テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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平和条約締結

ラミルダ・カルデノーテ・ロピアス、もとい、ニックネームはレガルト。陽気で明るい性格で人懐っこくまるでアルスとはかけ離れた性格である。

 

平和条約まで忘れていたのかと、会議室に案内される時に聞いてみたが実は普通に覚えていたらしい。

 

流石に冗談だったか、と安心したがコイツの性格上ありえなくもなかったので一応の確認だ。

 

この銀髪で頭のてっぺんに1本くせ毛のように伸びていて、そして男の様な格好をしている人物がこの国の、ロピアスの女王なのだ。若いという点では俺と全く一緒だ。1歳年下のこの男女とどうやって話したらいいのか迷うところだ。

 

「ねぇねぇー、君僕の事知ってた?僕は君の事知ってたよー、噂程度だけど」

 

真正面から向き合い、最初に口を開いたのはレガルトだ。

 

「いきなり何を言い出すんだ」

 

会議室に連れられ、椅子に座り落ち着こうと思った矢先またおかしな話題を繰り出す。仲間達や護衛のノアはテーブルの周りに立っている。アルスの1番近くにいるのはルーシェとガットだ。2人はアルスの横にいる。

 

事実上これは首脳同士の会議であり2人の会話には関係上護衛の仲間達でも許可されない限り発言はできない。レガルトは、

 

「だってさ、君の態度からして明らか変な奴〜とか思ってたりして…。それと仲良くなるついでにお互いの事知っておこうかなって。自己紹介の延長線だよ、ぐふふ」

 

と、言いまたポテチとやらを食べる。

 

(おい、会議中ぐらいは控えろ…)

 

アルスは呆れてしまった。もしかして舐められているのだろうか?

 

「そうだな、少なくとも俺と会話する時はそれを食べるのをやめろ。会話が途切れるし音はするし見ていて不快だ」

 

「うわ、はっきり言うなぁ〜。ちぇ〜、堅物っていう噂は伊達じゃなかったか。ノア、あげるよ。発言はもちろん許可するから」

 

レガルトはポテチの袋をノアに差し出した。ノアは瞳を輝かせ、

 

「ありがとう。大切に保管する」

 

と言った。

 

「いや、別にいいよ食べて」

 

「一生大事にする…」

 

「いやいや、ポテチが腐っちゃうって」

 

このやり取りの様。側近のノアにベッタリで、仲がいいのか依存しているのか。多分後者だろうが。ノアもノアだ。お互いに溺愛しあっていると見える。ここまで変人な女王は歴代でこいつらだけなんじゃないだろうか。

 

「お前の噂か…。ハッキリ言って名前だけだ知っていたのは。それと女、そして王位を継いだのは17歳」

 

「おお〜よく知ってるね!そうだよ〜。僕、女の子なんだ〜」

 

いわゆる僕っ娘というやつだろうか。

 

「俺は初めてお前を見た時、本当に女か疑ったよ」

 

「うふふ〜、よく言われる。確かアルスは、ロピアス人に殺されてたって事になってたんだよねつい最近まで。それが何でか生きてて、丁度20歳の誕生日迎えて、前皇帝のヴォルフディアって人が病死したから皇位継承したんだよね。ここらへんはノアから聞いたよ。性格は堅物、慎重派。君のつり目の目つきは鋭くて、でも綺麗な銀色で、髪は青いっていうのが第一印象かなぁ〜」

 

「随分と知ってるな」

 

アルスは少し驚いた。適当なやつだが、きちんと把握はしているようだ。そうゆう態度を装っているだけなのだろうか?

