想を抱いていた2人としては聞きたくない話だった。

 

「いつも仕事中は鉄仮面みたいな司令の、人間らしさや本性って言うのかな」

 

「だな…、あの人ぜんっぜん笑わないからな」

 

「あぁ、笑ったとしてもいつも張り付けたような笑みというか、心から笑ってるのは僕は見たことない」

 

「分かるー!!イースさんそれなー!!」

 

「声でけぇよお前…!」

 

テリーにやんわりと注意されアンディは、

 

「あっ、へへ…すんまっせん…。でもそんな司令だからこそ、気になりません?スミラさんのどこに惚れたのか、惹かれたのかとか。司令はスミラさんの前じゃぜっっったいデレデレッスよ。普段俺らじゃ決してみられない甘えっぷりとか、にゃんにゃんしてる笑顔とか。俺の勘がそう言ってる」

 

「すみませんお2人共…。こいつ女の話題や司令の話題になると水を得た魚のようになるんですよ…」

 

ラルクは先輩2人に謝罪したが、

 

「確かに。俺も気になる」

 

「僕もそれは凄く興味あるな」

 

30歳コンビは思いっきり話に食いついてきた。

 

「えぇ…」

 

ラルクは監視という名の任務を続けつつ、尊敬する上司であるフレーリット司令の恋愛事情で盛り上がっているのを横目に呆れた。

 

「やっぱ可愛いからじゃないか?」

 

「俺は匂いに賭けます。あと性格ッスかね」

 

「いや体、顔。つり目もそうだが、泣きぼくろがエロい」

 

「わっかるーーー!!!」

 

アンディはイースを指さして激しく同意した。

 

「だぁから声でけぇってば!」

 

「ちょっとうるさいですよ!!俺達仕事中なんですからね!?」

 

「んな固いこと言うなよ。今まで俺達気を張り詰めてスパイ活動してたんだからさ、こんな楽な仕事きたら、そりゃ気になるに決まってんだろラルク」

 

「そうだよ、お前はどうなんだよ。司令の事尊敬してるんだろう?気になるだろ。ラルク、お前も言え」

 

先輩2人に据わった目で見つめられては、とラルクは目を泳がせた。

 

「ええぇぇぇ……。う、うぅぅっぅぅーーーーん…、じょ、女性らしさ…ですかね…」

 

苦し紛れに、当たり障りのない返答をした。

 

「つっまんない答えだな」

 

ハッ、とイースは嘲笑った。

 

「いや逆に面白い答えって何ですか」

 

「そりゃお前、胸、とか尻、とかだろ」

 

テリーがにやぁと笑い、ラルクの肩に手をやり抱き込んだ。

 

「し、司令の恋人をそんな目で見られませんよ俺は!?」

 

「いいだろー別に本人いないんだし」

 

「スミラさん今頃シャワーでも浴びてるんスかねェ!?」

 

「胸は確かFカップだと…」

 

「F!?でっか!」

 

どうしてこう、男は集まるとこういう話題になるのだろうか…、とラルクは呆れた。昔からあまりついていけないトーク話題である。既婚者トーダさんがいないと余計につけあがって盛り上がる。

 

「俺はそういう話題ははっきり言って苦手です…」

 

「バッカお前なぁ~。絶対司令だってえげつない下ネタ言うぞ。あの人ただでさえデリカシーないから」

 

「仮にそうだったとしても話すわけないでしょう!身分考えてくださいよ!」

 

「まぁ大きければいいって問題でもない。Eぐらいがちょうどいいぞ。うん」

 

この人一体何様のつもりなんだ…、というツッコミはラルクの心の中にしまっておき、大人しくしておいた。イースとテリーは自分の先輩に当たるので、下手なことも言えない。イースはインテリ系の外見よろしく、むっつりスケベの鑑である。

 

「お前それ元カノのサイズだろ、まだ未練引きずってんのか」

 

「あっ!俺元カノの話知ってる!確か3年前に別れたっていう彼女ですよね!?プライドが無駄に高いイースさんが、彼女が遊び半分で誘ったチェス勝負で大人げなく本気になって口を挟んで惑わせたり、馬鹿にしたり容赦なく全勝負でボッコボコにして泣かれて振られたってやつ!」

 

「お前何でそれ知って――――――――!ッテリーー!!お前話したのか!?」

 

「あ?ああ。あの後お前が俺を無理矢理付き合わせて酒場でヤケ酒して号泣して自分で自分の眼鏡割ってた話もな」

 

「何で胸のサイズ言っただけで元カノに結び付けるんだよ!一言も元カノの話はしてないだろ!」

 

「あぁ?何言ってんだよ鏡見てこい。クッソ自慢気な顔してたぞお前」

 

「アッハハハハ!ひーっ!それそれ!昔からテリーさんっに、眼鏡壊されるとかボヤいてたのに、あの時は自分で破壊してたんスよね!?」

 

「あぁ、涙拭こうとしてとった時に、割と本気だった彼女に振られた悲しみに駆られたのか、絶叫し涙しながら眼鏡握りつぶしてた。ちなみにその眼鏡は彼女が付き合って1年目の記念にくれたプレゼントだそうだ。アホな奴だぜ。普通泣かせるまでするか?よっぽど負けず嫌いなんだろうな。プライドが無駄に高い所彼女に見せつけてどうすんだよ。嫌われるに決まってんだろ」

 

「ぶっはっ!ふっ!くくくっ!ちょっとイースさんテリーさんっ……!笑わせないでくださいよっ!」

 

