東方神実郷~『仮面ライダーバロン』、駆紋戒斗が幻想入り~   作:火野荒シオンLv.X-ビリオン

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シオン「今日の内容は幻想郷では恒例らしい収穫祭での話です」
戒斗「それよりも作者、なんだこのサブタイトルは」
シオン「それぐらいしか思い浮かばなかったんだよ」

※今回もあとがきはありません、ご了承ください


第16話 戒斗、収穫祭でバイトする

ある日の人里……その日は朝から人々があちらこちらに忙しく動き回っていた。

たまたまチルノに連れてこられた戒斗はその光景を見て「なんだこれは」と呟いていると、何故か途切れ途切な声で大妖精が説明する。

 

「なんだこれは……何か始まるのか?」

「こ、これは、ですね……里で毎年行われる…収穫祭の…じ、準備をして、いるんです、よ……」

「…収穫祭?」

「そうだ。この里では毎年秋が終わる頃に行われるんだ」

「!この声は…」

 

収穫祭と言う言葉を聞いた戒斗が疑問に思っていると、聞き覚えのある声が彼らに話し掛けてくる。

振り向くと、少し離れたところから慧音が歩いてきており、彼らの元までやって来る。

 

「上白沢…」

「お前さんたちもここに来たと言うことは、収穫祭を楽しみに来たんだろ?」

「いや、俺はそこの煩い奴に無理矢理だ」

「∑それってアタイの事だよね!?」

「貴様以外に誰がいる……それで、収穫祭にしてはやけに賑やかすぎるな…どちらかというと、とことん騒ぐような祭りをやる雰囲気に感じるが…」

「まぁ、あながち間違いじゃあないな……数年前から、収穫した豊作の一部を料理して、出店を出したりするんだよ」

 

里の雰囲気に違和感を感じた戒斗の言葉に、慧音は軽く苦笑いしながら説明する。

……元々この人里では、秋の終わり頃になると、豊穣の神に次の年の豊作を祈る収穫祭が古くから行われており、同時に豊穣の神を実際に呼んで御利益を得ているとのこと。

それを聞いた戒斗は「神が実際にいるのか」と軽く驚くが、どうやらこの幻想郷ではわりと身近に神がぶらぶらと歩いていることがよくあるとか……同時にそんなことを聞いた戒斗は「その辺をぶらついているものなのか…」と唖然と呟く。

…話を戻すとして、その収穫祭を更に盛り上げようと言う形で出店を出すようになったとのこと……それに関しては主役である豊穣の神も承諾しているらしい…

 

「出店自体のアイデアは本当、いつの間にかそんな流れになったからなぁ……まぁ、中には単に金儲けをしようとしてるやつがいたりもするが」

「…成程……つまりあそこで必死に芋を大量に欲している巫女もか」

「か、戒斗さん……!」

「あ、あー……うん……あいつ、最近妖怪退治の依頼が来ないって騒いでたからな……というかお前さん、よくあいつが金ないって分かったな」

「以前チルノと霧雨がそれっぽいこと口にしていたのを聞いただけだ」

 

一通りの話を聞いた戒斗は成程と呟きながら、ある方向へ視線を向ける。

……その視線の先には、芋の農家であろう人物に、霊夢が決死に交渉している光景が……

---アイツ、巫女なんだよな………全く威厳が感じられん…

誰もがごもっともと思うことを戒斗が考えていると、次の瞬間、霊夢が彼らに気付き、思わず視線が合う。

そして……何故か、彼らの元へと歩み寄ってきていた。

 

「…アンタたちも来てたのね…」

「まぁ、な…」

「…」

「…なんだ……」

「…何じろじろと見てんのよ……」

「…見てたら悪いか」

「悪いわよ。言っとくけど、見世物じゃあないんだからね……アンタたちも、さっきから何じろじろ見てんのよ、退治されたいのかしら」

「「∑理不尽!?」」

 

理不尽なまでに退治するとチルノたちに向けて言い放つ霊夢に対し、二人(特に大妖精は軽く涙目になりながら)は思わず叫ぶ。

その一方で、慧音が呆れぎみに霊夢に告げる。

 

 

「霊夢……お前なぁ……流石にどうかと思うぞ、それは…」

「仕方ないじゃない。ここ最近、悪さをする妖怪が少な過ぎて、逆に私の仕事が減っていってるもの……異変も滅多に起こるものじゃあないし…お陰で最近の生活が少し苦しくなってきたわ」

