東方神実郷~『仮面ライダーバロン』、駆紋戒斗が幻想入り~ 作:火野荒シオンLv.X-ビリオン
現在、戒斗は頭を抱えていた。
別に道に迷ったというわけではなく…
同伴したチルノが飛び蹴りしてきたわけでもなく……
同じく同伴した大妖精が、誤って幻覚を見るキノコの胞子を大量に浴びたわけでもない………
いや、今挙げた例は、実は既に起こってたのだが、問題はそこではなく……
「―――あ、本当だ、結構いける!大ちゃん、これおいしいよー!!」
「…本当ね…甘くておいしい……」
「お、やっぱりそう思うか?」
「…」
彼の目の前で、チルノと大妖精、そして白黒の衣装を纏った少女が、『魔法の森』と呼ばれる場所で、そこら中に生えていた果実を食べている事が、問題だった。
一見見れば、普通の光景であるだろうが、戒斗にとっては、色々な意味で大問題だった。
「…?戒斗さん…?」
「どしたのー戒斗?食べないの??」
「そうだぜ戒斗。遠慮しなくても、まだまだいっぱい実ってるんだからさ」
「…ぜだ」
「「「?」」」
「―――何故”ヘルヘイムの果実”が、ここにあるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そう、それは戒斗がよく知るもの……本来はこの世界に無いはずだったものだ。
しかもそれを、何の躊躇いも無く、普通に口にしているのを見て、普段取り乱さない彼は、思わず豪快に叫んでいた。
~~~
事の発端は、数時間前に遡る。
戒斗たちは昨日、一旦チルノの家に戻ると、これから戒斗はどうするかという話になった。
戒斗自身は別に野宿でも構わないと告げるが、それを妖精二人が否定し、更にはルーミアが「外で寝るなら、私が食べに来てもいいんだねー?」と、普通に怖いし笑えない冗談を言ってきたので、戒斗はやむ終えず野宿という選択肢を消すことになっていた。
が、それでも女の子二人と屋根の下、なんてのは常識的に駄目だろうとなり、結局振り出しに戻っていたところ、ルーミアが
『チルノの程度の能力で、隣に新しく家を作ればいいのではないかー?』
……という、この場にいる者(勿論⑨含めて)全員が思い浮かばなかったアイデアを言って、安易的な氷の家を、チルノの家の隣に作り、そこに暫くの間寝泊りすることになった。
問題だったのは、氷の家で出来た家だったため、冷気で非常に寒い中を寝ることだったため、チルノ以外まともに寝れなかった上に、戒斗と大妖精は起きてからずっとくしゃみをしていた。
というか、今の季節は秋……これで風邪を引いてないだけ、まだいい方だったりする。
「は…くしゅん!!」
「くしゅん!…うー…くしゃみが止まらない…」
「大丈夫ー大ちゃん?もうちょっと布団とか毛布の枚数、増やしたほうがよかった?」
「…外で寝たほうが、まだマシだった…!!」
「文句ばっかり言わないの!ほれティッシュ」
「すまん…はっくしゅ!!」
戒斗はチルノから渡されたティッシュ箱から一枚取り出し、鼻を押さえながらくしゃみを行う。
そうしていると、チルノがもじもじとしながら、戒斗に話しかけてきた。
「…あ、あの…戒斗…」
「…なんだ」
「そ、その……き、昨日は…その……ごめん…」
「…なんだ、その事か。気にしてないから、別に構わん」
「…何よ、人が折角謝ってるのにその態度はぁ~…?」
「チ、チルノちゃん…落ち着いて…!!」
チルノは昨日の出来事について謝罪するが、戒斗はぶっきら棒に気にしてないと告げる。
が、それが気に食わなかったのか、チルノは握り拳を作り、それを見た大妖精は彼女を止めようとする。
それを見た戒斗は、やれやれといった表情で、茶を飲もうとしていた……時だった。
「―――あら、暢気に茶を飲んでいるとはね」
空から声が聞こえたと思ったら、霊夢が此方に飛んでくる姿が見えてくる…
それに気付いた戒斗は立ち上がり、ゆっくりと地上に降り立つ彼女に話しかけていた。
「霊夢か…何しに来た」
「あら、来たら悪いの?…ま、そこら辺はどうでもいいとして、戒斗、アンタに頼み事があるのよ」
「俺に頼み、だと?」
霊夢の言葉を聞き、戒斗は顔を歪める。
と同時に、何とか落ち着いたチルノと大妖精が、二人の近くまで歩み寄る。
すると霊夢は大妖精の存在に気付き、驚いた表情をしながら彼女に話しかけていた。