イースにとってはとんでもない古傷に塩をぬられる話題である。イースがデータ収集している間に喫煙室で聞いた話だ。アンディは爆笑したのを覚えている。傍聴と傍観を決め込んでいたラルクだったが、面白すぎるのでつい反応してしまった。いかんいかん、と気を取り直し、再びスミラの家を監視するが、込み上げてくる笑いにしばらく耐えられそうにもない。アンディも思い出し笑いが爆発し、仕事中というのをすっかり忘れ腹を抱えて笑う。そのアンディの笑い方がまた気を抜くと釣られる笑い方なため、ラルクの神経は、笑いをこらえるのに全力を尽くしている。だから気が付かなかった。この場にあり得ない声が聞こえるのが。

 

「アヒャヒャヒャヒャ!!ハハハハハ!!ハー!ハヒッ!えっほゲホッゴホッ!!ゲッホ!」

 

「ねぇ君達」

 

「おい!!相方のプライベートをペラペラ喋るな!お前仮にも諜報機関勤務だろ!!!」

 

「ちょっと」

 

「あ?知るかよ。お前があまりにも面白い振られ方するのがいけないんだろ」

 

「えぇい黙れ!昔からそうやってお前はいつもいつも僕の事を馬鹿にして!!」

 

「聞いてる?」

 

「お前がネタになる身の振り方するのが悪いんだよ。いい加減学べよ」

 

「おーい」

 

「貴様ァアァア!!昔からそうだが、もう今日という今日は許さん!!報いを受けるがいい!直水清閃!アクアゲイザー!」

 

「おわっ!!っっぶね!!」

 

「え…――――――――」

 

バシャーンッ!と水が弾ける音が鳴る。

光術が得意なイースが速攻で詠唱し術式を完成させ発動させたのだ。手から作り出した光術陣が弾け、一直線の放水となりテリーに向かっていったが、元々反射神経のがよく、相方イースの術なんぞ見慣れている彼は一瞬で横によけ、事無き事を得た。しかし、その後ろにいた人物には思いっ切り当たる。テリーは身長もガタイも大きいので、後ろにいた”彼”にとって完全に死角からの攻撃である。

 

「いきなり何すんだよこの馬鹿がっ!」

 

テリーはイースに思わず抗議するが、肝心のイースはというと、

 

「あっ、ああぁぁぁぁしれ#$%&’|{*?!!!」

 

言語化できない意味不明な言葉を発した。

 

「あっ……」

 

アンディは思わず口を閉ざした。

 

「ん?何だ?」

 

「あぁ?」

 

テリーとラルクが振り返るとそこには、全身ずぶ濡れで水滴を髪の毛からポタポタと垂らしながら、自分達の絶対的な上司でありこの国で最も権力を持ち、崇高である皇帝が立っていた―――――――。

 

「……………へくしっ」

 

「うおっ!?フレーリット司令!?」

 

「フレーリット皇帝陛下!?」

 

「そう、君達の司令で皇帝のフレーリットだけど」

 

テリーとラルクの問いにあっけからんと答え、彼は水に濡れ張り付いた前髪をうっとおしそうに振り払った。その時に見えた銀色の瞳は、確実に怒っていた。

 

「うっうわぁぁあああああああああしっしれ!皇帝陛下ぁぁあああああ!!!あぁぁあああぁぁあああああ!!誠に!!誠に申し訳ありませんんんんんん!!!」

 

イースはその場でフレーリットの足元に、誰が見ても立派なスライディング土下座をした。

 

「司令ィィィ!?何でここに!?」

 

アンディがハンカチを取り出し、フレーリットに近づいたが、彼は急いで手で制した。

 

「いや、いい。お前は来るな。それにしても君達、人が聞いていないのをいいことに、あることないことペラペラとよく喋るねぇ」

 

ニコォ…と、先ほど話題に上がった張り付けたような笑みをうかべるフレーリットだが、いつもと全く違いオーラと目の笑ってなさが振り切れている。

 

「しッ司令!ともあれお風邪を引いてしまいます!!どうぞこちらのタオルを!」

 

「あぁありがとうラルク、助かるよ。それにしても酷いなぁ。ちょっとだけ君達の勤務態度を見学させてもらったけどさ、まぁ監視させててその人の話題が出ない方がおかしいんだけど、僕や僕の恋人をどうのこうの。別に僕の事は事実しかないからいいんだけど、スミラが汚されてる気分になるよ」

 

渡されたタオルで顔と頭をふきながらフレーリット答えた。ラルクは除外されるが、その他3人は思いっ切り語ってしまっている。

 

「す…すみませんでした…。でもスミラさん素敵だったからつい…。ってかやっぱり事実なんだ…」

 

テリーは頭をかき、とりあえず言い訳し最後は小声で言う。しかしフレーリットの視線は地面にダンゴムシのようにうずくまるイースに向けられていた。

 

「イース。君さ、勤務態度どうこう言う資格あんの?」

 

「返す言葉もありませんんんんんんんんん!!!どうぞ煮るなり焼くなり司令のお好きになさって下さい!!」

 

数分前の、大目玉を食らう、という発言を自ら実行しているイースのその姿にテリーはまたこれはいいネタになるな、とほくそ笑んだ。

 

「これからプロポーズしに行く男を全身びしょ濡れにするって酷くない?」

 

「へっ!?司令プロポーズするんスか!?」

 

「だから来たんだよ。ムード邪魔されたくないし、君達の今日の仕事を切り上げさせようときてみたらこのザマだよ」

 

「あぁぁぁぁぁあぁぁああ!!!僕は何てことをぉおぉっぉ!!!自決してお詫びしますぅぅっぅうううう!!」

 

「いや別にいいけど、許すけどさ。そんな簡単に自決されちゃ困る。君に自決されても解決しないし。でもちょっと寒いかな」

 