「…貴様も貴様なりに苦労しているんだな」

「何、同情しているの?同情してくれるなら代わりにお金頂戴よ」

「いつの頃のドラマの台詞だそれは。それに言っておくが、俺も金はない」

 

霊夢の話を聞いた戒斗がほんの少し憐れに思っていると、彼女からなら金をくれと迫られる。

しかしお金を所持していないのは彼も同じで、彼は即座に所持してないと告げていた。

するとそれを聞いた慧音が驚きながら、今までどうやって過ごしてきたのかを尋ね出す。

 

「ええっ!?お前、一銭も持ってないのか!?」

「そうだ」

「……それなのにどうやって……?」

「それに関しては、アタイの家にいそーろーさせてるからよ!」

「お前の家にか?……何もしてないだろうな…?」

「おい、なんだその信用できない眼差しは」

 

チルノの家に居候しているのを知った慧音は、何かやましいことをしていないだろうかと疑うような眼差しをしながら、戒斗の方を見る。

勿論戒斗はそれを否定しており、チルノに至っては「もし大ちゃんにそんなことをしたら今頃アタイが懲らしめてるよ!」と自慢げにずれたことを述べていた。

それを聞いた慧音は安堵した声をあげつつ、再度戒斗に尋ねる。

 

「そうか……けどお前さん、ずっとチルノの家に居候する訳じゃあないんだろう?」

「あぁ。今は河城に頼んで野外でも妖怪に襲われなくなるテントを作ってもらっているところだ」

「な、成程……けど、一銭もないんだよな?大丈夫なのか?特に食事とか」

「あー……確かにね……それにもうそろそろ、動物たちも冬眠し始める頃だから、今更狩ろうとしても遅いと思うわよ……幻想郷の冬は、積もるときはとことん積もるし」

 

戒斗の今後の雲行きが怪しくなり始め、二人は大丈夫なのだろうかとひたすら疑問に思う。

当然戒斗もその事に関しては悩みの種だったのか、ほんの少し渋い顔をしており、それを見た慧音は「…よし」と呟く。

 

「…よし、決めた。戒斗、お前、うちでの出し物の手伝いをしろ」

「…何?」

「実は寺子屋でも子供たちがお店を出したいって騒いでてな……勿論手伝ってくれた暁には、売れた利益の3割をやるよ」

「ちょ、それ狡くない!?私は!?」

「お前の本業は妖怪退治と異変解決だろ……どうだ、戒斗。少し少ないとは思うが、一銭も持たないまま冬を越すよりはマシだろう?」

 

慧音の提案を聞いた戒斗は、その場で深く考える。

……確かに時期的には動物たちも既に冬眠の準備を始めている……探そうとしてもなかなか見つからないだろう……

かといって毎度チルノの家に食べ物をもらいにいくのもそれはそれで失礼である……そもそも妖精は基本的に食べ物がなくても普通に生きてはいけるらしいため、万が一もらいに行ったとしても、ない可能性だってある。

そういう意味では、お金で食材などを買う方が、冬を越すのには楽であろう……

一通り考えた戒斗は「いいだろう」と慧音の方を見る。

 

「俺としても、そっちの方が楽になるだろうからな」

「そうか、引き受けてくれるか!」

「あっ、それだったらアタイも手伝いやりたーい!!」

「ん、構わんぞ……大妖精はどうする?」

「え、わ、私は……」

「大ちゃんも一緒にやろうよー!!」

「わわっ、ち、チルノちゃん……!わ、わかったから服……引っ張らないでぇぇ」

 

するとチルノも興味を持ったのか、手伝いをしたいと名乗り出し、慧音はそれを快く承諾する。

それと同時に大妖精も一緒にやるかと尋ね、大妖精はどうしようかと悩む。

……のだが、チルノが強引に誘っており、服を引っ張られながら誘われている大妖精は流れるように一緒にやることになっていた。

と、戒斗が慧音の元まで歩み寄ると、小声で彼女に呟く。

 

「…今回ばかりは助かる。すまないな」

「なーに、いいってことさ。それに、困っているやつがいたら放っておけないし」

「私に対しては冷たいのに?」

 

 

