テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜 作:平泉
街の入口付近に皆が待っている。アルスはルーシェに話しかけた。
「ルーシェ、丁度よかった。先程広場の噴水の所でシューラさんと会ったよ」
「あ!女将と会ったの?私はアルスの護衛として、旅の仲間として、そして、私の形見のナイフ探しのお手伝いとしてついて行くって言ったら女将ね、貴方のやりたいようにやってきなさいって、言ってくれたの」
ルーシェは嬉しそうに笑った。今まで世間どころかスヴィエートからも出たことがない彼女だ。旅が楽しいのだろう。
「そうか。俺もシューラさんにはとてもお世話になった。俺も少し話してきてね。彼女はとても優しい人だな。本当、無事で良かった」
「うん!それに、色々旅に必要な物とかもくれたの。必要だからって」
ルーシェはそう言うと道具袋をアルスに差し出した。アルスはその中を覗くと、アップルグミ、オレンジグミ、ライフボトルなど確かに旅にはもってこいの品ばかりだ。
「こんな物、貰っていいのだろうか」
アルスは恐縮した。シューラもルーシェも下町の貧民街出身なのだ。アルスはそう思わざる負えない。
「いいのいいの!気にしないで!」
「気にしないでって、ルーシェ……、なんだか悪いな…」
「あの人はイイ奴だ。小生にお菓子をくれた」
するとフィルが会話に入り込みポケットからゴソゴソと飴を取り出す。それを掌に乗せ自慢げにアルスに見せびらかした。
「飴?」
アルスはその飴を取ろうとした。しかし、
「これは小生のだ!!」
フィルは素早く手を引っ込めるとそれをサッと隠した。
「別に見ようとしただけじゃないか」
「ケッ、誰が信じるかそんな事」
フィルはぷいっとそっぽを向いた。毎度の事だがアルスはその生意気は態度に若干イラつき地面にしゃがむと雪を取り、丸めてフィルの頭に向かって軽く投げつけた。
「びゃっ!?ちべたっ!?」
「アルス!?」
ルーシェは彼の思わぬ行動に驚く。どうやら雪が少し首に入ったようで。小さな体をひょこひょこと動かし服から雪を掻き出そうとする。
「アルス君!?何やってるんですか!?」
それに気づいたノインは驚いて慌ててフィルの服をパタパタと仰ぐ。
「ハッ、どうだ。これがスヴィエート流の遊びだ」
アルスは憎たらしく、イタズラっ子のように笑うと雪玉を作り、上に投げては落ちてきたそれを手で掴み、フィルを舐めた目で見つめる。
「おのれ〜!ノイン!やってしまえ!」
フィルはノインの足を盾にして逃げると命令した。
「オッケー。最近ふざけてなかったですからね。お返しですよっと!」
ノインは雪を掴んで丸めるとアルスに向かって投げた、が。
「おっと」
アルスはすかさずしゃがんでそれを寄ける。その雪玉はアルスの後ろにいる彼、
「ふがっ!?」
「あっ…」
ガットに命中した。ノインはやってしまった、という声を出す。
「おい……、ノイン……!」
「や、やだなぁ…。わざとじゃないですよ?」
「アハハハハ!!ガット!顔雪まみれ!ブァッハハハ!!ヒ〜!ハハッ!アッハハ!」
ラオはガットを指差すと腹を抱えて笑った。
「黙れこの腐れゾンビ!!」
「もぐぁっ!?」
ガットは雪玉を素早く作ると大笑いしているラオの口目掛けて投げた。それは見事口に必中した。
「雪でも食ってろ、そうすりゃテメェのその燃費の悪さもちったぁ改善されんだろ」
「モグァガッ!ペッペッ!冷たイイ!ぬぅー、よくも!」
ガットはやり返す為に雪玉をガットに投げる。
「ああ、皆〜!何してるのーもう!ダメだって!」
ルーシェはどんどん伝染していく遊びに注意する。