これで怒らないのだから、司令は器が広い、とラルクは思った。これがトーダさんだったら恐らく自分達は厳重注意の上、始末書書かされるか、上司の顔に泥を塗ったとして部下解任、皇帝及び司令直属の地位を剥奪されてしまう。よくてボーナスカット、または出向だ。というか最悪クビ案件。上司の上司であり、アン・ピア最高司令官フレーリットに泥ではなく水を思いっ切りぶっかけたわけだが、フレーリットは烈火のごとく怒ったりはしていない。むしろ許すと言っている。上司でなくても、皇帝陛下なので立派な不敬罪及び、一歩間違えれば皇帝殺人未遂で死刑にされてもおかしくないのに。

 

「ヨッ司令!!水も滴るいい男!」

 

「お前はもう黙れ」

 

相変わらず余計な口しか開かない後輩アンディの口を押さえつけ、両足の脛を蹴り飛ばし、サイレンス、と光術を唱えた。ぐぎゃぁあ、と一瞬悲鳴をあげ、そのあと口を押えてのたうち回るアンディ。かけた術は詠唱をさせなくする光術封じの補助技だが、 とりあえずこれ以上喋らせると先輩である自分にも降りかかりそうなので仕方がない。

 

「イース、早く光術で乾かして。君光術得意でしょ。僕そんなに炎系得意じゃないんだ。そしたら許してあげる」

 

「今すぐに!ただちにやらせていただきます!!テリーもぼさっとしてないで!結晶屋から炎結晶買ってこい!お前は光術使えないだろ!」

 

「お、おう分かった。赤いやつ買ってくりゃいいんだよな」

 

自分は難しい光術理論や使い方等はさっぱりなので、大人しくイースの指示に従い、商店街の結晶素材屋に走る。

 

「あっ!赤いやつだけじゃなくて緑のやつも買ってきてください!風結晶です!急いで光術簡易熱風ドライヤーで乾かさないと司令が風邪を引いてしまいます!ただでさえ今でもオーフェングライスは寒いのに!」

 

「頼んだよ~」

 

濡れた服を脱ぎながら、フレーリットはテリーに手を振った。

 

「んぐぅ~!しぇんふぁい!ひゅふほいへふらはい!!(んぐぅ~!先輩!術解いてください!!)」

 

「お前はしばらくそうしてろ!」

 

「うん、アンディはそのままでいいよ」

 

イースはオロオロと、脳内の火属性光術の引き出しを開ける。

 

「えーとえーと、バーンストライクに…、イグニートプリズンだろ…、あとそれからブレイジングハーツ…、じゃ流石に火力強すぎだよな…」

 

「それじゃ司令も司令の服も丸焦げになるでしょ!なんで攻撃術基準で考えてるんですか!簡単で本当に基礎的な術使ってくださいよ!攻撃用にしないで!」

 

「いっ今まで光術は戦闘にしか使ってこなかったから、応用の仕方がいまいち分からない!」

 

「イースさんはじゃあもう手に炎宿しといてください!俺がそれ応用して最小タービュランスで熱風作りますんで!」

 

「早くしてくんない?そんなにクビ切られたいの?」

 

 

 

「というか服乾かすよりも、着替えた方が絶対早いだろ!!プロポーズするなら、軍服よりビシっとしたスーツだ!!おい仕立て屋のじぃさん!!出張代とスーツ代の領収書は全部イース・ケレンスキーって書いてくれ!出張クローゼットやその他の荷物は俺が運ぶから、今すぐ大体身長大体185前後で細身の男に似合いそうなビシっと決まったスーツ一式持って来い!あぁ!?今から風呂!?知るかよ国の未来がかかってんだよ!あと俺らの人生もな!」

 

イースは結晶屋に行く前に通りかかった老舗紳士服店に押し入り、店主の男性老人と荷物を担ぐ(老人は誘拐に近い)と急いで引き返した。

 

 

 

ビーッという呼び鈴に、スミラは慌てて料理の手を止めた。あとほんの少し煮込むだけで完成しそうなのに。

 

「もう…だれよこんな時間に…」

 

カチッとコンロの火を止めると、スミラは1階への階段を降りていく。店は閉めているし、フレーリットも仕事で忙殺されているはずである。その他考えられる人物としたら、まさかまたあの部下だったりする?きっとそうだ。納品がこの時間に来るはずもないし、何か宅配を頼んだわけでもない。スミラはデジャヴを感じつつ、扉を開けた。

 

「残念ね、フレートはここに来てないわ――――――、ってフレート!?」

 

「スミラ~!あぁ~スミラ~!会いたかったよ~!ずっと会えなくて僕死にそうだった~!!」

 

扉を開けるとそこにはスーツ姿の恋人が立っていた。いつも適当に着こなしている軍服の上に適当にロングコートを着てくる恰好とはまるで違い、スミラは驚いた。

 

「ちょ!ひゃぁ~!?いきなり抱き着かないでよ!というか何よその恰好!」

 

「え?ああちょっと。アレ。部下の仕事視察するっていう仕事みたいなのしてたから。その仕事帰りみたいなもんだと思ってて」

 

流石に部下に全身ずぶ濡れにされて、プロポーズ大作戦をせめて成功させるために、という経緯を話すのは面倒で仕方がなかったので、フレーリットは適当にごまかした。スミラに仕事についての話はしないので彼女にはさっぱりである。あっさりと信じたようだ。

 

「もうっ!ちょっと離しなさいよ!」

 

「やだ、離したくない、スミラ抱きしめてると落ち着くんだもん。いい匂い。愛してるよスミラ」

 

「…う~…、そ、そう……?」

 

スミラはいい匂いと言われて別に満更でもないが、少々照れくさい。フレートも、彼女の何に惹かれたと聞かれれば間違いなく匂いとその飾らなく、見ていて飽きないお転婆さと、破天荒な性格である。(実際にアンディの勘は当たっていたといいことになる)

