東方神実郷~『仮面ライダーバロン』、駆紋戒斗が幻想入り~   作:火野荒シオンLv.X-ビリオン

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第15話 募り始める思いと這い寄る"白"

香霖堂を出て約1時間後………戒斗たちは霖之助からロックシードを購入した殆どの者たちから、ロックシードの回収に成功していた。

幸いにも使用自体した者たちはいなかったようで、お金を返金する度に霖之助は安堵していた。

そして現在……彼は売った数と回収できた数を計算しており、計算を終えるとうんと呟く。

 

「……うん、後1つだけ、最初に売ったやつを回収すれば……」

「総て回収し終える、か……そう上手くいくとは思わんがな」

「けどよかったですね……奇跡的に使った人がいなくて……」

「みんな持っておけば幸せに~的な感じの噂が流れてたらしいからね」

『キィィ』

 

どうやら購入した残りの者たちは、持っているだけで幸せになれるという噂を耳にしたらしく、それがきっかけで購入することになったらしい……

その為か幸いなことに、誰もロックシードそのものをあまり触らずにいたため、何も問題なく回収することができたと言う訳だ。

その事に関し大妖精は安堵の声をあげるものの、戒斗は「だが」と話を続ける。

 

「一番の問題は解決していないだろう」

「あぁ……一番最初のお客さんから回収し終えなければならない」

「購入した人たちの話だと確か……魔法の森の近くで目撃したらしいですね」

「らしいな……そうとわかれば、戻るぞ」

 

彼女の言葉を聞き終えた戒斗は、魔法の森に戻ることを皆に伝える。

その言葉に全員が同意すると、魔法の森へと向かっていった。

 

 