「あら、大妖精。もう動いて大丈夫なの?」
「あ、はい…あまり激しく動かなければ……」
「後、無理しなければね」
「そう…文の新聞読んだときは、無事手術は成功したと聞いてホッとしたけど……元気そうで何よりね」
「おい、話が逸れてるぞ」
「アンタもアンタでせっかちね……ま、いいわ。実はアンタに、『魔法の森』という場所に行って、調べて欲しいことがあるの」
「調べて欲しいこと……だと?」
戒斗の言葉に、霊夢は「そう」と頷く。
実はつい最近、彼女の親友の魔法使いの家の周辺に、今まで見たことも無いといわれる植物が、かなりの勢いで蔓延っているとのことで、その調査を頼まれたとの事。
だが彼女は、自身の神社の結界を張り直すのにあまり手が離せないらしく、それで何故か戒斗に白羽の矢が立った、とのことだ。
それを聞いた戒斗は頭を押さえるが、チルノはその植物に関して興味を持ったのか、霊夢に尋ねる。
「その植物ってどんなのー?」
「そうね……実物は見たことないけど、その植物には果実が生えているらしいのよ。私も二日前に、魔理紗にその植物の果実を貰ったけど、案外美味しかったわ」
「へぇー、アタイも食べてみたーい!!」
霊夢の話を聞き、チルノは俄然興味を持ったのか、大はしゃぎし始める。
とりあえず騒がしいと思った戒斗は、チルノの頭を軽く殴りつつ、再び霊夢に話を聞きだす。
「…それで、何故俺にそれを任せようと…」
「なんとなく」
「か、戒斗さん…落ち着いて…!」
「…貴様も殴られたいのか…?」
「まぁまぁ。とりあえずアンタは、魔理紗っていう魔法使いの場所まで行って、その植物がどういうのかを調べてきて。んで、調査が終わったら、私のいる神社に来て。場所は魔法の森も含めて、そこの二人も知ってるから。んじゃ、後はよろしくねー」
「!おい!!」
用件を伝えるだけ伝えた霊夢はそのまま宙に浮かび、さっさと自身の家に帰ってしまう。
それを見た戒斗は霊夢を追いかけようとするが、飛んでいった相手を追い駆けようにも、彼自身が飛ぶ方法はない……
戒斗は握り拳を作り震わせるが、それを大妖精が宥める。
「…あの女…!」
「か、戒斗さん…!どうか落ち着いてください……!!」
「イテテ…とにかく、早く魔法の森に行こうよー。その実がどれだけ美味しいかも食べてみたいし」
「…貴様はそっちの方が目的だろうが……!!」
「なっ!何でばれたのよ!?」
図星だったのか、戒斗の言葉にチルノは退く。というか、バレないと思っていたのだろうか、この⑨は。
そんな事はさておき、戒斗は頭を抱えるが、少ししてから溜め息をつく。
「…仕方ない。今の所、特にする事もないし、にとりというやつの所へ行くのも後々可能だ。先にこっちを済ませる」
「ねぇーねぇー戒斗ー一緒に連れてってー。答えは聞かないけど!」
「…好きにしろ。というか、道案内として貴様を連れて行かないと、道に迷うやもしれん」
「っしゃああ!!」
戒斗の承諾を得たチルノは、再び大はしゃぎする。
すると大妖精が戒斗に近づき、「あの…」と声を掛けてきた。
「あの…わ、私もご一緒させて……ください…!///」
「却下だ」
「Σ即答ですか!?」
「即答もなにも、貴様はまだ安静にしてないといけないだろうが」
戒斗は即答で大妖精の申し出を却下し、その理由を述べる。
それにはチルノも同感したのか、大妖精に大人しく待っておくように告げるが、大妖精は首を横に振っていた。
「わ、私も……お世話になってばかりで、何もお礼をしないのはイヤ…だから…出来る範囲で、お手伝いをしたいんです……」
「…」
「あ、あの……やっぱりダメ、ですか…?」
大妖精は一緒に行きたがる理由を説明すると、戒斗の方を見る。
戒斗はずっと口を閉じたままで、大妖精はやっぱり駄目かと肩を落とす。
だが、戒斗は後ろを振り向くと、静かに口を開いていた。
「…好きにしろ」
「…え?」
「ただし、俺への例ではなく、そこの馬鹿を抑える役目としてだ」
「ちょ、バカって何よ!」
「…はい!」
戒斗はそれだけ言うと、ひとりでに準備を始める。
そして彼の言葉を聞いた大妖精は……大きく返事をし、自分も何か遭った時のためにと、チルノと共に準備を始めていた。
~~~
数分後、戒斗たちは魔法の森の中を探索していた。
森の中は非常にじめじめしており、かなり湿度が高いのを感じられる…
