テイルズオブフェイティア〜宿命を運命へと変えていくRPG〜   作:平泉

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ハイルカーク鉄道爆破事件調査

あれからフィルはサーカス団の人に断りを入れるためロダリアと一緒にテント内を回っていた。3人はテントの外で2人を待っていた。ルーシェとアルスは時計塔を一緒に眺めている。

 

(いいなぁ、あの時計塔、観光にはもってこいだ)

 

そこにロダリアとフィルが一緒にテントから出てきた。

 

「お、来たな。」

 

ガットは暇そうにベンチに座り空を眺めていたが2人が来ると立ち上がった。

 

「お待たせいたしました」

 

「あ、アルス。2人来たよ!」

 

ルーシェはそう言うとアルスの手を引っ張り皆と合流した。

 

「…、なんか一気に賑やかになりましたね」

 

アルスはそう呟くとロダリアは、

 

「ふふふ、そうですわね。賑やかなのはいいことですわ」

 

と、答え上品に笑う。

 

「そうですね」

 

アルスもそう相槌をうつ。

 

「あ、私のことはロダリアと呼び捨てにしてくださってよろしいのですよ?」

 

「えっ?いやいや、いいですよ。俺は。失礼ですよ」

 

「まぁ、つれないですわね」

 

アルスは首を全力で振り、丁重にお断りするとロダリアは残念そうに言う。

 

「ああ、そうなの?じゃあ俺はそうさせてもらうわ」

 

「ええ、結構ですよ」

 

ルーシェとフィルは2人であやとりをして遊んでいた。

 

「やはりあの子もまだまだ子供ですわね…」

 

ロダリアの呟きは他の仲間の声には聞こえなかった。

 

「では、爆破された鉄道に向かいましょうか」

 

ロダリアはそう言うと皆を案内した。

 

 

 

ロダリアが言うには爆破された鉄道が近いのはハイルカーク駅らしい。

 

ハイルカーク時計塔。

 

この国の代表的な建物の1部だ。アーロン大聖堂とも繋がっている。観光客として来る人はとても多い。最もその客はエルゼ駅からここに来る場合が多い。アルス達もこの駅に最初来るはずであった。鉄道が爆発された時、幸い列車はそこを走っていなかったため死者は1人もいないそうだ。

 

運転手が話していた内容によると駅で停車していたら爆発音がし、向こうに煙が立ち上るのを見たという。慌てて乗客を避難させ、鎮火作業に移ろうと消火隊が来たところ1発目よりも近い位置で2発目が爆発音がし、安全のためそのまま放置するしかなかったんだとか。

 

見守るざる負えない状況だった時に雨がふり出し火は消えたが、安全が保証出来ないためまだ調査は全然進んでいないそうだ。

 

(カイラさんはその駅に停車していた列車に乗っていたわけか…)

 

アルスは駅員と話に行ったロダリアを待っている間話を整理していた。

 

「皆さん、許可が下りましたわ。調べていいそうですよ」

 

ロダリアのコネで調査の許可がおりたようだ。

 

「へぇー、やっぱすげーなアンタ。国からの依頼だけはあるわ。俺たちだけだったら門前払いだったかもな」

 

「私役に立ったでしょう?まあ証拠が見つかるといいですわね」

 

「なんだか私達探偵みたいですね!!」

 

ルーシェはフィルと一緒に歩く。

 

「絶対犯人を見つけ出すぞ!!」

 

フィルはやる気満々である。

 

「………」

 

「あれ、どうかしたんですかロダリアさん?」

 

ロダリアはフィルを見つめ足を止めた。その様子に気づいたアルスはロダリアに話しかける。

 

「いいえなんでもありませんわ。では線路に下りましょうか」

 

「…?ええ。」

 

ロダリアはアルスの声にハッとし再び歩き出した

 

 

 

しばらく線路を歩いていと道はそこで途切れた。

 

「ここか…」

 

アルスは静かに呟くと爆破されたアーチ橋の上の線路の近くを注意深く調べ始める。今彼らが調べているのは2発目の爆破現場。1発目-ここから途切れた線路の先である。

 