 

フレートは体勢を変え、スミラを後ろから抱きしめて髪と首筋に顔をうずめた。

 

「僕の癒し~…スミラ~あぁ~…ホントいい匂い…」

 

「アンタは、なんか、普段とちょっと違ってタバコ臭くないわね」

 

「ん~?あぁー、この服着てからは1回もタバコ吸ってないから、だからかな?」

 

「そう…なんだ…。ふーん……、まぁ私もアンタの香り、嫌いじゃないわよ。タバコの匂いはすっごく嫌いだけど!!」

 

「スミラと会う前や会ってるときは吸ってないでしょ。あ、今日は会う前に吸ってきちゃった…。でもそこまで言われると、ちょっと禁煙考えちゃうなぁ…」

 

「私に惚れてるなら禁煙ぐらい楽勝でしょ?」

 

「スミラと一緒にいる時…はね。でも仕事中とかイライラした時はどうしても我慢できなくて」

 

「なら私が一緒にいればいいわけ?」

 

「えっ!勿論だよ!四六時中一緒にいればそりゃもう喜んで禁え…」

 

「は?甘えたこと言ってんじゃないわよこのアリマキ。何で私がそこまでしてアンタ自身の努力でどうにかなる問題に協力しなきゃいけないわけ?身の程を知りなさいアブラムシ風情が」

 

「うーんこの毒舌っぷりもなんか懐かしい…」

 

アブラムシ…、と苦笑いしフレートは心の中で微妙な気持ちになったが、スミラからの罵倒はこれが初めてではないし、最初はクソ虫呼ばわりであった。名前すら呼ばれなかった時に比べれば今は幸せな方である。それにそれこそ何も言われず無視されたり、冷たい反応をされるよりかは構って貰う方が断然嬉しいので、フレートはまったく気にしない。むしろ久しぶりにスミラらしい所を見れて嬉しい。

 

自分が甘えられる相手は、この世でスミラだけなのだ。甘えて何が悪い、と開き直り、思い存分愛しの彼女に甘える。母は僕が幼い頃から何かと苦労してきた。僕に父親はいない。生まれた時からいない。叔父に虐げられつつ、懸命に息子の自分を守りここまで育て上げ、立派にしてくれた。疲れている母に甘えて迷惑はかけたくなかったし、我慢を貫き通した。時々父を思い出し、静かに泣いている母に何か出来ないかと無力な自分に腹が立ったものだ。少年時代も、青年時代も、甘える相手が誰もいなかった。全部周りが敵に見えたし、愛が何なのかさえ分かってなかった。

 

スミラの前でこうして素直になる自分は、きっと今まで隠し、表に出さなかった自分の本性や弱みなんだと思う。弱みを見せたら、寝首をかかれるかもしれない、強請られるかもしれない。そんな心配微塵にもスミラからはないのだ。だって彼女は、田舎出身の娘で、皇帝家のような身内同士の骨肉の争いとは全く無縁だったのだから。

 

「ねね、スミラ、夜ご飯食べさせて」

 

「えぇ~!?アタシの明日の朝食なくなっちゃうじゃない!」

 

「頼むよ~ね~ぇ~。スミラのご飯が食~べ~た~い~!」

 

後ろから腰にがっちりと手を回され、ゆさゆさと左右に振られる。こういう甘えてくる時の仕草だけは、素直で子供っぽくてつい流され許してしまう。

 

「もう分かったわよ、しょうがないわね…。今日だけ特別よ」

 

「やったー!」

 

フレートはスミラを解放すると待ちきれないといった様子で勝手に2階へ駆けあがって行った。

 

「まぁいいわ…。久しぶりの再会だし、許してあげる」

 

「ねぇ今日の夜ごはん何!?」

 

「ロールキャベツよ」

 

「ホント!?僕それ大好きだよ!」

 

「アンタ何でもそう言って食べるでしょ。ちゃんとチョコクッキーもあるわよ」

 

「最高!スミラわかってる~!」

 

 

 

フレートはスミラの料理を食べていてうっかり忘れそうになったが、今日ここに来たのはプロポーズの前に、どうしてもハッキリさせておきたい事があったからだ。トーダから受け取った調査報告書。それに書いてある事は本当なのか。本人に確かめなくてはいけない。場合によっては彼女を保護しなくてはいけない。それでなくても、世界で一番大切な存在なのだ。彼女の真実を知って、きちんと理解し、話し合っておきたい。

 

「美味しかった~…、また食べたいなぁ。このロール何とか」

 

「ロールキャベツ、ね。ほら、食器片づけるの手伝ってちょうだい。自分のは自分で運んで。別に洗わなくてはいいから。どうせ割るでしょ」

 

スミラは自分の分のお皿を持つと席を立ち、キッチンへ向かう。

 

「う…ご、ごめん」

 

フレーリットも食器を持ってその後を追いかける。いつ話を切り出そうか、そう思っていた。

 

(確か本名はレイシア…だったよね…)

 

「いいわよ。仕事忙しかったんでしょ?ゆっくりして行って」

 

「ありがとうスミラ…。……いや、レイシア…って呼んだ方がいいのかな」

 

言い終わる前に、ガチャン!!と音を立て、食器が無残に割れた。スミラの持っていた食器は床のフローリングに破片として散らばり、料理の残りスープが広がる。

 

「な……んで。アンタがその名前を――――――――」

 

スミラは恐る恐るフレーリットの顔を見た。どうしてその名前を知っているのか。それを知っている人間は家族と村の人間だけ。スミラの額に、ブワッと嫌な汗が流れる。そして同時に思い出す。父から脅しのように話されたあの話が嫌でも脳裏をよぎる。

 

