奉仕部、それは憧れの彼(誤解を招く表現)がいる部活。立地条件の悪さから知名度も致命的だね。……言っておくけどダジャレではないよ。風の噂では一色生徒会長もお世話になった事があるらしい、噂だから真偽は分からないけどね。それにしても用があるたび本校舎から一番離れたここに来るのは本当に面倒だよ。ふー、やっと着いた。
コンコン
「どうぞ」
「失礼します。」
「あっ!若葉ちゃんだ!やっはろー。」
部室にいたのは雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩の二人。前と同じ紅茶の香りが鼻をくすぐる。帰ったら紅茶入れてみようかな?というかその挨拶?は何かな?それはともかく比企谷さんはいないようだね。彼が教室に残ってお喋りに興じる人には見えなかったど。
「比企谷君なら今日は掃除当番で遅れるそうよ。」
「……私、そんなに分かりやすいですか?」
「若葉ちゃんがっつり顔にでてたよ。」
そんなに分かりやすいかな?もう少し演技を上手く出来るようになりたいものだね。まあ比企谷さんには不評だったけど、それでもやり過ごす時に便利だから使わせてもらうよ。
「……取り敢えず私は比企谷さんに今日寄るように言われたので来ました。何か用ですか?」
「そうね。あなたに謝りたい事があるわ。この前、あなたが奉仕部来た時に必要以上に攻撃的になってしまった事。謝らせてもらうわ、ごめんなさい。」
そうか、そんなこともあったね。すっかり忘れてたよ。それにしても昨日の事なのに結構、日が経ってる様に感じてたよ。それだけ比企谷さんに夢中だったのかな。……訂正。比企谷さんの眼に夢中だったのかな?
「いえ、気にしてません。むしろ忘れていましたし。」
「よしっ!じゃあこれで解決!今日はやっちーも加えて部活しよー!」
「ゆ、由比ヶ浜さん、勝手に決めないで欲しいのだけれど」
「ゆ、由比ヶ浜先輩、やっちーってもしかして私のことですか?」
やっちーって私の事なのかな、私の事だろうね。どうにか拒否できないかな?私のサインに気付いて由比ヶ浜先輩っ。
「えー、いいじゃんゆきのん。やっちーも、もしかして嫌?」
「お、お誘いは嬉しいですけど今日は用事があるのでまたの機会にでも。」
「そっか……。じゃあまた今度ね!やっちー!」
「お誘いは~」の『は』にアクセントを付けてみるけどまったく無意味だったよ。ここは二人目に協力を求めるしかないね。あっ視線逸らされた。もう諦めるかな。とにかくもう此処に用はないし用事があるといった手前、もう学校や近場の遊び場にはいけないね。とにかく家方向に、その前にコンビニに寄っていこうかな。うん、用事決定だね。
「それでは、失礼します。雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩。」
「ええ、さようなら。」
「うん、またねー。」
ふー今思い出したよ。比企谷さんはヒッキーって呼ばれてたね。あと雪ノ下先輩はゆきのんか。まあ、ゆきのんはともかく、やっちーとヒッキーは酷くないかな?もしかしたらもっと酷いあだ名も……。残念なあだ名付けられてる人がいると思うと居た堪れないね。
「よう。」
「あ、比企谷さん。」
「もう雪ノ下にあったのか?」
「うん、しかも特典に「やっちー」という素敵なあだ名を貰ったよ。」
「ああ……由比ヶ浜か。」
「はい……由比ヶ浜先輩だよ。」
突然のお通夜みたいな空気。比企谷さんもあだ名気に入ってないみたいだね。とりあえずセンスが普通でよかったよ。……私と同じセンスは普通なのかな?まあどうでもいいね。
「と、取り敢えず私は今日は帰らせてもらうよ。あ、出来ればやっちーをやんわりと否定しといてくれないかな?」
「……別にいいけどよ。意味ねぇぞ?」
「……そうだね。じゃあやっぱりいいや。さようなら、比企谷さん。」
「おう。じゃあな。」
ああ、やっぱその眼はいいね。鑑賞する時が楽しみだよ、でもまだ気は許してないだろうし当分先になりそうだね。さて気を取り直して、この後はサプライズを仕込む予定だし、まずは小町さんに会わないとね。……そういえば、受験生か小町さん。いきなり会いに行って大丈夫かな?取り敢えず差し入れでも持っていこうかな。……別に賄賂とかじゃないよ。多分ね。