 

「君結構有名だよ〜。殺害騒動もあったせいかもだけど。ほら、ねー、第二次世界大戦の宿敵の矛先になってるからね、一応。親の関係ってのが嫌でも付いてきちゃうからねこうゆう立場だと」

 

「じゃあ、俺のレガルトの第一印象は変な奴、だ」

 

「アハハー、君とはいい関係を築けそうな気がしないでもないかもしれなくもない」

 

「どっちだ」

 

「んー、じゃあ築けたらいいなぁーっていうことで、さて…」

 

レガルトは急に目つきを変えた。先程とはうってかわって真剣な表情だ。

 

「本題に入ろうか、平和条約だったよね?」

 

「ああ、そうだ」

 

アルスも真剣な目つきになる。

 

「んーとね、一応本音ズバッと言わせてもらうと舐めてんの?って感じ」

 

「だろうな。それは分かりきった事だ」

 

「ざっと親書は僕の目通したよ一応。でもね、鉄道爆破事件はスヴィエート人がやったっていう報告書が来てるんだよね」

 

「それは例のロピアス最高の情報組織、ハイドディレという奴か?」

 

「そうだよ」

 

「なら、そのハイドディレは嘘を付いているだろうな」

 

「…………どうゆうこと?」

 

レガルトは目を潜めた。ハイドディレはロピアス王立の最高の情報機関だ。いわゆる探偵組織のようなもので機密情報などもそこに募るであろう組織。そこの情報の信用度は王立というのだからロピアスで最も高く、お墨付きなのだろう。

 

にも関わらず、スヴィエートの皇帝にそう言われたら気分を害するのも仕方が無いのかもしれない。

 

「親書にも書いた通り、それはリザーガという組織によるものだ。俺の暗殺騒動も、全てリザーガが関わっていた、そのふざけた報告書を書いたのは誰だか知らんがそいつは明らかリザーガの回し者じゃないか?」

 

「そんな証拠、どこにある?」

 

レガルトは厳しい口調で返した。

 

「暗殺騒動以来俺は刺客に追われてね。国を追われるような形でスターナー貿易島に来た。戻ろうとしてもまた、命を狙われる可能性があるし、それに、その時点で島にはスヴィエート行きの船はなかった。入国禁止令が発布されていた。恐らく暗殺騒動の件を国外に知らせないため国境を封鎖した為だろうが、とにかく俺はスヴィエートに帰れなくなった。そこで仕方なく───」

 

アルスは今までの経緯をざっと説明し、そしてアジェスで聞いた話をした。ただ、国に帰れなかったのは少し嘘を付いた。ルーシェの事は今ここでいう必要はない。

 

「そのリザーガの、下っ端の下っ端だろうが、そいつの口を割らせるとロピアスの鉄道爆破事件はリザーガによるものだとハッキリ口にした。嘘だと思うなら拘留されている奴に聞けばいい。アジェス政府に問い合わせれば済むはずだ。そして、奴の情報によると本当は列車が走るタイミングで起爆するつもりだったそうだ。手違いが起きて幸い死者は1人も出ていないという奇跡だったがな。あのリザーガの者の発言は俺達の仲間も聞いている。これは事実だ。皆、発言を許可する、聞いた者は手をあげてくれ」

 

「はーい、俺聞きましたー」

 

「私も」

 

「小生も聞いたぞ」

 

「ボクも〜」

 

「私も聞きましたわ」

 

「すみません、僕はその時居合わせていませんでしたので分かりません」

 

仲間達はノインを除いて全員それは聞いていた。

 

「ロダリアまで……!?なら信じるしかないのかな…?」

 

レガルトの口ぶりからするとやはりロダリアはそれなりの地位を持っているようだ。彼女がいてくれて助かった。

 

「このまま戦争をすると、ロピアスはアジェスにしか頼れなくなる。それはスヴィエートも同じだ。リザーガが戦争の武器などを横流しにしていたらもうボロ儲けだ。何を企んでいるかは知らんが、お前の国だってリザーガに踊らさせるような真似はしたくないんじゃないのか?誇り高きロピアス王国。どうなんだ?レガルト」

 

レガルトは息をつくと言った。

 

「確かに……、でもねアルス。僕の国は戦争をしなきゃならないんだ」

 

「それは何故だ?軍事拡張規制されていて、ロピアス軍は弱体化しているはずだ、それでもなのか」

 