『お前の血は、首都へ行き、万が一バレたりでもしたら必ず捕まる。軍や研究機関、そして皇帝にでも見つかってみろ。一生奴隷として生きる人生の幕開けた。父さんの一族は治癒術こそ使えないが、再生の力だけは優れている。それを利用されないという保証はどこにもないだろう!』

 

あの時は若さ故と、夢を全否定されたせいもあって、父親に酷く反発していた。バレなきゃいい、何でそこまで言われなきゃいけないんだ、と、ムキになっていたのだ。

 

「ごめん、調べさせてもらったよ。君の出身はシューヘルゼだそうだね。そこに部下を派遣させて、ちょっと、ね」

 

「た、確かにシューヘルゼ村出身だけど、それが何だっていうのよ!?デタラメ言わないで!私は、私は!スミラ・フローレンスよ!!」

 

スミラは誤魔化すように、急いで割れた食器を集めた。フレートもしゃがんで割れた食器を集めるのを手伝うが、スミラに手をひっぱたかれる。

 

(何で、何で何でよりによってこいつ皇帝(こいつ)にバレてるのっ!)

 

「いいっ!自分でやるから!全く、バカバカしい!今度変な事言ったらただじゃ―――いっ!!」

 

プツン、と指の先から血が滲み出た。焦るあまり、破片を指先でうっかり鷲掴みし、すっぱりと切ってしまったのだ。切り傷が付き、血は止まらない。

 

「あぁっ…もうっ!さっ最悪…っ!全部フレートのせいっ…きゃ!」

 

怪我をした右手を腰の後ろに隠す前に、フレートがそれを素早く掴んだ。手首をしっかりと掴み、注意深くその怪我をした人差し指を観察した。

 

「いやっ!!何するの!離しなさいバカフレート!」

 

スミラは酷く焦った。このまま1分でも放っておけば、外傷の傷などあっという間に治ってしまう。捻挫や打撲より、外傷は治るのがとてつもなく早いのだ。

 

「誤魔化しても無駄だ。今まで気づかないと思ったのか。捻挫に薔薇の棘、僕はそんなに鈍感じゃない」

 

鋭く射貫かれるようなその視線に、スミラは溜まらず、泣きそうになる。

 

「スミラ、真実を話してくれ。僕は君を――――――」

 

フレートの真剣な眼差しは、焦燥と恐怖で支配され冷静を失ったスミラにとって戦慄以外の何物でもなかった。

手を引っ込めようにも、強く掴まれ決して離れそうにもない。それでもスミラは激しく抵抗した。

 

「痛いっ!痛いぃっ!離して!離してってばぁ!!」

 

「落ち着いてスミラ!どうしたんだ!」

 

「今まで私を騙してたの!?愛しているって言ったのは嘘なんでしょっ!私の力を利用するた――――――あっ、ああっ!」

 

指先の痛覚が、消えてきた。スミラは恐る恐る人差し指を見ると、そこには自らの体から生み出されるエヴィで傷を瞬く間に修復していく光景だった。自分の意志とは関係なく、それは発動してしまう。

 

「…っ!これか―――――!」

 

「いやぁ!!」

 

「ぐッ!?」

 

スミラはあまり手を出さないと心得ていたが、とうとうフレートの顔にビンタし、急いでその場から離れる。フレートは尻もちをついて倒れた。

 

「いやっいやっ!もういやっ!貴方とはいられない!さようなら!」

 

「スミラ!!待ってくれ!落ち着いて僕の話を聞いてくれ!」

 

「貴方と話すことなんて何もない!今すぐ私と別れて!この家から今すぐ出て行ってぇぇぇぇええー!!!」

 

スミラは頭を抱えて叫んだ。愛していたのに、本当に彼の事を愛していたのに!!

全部全部自分は騙され、手のひらの上で踊らされていたのだ。この目の前の男によって―――――――――!

 

「お願い出て行って……!お願いっ…お願いよ…!」

 

涙をぼろぼろとこ零し、スミラは荒れた息をゼイゼイと吐きだす。

 

「…、分かった。出ていくよ……」

 

フレートは目を伏せて立ち上がり、スミラの言う通りにした。そうでもしないと、彼女はますます興奮するだろう。

 

「もう二度と来ないでっ……つぁっ!?」

 

頭を両手で抱えて項垂れる彼女の隙をつき、フレートは素早く首の後ろに手刀を入れた。ガクンッと前に倒れこむ彼女の体をそっと抱きかかえる。

 

「ごめんスミラ。手荒な真似して。あとでビンタでも蹴りでもどんな制裁は受けるよ。一旦落ち着いてほしい。僕も悪かったよ、問い詰めるような言い方して」

 

聞こえてはいないだろうが、彼女にこんな手荒な真似をしてまで興奮させ、何も考えず迂闊に話を切り出してしまった自分の無神経さを反省した。彼女は自分とは境遇が違うのだ。バレたら人生の終わり、そう教えられていてもおかしくない。

 

「どんな君でも愛しているから。そして守るから――――――」

 

 

 

『お母さん!見て~!』

 

『まぁ素敵ねレシー。とっても上手に作れているわ、その花冠!』

 

『えへへっ、お母さんにあげるー!』

 

『あぁ何て可愛いのかしら、私の娘レイシアは!』

 

『2こ作ったんだよ!お父さんにもねー、これあげるの!』

 

『きっと凄く喜ぶわ。こんなに可愛い娘からのプレゼントなんですもの。可愛いレイシア、貴方を愛しているわ。どこにも行かないでね、お母さんとお父さんがずっと守ってあげるから――――――』

 

『ありがとうレイシア。父さん嬉しくて泣いちゃいそうだ』

 

