東方神実郷~『仮面ライダーバロン』、駆紋戒斗が幻想入り~ 作:火野荒シオンLv.X-ビリオン
???「そのわりには私と戒斗が対して絡んでないような気がするんだが」
シオン「すまぬぅ……こんなダメ作者ですまぬぅ………!!」←血涙流しつつ
※今回も自分自身出来がいいとはあまり思っていませんが、ご了承ください
戒斗は現在、頭を悩ませていた。
正直、彼にとってこのような経験はまずあるはずもないだろう……
だが………
「はーい、皆静かにー。今回は特別講師として来てもらった、駆紋戒斗さんだ。今日は彼からさまざまな話をしてもらおうと思っている。皆、彼に挨拶だ」
「「「よろしくおねがいしまーす」」」
(…何故こうなった…)
…現在、とある建物にて、彼の目の前には数十人の子供がいた。
そして彼の隣には一人の女性が子供たちに話しかけており、子供たちは彼に向かって元気よく挨拶している。
だが………今の彼にとっては、何故このような状況になったのか、それしか頭になかった。
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遡る事一時間ほど前………それは戒斗とチルノ、そして大妖精が人里に訪れた事が、事の発端だった。
その日戒斗は、この幻想郷についてそこまで知らないと考えていた。
現在彼は、突然の出来事でこの世界に迷い込んだ身でしかない…それと同時に、彼の元いた世界に戻る手段は殆どなかった。
その為彼はこの世界で暫くの間暮らすことになった………のだが、彼はこの世界の地理について、全く知らないことを思い出す。
ある程度様々な場所には行ったものの、それだけでは完全に把握しきれたことにならない……
そう思った彼は、一応のために『幻想郷を一通り巡って見る』という事を考えたのだ。
一応ダンデランナーによる空中走行の手段を考えたものの、この世界では空でも弾幕と呼ばれるエネルギー弾が飛び交うため、下手すれば巻き沿いを食らうだろう。
それに何より、地上からのルートも把握しておいた方が、今後何かしらの役に立つだろうと思った彼は、この世界の住民であるチルノと大妖精に、一通りの案内を頼んだのだ。
それによってまず最初に立ち寄ったのが、この人間が住む人里だった。
「ここが人里か……随分と賑やかだな」
「はい。ここは基本的に、悪い妖怪が襲ってくるなんてことはないので…」
「何故だ?」
「ここには妖怪退治を専門としているやつも少なからずいるからねー。何よりここ、博麗神社に近いし」
「そういえば霊夢は妖怪退治を生業にしていると聞いたな」
「そ。最近妖怪たちの間では赤い通り魔とか言われているぐらい容赦ないからね、あの巫女は。ちょっとでも癪に触らせたりすると酷い目に遭わされるからね」
(あの女は妖怪に何か恨みでもあるのだろうか…)
強ち間違いでもないチルノの言葉に、戒斗は霊夢の扱いについて考える。
その傍では大妖精が「ででででも普通に接していれば優しい人なんですよ!?」と何故か必死になってフォローしているが、戒斗は構わず人里を歩いていく。
その道中、村の者たちはチルノや大妖精に手を振ったりなどしており、戒斗はそれに関しても疑問に思う。
「…しかし、いくら妖怪に襲われることが少ないからといって、お前らには警戒心すら出してないな」
「アタイはよくここに来るし、大ちゃんもここに来ることは多いからねー。それにアタイは人間自体を襲うことはしてないし」
「でもチルノちゃんの場合、ここの皆に迷惑がかかるような悪戯ばっかりするから、よく霊夢さんや慧音(けいね)先生に怒られたりしてるでしょ?」
「うっ……それは言わないでよ……」
大妖精の言葉にチルノは顔をしかめる。
聞くところによればチルノはよく里の者たちに悪戯をするらしく、その度に霊夢等に叱られるらしい……
それを聞いた戒斗はアホだなと呟きつつ、先程の会話に出てきた慧音という人物について尋ねる。