そんな森の中、戒斗はチルノたちに現在地はどの辺かを確認する。
「…それで、今ここはどこら辺だ?」
「んー……この方角だと……こっちかな?」
「湖から直接来たから、多分チルノちゃんの言ってる方角であってるかと……」
「よし、なら行くぞ」
戒斗は二人の言葉を聞くと、チルノが指差した方向へ歩き出す。
そして数分後……
「……あれ?行き止まり…?」
「このまままっすぐじゃあないのか」
「でも、他のところと比べてかなり木々が並んでるから……ここを通るのは面倒じゃない?多分道に迷うよ?」
森を進んでいくと、木々に囲まれた場所に辿り着いていた。
それを大妖精が疑問に思い、戒斗もここを通るのかと考えるが、チルノがそれは止したほうがいいと告げる。
その言葉には大妖精も頷き、戒斗たちは一度元来た道を戻ることにする。
だが……
「…え?」
「また……」
「行き止まり、だと……?」
またもや木々が沢山並ぶ空間に辿りついていた。
しかし戒斗たちは、元来た道を、しっかりと辿ったのだ…
…何かがおかしい、戒斗がそう考えていると……
「―――くぉぉぉぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁ!!戒斗何やってんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?」
「ゲボファ!?」
「Σチルノちゃん何やってるの!?」
突然チルノが、戒斗に飛び蹴りを放ち、彼は思い切り吹き飛んでいく。
それを見た大妖精が大慌てでチルノに理由を尋ねるが、彼女から出てきたのは、信じられない言葉だった。
「だ、だって……戒斗が【大ちゃんの胸を触ってた】んだよ!?しかも堂々と!!」
「ぶふっ!?」
「ちょっと待て……俺は何もしてない!そもそも大妖精と充分な距離を取っていただろうが!?」
「そそ、そうよ!いいいいきなり何言い出してるのチルノちゃん!!?」
チルノが口に出したのは【戒斗が大妖精の胸を堂々と、しかもがっつり触っている】というもの…
しかし、戒斗と大妖精は、普通に1mは離れていた……しかもチルノが言うには、戒斗は大妖精の方を向いていたらしいが、戒斗は彼女の方には向いていない。
大妖精もその事はしっかり証明し、チルノは「あれれー……」と考えるポーズを取る。
「戒斗が言うならともかく、大ちゃんまで言われると……」
「き・さ・ま・はぁぁぁぁぁぁぁ……」
「…あ、もしかして!」
すると大妖精が、何かを思い出したかのように近くの木に行き、何かを引き千切る。
そしてそれを戒斗たちの所まで持ってくると、戒斗に見せていた。
「…恐らく、これが原因かと…」
「…キノコ?」
「はい。このキノコ、そこら中に生えているんです…それでこのキノコ、幻覚作用があるとされているんです…」
大妖精が言うには、ここら中に生えているキノコの大半が、このような幻覚を見せるものが多いらしく、他にも化け物茸と呼ばれる、息するだけでも体調を壊してしまうと言われるキノコの胞子も舞っているため、人間はおろか妖怪すらも立ち寄ることが少ないとのこと。
因みにこれから戒斗たちが会いに行く魔法使いがこの森にすんでいる理由は、ここ一帯のキノコに魔力を高める作用があるとの事で、自らの意思で住んでいるらしい。他の魔法使いもそうしているのだとか。
それを聞いた戒斗は、頭を押さえながら呆れていた。
「…そういう事か……つまり俺たちは、幻覚作用のあるキノコの胞子をどこかで吸って、それで道に迷っていた、そういうことか……後、チルノが幻覚を見たのも、こいつが俺たちより倍に胞子を取り込んでたからだろうな」
「そうみたいね……というか戒斗、アンタ化け物茸の胞子には犯されないんだね」
「らしいな。だが、化け物茸とやらの胞子は確実吸っている筈……」
「…戻り…ますか…?」
「そうだな……幻覚のせいで方向感覚が宛にならんから、適当に歩けば何処かには出るだろう。歩くぞ」
「ですね……そうしまsy」
戒斗はこれ以上胞子を吸わないように、左手で鼻を押さえ、チルノもさっきみたいにならないように、鼻をつまむ。
…まぁ、花粉や胞子の類は目に入ったりもするので、そこまで意味がないのだが……
ともかく、戒斗はこのまま適当に歩き続けるべきだと述べ、彼の言葉に賛同した大妖精が頷いたその瞬間……