ふわふわとした夢現の中、声が聞こえた。もう何年前になるのだろう。母の暖かな温もり、父の大きな背中と腕の中。故郷シューヘルゼの花畑で作った花冠を、両親にプレゼントし、褒められた。母とそっくりな赤いつり目をくりくりとさせた娘を、父は愛おしそうに抱き上げ、頬にキスをした。

 

『貴方は私達の愛の結晶、宝物よ。ずっとずっと愛しているわ、レイシア……』

 

『愛しているよ、可愛い私の娘、レイシア…』

 

お母さん、お父さん…。手を伸ばし、その温もりを受け入れようとすると、それはまるで黒い霧のように消えた。そして聞こえてくる、聞きなれたアイツの声。

 

『スミラ、愛しているよ。この世で一番、君を愛している』

 

『いたた…、アハハ、手が早くて足癖も悪い、スミラのそんな所も、僕は愛してる』

 

『身分なんか関係ない。僕はスミラ・フローレンスという女性ただ一人を心から愛しているんだ』

 

スミラ、スミラ、スミラ、飽きるほど私の名前を呼び、愛していると囁くフレート。無邪気な笑みを浮かべ、微笑みかけてくる。

 

『命に代えても、君の事は守るから』

 

『ずっとずっと愛してる。スミラの全部が好きだよ』

 

『僕の可愛いスミラ…』

 

『ダメよ、私は貴方とはいられない。身分とかそんなんじゃない。ダメ、もうとにかくダメなの。私達は終わりなの!!』

 

それでも、そのフレートが差し出してくる手を、掴みたいと思ってしまう。

 

『僕の事、無理に愛してくれとは言わない。強要したりはしないさ。それは真実の愛って言わないだろ?』

 

『違う!!フレートの事!本当に愛してるっ!愛しているから!どうしていいか分からないの!!』

 

『簡単な事だよ、僕の手を取ってスミラ』

 

『でも私はスミラじゃないっ、私はっ!私はぁっ!』

 

『どんな君でも、愛してる。受け入れるよ』

 

『ほ…んとに…?』

 

『勿論。むしろ今更何言っ――――――』

 

フレートの姿がぼやけ、黒い霧になっていく。掴もうとした手は消え、フレートが消えてしまう―――――!

 

『待って!行かないで!フレート、フレートォ!』

 

 

 

「──────っ!!」

 

スミラはバっと体を起こした。

 

「うわっ!?」

 

聞きなれた声が聞こえた。男の声だった。

 

「っ!!ハァッ…はぁっ…、ここ…は…?」

 

辺りをきょろきょろと見回し状況を確認する。見慣れた自分の部屋でも部屋でも、リビングでも、花屋でもない。さっき見ていたさっきのものは夢だったのだ。しかし、右も左も、青。そして地面を青だった。そして右には銀色の瞳に、紫紺色の髪の神を揺らし、こちらを見つめる男がいた。それは紛れもない、フレートだった。

 

「びっくりした。いきなり飛び起きるんだもの。ここはスミラと僕だけの場所、セルドレアの花畑だよ」

 

ふっと笑い、フレートは顔を近づけてきた。

 

「フレー…ト……?」

 

「あ、大丈夫?落ち着いた?」

 

彼は顔を近づけてきてスミラの顔を覗き込む。

 

「…ッきゃ!」

 

スミラは慌てて顔を引っ込めて離れた。一気に顔に熱が集まるのが分かった。

 

「あっ、ごめんごめんいきなり。でもうっすら涙流してるし、まだどこか傷むかい…?首は大丈夫?」

 

「いっ、いや!何もない!何でもない!……わよ!」

 

「そう?本当に?」

 

「ええ全然!どこが痛いのかこちらが聞きたいぐらい……」

 

そう言いかけた途端、頭が覚醒していき何が起こったのかを思い出した。

 

「そうよ…私は確か…」

 

フレートと夕食をとり、そこまでは良かった。その後彼に自分の正体がバレたのが分かり、錯乱してしまったのだ。

 

「ここなら、スミラも落ち着くかなって」

 

自分の夢を叶えてくれた場所、セルドレアの花畑。時間帯も恐らく夜、いや恐らく深夜に近い。しかしスヴィエートは万年月明りが明るいため、夜でもはっきり分かる。木々にも囲まれていないため、幻想的に月明りに照らされ輝きを増すセルドレアが辺り一面にあった。

 

「綺麗……」

 

「でしょ?空気は澄んでるし、景色も綺麗。これなら落ち着いてスミラと話せるね」

 

スミラの隣に移動し、刺激しないようにフレートは話を切り出した。

 

「スミラ、僕はどんな君でも愛しているよ。僕にとってスミラはスミラだ。レイシアっていう名前の可愛いけど、僕にとってのスミラは、今目の前にいるスミラだから」

 

「あっ、ああっ…、アンタ…私の本名知って…!能力も知って…!」

 

スミラは思わず先ほど怪我をした指を隠した。

 

「うん、全部知ってる。だーいじょうぶ、とって食いやしないよ!何吹き込まれたか知らないけど、僕はツァーゼルみたいな奴とは違うんだ。闇皇帝ってのを気にしてるんだったら、僕は決してそんなことはないって信じてほしい、それにさ」

 

「それに……?」

 

「命に代えても守るって言ったでしょ。スミラの事、全て愛しているんだ。それぐらいさせてよ」

 

「ま…守る…?」

 

スミラは隠した指を恐る恐る解いた。警戒心が薄れていくのが自分でも分かる。

 

「利用しないの…?私を騙してないの…?」

 

「当たり前じゃないか。逆に最初からその気で近づいてたら、こんなに回りくどいやり方しない。すぐに薬でもなんでも嗅がせて、城に連れて行けばいい話でしょ」

 

「……、確かに。そうね…。私、ごめんなさい。フレート、本当にごめんなさいっ。酷いこと言って、叩いたりしちゃって…!」

 