「…今さっき話に出てた、慧音というやつは誰だ?そいつも妖怪退治を生業にしているか何かか?」
「い、いえ……慧音先生はですね……」
「---おや、大妖精ではないか!」
と、突然大妖精の名前を呼びながら、一人の女性がこちらに向かってくる。
その女性は腰に届きそうなほど長い銀色の髪をしており、上下全体がひとつになっている青い服を着た、パッと見では20代前半ぐらいで、女性はゆっくりと彼らの元へ歩み寄る。
それと同時にチルノがその女性の名前を叫びながら、彼女の元へと走り出していた。
「あ、けーね先生!」
「ん、チルノもいたのか……と、久し振りだな、大妖精。体調はどうだ?」
「はい、今は大丈夫です」
「そうか…お前のことは新聞で取り上げられていたからな……こうして動けるようになるまで回復してくれて嬉しいよ…ところで、そこの彼は?」
「あ、この人は、その…」
「駆紋戒斗だ…お前の方こそ誰だ」
「ん、私か。私の名は上白沢(かみしらさわ)慧音。この里で寺子屋を開いている。して、お前はこの里では見かけない人物だな?チルノたちの知り合いか?」
戒斗に気付いた女性―――慧音が、彼に尋ねてくる。
それに対し戒斗は「そうだな」とだけ告げると、慧音はほーぅ…と呟きながら、何故か興味深そうに彼を見つめ始める。
戒斗はそれを不審に思いつつ、大妖精に話しかけていた。
「こいつがさっきお前が話そうとしていたやつか……」
「え、あ、はい。彼女はこの里で寺子屋というものを開いて、子供たちに色んなことを教えてあげているんです」
「成程。だから先生と呼ばれているのか」
「うん。アタイも時々けーね先生の授業を受けているんだー」
「と言っても、お前の場合、途中から寝てばかりだがな」
「うぐっ!…コイツの前でそれを言ってほしくなかった…」
チルノの言葉にすかさずツッコミを入れられ、彼女は軽く顔を赤くする。
と、今まで戒斗をじっと見ていた慧音が、彼に話しかけてくる。
「…なぁ、戒斗だったか?お前、もしかして最近幻想郷にやってきた人間か?」
「そうだが…それがどうかしたか」
「…よし。決めたぞ」
彼の言葉を聴いた彼女は、開いた左手を握りこぶしを作った右手で軽くポン、と叩くと、突然彼の手を両手で握る。
それを見た大妖精は「!?」と驚き、チルノに関しては「え、何!?いきなり戒斗の手を握ってどうしたの!!?」と騒いでいる。
同時に戒斗も突然手を握られたことに驚くが、彼に構わず慧音が口を開く。
「突然だが戒斗!少し手伝ってくれないか!!」
「…は?」
~~~
そして、現在に至る…
現在戒斗は里にある慧音の寺子屋におり、同時に彼が連れて来られた場所は、その寺子屋の教室の教壇の前に立たされていた。
突然の出来事に彼は慧音の肩を掴み、どういうことかと尋ねる。
「…おい、上白沢。これはいったいどういうことだ」
「どうもこうも……言っただろう。お前に手伝ってほしいと」
「俺は一度も承諾した覚えはないぞ」
「か、戒斗さん…落ち着いてください…!」
「まぁまぁ、これには理由があってだな……ここでは月に1回、歴史に関する話をしているんだ」
慧音をに睨む彼を大妖精が宥めていると、彼女の方から事情を説明してくる。
どうやらこの寺子屋では、月に一回、向こう側の世界の歴史について子供たちに聞かせているらしい…
しかし、自分が語れる内容は一通り話していたため、最近それについて悩んでいたようだ。
それを聞いた彼は「成程」と呟きながら腕を組む。
「…つまり話すネタがないから、向こうの世界から来た俺に何か語ってやれ、と。そういうことだな」
「察しがいいな。今の向こうの世界の事に関しては、中々情報が集まらなくてな…だから現地出身であるお前がいっそのことみんなに話してくれればいいかと思って」
「ふん、くだらん。そんなのに付き合ってられるか」
「∑えぇ!?ここまで来てか!!?」
「それに関してはお前が無理矢理ここまで連れてきたからだろ」
