自己満足で描いた女オリ主の話~自書女主話~   作:最下

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八幡さんへのプレゼント

「遅いです。わたしより2分遅いです」

「おや、それは悪かったよ。まさか君が7分前行動を試みているとは思わなくてね」

 

 

とある日の休日、やりたい事があったので一色さんと(半場強制的に)約束をしてららぽーとにまで買い物に来た。最初は渋っていたけど『美味しい話があるよ』と言ったらOKを貰った。感謝するよ。

 

 

「それで、美味しい話とは?」

「報酬は後払い、先に私の用事に付き合ってくれないかな?」

「えぇー、わかりました……、絶対話してくださいね」

「安心してよ、悪いようにはしないから」

 

 

うんうん、話が分かる子は好きだよ。一色さんも聡明だね。私に噛み付いても意味が無い事も退いても止めない事を分かってくれて嬉しいよ。

 

 

「それで今日は八幡さんにプレゼントを買おうと思ってね」

「手伝えと……?」

「うん、よろしくね」

 

 

別段おめでたい事があったわけじゃないけど、私も八幡さんも形が残るものはあまり買わないものだから、こう、証みたいなものが持っていない。小町さんが言ってたみたいな『印』はまだ少し恥ずかしいしね。

 

 

「はぁ、わかりました。何を買うかは決まってるんですか?」

「んー、アクセサリー、かな」

「じゃあこっちから周りましょうか」

 

 

一色さんは先導して目的地に歩き始める。……そういえば一色さんは私と同い年だというのに、態々八幡さんと居る時の口調じゃなくてもいいんじゃないかな? まあ演技の使い分けが面倒なのは知ってるから気持ちは分かるけどね。

 

 

「アクセサリーと言うと、ペンダント指輪ブレスレット、ですか?」

「だろうね、とにかく見て回ろうよ」

「はーい」

 

 

  *  *  *

 

 

「こんなのとかどうですか?」

「あー」

 

 

一色さん曰く、学生にも手が届きやすいお値段でオシャレなアクセサリー屋に来てみた。そして持ってきてくれたのはリングにチェーンを通したネックレス。中々シンプルでデザインも悪くは無い、でも。

 

 

「悪いけど、ピンとこないかなぁ……、八幡さんに似合うとは思えないしね」

「ですよねー……、はぁ」

 

 

私が否決すると一色さんは肩をがっくり落とし溜息を吐いた。出発してからそろそろ二時間、もうお昼の時間になってしまった様だよ。プレゼント選びは難しいね……。事前に調べておくべきだったかな、でも中途半端な知識でも……。

 

 

「すまないね、君が熱心に進めてくれるのに……」

「いえ、一旦カフェにでも入りましょう。少し疲れました」

「じゃあこっちかな」

 

 

今度は私が先導して歩き出す、こういうところには日常的に来ないので少し道に迷ってしまう時もある。嫌いな訳じゃ無いけど差して面白くも無い。私はまだお子様なのかもね。

 

 

「それにしても若葉さんって小柄ですよね~、何処がとはいいませんけど」

「ふふ、これが私だから。そうそう変わることはないよ」

「つまりずっと寸胴と言うことですか」

 

 

……とりあえずプレゼント選びの二時間で分かった事は私と一色さんのセンスの違い位。参考にはなったし面白かったけど、やっぱり合わないね。本当にどうしようかな。渡すなら私が納得したものがいい、渡すなら身に付けられるアクセサリーがいい、渡すなら気に入ってもらえるものが

 

 

「……若葉さん?」

「決めた……、これにするよ」

「え?」

「ちょっと行ってくるね、先に行ってていいよ」

「え、ちょ」

 

 

これだ、これがいい。このショーウィンドウに並んでいるこれ。私が納得できて身に付けられるもの、気に入るかは分からないけどそれもプレゼント選びの醍醐味だよね。八幡さんへの初めてのプレゼントはこれで決まり、ってね。

 

 

  *  *  *

 

 

「普通に酷いです」

「……反省してるよ」

 

 

気に入ったものがあったから店に入って出てきたら一色さんがいなかった、仕方なく電話したら『自分勝手過ぎる』と言われてしまった。これは流石に否定できないね。

 

 

「それで『美味しい話』とはなんですか」

 

 

ああ、忘れてた。そんな話で一色さんを釣り上げた気がする。一色さんも疑り深くなってしっかり八幡さんに関係するかまで確認されたからね。元よりそのつもりだけど学習してくれるのは何処か楽しい。

 

 

「うん、君が八幡さんを生徒会に引っ張るのを止めないよ」

「……隠していることはありませんか?」

 

 

もう酷くないかな、まあ今までの私じゃ仕方ないか。

 

 

「無いよ。私も落ち着いてきてね、少し八幡さんを縛り過ぎたかなって」

 

 

一応部活に行くのを縛っていないけどどうしても不安は拭えないでいた、でも今日買ったプレゼントで自分を安心させて八幡さんを自由にしようと思ってね。今回は文字通り証でいつかは印を付けるよ、……流石に覚悟が必要かな。

 

 

「ふぅん、まあ信用してみます」

「ありがとね。ああ、私も誘ってくれていいよ?」

「それは遠慮します」

「そっか、残念」

 

 

八幡さんの隣でお仕事に励むのも一興かなって思ったんだけど、さほど残念とは思っていないけどね。

 

 

「それで何を買ったんですか?」

「ん、ああ。これだよ」

「…………」

 

