自己満足で描いた女オリ主の話~自書女主話~   作:最下

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八幡さんと生徒会長さん

 

 

 

放課後。今日は雪ノ下先輩の都合が悪いので奉仕部は休み、偶には一緒に帰ろうということになり校門で八幡さんと待ち合わせをしている。残念ながらHRが長引いてしまい八幡さんは風に吹かれているだろう。ごめんね、今急いでそっちに向かっているよ

 

 

「遅れてすまないね、八幡さん」

「せんぱーい、可愛い後輩のいろはですよー!」

「お、おう……?」

 

 

二人同時に話しかけられた八幡さんは勿論、声が被った私と一色さんも一様に首をかしげる。人通りが少ない訳じゃないし移動するかな

 

 

「えっと、話は歩きながらにしようよ」

「そだな」

「ちょ、ストーップ!先輩手伝って下さい!軽いピンチです!」

「ぐぇ」

 

 

クルリと向きを変えて帰路に着こうとした八幡さんの襟首を鷲掴むにした一色さん。それにしても正に潰れるカエルの声だったね。いや気にするべきはそこじゃない。とにかく一色さんの好きにはさせないよ。今日は一緒に帰る約束だったからね

 

 

「げほっげほっ、何しやがる……」

「ですから、先輩に手伝ってもらおうと」

「はぁ、自分でピンチ位捌けって」

「先輩の口車に乗せられたのに、およよ……」

 

 

わざとらしい。大体校門まで出てきて八幡さんを誘ってる暇を仕事に充てれば片付きそうだけどね。八幡さんはこういうの弱いね。それとも女の涙に弱いとか男の鏡と言うべきかな?

 

 

「八幡さん。いくよ」

「え」

「態々部外者である八幡さんに手伝わせるような事がピンチなのかな?」

「うっ」

 

 

それとも新生徒会長様の事を想って全肯定で応援してあげた方がいいのかな?そんなのダメな人間を作り出すだけだし何より面倒だから嫌だけどね。ま、何より

 

 

「もう少し野心を隠して貰いたいものだね」

「!」

 

 

蚊帳の外になった八幡さんはほっといて一色さんに畳みかける。その眼に色濃く映る光を私は知ってるよ。あの日奉仕部の部室で君達が決意をした時と同じ眼だよ

 

 

「流石の私もあからさまな下心がある人間に、八幡さんのレンタルはできないよ」

「じゃあ!奉仕部に依頼します!どうですか先輩?!」

 

 

そうだね。普段だったらそれが正解だよ。普段だったらね。……まさかとは思うけど八幡さんが何故校門に立ってるかも分からない訳じゃないよね?

 

 

「今日奉仕部休みだから」

「え!?」

「はぁ……」

 

 

そのまさかだったよ

 

 

「という訳で今日は諦めてくれないかな?」

「という訳だ、もう諦めな」

「うぅー!……あれ?若葉さん、クラスにいる時と雰囲気が違いますね」

 

 

いまさら気付くとは恐れ入るよ。うん、遅いね。八幡さんしか見えてないのかな?それともよっぽど私に興味が無いのかな?だとしたらあまりお勧めだけないね。城を落とすには情報が一番大事だから

 

 

「まあね、アレの方が面倒事に巻き込まれないからやってるだけだよ」

「へぇー、クラスの男子が膝に乗っけてみたいと評判ですよ」

「うん、知りたくなかった情報だね」

 

 

うん、知りたくなかったよ。何か温かいような絡みつくような視線を向けられてると思ったらそんなこと考えていたんだね

 

 

「はー、若葉さんってお堅いイメージでしたけど割とフランクですね」

「……その感想は初めてだよ」

 

 

今まで見せる機会も無かったし見せても大した感想はもらえなかった。一番面白かった感想は雪ノ下先輩の『出来損ないの仮面を見てるよりずっと精神的負担が少ないわ』だね

 

 

「とにかく私は帰るよ。じゃあね一色さん」

「おー、やっとか」

「……待ってください」

 

 

少し腹立つね……。私も八幡さんも早く帰りたいと言うのに、いつまでも校門に留まっていたくないよ。手っ取り早く終わりにしようか

 