「うわっ、こりゃひでぇな。列車が完全に通れなくなってやがる。ホントよく死者が出なかったもんだ」

 

ガットはそう言うと途切れた線路の下を覗きこんだ。線路は橋の上においてあり、下は瓦礫が山積みになり通行止めになった道がある。

 

「うわぁ…、レンガがボロボロになっちゃってるね…」

 

「2発目の爆発があったということは時限式でしょうか?」

 

ロダリアは考えこみ、線路を見つめる。

 

「ああー、時限式か…。なるほど…」

 

ガットは納得したかのように頷く。

 

「おおっ?面白いなこれは。」

 

フィルはレンガを掴み上げるとそれはボロボロと崩れ落ちる。その様子が面白いようで、フィルは遊びだした。

 

「こら、あんまり触るなフィル、遊びじゃないんだぞ」

 

「フン、わかっている」

 

アルスの言葉に拗ねたフィルはルーシェの方へ逃げた。そしてルーシェに抱きつき、アルスに自慢げに見せつける。ルーシェは驚きながらもフィルに構ってやる。

 

「あいつ…」

 

アルスは苦虫を潰したかのような顔になるとフィルは更に面白がった。

 

(無視無視)

 

舌打ちしつつ、作業に戻るアルス。

 

(時限式、か…。その線が1番近いだろうが、だがそうなるとなぜ犯人は線路を爆発させたんだ?それなら丁度列車が通るタイミングで爆破させればいいはず…。それとも、他に何か意図が……?その線で行くと…。よし、ひとつひとつ怪しいところを潰していこう。そうなると……)

 

アルスは地面に転がるレンガの欠片を拾い上げた。指ですこし力を加えるとそれはボロボロと崩れ落ちてしまった。

 

「…………」

 

崩れ落ちたレンガを見つめながらアルスは考えこんだ。そして空を見上げる。ふと、アルスは空ではなくあの時計塔を見た。

 

「ハイルカーク時計塔…。待てよ?もしかして…」

 

アルスはハッとした。

 

「皆ー!」

 

アルスは急いで戻り叫んだ。

 

「どうしたのー?」

 

ルーシェが言った。

 

「少し気になることがあるんだ。もし仮に時限式だったら、見晴らしのいい場所に行くはずだ。この鉄道橋の下はセーレル広場に繋がる道がある。いくら何でもそこでは目立ちすぎる」

 

「つまり?」

 

「犯人の目的は分からないが、時限式だったらまず列車が通るタイミングで爆破させるはずだ。何か手違いがあったか、それとも計画変更なのか。それは犯人しか分からないことだが。この鉄道橋を見下ろせる最も最適な場所と言えば…」

 

アルスは後ろを振り返り指で真っ直ぐさした。

 

「あの時計塔だ」

 

「なるほど!!すごいね!アルス!」

 

ルーシェは感心した。

 

「んじゃその時計塔にいってみっか。ハイルカークとやらに」

 

 

 

それからアルス達はその時計塔にやってきた。時計塔の長い階段を登りながらルーシェはアルスに話しかける。

 

「この時計塔に登れるなんて!私登ってみたいと思ってたんだよねぇ!」

 

「そうなのか?」

 

「うん!だって綺麗だよねこの時計塔!ロピアスって感じ!」

 

ルーシェは嬉しそうに話す。だいぶ登ってくると歯車が回っているのが見えた。丁度時計があるあたりだろう。狂うことなく歯車は重なり合い、思い音を立てながら回り続けている。そして歯車のところもぬけると梯子を見つけた。

 

「あれを登ると鐘があるところか?」

 

梯子を見つめガットはしみじみと呟いた。

 

「ふぇ~、やっとついたか…」

 

フィルはぐったりとルーシェにもたれかかった。

 

「疲れましたわ」

 

ロダリアもかぶっていた帽子をかぶり直し言った。

 

「じゃあ登りますか」

 

 

 

「うわぁー!すごいいい景色!!すっご~い!!」

 

ルーシェは手を額にあてその景色を、ロピアスの景色を眺める。夕日がその景色をよりいっそう美しくさせもうすぐ日没だということを示唆させる。

 

「絶景だな!」

 