 

購入時に入れてもらった商品の宣伝の用紙を見せる。……と何故か微妙な顔になられた。えっと何かおかしいのかな?直感に従った結果だけど。

 

 

「よく変わってるって言われません?」

「よくわかったね、言われるよ」

 

 

いや、私としては真面目に選んだり過ごしているつもりなんだけどね。まあ周りから少し浮く性格なのは自覚してるよ。必要な時は仮面をかぶるから直す気は無いけど。

 

 

「はぁ……、とりあえずプレゼント渡しに帰ったらどうです?」

「ん、いいのかな?誘った身としての礼儀はある程度弁えてるよ」

「いえ別に期待してませんし、今日はすぐ帰ります」

 

 

……期待してないと言うのはどういう意味なのかな?私の普段の行動を見た答え、それとも単純にそういうのを求めないのかな?前者だろうね。

 

 

「そっか、お先に。後会計はしとくよ」

「え、ありがとうございます」

 

 

誘った身としての礼儀だけどね、報酬のおまけか何かだと思ってくれればいいよ。

 

 

  *  *  *

 

 

最早当たり前の様に比企谷家で向かい合いながら食後のお茶を啜る。結局帰ってからタイミングがいまいち解らなくてプレゼントは渡せていない。思えば誰かにプレゼントを贈るのは随分と久しぶりかも知れない、多分小学校低学年の時位かな?

 

 

「んー」

「何かあったのか、帰ってきてから変だぞお前」

「……そうだね」

 

 

変、私らしくなかったかもしれない。私も女の子だし照れたり恥じらう事もあるけどタイミングを掴めずに立ち止まるのは私じゃない。

 

 

「君にプレゼントがあるんだけど、受け取ってくれるかな?」

「当たり前だろ。……悪いなこっちは何もなくて」

 

 

ある程度予想してたけど馬鹿な事を言うね八幡さん。この前結構なモノを君から貰ったばかりだと言うのに、忘れたのかな?

 

 

「ふふ、じゃあもう一回額にキスしてもらおうかな?」

「恥ずいからヤダ」

 

 

残念……、欲しい気持ちは嘘じゃないんだけどね。君が首を縦に振るとは端から思っていないけど残念なものは残念だよ。

 

 

「そっか、それじゃあプレゼント。どうぞ」

「おお、サンキュ。開けてもいいか?」

「うん、こっちからお願いするよ」

 

 

がさがさと包装紙を綺麗に剥がして中身を取り出す、八幡さんの掌と同等か少し大きい位の箱でその中に私が選んだプレゼントが入っている。……今更だけど少し緊張するね。

 

 

「首輪……、違うチョーカーか」

「正解。首輪の方が好みだったかな?」

「チョーカー大好きです、ええ、はい」

 

 

八幡さんにプレゼントしたのはシンプルなチョーカー。幅が二㎝位あるから首輪っぽくも見えるかもね。とりあえずはまあ、プレゼントしたものが好みに当て嵌まっている様でよかったよ。それじゃあ私も付けようかな。

 

 

「……ああ、もしかして」

「うん、お揃いだね。さ、君もつけなよ」

「お前って結構あざといよな……」

 

 

それは自覚してなかった、面白い事を知れたね。と言ってもいまいち理解は出来ないのが残念だけど。 さてチョーカーを付けるのに手間取ってる八幡さんを手伝おうかな。

 

 

「うんうん、似合ってるよ」

「違和感が凄いがいつか慣れるか」

「ところで、どうかな?」

「ああ、似合ってる。可愛い」

 

 

そ、そう。ストレートに伝えられると少し照れるね。これはいわゆるデレ、ということでいいのかな。ふふ、嬉しいよ。

 

 

「君もかっこいいよ、流石は私の彼氏さんだね」

「あんがとよ」

 

 

む、やっぱりこれじゃ効果は薄いね。デレてくれるのも嬉しいけど……、やっぱり照れて赤くなる君の方も愛らしいよ?

 

 

「チョーカーについてだけど手入れとかは説明書が付いてるから参考にして」

「ん」

「それと校則違反ではないからよろしくね」

「お、おう」

 

 

チョーカーを付けて所有していることを主張するとかまるで飼っているみたいだね、私も付けてるし八幡さんに飼われているように見えるのかな。

 

 

「……ご主人様」

「は?」

「何でもないよ」

 

 

うん、何でもないよ。あまりにもらしくない、まだ八幡さんに呼ばせた方が私らしいよ。別に呼ばせる予定は一切無いけどね。

 

 

「いやでもさっき」

「何でもないよ」

「……そうか?」

「そうだよ」

 

 

しつこい男はモテないらしいよ?モテなくていいけど、寧ろモテないで。彼女達が本当に諦めたかどうかわからない状況で下手に敵を増やしたくないからね。

 

 

「よし、こい」

「何かな? ひゃ」

 

 

近づいたら手で引かれ八幡さんの胸に吸い込まれる。さ、最近慣れてきたよね、今日も私の方ばっかり喜んだり照れたりしてる気がするよ。

 

 

「えっと、どういう意味かな」

「ちょっとした礼だ」

 

 

きゅ、と抱きしめられると思考より至福の方が増して思考が鈍る。むぅ……、幸せだけど上手く転がされているような気がする。でもまあ、君に猫みたいに可愛がられるのもありかもしれない、君は私の物で私は君の物だから、ね。


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