「違うんだよアルス。それだからなんだよ」

 

レガルトは神妙な面持ちで語り出した。

 

「君のお父さんが結んだスターナー条約。これはロピアスにとって不平等極まりない。まぁ僕らロピアスがスヴィエートにやってきた事をひっくるめて言い返されるとあんまり偉い事言えないんだけどさ。その条約にはスターナー島の近くにある、長年ロピアスとスヴィエートが領土争いをしてきた島、アルモネ島をスヴィエートへ返還するというのが書かれている。でもそのアルモネ島がスヴィエートに奪い返された20年前から、僕の国がおかしくなったんだ。

 

つまり何が言いたいのかっていうと、第2次世界以来この国の気候が、変動したってこと。スヴィエートが何をしたのか知らないけど、それ以来、国の作物出荷量は年々減少傾向になっているのは明らかだし、スターナー条約のせいで関税が高いスヴィエートの作物を仕入れなきゃいけない。腐海の影響で食料自給率の低いアジェスからはあまり期待できない分ね。それに以前はロピアスの作物がアジェスやスヴィエートに回る世界だったんだ。

 

だけど戦争以来ロピアスは一転した。雷の被害は出るし、風が強くて作物に被害が出たことだってある。20年前までは、温暖で、豊かな国だったんだ。でももう限界、このままだとロピアスはどんどん疲弊していくだろう。だから戦争するんだ。どんな手を使ってでもスヴィエートに勝つんだ。勝たなきゃロピアスは終わりだ。それぐらい現状ロピアスは厳しいんだ。

 

君のお父さんが何したか知らないけど、アルモネ島を奪い返して、戦争に勝つ。そうすれば、国は元に戻るっていう算段なんだ。これはもう貴族院でも可決した内容だよ」

 

レガルトはきっぱりと言った。女王の風格はあるようだ。彼女の言い分は理にかなっている。ロピアスという国の事を第一に思っている。しかし、それは自分も同じだ。アルスはため息をついた。

 

「なるほど、そうゆう事情があったとはね。……どうしたら平和条約を素直に結んでくれる?」

 

「え?」

 

「俺は戦争などしたくない。国民が危険に犯されるなど俺は望まない」

 

「へぇー、随分優しい人なんだね。スヴィエート皇帝の癖して。軍事国家だよね?君の国」

 

レガルトは頬杖を付きアルスを嘲笑った。だが彼女の言い分はごもっともだ。少なくとも俺は違うと言うだけ。幼い頃からハウエルとマーシャに戦争はするものじゃないと教えられ、なおかつ父もそう言っていた、と教えられてきた。

 

何が原因で父が平和を愛したかアルスには分からないが、少なくともその意思は引き継ぎたいと思う所存だ。もちろん今この、少なくとも平和だった世の中のへの礎があの第2次世界大戦だったわけだが。

 

「それは偏見だ。望んで国民を危険に晒す様な真似はしたくない、本当だ」

 

「ふーん…。そうだなぁー、気候の問題でも解明してくれるのかな?スヴィエートが?あと、関税緩和もして欲しいね。軍事拡張規制も、して欲しいけど。それだとスターナー条約破棄っていう形になっちゃうね。ハッ、所詮、無理なんだよ。スヴィエートとロピアスが仲良くするなんて、さ」

 

レガルトはお手上げ呆れた。

 

「無理ではない。俺は条約改正出来る。その権限がある。気候についても調査する事が出来る。父が何をしたのかは知らないが」

 

「はぁ?無理だよ絶対。気候についてなんて20年前から僕の国の人達が必死にやってる。それでもダメなんだ。だから、戦争以来変わった事に注目したんだよ。あれのせいじゃないかってね」

 

アルスはふぅっと息を吐いた。そしてある決断を下す。

 

「スヴィエートは、ロピアスに協力しよう。条約改正と、気候調査について、検討する」

 

「ええっ!?協力!?スヴィエートが!?」

 

