テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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20年前へ

「どぉーだ!?参ったかー!!」

 

カヤのはナイフをクルクルと回し腰にしまう。クロノスはカヤの覇道滅封を受け戦闘不能になっていた。仰向けに倒れ、焼け焦げた歯車が周りに落ちている。

 

「くっ……くそ……!」

 

クロノスは起き上がろうと地面に手をつけたが、激痛に顔を歪めまた倒れた。

 

「……時をっ、戻せぬ……!馬鹿な、うぐぁっ!」

 

クロノスの胸はルーシェにの手によって攻撃されたエヴィがまだ侵食していた。クロノスはそれを押さえ付けるが、どうにもできなかった。

 

「この力…、やはり……!うっ、ぁあ!」

 

アルスは倒れたクロノスを見下ろした。

 

「……クロノス、俺達はある目的でここに来た。その目的を果たすためには、お前の力は必要不可欠だ」

 

「ハッ、我を、利用するというのか……?またしても、傲慢で、浅はかな人間の考える事よ……!」

 

「利用とまではいかない。俺は頼みたいんだ。力を少し貸して欲しい。協力して欲しい。……マクスウェルの行方を、お前も知りたいだろう?」

 

「っ!何故マクスウェルの事を……!?いや、そんな事は、貴様らがやらんでも我の手に十分に足りる事だ!我が……大精霊クロノスともあろうこの我が、人間に協力!?笑止!」

 

ガットがアルスに言った。

 

「はいそうですか、って協力してくれるわけねーか…。イフリートは何だかんだ言って結構協力的だったのに……。ったくプライドたけーな」

 

クロノスは目を見開いた。

 

「なんだと、貴様らイフリートと会ったのか……!?」

 

「ああ、会った。ガラサリ火山でな。今は火山の活動をしばらく制御してくれている。封印も勿論解いてある」

 

「イフリートが貴様ら人間に協力……!?奴は一体何を血迷って…! っ!貴様……?」

 

「じっとして。今、これ治すから……」

 

ルーシェはアルスとガットを追い越し、クロノスの元にしゃがみこんだ。そして胸に手を当て、黒く侵食するエヴィに手をかざし始めた。

 

「ルーシェやめろ!また襲ってくるかもしれないんだぞ!」

 

アルスはルーシェの手を掴んだ。しかし、ルーシェは無視した。黙って傷を癒し始める。

 

「……また襲ってきたら、また戦うだけだよ。でも、話し合う状況を作らないと。そうでしょ?クロノスが力が使えないと、私達どうしようもないしね」

 

「……甘いな小娘……、くっ、だがなんとか動けるようだ。感謝する……」

 

「お?何コイツ?意外と素直じゃないの?」

 

「貴様は黙っていろ」

 

「またこのパターンかよ!?」

 

ガットは「イフリートの時も同じようなことがあったぞ!」と憤慨した。クロノスはルーシェの治療している手をじっと見つめた。そして治療が終わり、ルーシェが手を引っ込めようとすると素早くそれを掴んだ。クロノスは目をつぶり、ルーシェの手を軽く握り締めた。

 

「っ!?何?」

 

ルーシェは一瞬だけ、体の中に何かが流れ込んでくるような感覚がした。ルーシェは警戒した目で睨みつけた。クロノスも目を開けて彼女を睨み返した。凝視、と形容する方がいいだろうか。するとクロノスは何かを確信したようだった。

 

「やはりな。ふ……はは、今ので確信したぞ。ハハハハハ!」

 

「はい……!?」

 

ルーシェは訳が分らない。何だか怖くなり、顔を引かせた。

 

「時は、満ち足り………!」

 

「あ?んだコイツ?いきなり笑い出して、頭イカレてんのか?」

 

「おい、ルーシェの手を離せ!」

 

「我はこの時をどれほど待ちわびたか!まだ完全には覚醒していないようだが、まぁいい、ハハハハハ!」

 

クロノスは立ち上がり、また空中に浮かんだ。

 