フィルも先ほどの疲れを忘れたかのようにその景色に魅了される。

 

「おお~、ここからだとあの橋はよく見えるな!」

 

ガットもその景色を見た後に下を見つめ言う。

 

「ええ、やはり眺めは最高ですね。後は何か手がかりが見つかればいいのですが…」

 

アルスはしゃがみ込み何か証拠がないか入念に調べ始めた。すると床に何かを引きずったような跡があるのが目に入った。

 

「ん?これは…?」

 

アルスはその跡を辿った。三角形のそれぞれの頂点位置に、点が3つ。

 

(何かの三脚のようだ…)

 

三脚が引きずられた跡が途切れた所を見ると、丁度その下はあの爆破された橋が遠くに見える。

 

(駅、及び橋からこの時計塔まで距離は約600メートルといったところか)

 

アルスは床の跡を見つめしばらく考えこむ。

 

「アルスアルスー!!なんか見つかったよー!」

 

とそこにルーシェがやってきた。

 

「ルーシェか、何を見つけたんだ?」

 

「えっとね、これ!」

 

ルーシェは丸い物体を差し出した。

 

薬莢(やっきょう)?どうしてこんな物がここにあるんだ!?」

 

アルスはその差し出された手の上にある物体、薬莢をみて驚きを隠せなかった。

 

「あっちだよ。鐘の下に落ちてた」

 

「まさか……狙撃…?」

 

「えっ?何かわかったの?アルス」

 

(三脚………、薬莢……。これらから導き出される物といえば一つしかない。そう、狙撃だ。ライフル…、スナイパーライフルか…)

 

アルスは薬莢を受け取りケースの中にしまった。

 

「…ということは」

 

アルスは再びしゃがみ込み跡を戻った。

 

「仮定として1つ…。時限式ではなく、狙撃による爆破の作動…?じゃあやっぱりこれは三脚を引きずった跡…。こっちに続いていたということは最初犯人はあそこで橋を狙撃して爆破させた。そして2発目を狙撃するために三脚を引きずり移動し…」

 

アルスは声に出しながら状況を整理した。

 

「そしてここで2発目を狙撃した」

 

アルスは橋を眺め言った。

 

「あっ!ここだよ!アルス、ココらへんよりの鐘の下に落ちてたの!その薬莢!」

 

ルーシェは鐘の下を指さし言った。丁度真後ろだ。

 

「と言うことは、ここで狙撃が行われた事は間違いないということか…。薬莢がこんなところに落ちてるなんてまずありえないからな。しかし非効率だ…、どうして時限式にしない?もし被害を拡大させるためだけなら、列車が通るタイミング、もしくは、列車そのものに爆弾を仕掛けるはず……。それにこんな明らかめんどくさく手のかかる手口…、何かがおかしい…。まるで……」

 

(まるで被害を最小限に抑えるためにやったようなもの……?)

 

アルスは一つの確信がそこで生まれたのだった。駅員の話によると死者は奇跡的に1人も出ていない。この事件、何か裏があるのだろうか?それとも、ただの考え過ぎなのだろうか?鉄道線路上にある爆弾をエヴィを込めた弾で撃ち抜き、反応を起こさせて爆破させる。どう考えても手間がかかる。何故このようなやり方を?しかし、今はこれしか考えられなかった。

 

「アルス…?」

 

ルーシェの声は思考を巡らせているアルスには聞こえなかった。まだ腑に落ちない部分がある。

 

(この塔の高さを換算するとここから橋の距離は約700ヤード(約640メートル)…。そんな距離……、並大抵のスナイパーの出来る芸当じゃない…、この事件、やっぱり何かおかしい…)

 

「アルス?聞いてる?どうしたの?」

 

「あっ、ああ。いや、なんでもないよ。とりあえず皆にこの事を知らせて宿屋を探そう。もうそろそろ日が沈む」

 

「そうだね。そうしよっか!」

 

アルスとルーシェは反対側を探している仲間と合流し宿屋に戻ることにした。

 




700ヤード、ライフル…、ハッ(ピコン)赤井秀一…!?
って思った人はきっとコナン知ってる人。

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