レガルトは大きな声を発し驚いた。前代未聞である。長年の宿敵同士であった両国が協力など。馬鹿げてる、とレガルトは思った。

 

「ちょっ、君正気?そりゃ条約改正は嬉しいけど、まさか、そんな、協力なんて発言スヴィエートから聞けるなんて夢にも思わないよ!?」

 

「勿論条件はあるぞ。今現在戦争はしない事。それから協力するのだからそれ相応の礼は貰いたい…、と言いたい所だが、ま、そんな図々しい事は言わない。ただ、サポートは必要だな。協力し合う、のなら」

 

アルスは最後の一言は強調して言った。

 

「ハッ、何それ。気候調査って。スヴィエートがやったって事じゃないの?ロピアスに対するあの待遇は」

 

「それは否定する。いくら何でも我が国に天気を操作するなんて神の所業のような技術はない。それに、戦争以来ロピアスが気候変動した事が仮に技術だったとしたら、俺も知らない国家機密モノだ。スヴィエート上位関係者しか知らないような、ね。どうだ、乗るか?」

 

レガルトは考え込んだ。彼女の決断が、国を左右する。深く、考えた。そして、重い口を開いた。

 

「………いいよ、乗った」

 

「レガルト!?」

 

ノアはレガルトの発言に驚きを隠せない。

 

「ノア、僕はアルスを信じてみたい。賭けてみたい。この人が裏切るとは思わない、本当に平和を愛してるって感じだし。それにスヴィエートに協力してもらえるんだよ?これ程お得な事ないと思うんだけど。変な意地は張らない方がいい。どの道これがこのロピアス王国の将来への最良の道だ。だから僕はこの選択をする。ぐふふ、それに前代未聞過ぎてなんだかワクワクするよ」

 

「レガルトが、レガルトがそういうのなら、私は止めない………」

 

ノアは大人しく引き下がった。

 

「陛下!?本当に正気なのですか!?ロピアスと、協力など!?」

 

「スヴィエートの長年の敵ですぞ!!」

 

こちらも同じようで、上級軍人や元老院からの批判を喰らう。

 

「黙れ、お前らの発言は許可していない。それとも、リザーガの手のひらで踊らされたいのか?」

 

アルスはキッと睨みを聞かせ厳しい口調で返した。

 

「はっ……、申し訳ありません…」

 

「これはもう、会議でも可決した事だろう。平和条約を結ぶ、と。その為なら協力位してもいいだろう。くだらないプライドは捨てろ」

 

「っ、陛下の御心のままに……」

 

「くっ…!」

 

唇を噛み締め、反対していた上級軍人、元老院は引き下がった。アルスは椅子から立ち上がり、

 

「そして俺は今ここに宣言する。スターナー条約改正だ。関税と貿易規制を緩和する!」

 

と、高々に宣言した。

 

「ありがとうアルス、ふふ、軍事拡張制限の件を緩和しない所は、君らしいね。純粋に平和のためか、いや?それとも素直にスヴィエートの利益の為なのかな?なんにせよ、食えない男…。そして面白いや。ノア、羽根ペン」

 

レガルトはノアを呼ぶと羽根ペンを借りて親書に何かを書き込んだ。彼女のサインだ。

 

「これにて会議を終了とする」

 

アルスはその場を収めて、レガルトの方へ足を進めた。レガルトもまた同じように、立ち上がり、そしてアルスと向き合った。

 

「ありがとう、レガルト。そうだな、お前とはいい関係が築けそうだ。我が国と平和条約を結ぶか?」

 

「もちろん、条約を結ぶ、君の親書にもうサインはしておいた。これで条約可決だよ」

 

アルスは自ら手を差し出した。レガルトはそれを握り返し、しっかりと握手を交わした。のちにこの時の写真は各国の新聞で大きく報道される事となったのだった。




レガルト女王の側近、ノアの容姿

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レガルト容姿2

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私服レガルトとノア

【挿絵表示】


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