「大丈夫大丈夫、僕にとってむしろご褒美だから!」

 

といって、勢いよく立ち上がった。

 

「あ…そう…」

 

変わらぬいつもの調子を見せるフレートに呆れつつ、スミラも立ち上がる。

 

「君を守るよ。でも守るためには僕の目の届く範囲にいて欲しい」

 

「何それ、私に自由はないって言うの?」

 

「違う。いいかスミラ。もう間もなく、スヴィエートはロピアスと戦争をする。今までずっと仕事で忙殺されてたのはそのせい。本当に始まるんだ」

 

フレートの雰囲気が一気に変わり、スミラの目をじっと見つめた。

 

「せっ、戦争……。それは…」

 

「そう。万が一って事もない。この世に絶対なんて事はないんだ。スヴィエートで一番安全な場所は、皇帝の僕がいる城だ」

 

「城に……、行けばいいの?保護してくれるの?」

 

「うん、僕の目の届く範囲、でしょ。ただしそれには条件がいる。ただの一介の平民を城になんて呼べるわけないし、使用人達や警備軍も納得しない」

 

「じゃぁ…どうするのよ…?」

 

スミラは遠まわしな言い方に眉をひそめた。フレートは、いまいち鈍くて分かっていない可愛い様子にフッと笑いながらも、彼女左手をそっととり、膝まずいて薬指にキスをした。

 

「…スミラ、僕と結婚してくれないか」

 

「え――――――――!」

 

いきなり何をするのだ、と思いきや、フレートは、そう言ってきた。結婚してくれないか、はっきりとそう言われた。聞き違いではない、プロポーズの言葉をいわれたのだ。

 

「勿論、今すぐに結婚式は上げられない。婚約してほしい。僕の婚約者になってほしい。そしていずれ結婚しよう、僕は君と生涯をともに生きたいんだ。これ、受け取ってくれる?」

 

驚きすぎて言葉が出ないスミラにたたみかけるように、フレートは小さな箱を取り出し、開けて中を見せた。

間違いなく、婚約指輪だった。

 

「あっ…ああっ…あぁぁッ…」

 

スミラは込み上げてくるものを、我慢できなかった。大粒の涙が零れ落ち、セルドレアの花びらにポトリと落ちる。

 

「スミラ、愛してるよ。この世で一番、君を愛してる。だから僕の妻になって下さい」

 

「うっうぅぅっ!うううっ!うわぁぁぁぁぁあぁん!!!」

 

「えええ、マジ泣き…!?」

 

わんわんと声を上げて泣くスミラにフレートはおろおろと慌てた。

 

「うんっ…うん…いいわよっ…!アンタみたいな人の面倒を見れる人なんてっ…ひっく、私にしか出来ないだろうし!」

 

「うんうん」

 

「私を惚れさせたんだから責任取りなさいよー!!いつもと恰好違うのも、プロポーズする予定だったからなの…!?」

 

「勿論」

 

「うぇぇ…うっ…ひっく…、フレートの…馬鹿…。今日だけで何回婚約者泣かせてんのよ…!」

 

「ふふふ、でも今は嬉し泣きでしょ?僕も嬉しいよ」

 

「うっ、ふぇ…うぅぅうわぁぁん!」

 

「凄い涙。僕も釣られて泣きそうだよ」

 

「愛してる…!私っ……、フレートの事っ…!この世で一番愛してるっ…!からぁっ!」

 

「ありがとうスミラ。僕今、最高に幸せだよ」

 

ざぁっと風が吹き、青い花びらが夜空一面に舞った。思えば、ここで半年前程にスミラに想いを伝えたものだ。

人生の危機も、人生で緊張する時も、人生で一番幸せなときも、この花畑だった。

 

「いつか、子供が出来たら、またここに一緒に来ようね」

 

「気…早いけど…、うんっ…そうしましょ…。約束よ、フレート」

 

「ああ、約束だ」

 

スミラには自分が、自分にはスミラが指輪をつけてくれた。不思議なことに、両者サイズピッタリであった。そういえば、このことだったのだ。母が言っていたのは。特殊な光術が施されており、指輪をはめた者にぴったりと合う。

 

「アイオライトって言ってたかな。母上がくれたんだ」

 

「綺麗…。とっても…」

 

スミラはうっとりとその銀の指輪を見つめた。小さくアイオライトの宝石が飾られていて、月夜に照らされる。

 

「僕達が年をとって、おじいちゃんやおばあちゃんになっても、一緒にいよう。またここに来よう」

 

「えぇ…」

 

「ずっと一緒にいよう。スミラ。墓だって一緒さ」

 

「アハハっ、そうね…。随分先の話でしょうけどね…」

 

「一緒の墓で眠ろうスミラ。愛してるよ。この先もずっと、愛してる」

 

「私も、愛しているわフレート…」

 

自然と互いの唇が近づき、キスを交わした。願わくば、この幸せが一生続いてほしい、この時、この瞬間をずっと止めておきたい。

それは叶うはずもない絵空事だが、フレートは心からそう思った。

 

やっと真実の愛を見つけたのだ。やっと心から愛せる人が見つかったのだ。幸せになりたい。スミラを幸せにしてあげたい。

そう思うのは、罪なんだろうか。

 

叔父や、叔父に買収された士官学校の同級生を殺した。

オリガやヴェロニカの家系、レイシュマンの血筋を滅ぼした。

そしてこの先も、戦争で多くの命を奪うだろう。それでも、人間の欲というのは止まらない。愛されたいし、幸せになりたい。子孫を残したい。

壊された10代の闇の時代でしかなかった思い出を塗り替えて、全て何もかも幸せになりたい。愛する人との子は、どんなに愛しい存在だろうか。

 