「訳が分からない!一体何の事だ!?」

 

アルスはルーシェを自分の後ろに追いやり腕でかばった。

 

「成程!愉快だ!我は全て理解したぞ!」

 

「おい!一人で何独り言言ってんだ!?」

 

ガットが叫んだ。

 

「よし我は気が変わった。話を聞いてやろうではないか」

 

一瞬場が沈黙に包まれた。先程まで頑なに断っていた態度をこうも180度変えてくるとは、一体どうゆうことだろうか。そして一人ずつ口を開く。

 

「は?え?いきなり?ルーシェに惚れたとかそんなんじゃないよね?」

 

「アハハ、何かこうも素直になられると、ネ…」

 

「ただの気まぐれなんでしょうか?」

 

「クロノスも随分と愉快な方ですわね?」

 

「いいじゃないか、このポンコツ歯車精霊、小生達に協力してくれると言っているぞ?」

 

アルスは聞いた。

 

「どうゆうことだ、いきなり態度を変えてくるなんて」

 

「だから言っただろう?気が変わったとな。それに、マクスウェルの事は我も知っている。奴の霊勢は20年も前から、忽然と消えた」

 

「そう、それだ!俺達はそれがどこにいったのか、それを知る為に20年前に行きたいんだ!それを知てヒントを得られれば、現代の霊勢状況を元に戻せるかもしれない!」

 

「……成程。貴様らは現代に、マクスウェルのエヴィ循環システムを取り戻したいと?」

 

「マクスウェルは何者かによって捕らえられている。その呪縛の元を探り、そして現代で解き放つ。世界を在るべき姿に戻すんだ!」

 

何者か。アルスはその何者なのかは、予想がついていた。言うまでもない自分の父親だ。クロノスはまた笑った。

 

「くははは!在るべき姿……か」

 

「な、何が可笑しい……?」

 

「いや?何でもない……。そうかそれで?我にどうして欲しいのだ?」

 

「………だ、誰がマクスウェルの力を掌握しているのか、それを知る必要がある。そして……、出来たら俺個人の願いもある……」

 

「ほう、それは何だ?」

 

「………俺の両親の死についての、謎を解明したい。過去に行けば、何かが分かるような気がするんだ!」

 

「死……か。人間は不便なものだな…。まぁいい」

 

クロノスはアルスの銀の瞳を真っ直ぐに見つめた。

 

「ほう?興味深い…。貴様は恵まれているな。様々なエヴィを持っている…」

 

「……?様々なエヴィ?属性の光術が多用に使えるという事か?」

 

「ふむ……、貴様も微弱だが一応アレの血は受け継いでいるようだな……」

 

「アレ?何のことだ?」

 

アルスは気になって聞いたがクロノスは流した。

 

「いや?さて…話がそれたな。貴様らがマクスウェルの在処を見つけるというのを、我は手伝おうではないか?それから、過去を知るという所業をな……」

 

クロノスはアルス達に両手をかざした。

 

「しかし、忠告しておく。過去へ行くということは、人間にとっては禁断の事だ。時は人間が操ってはいけないもの……。無闇に過去に干渉しないことだ。その影響が現代に関わってくる事もある。貴様らの行いで、未来が変わるという事があるのだ。それが必然か、運命か、はたまた起こってはいけなかった事なのか、それは精霊の我にも分からぬ。いいか、よく覚えておけ。時は、人を待たない─────」

 

「うわっ!」

 

クロノスの両手が光ったと思うと、アルス達は眩い光に包まれた。そして何か異世界に入り込んだような、空気が変わった感覚がすると、クロノスの姿はもう消えていた。

 

「どうなったんだ…?」

 

アルスは辺りを見回した。いつのまにか入ってきたアーチ状の入口前に立っていた。

 

「とにかく、外に出てみない?」

 

カヤが言い大聖堂の中を歩き出す。基本的に変わったとは思えなかったが、大聖堂の椅子が以前より綺麗に見えた。

 

 

 

そして、外に出るとそこは紛れもなく──────。


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