しかし彼は当然そのようなことに関してやる気もなく、彼はそのまま教室を出ようとする。
それを見た慧音は必死に彼に逃げられてたまるかと言わんばかりに彼の腕を掴み、必死に引っ張っていた。
「なぁ頼むよ…無理矢理連れてきたのは悪かったからさぁ……!」
「断る…!いい加減その腕を離せ……!」
「えー、話さないの~?」
「私たち、お話聞きたいよー」
「向こうの世界ってなーにー?」
「「「ねぇー、ねぇー」」」
と、そんなやり取りをしていると寺子屋の子供たちが一斉に話を聞きたいと騒ぎ出す。
更には子供たちに混じってチルノが話を聞かせろと叫びながら戒斗の足にしがみついており、彼の苛立ちが徐々に上がっていく……
「ねーねー!アタイも聞きたいー!!向こうの世界ってどういうところなのー?ねーねー!!」
(っ……何故俺がこんな目に遭わないといけないんだ…!いっそのこと変身して…)
「あ、あの……戒斗さん……こ、ここはどうか……お話してやってくれませんか……?」
「貴様もか大妖精」
しかし誰も味方がおらず、更に子供たちが服まで引っ張り始め出し、逃げようにも逃げられない……
そして何より、彼の背後にいる慧音が「子供たちを傷つけたら容赦はしないからな」と言わんばかりの威圧を放っており、強行突破と言う選択も途絶えてしまう……
こうなってはどうしようにもないと戒斗は悟ったのか、彼は渋々とこの寺子屋の授業に付き合うことにしていた。
~~~
「……つまり今の向こうの世界は、弱者が虐げられ、強者が常に頂点を取る、弱肉強食の世界だ。しかし弱者は弱者で卑劣な手を使い強者になろうとし、強者は強者で弱者を徹底的に踏みにじり、対等以上の立場を作らせないようにする……それが今の、向こうの世界の人間関係の1つだ」
「…あ、あの、戒斗さん……」
「なんだ」
「み、みんな……話の理解が、追い付いてないみたいです……」
とりあえず話すことが特になかった戒斗は、今の世界がどのようなもので成り立っているのかを話すことにした
………のだが、子供たちにとっては難しすぎたのか、殆どが首をかしげており、チルノに至っては眠りこけていた。
それを知った戒斗は「やはりガキどもには難しいか」と呟いており、隣で聞いていた慧音も「うーん……」と苦い顔をする。
「…なんというか、お前さんの話……絶対子供が聞いてもわからんと思うぞ……というかなんでそんな重苦しい話にしたんだ」
「特に思い浮かばなかったからだ。……それに…」
「?それになんだ?」
「……なんでもない。もう一通り話したから、帰らせてもら…」
「---あ、あの……ひとつ、いいですか……?」
と、これ以上ここにいる必要がないと言わんばかりの戒斗を、一人の男の子が呼び止める。
戒斗はその男の子に視線を向けると、男の子に尋ねる。
「なんだ、言ってみろ」
「は、はい……あの、戒斗先生の…言葉を聞いて……少し思ったのですが………もし先生の言葉が、本当なら……弱い人は、弱いままでないと、いけない……って、ことでしょうか……?」
男の子は何処かビクビクしながら、先程の話で思ったことを伝える。
それを聞いた戒斗はその男の子をじっと見つめながら、再度尋ねる。
「…お前はなぜ、そう思う?」
「え、えっと……だって、ずっと上に強い人がいて、その人もどんな手を使っても上にいたいなら……弱い人は、ずっと下で、いないといけないのかな、って……」
「……確かに、さっきの俺の言葉だと語弊が生じるな……だが、お前のその考えは間違いだ」
「え?」
戒斗の言葉に、男の子は戸惑った表情をする。
しかし戒斗はかまわず、男の子に続ける。
「弱いままが嫌ならば、強くなれ。誰にも負けないと言う意思を、何事にも屈しない心を持て。そしてどんなに踏みにじられても負けを認めるな…負けを認めた時点で、弱者は弱者のままだ」
「…何事にも……屈しない……」
「そうだ。だが、どんなに勝ちたいからと言って、不正などと言った卑劣な手は使うな。そんなものは強者ではない。…後は自分で、どういった強さを持ちたいか、決めるんだな」