裏切られたくなかった。

今まで散々、裏切られてきた。

 

叔父にも、同級生にも、オリガにも。自分が生まれる前なんて、父は親友に裏切られて殺されているのだ。

 

「もうこれ以上、裏切られたくないなぁ。幸せに、なりたいなぁ…」

 

 

 

 

 

 

 

「何で………、スミ……ラ…、何で……」

 

走馬灯が駆け巡る。ゆっくりと死に近づいていく感覚。腹と胸から血があふれ出し、止まらない。

 

僕の心臓も、もうすぐ止まる―――――――――。

 

(結局僕は、この世で最も愛した女性にも裏切られて、殺されるという結末か……)

 

泣き叫ぶ可愛いわが子の額をゆっくりと撫で、虚ろな目で見つめると、今までの記憶が全て走り抜け、わが子に流れ込んでいる、そんな気がした。

銀色の瞳は父親の僕譲りだが、目元はスミラに瓜二つだ。髪の色は自分の父親譲りのコバルトブルー。それは皮肉か運命か、あの運命の花セルドレアと同じ色。

 

(結婚式…あげたかったなぁ…)

 

死に際は妙に冷静になるものだ。戦争が終結し、落ち着いてからあげようと約束したウエディングドレスを着せるという約束。裏切られてなお、彼女に未練があるとは。

 

(ハッハハ…、僕、本当にスミラにベタ惚れだなぁ…)

 

横目で、生気のない瞳で立ち尽くす妻を見つめる。今更彼女に何故僕を裏切った、と、問い詰めるのは、ただただ虚しくなるだけだ。現実は変わらない。僕はスミラに殺された。それでも、本当にそれでも、最後まで気持ちは変わらなかった。

 

(ありがとうスミラ…、僕みたいな奴に愛を教えてくれて、子供を授けてくれて…。罰が当たったのかな…、叔父の呪いや、その他恨みを買うことはたくさんしてきた…)

 

 

 

今までありがとうスミラ。そしてアルス、2人共この世で一番、愛しているよ――――――――――――――――――。

 

 

 

フレーリットはそう最後に心の中で言い残し、27歳という短い人生に幕を下ろした。

 

 

 

子供と来ることも出来なかった。

おじいちゃんやおばあちゃんにもなれなかった。

死してなお、2人は共にはなれなかった。

 

セルドレアの青い花は散り、海へと風に流され、地平線のかなたへ消えてていく――――――――――――。




アイオライトという名前は「ion(スミレ色)」と「lithos(石)」という二つの単語を合わせた造語だといわれています。その名の通り、少しくすんだような、落ち着いた青紫色の天然石です。アイオライトの最も特徴的な点は、肉眼でもはっきりとわかる「多色性」にあります。多色性とは、見る角度や光彩によって色が変化して見える現象のこと。アイオライトを光にかざしながら方向を変えてみると、紫がかった青色、ごく淡い青色、灰色がかった黄色など、違う色あいを見る事ができるでしょう。

アイオライトは「誠実・貞操・徳望」を象徴する石。
その昔ヨーロッパでは、娘が少女から大人になった時に、両親からアイオライトを贈る習慣があったといわれています。淡い恋を卒業して、本当に誰かを愛する年頃になった時、迷わずに本物の愛をみつけられるように、一途な愛を貫いて幸せを手に入れられるように、という願いがこめられています。このことから、アイオライトは「結婚へ導く石」とも伝えられています。(http://www.natural-style.biz/powerstone/iolite.html参照)

ちなみにスミラ気絶から目を覚ますシーンは、本編のアルスとルーシェが初めて出会うときのやつまんま引用しました。(彼女との出会い、の話より)

あと勘違いして早とちりして、まくし立てるように感情を爆発させて怒ったりするスミラの部分は、何気アルスに遺伝してたりします。(性格は遺伝どうこう、とかいうツッコミはなしで)



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以下思い出


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以下あり得ない未来の挿絵

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以下雰囲気ぶち壊しネタ(本当にぶち壊すので覚悟してください)




















空前絶後のぉぉぉぉ!!!超絶怒涛のセクシー皇帝!!スミラを愛し、様々な女性に愛された男!!火遊び、見合い、純愛、すーべてのアルスの現代イザコザの生みの親!!!

そう!!この僕こそはぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!

身長186cm、体重73kg!
貯金残高、150兆とんで80万ガルド!(国家予算)
個人金庫の暗証番号、6974。
金庫は今、執務室に置いてあります!
スミラさーん!!今がチャンスです!
もう一度言います!!6974!!

ロクデナシって覚えてくださぁぁあぁあい!!!!


そう、全てを曝け出した僕はサンシャイィィィィィィィン!!!!!フ!!レェ!!ボゴォ!!!!リット!!!!!!!!!!

イェェェェェェェェェェェェ!!!!!ジァァァァァァァァスティス!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


アンディ・ボロトニフ(理想cv:KENN)
「最高に痺れるッス!!!司令ィィ!!」

テリー・コサレフ(理想cv:安元洋貴)
「何気肺活量すごいな」

イース・ケレンスキー(理想cv:杉山紀彰)
「司令体張りすぎ」

ラルク・ニジンスキー(理想cv:島崎信長)
「誰かに脅されてやったんですよね!?でなければ個人金庫の暗証番号なんて教えるはず無いですよね!?誰ですか!?脅した奴は!俺が今すぐ殺してきます!!国家予算を狙う輩め!!」

トーダ・ストフール(理想cv:黒田崇矢)
「疲れていれば、人間はっちゃけたくなる時いくらでもある」

スミラ
「うるさい」



頑張って過去最多の1話2万文字書いたんで感想落としてくれると死ぬほど嬉しいです。

死ぬほど嬉しいです。











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