東方神実郷~『仮面ライダーバロン』、駆紋戒斗が幻想入り~   作:火野荒シオンLv.X-ビリオン

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シオン「今さらですが、皆さん!明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!!…えー、というわけで、本年度最初の更新はこの作品になりました」
戒斗「何故だ」
シオン「こっちの方が執筆早く終わったんだよ。というわけで、今年最初のお話、どうぞ」


第10話 戒斗の身体と異質なペット

戒斗と魔理紗が、屍状態の霊夢たちを運んで1時間後……ようやく二人は、屍状態から復活していた。

 

 

「…本気で助かったわ……ありがとう、戒斗、魔理紗」

「礼などいらん」

「そうだぜ霊夢。というかお前ら、何であんなところで尽き果てていたんだよ」

「それは博麗大結界を、改めて張り直してたからよ」

 

そう言って話に割り入ってくる紫。

そんな彼女を見て戒斗は一瞬誰だという顔をし、それを見た紫は「そういえばまだ自己紹介してなかったわね」と呟く。

 

「すっかり忘れていたわね、自己紹介……初めまして、駆紋戒斗。貴方の話はすでに聞いてるわ。私はスキマ妖怪の八雲紫よ。そして今更だけど、幻想郷へようこそ…貴方を歓迎するわ」

「そうか…」

「あら、無愛想な態度ね……」

「そんなことよりよー、なんで霊夢たちは結界を張りなおしてたんだー?特に霊夢なんか、そんなことやりそうにないのによー」

「失礼ね…私だってやる時はやるわよ」

 

無愛想な態度を取る戒斗を見て紫はぶーたれるが、魔理紗はそんなことを無視し、何故博麗大結界を張り直していたのかを疑問に思う。

それを聞いた紫は、結界が何らかの形でボロボロになった事を説明する。

しかもそれが戒斗がここに幻想入りした時で、それを知った彼は興味深そうに呟く。

 

「…そんな事があったんだな……」

「本当、困ったものよ……まれに似たようなことはあれど、大抵は補強程度で済ませられるんだけど……予想以上に結界がぶっ壊れた上、補強の施しようがないほど酷かったから、最初から張り直すことにしたけど……」

「道具の準備もだけれど、予想以上に作業に手間が掛かったどころか、一瞬でも気を抜いたらまた最初から、なんて状態だから、こちとら昨日戻ってきてからご飯も食べず、更には寝ないでずーーーっと張り直してたのよ」

「んで、ようやく終わってくたばってるところを、私たちが見つけたって事か」

 

魔理紗の言葉に「そうそう」と霊夢は返答する。

しかし気になるのは、戒斗がこの幻想郷に流れ着いた時の事だ……

どういう方法かは知らないが、結界に深手を負わせたほどのものだ……とんでもないほどの力で、強引に突き破ったと言っても過言ではない。

 

「…それで戒斗、貴方は限られた方法でしか来れない幻想郷に、どうやって入り込んだのかしら?」

「…それは俺にも分からん。最初にクラックとは違う裂け目のようなものが現れ、無理矢理それに吸い込まれた。そして気付いたときには、チルノの家にいた……そんな感じだ」

「うーーん……私は今回、貴方を招いてはいないし、それ以外で貴方を裂け目に似たような能力を扱う人物なんて知りもしないわ……」

「外から誰かが戒斗を飛ばしたー、ってのは?」

「それはないわね。それだったら少なくとも、私でも気付くもの」

「…となると、戒斗を吸い込んだっていう裂け目は、自然発生によって偶然巻き込まれた、ということになるわね」

 

霊夢のその言葉に、紫は「恐らくね」と頷く。

少なくとも空間を繋げたりする事が出来るのは、紫みたいな上位の妖怪でも難しいもの…程度の能力なら簡単に可能だが、空間に干渉するに等しい能力なんて、早々に与えられるものではない。

 

「…まぁ、貴方が見たその裂け目について、色々と調べてみるわ」

「別に構わん。どうせあっちに戻っても、する事はないだろうしな」

「…あぁ、そういえばそれに関して気になることがあるんだけど……貴方、あっちの世界では"死人"……なんじゃないのかしら?」

「「!!」」

 

 

戒斗は死人なのではないのか……紫は戒斗に向けて、そう尋ねる。

その言葉を聞いた霊夢と魔理紗は驚くが、当の本人は否定しないどころか、何故彼女が知っているのかを尋ね返す。

 

「…気付いていたのか」

「えぇ。前にあっちの世界を見て、貴方が誰かの腕で、ゆっくりと眠りについたのを見かけたし……仮にその場面を見て無くても、貴方からは幽霊が発するような霊力を感じるもの」