「あっ…」
戒斗は一通り話した後、早々に教室を出て行く。
男の子は彼を止めようとしたものの、彼は既に去ってしまい、その動きを止めていた。
一方の慧音は子供たちに「こ、これにて授業は終わりだ!次の準備をしとけよ!!」と叫ぶように告げながら、勝手に帰ってしまった戒斗を追いかける。
大妖精も二人を追いかけようと、チルノを起こし、彼らの後を追いかけていく……
そして教室に残された子供たちはがやがやと騒ぎだし、先程戒斗に質問した男の子は、その場で呆然としていた。
~~~
「おい戒斗!いきなり切り上げて帰るな!!」
「切り上げるも何も、一通りは話したつもりだぞ」
「あ、あのなぁ…」
「け、慧音先生、落ち着いて…」
「そーだよー。それにこいつの話なんてどー「「初っ端から寝ていたやつが言える立場じゃないだろ」」ちょ!!?」
「と、ともかく、戒斗さんも一度おち、落ち着いてください…」
寺子屋を跡にしようと戒斗が準備していると、慧音が怒りながら彼の元まで歩み寄っていく。
その後ろからチルノと大妖精もついてきており、戒斗は渋々その場で足を止める。
「…言っておくが、これ以上はもう貴様の頼みごとには付き合わんからな、上白沢」
「そんな硬いことは言わないでくれよ…ま、今回はしょうがないか。また機会があったら頼むよ、今度はもっとまともな話を頼むな」
「…話を聞いていたか…?」
勝手にまた今回のようなことをさせられようとする戒斗は、深いため息をつく…
と、慧音がそれにしてもと口を開き始める。
「あの子がお前の話を聞いて、あんなことを言い出すなんてな」
「何の話だ」
「ほら、さっきお前に質問していた子がいただろう?あの子、普段大人しいからか、時折いじめ紛いなことをされているんだ。一応いじめを行うやつらに叱って入るんだが…どーも反省してなくてな…そんでもって、あの子もなかなかいじめにあっていることを言わないからな…」
「…そうか…チルノ、大妖精、帰るぞ」
「うぇ!?ちょっと待ってよー!」
「あ、えと、お、お邪魔しました!!」
「おう、気をつけて帰れよー」
戒斗は慧音の言葉を聴くだけ聞くと、そのまま寺子屋を後にする。
そんな彼を見た二人は、慌てて彼の後を追いかけていき、残された慧音は彼らに手を振りながら見送っていた。
~~~
次の日の朝…戒斗は再び、人里の中を歩いていた。
今日はチルノたちと一緒ではなく、特に何もすることがなかった彼は散歩がてらにここまでやってきていた。
と、戒斗がぶらぶらと歩いていると、里の外に複数の子供たちが出て行くのが見える…
その子供たちは、昨日寺子屋にいた子供たちで、その中には昨日戒斗に話しかけてきた男の子も混じっていた。
戒斗はそれに気付くも、そのまま無視して立ち去ろうとして、昨日の慧音の言葉を思い出す。
「…」
そして何を思ったのか、彼は先程の子供たちの後を、追いかけ始める。
やがて里から少し離れた、木々が生い茂った所で、戒斗に話しかけた男の子を取り囲むようにしている子供たちを見つけると、彼は気付かれない様に身を隠して、その光景を見ていた。
「なぁ、どうしても欲しいのがあるから、金貸せよー」
「っ…でも……」
「あぁ!?嫌だっていってんのか!?」
「おらっ!貸せって言ってんだろ!!」
「あぐっ…!」
「弱虫の癖に生意気言いやがって!!」
「ほらほら、貸さねーとまた痛い目に遭わせっぞー」
「それともあれか?またこの間みたいにボコボコにされたいってかー?」
男の子を囲う子供たちは、男の子に金を要求しており、それを男の子が拒もうとすると集団でけたぐりはじめる……
しかし戒斗はその光景をただ見つめるだけで、子供たちのいじめは更に激しさを増す。
が、やがて興が冷めたのか、男の子へ向けての暴力が止み、彼に暴力を振るっていた子供の一人が男の子に告げる。
「おい、今日はこれぐらいで許してやっからよ、さっさと金寄越しなー…つっても、勝手に貰っていくけどよー」