 

~~~

 

 

 

「---おぉ、やってるやってるー。今年も賑やかに始めたわねぇ」

「ちょっと待ってよー!置いてかないでよー!」

「んもー遅いわよー」

 

正午を回った頃………人里の上空に、二人の少女が現れる。

一人は、だぼっとして肩と袖のふくらんだ黄色い上着に、稲穂や五穀のような植物の意匠が黄色で施されたオレンジ色のエプロンを纏い、裾は少し横の方まで続くフリルに黒色ロングスカート、首に黒い細チョーカーを付けた、前の方向にカールしたボブの金髪で、もう一人は細いシルエットをした赤い上着に、裾が楓の葉を思わせるような形の切り欠きをした、グラデーション生地のロングスカートを着た、ウェーブのかかったボブの金髪に楓を模倣した髪飾りをしている…

前の方向にカールしたボブの金髪の少女---秋 穣子(あき みのりこ)は、ウェーブのかかったボブの金髪の少女---秋 静葉(あき しずは)の方を向きながら呆れた表情をする。

 

「姉さんったら、これぐらいでバテてどうするのよ………」

「あ、アンタが初っ端から飛ばすからでしょ…」

「あーはいはい、私が悪いですよーだ…と、気を取り直して……今年の出店は多いねぇ……どれから食べに……ん、この香りは……」

「あ、ちょっと、待ちなさいってばぁ!」

 

ふと、人里を眺めていた穣子が、何かの匂いを嗅ぎつけたのか、ふらりと人里へと降りていく。

その際人々が「穣子様だ!」「豊穣の神様が来られた!!」「姉の方も既に来られているぞ!!」と彼女たちの姿を見て騒ぎ出すも、穣子は気にせずに、匂いの元まで向かっていく。

そしてたどり着いた場所は……慧音が経営する、寺子屋の前だった。

それを見た彼女が不思議そうに首を傾げていると、外で何故か客引きをやっているチルノを見て、彼女を呼び止める。

 

「…何故寺子屋から、芋の芳ばしい匂いが……?」

「…穣子、アイツに聞いてみれば?」

「らっしゃいらっしゃーい!!芋を使ったお菓子がいっぱいだよー!!」

「ん、氷妖精じゃないの。何、もしかしてアンタたちがそこで出店でも出してるの?」

「んお?八百万…だっけ?の双子じゃん。アンタたちも来たの?」

「来たの?って……元々私を祝う祭りみたいなものだから、来ない訳ないでしょ…後、私の質問に答えなさいよ」

「質問?えー……と、あ、ここでもで店を出してるのかだっけ。むしろ出してなきゃアタイがここで客引きなんかやってないわよ。バカじゃないの??」

((アンタには言われたくない…!))

 

チルノの言葉に二人は心の中で同じことを思う。

が、チルノはそれに気付かないまま、寺子屋によっていくように勧めていた。

 

「それよりも、アンタたちも食べてきなよ!アタイも試食用のをちょっとだけつまみ食いしたけど、ほっぺた落ちそうになるぐらい美味しかったわよ!!」

「…そんなに美味しいの…?」

「モチロン!嘘だと思うなら食べてきなよ!!」

 

チルノの言葉を聞いた二人は、多少疑心難儀になりながら、寺子屋のほうへと向かっていく…

そして入口に差し掛かった所で、入口から魔理紗が満足そうな顔をしながら出てきていた。

 

「ふぅー、食った食ったーっと」

「あ、いつぞやの白黒魔法使い!」

「ん、八百万の双子じゃん。お前らもこの店に?」

「そうですけど……」

「へぇ、ならよかったな。もう少ししたら材料の都合で、店仕舞するかもって慧音が言ってたからな」

「そ、そんなに人気なの!?」

「あぁ!ちょっと高い上に値引きもしてくれなかったけど……文句無しに美味かったぜ」

 

魔理紗は二人に告げ終えると、じゃあなと言いながらその場から立ち去っていく……

一方の二人は、それほどまでなのかと思いつつ、意を決して中へと入る。

するとまず最初に寺子屋の子供たちが「いらっしゃいませー!!」と元気良く挨拶をしながら出迎え、少し雑ではあるものの、おもてなしの準備をしていた。

そしてこちらへどうぞと二人が案内された場所は、普段子供たちが授業の時に使っている教室……しかし教室は既にいっぱいいっぱいで、それを見た二人は驚いた表情をしていた。

 

 

「嘘っ!?多すぎじゃない!?」

「しかも……こんなに美味しそうなのが…!」

「…アンタたちも来たの?」

「げっ、その声は…」

 

突然背後から声が聞こえ、穣子が振り向くと、頭巾とエプロンを身に着けた霊夢が、そこに立っていた。