「成程な…」

「……もっとも、ここの貴方の肉体は、白玉楼(はくぎょくろう)の庭師に似た存在……言わば"半人半霊"状態ね。半分霊体だけど、半分生きた状態の人間で、肉体は存在している……大雑把に言えばそんな感じ。まぁ、あの庭師は幽霊と人間のハーフだから、わりと意味とかは違うでしょうけれどね」

 

紫は今の戒斗の肉体の状態を伝える。

それを聞いた戒斗は、そういえばと思い当たる節を思い出す。

それは最初にチルノと出会った時……彼女の家で氷を頭からぶつけられた時『痛い』だの『冷たい』だのといった『痛覚』を感じた時だ。

 

「…つまり俺は、半分生き返っているのか…?」

「恐らくは、ね。ま、これに関しては事例が意外とあるから、珍しい事ではないのだけど…貴方の場合は【生者と死者の間】という、半人半霊の中でも異質なのは確かだわ。やや人間よりだから、体をすり抜けたり、絶対に死なないなんて事はないけど」

「そうか……通りで戦極ドライバーやロックシードを持つことも出来たのか」

 

紫の話を聞き、戒斗は今まで疑問に思っていた事を理解し、納得する。

すると隣で聞いていた魔理紗が、紫に尋ねていた。

 

「それじゃあよー、こいつ、一応幽霊とかみたいな霊力を持っているんだろ?となるとこいつも弾幕が使えるようになるのか?他にも空を飛べるようになるとかー」

「それは確かに…少なからず幻想入りしたんなら、戒斗に何らかの程度の能力が備わっていてもおかしくないわね……そこの所はどうなの?」

「うーん……見た感じ彼はそういうのはできない部類ね……程度の能力はあるでしょうけど……皆目見当もつかないわ」

「「えー、つまんねーの」」

「…お前ら、1発殴らせろ」

 

紫の言葉を聞いた霊夢と魔理紗はつまらなそうな顔をし、それを見た戒斗は軽く彼女たちを殴りたく思う。

とまぁそんなことはともかく、あらかた聞きたい事を聞けた紫はゆっくりと立ち上がると、何もないところに無数の目のようなものが見える裂け目―――"スキマ"と呼ばれるものを呼び出す。

 

「さて、私はそろそろ帰るけど……一応聞いておくわ。戒斗、貴方が向こう側の世界で見たのは、これじゃないのは確かよね」

「あぁ。それは確実に言える」

「そう……分かったわ。とりあえず、できる限り色々と調べてみるから、何かあったら報告に来るわ」

 

紫はそう言いながら、スキマの中に入り込む。

それと同時にスキマは閉じていき、その場から消えていた。

彼女を見送り終えた後、「さぁーて」と霊夢は屈伸をしながら戒斗に尋ねる。

 

「…紫は一応ああは言っていたけど、恐らくはかなり時間がかかるわ……それでアンタはこれからどうするつもり?」

「…どうせあっちに戻ってもすることがないし、かといってこの世界に長居する気もない……暫くはこの世界にいるが、戻れるようになったら、元の世界に帰るつもりだ」

「え、なんでだよ?お前今半分生き返っているんだから、このままこっちで生活するのも悪くないと思うんだぜ」

 

戒斗の思いを聞き、魔理紗はここに残ればいいのではと告げる。

しかし彼はその事を拒否したため、魔理紗は「そっか…」と呟いていた。

 

「…まぁ、お前がそうしたいなら、そうすればいっか」

「でも戒斗、アンタ、ここにいる間はどうするつもりなの?」

「まずはチルノが言ってた、河城にとりという河童の所に行くつもりだ。そこで一人で野宿できる道具を造ってもらう……そこからは帰れる時が来るまで、待つつもりだ」

「…それ、面倒じゃね?」

 

 