「ちぇっ、これっぽっちかよ…」
「おい、さっさと逃げよーぜー。また慧音先生に見つかったらやばいしなー」
子供たちは男の子から財布らしきものを奪い金を巻き上げると、その場から立ち去ろうとする。
それを見た戒斗も、立ち去ろうと……した時だった。
「…………ま……て………」
「あぁ?」
…先ほどまで地面に這い蹲っていた男の子が、体をふらつかせながらも立ち上がると、彼をいじめていた子供たちを呼び止める。
それを見た戒斗は再びその場にとどまり、子供たちはというと男の子を睨む。
「あ?なんだよ」
「…ぼ…ぼくの……おかね…かえせ……」
「…よっぽど痛い目に遭わないと気が済まないみたいだなぁ…おい、やっちまえ」
一人の子供(恐らくリーダー格なのだろう…)が、他の子供に命令すると、命令された子供たちは男の子に再び暴力を振るい始める。
しかし男の子は、何度殴られても……何度蹴られようとも……何度地面に倒れ伏せようとも………何度も何度も、その場で立ち上がっていく……
次第に男の子も反撃に出始め、彼を散々殴ってきた子供たちに殴り返していき始めていた。
「っ…ああああぁぁぁぁ!!」
「ぐはっ…!?…お、おい……あいつ……普段は何しても大人しいやつだろ……!!?」
「くっそ、あいつ、闇雲に殴って…がぁっ!!?」
次第に攻守が逆転し始めた子供たちは、一歩……また一歩と男の子に対し後退りしていく。
しかしそれでも男の子は止まらず、やがて男の子がリーダー格の子供まで近づいていた。
「く、くそっ…これでも食らいやが…」
「―――ああああぁぁぁぁぁ!!!」
「ぐ、ばぁ!?…ぁ……」
「あぁっ!?千ちゃんがやられた!!?」
「ち、ちきしょー!!この借りは絶対返すからなー!!…お、覚えてろよ~~!!!」
男の子の拳が、リーダー格の子供の顔面に突き刺さり、リーダー格の子供はその場で倒れ伏す…
それを見たほかの子供たちは今の状況を不味いと思ったのか、リーダー格の子供を抱え、その場から逃げ出していた。
その際男の子の財布が地面に落ち、男の子はゆっくりとそれを拾い上げ、逃げ出す子供たちを見つめる………
そして男の子は自分がやってのけたのが信じられないのか、ぼそりと呟いていた。
「…かて、たの……?ぼくが…あいつらに……」
「―――そうだ。その結果が、お前自身が強くなったのを証明したんだ」
「あ…きのうの……」
と、呆然としている男の子の前に、先程まで隠れて様子を見ていた戒斗が、彼の前に姿を現す。
彼を見た男の子は少し驚くも戒斗は気にせず、男の子に話しかける。
「上白沢からお前の事は少しだけ聞いたが……無事にあのいじめっ子共を負かしたな」
「え、あ…はい……でも……」
「…暴力で勝ったのが、嫌なのか」
「…はい……」
戒斗の言葉に、男の子は静かに肯定する。
―――普段は大人しいと上白沢が言っていたが…どうやら暴力などはあまり好かんようだな…
昨日の慧音の言葉を戒斗は男の子を見ながら、彼に尋ねる。
「…おい」
「!は、はい!!」
「……お前はどんな強者になりたい」
「え…?」
「答えろ。どんな強者になりたい」
「……だ、誰かを……守れるような……そんな人間に……で、でも、争いとかしたくないから、暴力とかは使わないように……したい……です…」
「……戦わずして、誰かを守ろうとするのは、苦難なものだ。特に俺にとっては、そんなことは馬鹿げていると思っている……それでも、そんな強さを求めるのか?」
「…はい!」
「…そう、か……」
男の子の言葉を聴いた戒斗は静かに呟くと、その場から立ち去ろうとする。
それを見た男の子は何か言いたげな表情をしていると、立ち去ろうとしていた戒斗が一瞬だけ足を止める。
「………ならば、その信念、何があっても貫いて見せるんだな」
彼はそれだけを言い残すと、今度こそその場から立ち去っていく…
そして男の子はというと……彼に向けて、深くお辞儀をしていた。