それを見た穣子が引きつった表情をしており、それに関して霊夢がこめかみをヒクヒクさせる。

 

「…何よ、その表情は」

「いや、アンタこそ、何よその格好は。ここで何してるのよ…」

「バイトよ。バ・イ・ト。ひたすら慧音に泣きすがったら、条件付きでやらせてもらえたのよ」

(巫女としての威厳はないのかしら…)

「―――おい、霊夢、上白沢は知らんか」

 

静葉が霊夢の巫女としての威厳について考えていると、彼女の後ろから戒斗が現れる。

しかし、普段のコートのようなものは着ておらず、身軽な格好をしており、その手にはボウルと泡だて器を持っており、それを見た穣子が驚いた表情をする。

 

「慧音?見てないわよ…どうかしたの?」

「後少しで材料が尽きる。だからメニューを一気に減らすことになるか、いっそのこと店じまいをした方がいいと伝えようと思ってな」

「え、えぇ!?お、男が作ってたの!?」

「…こいつらは?」

「そいつら?収穫祭の主役といえば分かるでしょ。もう一人は姉妹関係だけど」

「ちょ、説明雑すぎない!?」

「そして私はおまけ扱い!?」

「成程……貴様が豊穣の神か…」

「そしてこいつも口悪いわね!?」

 

霊夢の言葉を聞いた戒斗がゆっくりと穣子たちの方を見つめる。

が、見つめるだけ見つめた後、霊夢に「もし上白沢を見つけたら伝えておけ」とだけ告げると、その場から去っていってしまう。

それを見た穣子は「何よあいつ」と不機嫌そうな顔ながら呟いていた。

 

「感じ悪いわね……あんなんでよく出店を開こうと思ったよね」

「出店に関してはここの生徒たちの案で、アイツは金に困ってたから、慧音の提案に乗っただけよ……それにアイツ、なんやかんやで世話好きっぽいし……さて、アンタらもここに来たんだからさっさと注文して、さっさと有り金置いてきなさい」

「「そしてコイツは私たちにここで食べることを強制すると」」

 

戒斗が去った一方で、霊夢は堂々と神相手にここで食っていけと強制させる。

それに対し二人は息を揃えて呟くも、過去に彼女と対峙した時容赦なく打ちのめされたこともあり、流石に暴れるのは無理だろうと判断すると、辛うじて座れるスペースに渋々座っていた。

そして近くに置いてある手書きのメニューを手に取ると、それをじっくりと見渡す。

 

「えー、と……スイートポテトケーキ……芋のケーキってことよね?」

「カボチャのプリンに……リンゴのタルト……いっぱいあるわね……」

「飲み物も多い……ブドウジュースにミカンジュース……」

「……早く決めないと、さっきアイツが言ってたように、下手したら店じまいすることになるわよ」

「ちょ、急かさないでよ……じゃあ私、スイートポテトケーキとミカンジュースね」

「それじゃあ私はカボチャマフィンとリンゴジュースを…」

「りょーかいっと。伝えてくるから待ってなさい」

 

注文を決め終えた二人は霊夢に告げると、彼女は伝票を書きながらその場を去っていく。

そして2分後……寺子屋の子供が、先に飲み物を持ってきて、彼女たちに手渡していた。

そのすぐ後に霊夢がやって来ると、二人が注文したお菓子が目の前に置かれていく。

その際仄かに薫る美味しそうな匂いに、二人は思わず息を飲み込む。

 

穣子はお菓子と共に渡された箸で、スイートポテトケーキを軽く切り離すと、それをつまみ口に運ぶ……

静葉の方もカボチャマフィンを1つ手に取ると、それをゆっくり口に運ぶ……

そして……自然と口からポロリと、言葉を発していた。

 

「……美味しい……!」

「!何これ、美味しすぎるんだけど!!」

「ちょ、姉さんうるさい!……でも……ちゃんと芋の味を残しつつ、甘い味わいを引き出している……」

 

穣子はそう呟きながら、どんどんペースをあげてスイートポテトケーキを口にしていき、静葉も勢いよく残りを食べていく……

そして数分もたたないうちに完食してしまい、二人は満足そうな顔をしていた。

 

「はーっ……美味しかった~」

「…あの男、中々なものね……正直、見直したわ」

「うーん……持ち帰りできたらいいのになぁ……」

「---えー、お客様方、申し訳ございませんが、食材が限界を迎えているため、このまま店じまいをしようと思います」

 

静葉が満足した表情をしながらお腹をさする一方で、穣子は戒斗に対し関心を抱く。

と、それと同時に慧音が現れ、彼女がそろそろ店を畳むと客たちに告げていた。

 

 

 