 

~~~

 

 

 

魔法の森の入口付近……唯一人里の者たちがその付近まで行くことができる道を、注意深く確認していく…

が、それらしき人物は見当たらず、全員一度その場に立ち止まる。

 

「うーん……人里からここまでの道のりにいると思ったんだが……」

「…いない……ですね…」

「…」

「何処かに隠れているのか、もしくはたまたまこの辺にいなかったのか……戒斗?」

 

チルノたちがうんうんと悩んでいると、突然戒斗がどこかへ歩き出す。

そしてトランプカードを一枚取り出すと………その辺の茂みが生い茂った場所に投げ込んでいた。

そのまま茂みに放り込まれると……彼がトランプカードを投げ込んだ場所から、突然人………それも白いフードを被った者が飛び出した。

 

「---ッ!?」

「「「!?」」」

「さっきから視線を感じてはいたが、やはり隠れて様子見していたのか……」

「えっ、戒斗は気付いていたの!?」

「ぜ、全然気づかなかった……」

「(コイツら……まぁいい…)貴様が最初にそこの男からロックシードを購入したやつだな」

 

戒斗は腕を組みながら、白フードの人物に向けて告げる。

一方白フードの人物は舌打ちをしながら、戒斗の方を睨み付けてきた。

 

「チッ……まさかバレてるとはなぁ………こうなりゃあさっさと始末してやるぜ!」

「!ロックシードを取り出してきた!?」

「インベスを召喚する気か…!」

 

白フード(声は少し老いたような男性のもののようだ)は懐から、ロックシードを1つ取り出すと、それを解錠する。

すると彼の頭上から戒斗が変身するときと同じクラックが現れ、そこから初級インベスが現れていた。

 

「い、インベス……!」

「あれが最近噂の……てことはやっぱりチルノのも…」

「今はそんなことどうでもいいでしょ!!」

『キィィ!!』

「ふん、さっさと倒せばそれで…」

「と思っているだろう?オラ、インベス!!"これ"をたらふく食いやがれェ!!」

「「「!?」」」

 

戒斗が変身しようと戦極ドライバーを取り出したと同時に、白フードは懐から何かを取り出す……

それは"大量のロックシード"で、それを呼び出した初級インベスに向けてひたすら投げていた。

それを見た戒斗は不味いと叫びながら変身し、初級インベスに向かっていくも、そうしている間に初級インベスは自身に向けられて投げられてきたロックシードを口にしていく。

 

…すると初級インベスが突然咆哮のようなものをあげ、その体をみるみる変貌させる………

その姿はまるで猪を思わせる風貌をしており、背中に瓦状の甲羅を背負っている………

その上上級のインベスと違い、どんどん巨大になっていく……

巨大になった猪のインベス………"イノシシインベス"を見たチルノたちは驚愕しており、バロンBAに至っては舌打ちしながらバナスピアーを構え、なおもイノシシインベスに向かっていく。

 

「うっそー!?おっきくなったーっ!!?」

『キィィ!キィィィ!!』

「あ、ぁ、ぁ……!」

「ちょ、インベスってあんな風に変化するのか……!?」

「チッ、間に合わなかったか……」

『ブモォォォォォ!!』

「!チィィ!」

 

しかし、イノシシインベスはバロンBAが向かってくるのを見ると、首を振るって牽制する。

バロンBAは咄嗟に回避するも、直後にイノシシインベスの背中の角のようなものから、真空波のようなものが放たれ、回避したばかりですぐに動けないバロンBAは真空波を受けてしまっていた。

 

『ブモォォォォォォォ!!』

「なっ……ぐあぁっ!?」

「「戒斗(さん)!」」

「ははっ、こいつはスゲェ!!やっぱりやつの言うことは……おい、アイツらを潰せ!!まずはあの鉄の塊を身に付けた赤いやつだ!」

『ブモォォォォォォ!!』

 

白フードに命令されたイノシシインベスは咆哮をあげながら、バロンBAに向かって突進してくる。

バロンBAはそれに気付くと、ギリギリのところで攻撃を避けていた。

 

「ッ…召喚元のロックシードが残っているせいか、自由に操ってくるか……!」

「戒斗!またそっちに来るよ!」

「分かってる!はぁぁ……」

『バナァナスカァッシュ!!』

「…せいっ!!」

 

バロンBAは咄嗟にスピアビクトリーを発動すると、イノシシインベスに向かって突きを放つ。

流石に突進した状態では避けられなかったのか、攻撃はそのまま命中、イノシシインベスは悲痛な泣き声を放っていた。

 

『ブモォォォォォォォォ!!』

「おぉ!!決まったそ!!」

「いけー!そのまま倒しちゃえー!!」

『キィィ!!』

「貴様らも見てないで手伝え!!」

「(や、やべぇ………!このままじゃあ…!)えぇい、何してやがる!さっさと起きやがれ!!そして今度は…あいつらを狙うんだ!!」

「「「!」」」

 

白フードの男はそう叫びながら、チルノたちのいる方角を指差す。

それに気付いた三人は驚くと同時に、立ち上がったイノシシインベスは彼女たちに向かって突進してくる…

その場にいた三人は慌てて避けようとするも、その際大妖精が誤って転んでしまい、一人だけ逃げ遅れてしまっていた。

 

「!まずいっ!!二人とも、避けるんだ!!」

「分かっているよ!」

「え!えと…!あっ…!?」

「!?大ちゃん!」

『ブモォォォォォォォ!!』

「あ、あ、ぁ……」

 

 

大妖精は慌てて立ち上がろうとするも、既にイノシシインベスは彼女とほんの数メートルの差があるところまでせまっており、それを見た大妖精は、恐怖で動けなくなってしまう…

それを見たチルノが彼女を守ろうとスペルカードを取り出した……と、同時だった。

 

「大ちゃん!今助け…」

「―――貴様の相手は、この俺のはずだ!」

『カモォン!バナァナァスパーキングッ!!』

『ブ、ブモォォォォォォ!!?』

 

標的を変えたがためにフリーになっていたバロンBAがカッティングブレードを三回倒し、バナスピアーを地面へと突き刺す。

すると大妖精を守るようにバナナ状のエネルギーが地面からいくつも現れ、同時に目前まで迫っていたイノシシインベスにも数本ほどのエネルギーの塊が直撃していた。

そのままイノシシインベスを大きく跳ね除け、イノシシインベスはほんの少しばかり宙を舞った後、勢いよく地面に叩きつけられていた。

それを見た白フードは驚愕し、大妖精に至っては胸元に手を当てながらバロンBAの方を見つめる。

 

「な、ぁ…!?」

「あ…え…」

「…戦いの邪魔だ。さっさと空中にでも逃げろ」

「!はっ、はい!!」

 

大妖精は我に返ると、バロンBAに向かって深々と頭を下げながら、その場を離れる。

その一方でチルノが彼女の所まで飛んでくると、彼女に怪我はなかったかと尋ねてくる。

それに対し彼女は平気だよと告げながら、バロンBAの方を再び見つめる。

 

(戒斗さん…私を助けてくれたのかな……)

「?大ちゃん、なんか顔が赤くなっているけど…ほんとに大丈夫?」

「ふぇ?ほ、本当に??特になんともないけど……そ、そんなに顔、赤い…?」

「うん」

 

突然顔が赤くなっていることを告げられた大妖精は、自分自身どうしてそうなっているのかと困惑する。

と、彼女が困惑している間にバロンはマンゴーアームズへとアームズチェンジし、必殺技の体勢に入っていた。

 

 

 

『カモォン!マンゴーアームズッ!!ファイト・オブ・ハァー・ン・マーッ!!カモォン!!マンゴースカァッシュ!!』

「これで止めだ……!ハァァァ…せぇい!!」

『ブ、ブモォォォォォォ!!!』

 

バロンMAがマンゴパニッシャーを持ちながら走ると、そのまま大きくイノシシインベスの顔面に叩き込む。

諸に攻撃が直撃したイノシシインベスは悲痛な声をあげながら、そのまま爆散していた。

それを見た白フードは絶望に満ちた顔をしながらその場から逃げようとする…

しかし、白フードの後ろには霖之助が先回りしており、彼はにっこりと笑いながら、静かに肩を掴んでいた。

 

 

 

 