何故かいきなり大妖精が手に持っていたキノコから、胞子が一気にばら蒔かれる。
当然、それを手に持っていた大妖精はその胞子を吸ってしまい……
「ふぁ、はぁぁぁぁぁ……」
「大ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?!!?」
「…物凄いタイミングで、胞子が放出されたな……」
「戒斗そんなこと言ってる場合じゃないよ!というかこれどうしよう!?」
「そんな事、俺が知るか!!」
大妖精は目を回しながら倒れてしまい、二人は慌てて彼女を支える。
見たところ気絶しているみたいだが、あんな真正面から胞子を浴びたのだ……気絶するのも無理はない。
戒斗は彼女に対して頭を押さえ、チルノもパニくってあたふたし始める。
すると突然、戒斗の体がフラフラになり始める。
恐らく化け物茸の胞子が、今になって響いてきたのだろう……むしろ森に入ってから今まで症状が起きてなかったので、これも無理はない。
それを見たチルノは戒斗に声を掛けるが、戒斗は心配要らないとだけ告げる。
「ぐっ…」
「戒斗!?今ふらって…」
「…どうやら、今更になって化け物茸とやらの胞子にやられたようだ……」
「嘘でしょ!?アンタ大丈夫なの!?」
「心配…する、な……これ、ぐらい………」
「ちょ、戒斗!?戒斗!!」
しかし、戒斗が少し歩こうとすると、その場にバタリと倒れてしまう。
それを見たチルノは大妖精を地面に寝かせ、彼の体を揺する。
が、戒斗はピクリとも動かず、そのまま気を失ってしまった。
~~~
「…っ……ここ、は……かなり散らかってるな…」
次に戒斗が目を覚ましたのは、木でできた天井で、起き上がると周りには、何やら本らしきものが大量に散らばっていた空間だった。
戒斗は軽く屈伸をしながら立ち上がり(どうやら床に寝ていたらしい)、もう一度辺りを見回す。
そして一冊の本を自身の足元から拾い、パラパラとめくって読んでみる。
(…ここは誰かの家、か?……しかし、さっきも思ったが……見事に散らかっているな…文字を読んでもわからんが、この本は魔導書か何かか?)
「―――あれ、起きてるぜ?」
すると後ろから声が聞こえ、戒斗は慌てて振り向く。
そこにいたのは、白のブラウスのような服の 上に黒いサロペットスカートのような服を着用し、スカート部分に白のエプロンを着けた服装をし、白いリボンがついた魔法使いが被ってそうな帽子を被った、全身白黒の、金髪ロングヘアーの少女だった。
少女のその姿を見た戒斗は、思わず唖然としてしまうが、少女は構わず彼に話しかける。
「よう!目ェ覚めたか?」
「…それはコスプレか何かか?」
「いやいや、いつもの服装だぜ?」
「…まぁいい。それより貴様は誰だ。後、ここはどこだ?」
「あぁ、そういや名乗ってなかったな。私は霧雨 魔理沙(きりさめ まりさ)。そしてここは私の家だ」
「魔理沙……つまり貴様が、霊夢の言ってた…」
少女―――霧雨魔理沙は自己紹介し、彼女の名前を聞いた戒斗は、霊夢の言ってたことを思い出す。
すると霊夢の名を聞いた魔理沙が「あぁ!」と言って、彼に近づく。
「あぁ!お前か!霊夢が言ってた駆紋戒斗ってやつは!」
「そうだが……新聞で既に俺の名は知れてると思ったが……」
「あー……最近新聞読んでねぇんだよ…」
魔理沙はあはは…と乾いたような笑いをする。
すると魔理沙の後ろからチルノが顔を覗かせており、それに気づいた戒斗は彼女に声を掛けていた。
「あ、戒斗。もう起きたの?」
「チルノ…無事だったか」
「うん。あ、もう自己紹介済ませた?」
「ああ。にしても驚いたぜ。珍しくアリスと共にチルノがやって来たと思ったら、アリスの人形たちがお前と大妖精を運んでたからよ。あ、お前も大妖精も、アリスが魔法で胞子の毒を取り除いてくれたらしいから。今度あったときにはそいつに礼を言っとけよ?」
魔理沙は戒斗たちがここまで運ばれた経緯を説明し、戒斗はそうかとだけ告げる。
すると大妖精も起きたのか、フラフラとした身体でこちらに向かってくるのが見える。
それを見たチルノは慌てて彼女を支え、戒斗と魔理沙も彼女に近づく。
「うぅ…まだ頭が……」
「Σ大ちゃん大丈夫!?」
「…真正面から胞子を浴びれば、そうなるだろうな…」
「まぁ、症状がそれぐらいなら大丈夫だろうよ。とりあえず、家の外に実ってる果物でも食べようぜ」