 

「……ならゲームで私に勝てたら手伝うよ」

「何のゲームにしますか?」

「長くなるのはやめてくれよ」

 

 

わかってるよ、そこまで長引かせる気は無いし、長時間続くようなゲームでもないよ

 

 

「ゲームは「にらめっこ」。先に目を逸らした方の負け。いいかな?」

「ええ!どんとこいですよ!」

「それじゃあ必要ないと思うけど審判頼むよ、八幡さん」

「必要ないのにか」

 

 

必要ないけどね。とにかく了承してくれたなら試してみたい事もあったし『アレ』をやってみようかな。どのような反応してくれるか楽しみだよ

 

 

「にーらっめっこしーてろ」

「逸らーしたっら負けだっよ」

「あっぷっぷ!」

 

 

…………。あのね一色さん

 

 

「別に変顔を晒さなくてもいいよ?」

「え、でも」

「……それでこいつが眼を逸らすと思ってんならいいだろ」

「…………」

 

 

顔を赤くして黙り込む一色さん。取り敢えず変顔をやめてくれてよかったよ、君の株が下がっても保証できないからね。さてそれじゃあ『アレ』を……

 

 

「若葉、さん?」

「八千代……?」

 

 

視界に映る物が少しづつ色褪せていくのが面白い。眼がドロドロした靄に包まていく感覚もまた新鮮な体験で面白い。……うん、こんなところかな

 

 

「どうかな? 最近出来る様になってね」

「お前、眼が腐ってるぞ!?」

「あ、あわわ、わたしのせいですかせんぱーい?!」

「いや、これは、きっと、何だ……?」

 

 

わぁ、凄い混乱してるね。これならやった方もいい気分になれるからナイスリアクションだよお二人さん。これは暇なときに鏡を見つめていたら偶然出来る様になった技だよ、こう、イメージとしては水底に沈んだ土を掻き出すみたいな感じかな

 

 

「……これをしても眼を逸らさないとはね、驚きだよ」

「先輩を連れて行かないとただサボっただけになりますし」

 

 

後に引けないだけだね、でも君の眼には野心の他に恐怖の色があるよ。1つの染みがあれば十分、ここから私の独壇場だよ、一色さん?ちなみにこの眼を腐らせる技を使うと副作用として眼がゴロゴロするから目薬が必須だよ、継続時間は10秒ぐらいかな

 

 

 

「……う」

「もういいんじゃないかな。悪戯に時間を使うより賢いと思うよ?」

「うぅ~~~」

 

 

涙目になりながらも私からは決して眼を逸らすことは無い。ああ、やっとわかった、仕事はどうでもいいみたいだね。私に半場怯えながらも自分の欲望を貫こうとするとはね。やれやれ、その熱意に負けたよ。これ以上は無駄な時間だしね

 

 

「一色さん、君の勝ちだよ」

「ふぇ?や、やったー!」

「はぁ……」

 

 

大きな身振りで喜びを表現する一色さんを横目で見ながら溜息を吐く八幡さん。ごめんね、つい面白いものを見つけちゃったから。……まぁ、保険は掛けといたけどね

 

 

「じゃあ八幡さん、今日も遊びに行くからね。行くよ一色さん」

「へ?」

「は?」

「ん?」

 

 

皆一様に小首を傾げる。何か変な事言ったかな?あ、説明するべきだったね

 

 

「私は「手伝う」としか言ってないよ、「八幡さんが」は言ってない」

「え、えぇぇぇぇ!ズルいですよぉ!」

「さて、私は真実しか吐いてないから何の事か解らないね」

 

 

本当に面白い、小町さんに雰囲気的に似てるのが尚いい。小町さんは大事だからついつい壊れ物みたいに接してしまう時があるけど一色さんなら何の心配もない。私に恐怖感を抱いてその野心を眠らせてくれる時が別れる時、それまでよろしくね。……くく

 

 

「また後でね。行くよ一色さん」

「お、おー、いてらー?」

「せんぱーい!助けて先輩!せんぱぁあいぃ!せんぱぁぁいいぃ!」

 

 

 

 

 

「……さらば、一色。暁に眠れ」


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