~~~

 

 

 

店じまいをして1時間後……寺子屋の外では慧音が大きな声で笑いながら、今回の件で得た利益の一部を、戒斗に手渡していた。

 

 

「はははっ、まさかあそこまで繁盛するとはなぁ!ほら、戒斗。約束の金だ」

「ちょっと、私の分はどうしたのよ」

「お前のもちゃんと渡すから少しは落ち着け。それよりも、約束はわかってるよな?」

「勿論よ。紫に頼んで、元々ここにあった食材や調味料とかは補填してもらうようにしておくわ。アイツを釣る餌は用意してもらったしね」

 

霊夢が売り物にせず紫との交渉にとっておいたお菓子の入った袋を掲げながら告げる一方で、お金が入った袋を手に持つ戒斗にチルノが話し掛ける。

 

「にしても戒斗、料理得意だったんだ」

「それに関しては私も同意だな……おまけに味も非常によかったし」

「…一人で暮らし始めたときから料理を作っていたからな……大したことじゃあない」

「そ、それでもすごいですよ……少ない素材であれだけ作れるなんて……正直驚きですよ……」

(…本当に大したことじゃないがな……強いて言えば、向こうの世界には当たり前のようにあった道具がないせいで、不便だったが)

 

大妖精は以前戒斗から料理はできると聞いていたのもあり、心の底から彼のことを凄いと感じる。

しかし戒斗はそれすらにも特に何も言わず、それと同時に、今回の件で元いた世界と幻想郷の文化の差を感じた彼は改めて不便さを思い知る。

いずれその事に関して苦労するだろう……戒斗がそう考えていると、彼らの元へ誰かが歩いてくるのが見える。

 

「…あれは……」

「あ、双子じゃん……何しに来たんだろう……」

「---よーやく後片付けが終わったみたいね」

 

やって来たのは秋姉妹で、寺子屋が片付いたのを見据えてきたのか、彼らを見ながら穣子が呟く。

一体何しに来たのだろうかと戒斗たちが考えていると、突然穣子が戒斗に向けて指を指しながら叫ぶ。

 

「そこの!……えーっと、とりあえず男!」

「…駆紋戒斗だ」

「あ、そう……じゃなくて!……お、男が作ったにしては、中々美味しかったわよ……」

「…わざわざそんなことを伝えに来たのか」

「何よ、文句ある!?」

「ちょ、穣子、落ち着いて…!」

 

彼の言葉にイラッとしたのか穣子が彼に殴りかかろうとするも、慌てて静葉がそれを止める。

少しして落ち着いたのか、呼吸を整えながら再度彼に向かって叫ぶ。

 

「…改めてっと……アンタ、次の収穫祭でも、店を出しなさい!絶対にだからね!!」

「…何を言い出すかと思えば……そんなことか…」

「…アンタはそんなに喧嘩を売りたいのか……?」

「か、戒斗さん……!」

「とにかく!神様に出すように言われてるんだから、絶対に出せよ!絶対にだからね!!」

「…ふん……気が向いたら、な………帰るぞ。世話になったな、上白沢」

「えっ、ちょ、待ってよ戒斗!」

「あっ、か、戒斗さん、チルノちゃん、待って……お、お世話になりましたーっ!!…あっ、お、置いてかないでー!!?」

「あっ、こら!?何勝手に帰るのよー!!」

「…豊穣の神相手にあぁまで言わせるとはな……よっぽど気に入られたんだな、戒斗のやつ」

「みたいねぇ……というかアイツ、あれだけの腕があるんなら、店でも開けばいいんじゃないかしら」

「ははっ、それは名案だな」

 

一通りの話を聞いた戒斗はあたかも興味がないと言わんばかりにあしらいながら、その場を立ち去っていく。

それを慌ててチルノたちが追いかけ、勝手に立ち去られた穣子は怒りながら彼に向かって叫びながら後を追いかけ始める。

その一方で慧音が彼らの後ろ姿を見ながら呟き、同時に霊夢の言葉に笑いながら答えていた。


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