「あ、外に生えてたやつ?あれが霊夢が言ってた、謎の植物のやつのだよね?」
「ああ。というか、霊夢が言ってたって?」
魔理沙の言葉を聞いたチルノは、ここに来るときに見た植物の事かと尋ね、魔理沙は返事をする。
戒斗は当初の目的であるということで、それがどんなものかを霊夢に頼まれ、調査しに来たことを彼女に説明する。
それを聞いた魔理沙は、「成程ね」とだけ言うと、調査について承諾していた。
「霊夢がお前に任せたんなら、別に問題はねぇな。いいぜ、調べるの」
「すまん、助かる」
「というわけで、早速外に出るぜ」
魔理沙がそう言うと、玄関まで案内すると言って彼女についていくことになる。
…後から聞いたのだが、どうやら彼女の家は魔法店らしく(といっても、商品らしい商品はない上に、彼女自身が家にいないことが多いのだとか)で、あちこちに魔導書関連の本以外にも、マジックアイテムが散らばっており、それが適当に置かれたことで互いに干渉し合い小規模な魔法の森のようになっているとのこと。
それを聞いた戒斗は、だから家の案内をすると言ったのかと納得していた。
そうしている間にも、玄関に辿り着いたのか、入り口らしきドアが見えてくる。
そして魔理沙が玄関のドアを開くと……戒斗は外の光景に驚いていた。
外は日当たりがよく、広々とした場所……なのだが、戒斗が驚いたのはそこではない。
近くの伐採されてない木々や、魔理沙の家に巻き付いている植物……そしてそれに実る果実に対してだ。
しかも、戒斗はそれらを知っている……
何故なら……あの植物や果実は総て、【ヘルヘイムの森の産物】だから、だ。
戒斗はそれらに対し異常なほどの驚きを見せ、大妖精もその光景を見て呆然としていた。
「…!?!!?」
「うわぁ……これが霊夢さんが言ってた植物……」
「ねぇねぇ魔理沙~。あの実食べていい~?」
「おう、いいぜ!あまりにも多すぎるからバンバン食ってくれ!」
「わーい!いっただきまーす!!」
「Σちょっと待てぇぇぇぇぇぇ!?」
チルノは魔理紗に果実を食べて良いかを尋ね、彼女はそれを承諾する。
それを聞いたチルノは大喜びしながらその辺に実っていた果実を毟り、果実の皮を剥ぐと実を食べていた。
しかし事情を知っている戒斗はそれを止めようとして、彼女の胸元を掴み、吐き出すように叫んでいた。
「吐き出せ!今すぐそれを吐き出せ!?」
「んぐっ!?んーっ!んーっ!!」
「Σ戒斗さん何やってるんですか!?」
「ちょ、落ち着けって!チルノが窒息死する!!」
戒斗は必死にチルノの体を揺するが、それを大妖精と魔理沙が必死に止める。
そしてその間にチルノは、喉に軽く詰まりかけてた果実を呑み込む。
それを見た戒斗は頭を押さえながら、チルノを見るが、ある違和感を感じる。
…それは彼女の体に、なんの異変も起きてないのだ。
本来はその果実を食べた瞬間から、体の至るところからヘルヘイムの植物が覆い被さり、インベス化するはず……
それなのに、今目の前にいるチルノ(と書いて馬鹿妖精と戒斗は読む)からは、咳き込んでいる以外、全くの変化がないのだ。
そうしている間にもチルノはまた果実を取り、大妖精に食べさせる。
が、同じように食べた大妖精にも、変化が見られない……
「……あ、本当だ、結構いける!大ちゃん、これおいしいよー!!」
「…本当ね…甘くておいしい……」
「お、やっぱりそう思うか?」
「…」
訳がわからない、戒斗の頭に残ってたのは、ほぼそれだけだった。
いくら『幻想郷だから』と言われても納得できないほどに、戒斗の頭はこんがらがっていた。
そうしていると、チルノたちが彼にヘルヘイムの果実を持ってくる。
…恐らく、食べろと言うことだろうが、今の戒斗には、そんなのはどうでもよくなっていた。
「…?戒斗さん…?」
「どしたのー戒斗?食べないの??」
「そうだぜ戒斗。遠慮しなくても、まだまだいっぱい 実ってるんだからさ」
「…ぜだ」
「「「?」」」
「―――何故”ヘルヘイムの果実”が、ここにあるん だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして戒斗は、今日一番頭を抱えた上に、今日の出来事すべてに対しての思い、そして一番疑問に思ったことを、大声で叫んでいた。