 

~~~

 

 

 

暫く話をした後、戒斗は博麗神社を後にしていた。

魔理紗はまだ霊夢と話をしたいとの事で、現在は一人、ダンデランナーに乗ってチルノの家に向かっていく……

その際戒斗は辺りを見回し、「…海とかはなさそうだな……」などと呟きながら、改めて幻想郷への理解を深める。

 

(…山に平地……見える限りではそれだけだな……前に霊夢が、この世界は外の世界と繋がってる、と言っていたが……あの神社に張られている結界とやらが山奥だけを隔離している、ということか……)

 

 

色々と考えながら飛行して数分後……いつの間にか戒斗は霧の湖に戻ってきていた。

戒斗は地面に降り立つと、ダンデライナーをロックシード状に戻すと、チルノの家の扉を開き、中に入ろうとした……その時だった。

 

 

「チルノ、大妖精、今戻った」

『―――キィ…』

「…『キィ』…?」

「げっ、かかか、戒斗……お、お帰り~……」

 

 

扉を開けた瞬間、何かの鳴き声が聞こえ、戒斗は何の鳴き声かと考える。

すると彼が帰ってきたのに気づいたチルノが座った状態で後ろを振り向き、震えた声でお帰りと告げる。

しかし声が震えてるのもだが、彼の方を向いた彼女の表情は非常に強張っている……そして彼女が座っている場所は、ベッドがある場所……

 

―――コイツ、何か隠しているな……

彼女の顔を見ただけで、何かを隠していると瞬時に理解した戒斗は、一旦辺りを見回すと、彼女に尋ねる。

 

「…チルノ、今はお前一人か」

「う、うん!大ちゃんが『ちょっと外の空気浴びてくる』って言って出てったの!!」

「そうか……ならお前はそこで何をしている」

「あ、アタイ!?あ、あ、アタイは……そう!家の中に見たことない虫がいたから捕まえようとして、ここにようやく追い詰めたの!うん!!」

「…そうか……なら、俺が代わりに捕まえてやる。だからそこをどけ」

「!?!!?いやいやいや!いいよ一人でできるから!!」

「いいからどけ、その虫を俺が……」

 

 

戒斗はチルノを無理矢理どかせようとした瞬間……彼の目には、写ってはいけないものが写ってしまっていた。

……チルノの後ろで、嫌と言うほど見覚えがある、灰色の生き物が、こちらを隠れるように見つめている姿を………

 

 

 

「か、戒斗……?」

「……チルノ、今すぐそこで正座しろ……」

「…え?」

 

 

 

~~~

 

 

 

数分後……チルノの家のテーブルを囲うように戒斗と、彼に思い切り頭を殴られたチルノ……そして彼女にしがみつきながら体を震わせる大妖精が座っていた。

そしてテーブルの上には、昨日戒斗がチルノに渡したヒマワリロックシード(何故か開錠された状態)………そしてゲージのようなもので捕らえられた灰色の生物が置かれていた。

 

「…さて、まず最初に……チルノ……お前、約束を破ったな……?」

「ゴ、ゴメンナサイ……」

「か、か、か、戒斗さん…!」

「気持ちは分かるが、少し待ってろ大妖精…それでチルノ……何故約束を破った…」

「き、興味本位で……でもまさか"アレ"が出るなんて思わなかったんだよ…!」

 

チルノは言い訳をしながら、テーブルにいる灰色の生き物………初級インベスを指差す。

その初級インベスは他のインベスと違い、小動物と同じ位の大きさをしており、見た感じでは特に危害を与えるほど凶暴ではなさそうではあった。

しかし何故、小さいとはいえインベスがチルノの家にいるのか……それについては、チルノが開錠したヒマワリロックシードが原因だった。

 

「…そもそもロックシードは、俺がいた世界の街……沢芽市と呼ばれる場所で流行っていた、インベスを使った"インベスゲーム"と呼ばれるものに使われていた」

「インベス…ゲーム?」

「そうだ。他のダンスチームとインベスを使って対決し、勝てば他の奴らが使ってるステージを奪い取る……主にそれの賭け事で行われていたゲームだった」

「へぇー、そうなん…って戒斗ダンスしてたの?」

「そこは無視しておけ。…それでだ。本来ならDクラスのロックシードで召喚したインベスは実体化しないはずだが……もしかしたらゲームではない状態で呼び出されたから、この様に実態を持った状態で召喚されたんだろうな。もしくはリミッターカットをしてしまったかだな」

 

戒斗はヒマワリロックシードを持つと、軽くそれを調べる。

するとチルノがミニインベスの入ったゲージを持ち上げながら尋ねる。

 

「ねぇーねぇー。そうなると戒斗の持ってるロックシードもインベスを呼び出せるのー?」

「一応出来るが、基本的に戦極ドライバーを身につけていれば、インベスの代わりにアーマーが降ってくる仕組みになっている」

「あー…あのバナナの鎧とかかー……意外と奥が深いんだね、ロックシードって」

「あ、あの…そろそろインベスをどうにかしてくれませんか……?」

 

チルノが納得していると、大妖精が怯えた声で戒斗に告げる。

確かにこのままインベスを残しておけば、大妖精も落ち着いていられないだろう……因みに大妖精はチルノが間違ってインベスを呼び出したのを見て、大慌てで外に逃げ出して隠れていたとの事。

