テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜 作:平泉
「どぉーだ!?参ったかー!!」
カヤのはナイフをクルクルと回し腰にしまう。クロノスはカヤの覇道滅封を受け戦闘不能になっていた。仰向けに倒れ、焼け焦げた歯車が周りに落ちている。
「くっ……くそ……!」
クロノスは起き上がろうと地面に手をつけたが、激痛に顔を歪めまた倒れた。
「……時をっ、戻せぬ……!馬鹿な、うぐぁっ!」
クロノスの胸はルーシェにの手によって攻撃されたエヴィがまだ侵食していた。クロノスはそれを押さえ付けるが、どうにもできなかった。
「この力…、やはり……!うっ、ぁあ!」
アルスは倒れたクロノスを見下ろした。
「……クロノス、俺達はある目的でここに来た。その目的を果たすためには、お前の力は必要不可欠だ」
「ハッ、我を、利用するというのか……?またしても、傲慢で、浅はかな人間の考える事よ……!」
「利用とまではいかない。俺は頼みたいんだ。力を少し貸して欲しい。協力して欲しい。……マクスウェルの行方を、お前も知りたいだろう?」
「っ!何故マクスウェルの事を……!?いや、そんな事は、貴様らがやらんでも我の手に十分に足りる事だ!我が……大精霊クロノスともあろうこの我が、人間に協力!?笑止!」
ガットがアルスに言った。
「はいそうですか、って協力してくれるわけねーか…。イフリートは何だかんだ言って結構協力的だったのに……。ったくプライドたけーな」
クロノスは目を見開いた。
「なんだと、貴様らイフリートと会ったのか……!?」
「ああ、会った。ガラサリ火山でな。今は火山の活動をしばらく制御してくれている。封印も勿論解いてある」
「イフリートが貴様ら人間に協力……!?奴は一体何を血迷って…! っ!貴様……?」
「じっとして。今、これ治すから……」
ルーシェはアルスとガットを追い越し、クロノスの元にしゃがみこんだ。そして胸に手を当て、黒く侵食するエヴィに手をかざし始めた。
「ルーシェやめろ!また襲ってくるかもしれないんだぞ!」
アルスはルーシェの手を掴んだ。しかし、ルーシェは無視した。黙って傷を癒し始める。
「……また襲ってきたら、また戦うだけだよ。でも、話し合う状況を作らないと。そうでしょ?クロノスが力が使えないと、私達どうしようもないしね」
「……甘いな小娘……、くっ、だがなんとか動けるようだ。感謝する……」
「お?何コイツ?意外と素直じゃないの?」
「貴様は黙っていろ」
「またこのパターンかよ!?」
ガットは「イフリートの時も同じようなことがあったぞ!」と憤慨した。クロノスはルーシェの治療している手をじっと見つめた。そして治療が終わり、ルーシェが手を引っ込めようとすると素早くそれを掴んだ。クロノスは目をつぶり、ルーシェの手を軽く握り締めた。
「っ!?何?」
ルーシェは一瞬だけ、体の中に何かが流れ込んでくるような感覚がした。ルーシェは警戒した目で睨みつけた。クロノスも目を開けて彼女を睨み返した。凝視、と形容する方がいいだろうか。するとクロノスは何かを確信したようだった。
「やはりな。ふ……はは、今ので確信したぞ。ハハハハハ!」
「はい……!?」
ルーシェは訳が分らない。何だか怖くなり、顔を引かせた。
「時は、満ち足り………!」
「あ?んだコイツ?いきなり笑い出して、頭イカレてんのか?」
「おい、ルーシェの手を離せ!」
「我はこの時をどれほど待ちわびたか!まだ完全には覚醒していないようだが、まぁいい、ハハハハハ!」
クロノスは立ち上がり、また空中に浮かんだ。
「訳が分からない!一体何の事だ!?」
アルスはルーシェを自分の後ろに追いやり腕でかばった。
「成程!愉快だ!我は全て理解したぞ!」
「おい!一人で何独り言言ってんだ!?」
ガットが叫んだ。
「よし我は気が変わった。話を聞いてやろうではないか」
一瞬場が沈黙に包まれた。先程まで頑なに断っていた態度をこうも180度変えてくるとは、一体どうゆうことだろうか。そして一人ずつ口を開く。
「は?え?いきなり?ルーシェに惚れたとかそんなんじゃないよね?」
「アハハ、何かこうも素直になられると、ネ…」
「ただの気まぐれなんでしょうか?」
「クロノスも随分と愉快な方ですわね?」
「いいじゃないか、このポンコツ歯車精霊、小生達に協力してくれると言っているぞ?」
アルスは聞いた。
「どうゆうことだ、いきなり態度を変えてくるなんて」
「だから言っただろう?気が変わったとな。それに、マクスウェルの事は我も知っている。奴の霊勢は20年も前から、忽然と消えた」
「そう、それだ!俺達はそれがどこにいったのか、それを知る為に20年前に行きたいんだ!それを知てヒントを得られれば、現代の霊勢状況を元に戻せるかもしれない!」
「……成程。貴様らは現代に、マクスウェルのエヴィ循環システムを取り戻したいと?」
「マクスウェルは何者かによって捕らえられている。その呪縛の元を探り、そして現代で解き放つ。世界を在るべき姿に戻すんだ!」
何者か。アルスはその何者なのかは、予想がついていた。言うまでもない自分の父親だ。クロノスはまた笑った。
「くははは!在るべき姿……か」
「な、何が可笑しい……?」
「いや?何でもない……。そうかそれで?我にどうして欲しいのだ?」
「………だ、誰がマクスウェルの力を掌握しているのか、それを知る必要がある。そして……、出来たら俺個人の願いもある……」
「ほう、それは何だ?」
「………俺の両親の死についての、謎を解明したい。過去に行けば、何かが分かるような気がするんだ!」
「死……か。人間は不便なものだな…。まぁいい」
クロノスはアルスの銀の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「ほう?興味深い…。貴様は恵まれているな。様々なエヴィを持っている…」
「……?様々なエヴィ?属性の光術が多用に使えるという事か?」
「ふむ……、貴様も微弱だが一応アレの血は受け継いでいるようだな……」
「アレ?何のことだ?」
アルスは気になって聞いたがクロノスは流した。
「いや?さて…話がそれたな。貴様らがマクスウェルの在処を見つけるというのを、我は手伝おうではないか?それから、過去を知るという所業をな……」
クロノスはアルス達に両手をかざした。
「しかし、忠告しておく。過去へ行くということは、人間にとっては禁断の事だ。時は人間が操ってはいけないもの……。無闇に過去に干渉しないことだ。その影響が現代に関わってくる事もある。貴様らの行いで、未来が変わるという事があるのだ。それが必然か、運命か、はたまた起こってはいけなかった事なのか、それは精霊の我にも分からぬ。いいか、よく覚えておけ。時は、人を待たない─────」
「うわっ!」
クロノスの両手が光ったと思うと、アルス達は眩い光に包まれた。そして何か異世界に入り込んだような、空気が変わった感覚がすると、クロノスの姿はもう消えていた。
「どうなったんだ…?」
アルスは辺りを見回した。いつのまにか入ってきたアーチ状の入口前に立っていた。
「とにかく、外に出てみない?」
カヤが言い大聖堂の中を歩き出す。基本的に変わったとは思えなかったが、大聖堂の椅子が以前より綺麗に見えた。
そして、外に出るとそこは紛れもなく──────。