~~~

 

 

 

「それじゃあ、後は私が調べておくわ…不本意だけど」

「すまないな、紫。お礼はまた今度するよ」

「えぇ。さぁ、貴方には色々話してもらうからね?」

「い、嫌だ……嫌だぁ!!」

 

自体が収束して数時間後……白フードはこの騒ぎを聞きつけてやってきた霊夢に無理矢理呼び寄せられた紫が引き取って、今回の件について話を聞くと言う形で幕を閉じた。

紫が白フードを連れて去った後、霊夢が「にしても」と呟きながら、戒斗の方を向く。

 

 

「まさかアンタが使うやつと同じやつで、こんな騒動が起こるなんてねぇ…「向こうから変な音が響いてくる」って、里が軽くパニックになってたわよ」

「だろうな」

「だろうな、って…」

「まぁまぁ…それよりも戒斗、今回は色々ありがとう」

「ふんっ、勘違いするな。俺はただ、後々疑いをかけられると面倒だと思ったからやったまでだ」

「えー、本当かなぁ…いでっ!?ちょっとー!何も殴らなくてもいいじゃーん!!」

 

霖之助が戒斗に今回の件に関して礼を言うも、戒斗は自分のためにやったと告げる。

が、それを聞いたチルノは本当かどうかと疑いながら戒斗の顔を見ており、それが癪に障ったのか、戒斗は彼女の頭を軽く殴っていた。

それを少し離れた場所で、大妖精が見ており、彼女は戒斗の顔を見るや否や、胸元に当てていた手をギュッ、と握り締めていた。

 

 

(―――なんだろう…時々、戒斗さんを見たりしていると…変な感じがする……それに、どんどんその気持ちが強くなっていく気が……)

 

 

 

 

 

~~~

 

 

 

「…どうやら少し早めに片が着いてしまったようだ…が、あの下賎な男にしては、よくやった方だ」

 

 

幻想郷の、とある場所……そこに一人の長い白髪の青年が空を見上げながら、立ち尽くしていた。

青年は懐から何か取り出すと、それを見てニヤリと笑う。

 

「まさか森の裂け目が、この幻想郷ではばれずに開けるとは……あの八雲紫すら気付かないとは驚いた…あの下賎な男……そして『進化への苦痛を耐えた者』、駆紋戒斗には感謝しないと…おかげで僕たちがやりやすいやり方で、アダム様を迎え入れることがたやすくなったから、ね…」

 

青年は懐から取り出したもの…ロックシードをその辺に投げ捨てると、今度は魔法の森を眺める。

 

 

「後は……せめて後3、4人、【候補】を探さないと…それと最初に目をつけた"彼女"と早めの接触を……?」

 

青年がブツブツと呟いていると、ふとどこかへと視線を向ける…

そして……

 

 

 

「―――これは好都合だ…もうじきこの幻想郷は【冬】だから、逢える可能性はないと思ったのだけど……絶好のチャンスだ………!」

 

 

 

そう呟いた途端、青年はその場から姿を消していた。

…まるで、最初からそこに、誰もいなかったかのように………


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