戒斗はとりあえず、ミニインベスを戻そうと考え、ロックシードを弄る。

……だが、ロックシードを弄っても、インベスに何の変化も起きず、更には戻すことも出来なかった。

当然それに疑問を持った戒斗は、チルノに尋ねる。

 

「…?おかしい…普通はこうすれば戻るはずだが……チルノ、他に何処か弄ってはいないだろうな?」

「弄ってないよ?アタイあの時、いきなりコイツが出てきて驚いて、思わず落としちゃったもん」

「落とした?…だとすると、落とした衝撃で何処か壊れたか?」

 

チルノの言葉を聞いた戒斗は、ロックシードを色々と動かしてみるが、何の反応も起こさない……それどころか、本来ロックシードを持った状態だったら、召喚したインベスは操れるのだが、ゲージの中のミニインベスは彼の言うことを聞く気配すらなかった。

それを見た戒斗は、開錠した状態で落としでもしたから、衝撃で何処かが壊れたのだろうと考える。

 

「…そうなるとそこのインベスは、このロックシードでは戻すことができないな」

「ええっ!?も、戻せないんですか!?」

「あぁ。戻す以外では、倒したりしないとどうしようにもないな」

「えー。でもこのチビインベス、普通サイズに比べて大人しいよー?アタイが驚いたときしか警戒しなかったし」

 

チルノはミニインベスを見せながら、戒斗たちに告げる。

―――こいつ、まさか飼う気じゃないだろうな……

心の中で戒斗はそう思っていると、大妖精がチルノに話しかけてくる。

 

「ち、チルノちゃん…?まさか飼いたい……なんて、言わないよね……?」

「…」

「…え、っと…チルノちゃん……何でそこで返事をしないの…?」

(やっぱり飼う気だったのか……)

 

何も返事を返さないチルノを見て、戒斗はやはりかという顔をする。

そして大妖精もなんとなく意味を察したのか、必死に彼女を説得していた。

 

「ねぇチルノちゃん…その生き物は危ないって知ってるでしょ……?悪いことは言わないから、大人しく逃がしましょ……!ね………!?」

「ちょ、大ちゃん怖い顔怖い!!」

「…俺もインベスを飼うのは勧められんな。とりあえず俺がそいつを処分するから、さっさと渡せ」

「やだ!このインベス飼う!!ちゃんと世話もするから飼わせて!!大ちゃんに迷惑を掛けないようにするから!!だからお願い!飼わせて!!」

 

しかしチルノは言うことを聞かず、どうしても飼うと言ってゲージを大事に抱え込む。

それを見た戒斗は、手間が掛かるなと感じつつ、少しの間考える。

そして1分後……戒斗はため息をつきながら、チルノに告げていた。

 

「…チルノ。次の決まり事を守れるなら、特別に飼わせてやる」

「∑戒斗さん!?」

「え!いいの!?」

「あぁ…だが約束を一つでも破れば、そのインベスは俺が始末する。いいな?」

「わ、分かった…」

 

戒斗の言葉を聞き、チルノは真剣に首を縦に振る。

それを見た彼はいいだろうと呟きながら、彼女に決まりごとを教えていく。

1つ……出来る限り大妖精に近づかせないこと……

2つ……面倒はしっかり見ること……

3つ……飼うならそれ相応の責任をしっかり持つこと……

4つ……誰かに危害を与えさせないこと……

5つ……そのミニインベス以外は飼わないこと……

 

その5つを聞いたチルノは元気よく分かったと叫び、ミニインベスをゲージから出す。

ミニインベスは軽くチルノに怯えるが、意外と順応しやすい性格なのか、すぐに彼女に懐いていた。

 

『キィー、キィー』

「うーん……アンタの名前、何にしようかなー♪」

(…単純だな……)

「あ、あの…戒斗さん……いいんですか…?その…」

「気持ちは分かるが、あいつは何を言っても引き下がろうとしないだろ…それに頭の中が花畑なあいつでも、お前の事を考えている……他の決まりごとはともかく、お前の事に関しては少なくとも、しっかり守るはずだ…」

「…だと、いいんですけど…」

 

不安な声を漏らしながら、大妖精はゆっくりのチルノたちを見る。

しかし彼女の気持ちも分からなくはない……戒斗自身もチルノに対して頭を抱えながら、ヒマワリロックシードを見つめる。

―――万が一の事も考え、チルノが言ってた、にとりという河童に修理を頼むのも手かもしれないな……

戒斗はそう思いながら、未だに戯れているチルノとミニインベス、そして怯えながらもチルノに引っ掻かれないよう注意する大妖精たちを眺めていた。


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