「ギャー!?誰だ!?小生に投げた奴は!?」
「私ではないですよ?」
ロダリアはわざとらしく手の雪をパッパッと払った。
「いやいや!明らか貴方でしょう!?何手の雪払ってるんですか!?」
ノインはすかさずツッコんだ。
「あら、バレました?」
「酷いぞ師匠!」
「ロダリアさんまで!」
「あらルーシェ。でもこれってスヴィエートの遊びなのでしょう?」
「それは否定しませんけど…。ってこれ発端アルスだよ!」
ルーシェは頬を膨らませるとアルスに向かって言った。当の本人のアルスはフィルと絶賛雪合戦中である。フィルが雪玉を振りかぶり、
「喰らえっ!スーパートルネードエターナルブリザードフィルファイナビッ…、ファイナリティ!!」
フィルは長ったらしいそれを言うと雪玉をアルスに向かって投げた。
「今噛んだだろ。名前長すぎだ」
アルスはそれを余裕綽々と寄けた。
「コラ貴様〜!寄けるな〜!!」
「喰らえぇえぇい!!」
「いだっ!?」
ノインは自分がノーコンだと言う事を知り、なんと雪玉をビリヤードで使うキューで突いた。キューから注入されたエヴィを纏ったそれは鮮やかなコントロールを見せアルスの肩に命中する。
「ハーハッハッハッハ!!これなら負けるかァ!」
ノインは普段敬語の口調が変わるほど白熱している。
「ノイン!?なんつー卑怯な!」
「皇帝だからって容赦せんぞ!フィルの恨みは僕が晴らす!」
「いいぞノイン!やれやれ!!」
一方外野ではガットとラオの壮絶な雪合戦が繰り広げられている。
「オラァ!」
「当たらナーイ。そんなの当たらナーイ〜」
「あのやろっ、ちょこまか動きやがって…!」
「それ〜反撃!いっくゾー!」
ラオは懐から何やらよく分からない札を出すとそれを目の前に浮かせ雪玉を投げる。するとその雪玉はあろうことか分身して無数の数となりガットへ向かっていく。
「うぉぉぉおおおい!?何だこりゃ!?いででででっ!!冷たっ!?ちょ!オイコラ!アリかよこんなの!」
「秘技!雪玉分身の術~。なーんちゃって」
あちらは随分とアグレッシブである。
「もう!アルス!」
「わっ!ルーシェ!ごめっ、おぶっ!?」
アルスはルーシェに怒られると慌てて振り向く。すると顔面ストレートに雪玉が直撃した。
「………………え?」
アルスの目の前が真っ白くなり、雪の冷たさが段々と伝わってくる。
「アハハハ!!引っかかった~!」
彼女のしてやったり、という声を耳で聞くとどうやら彼女に投げられたらしい。
「でかしたぞルーシェ!!見ろノイン!奴のマヌケヅラを!ぶあっははは!」
「僕の見せ場がっ…!!ぶっ!」
ノインの顔面にもアルス同様雪玉がクリティカルヒットした。
「おや、当たりましたか?」
「ロ・ダ・リ・アさーん!?」
こうして白熱した雪合戦も終わり、オーフェンジークの港に着くとアルスは上級軍人に話しかけられた。
「ああ、陛下。到着が遅いので心心配していました。ん?陛下、服が濡れてるようですが…。それにお仲間の皆様も…」
軍人は怪訝そうな目でアルス達を見る。口が裂けても言えない。スヴィエート皇帝が仲良く雪合戦をやっていたなんて。
「なっ、何でもない。気のせいだ。気にすることはない」
「はぁ…、失礼いたしました」
怪訝そうな顔は変わらず、軍人は敬礼をした。なんとか誤魔化せたようだ。
「こ、これから直通でエルゼ港へ行くからな。シャワーを浴びる事も必要だろう。タオルを人数分用意するようにしてくれ。今日の分も入れてな」
「かしこまりました、陛下が乗船したら、間もなく出航致します」
船のタラップが降りてきて、皆が乗り込む。アルスは一番最後に乗った。
「良い船旅を」