自己満足で描いた女オリ主の話~自書女主話~   作:最下

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八幡さんと初めての……

 

 

 

 

「……八千代さん達ってまだキスもしてませんよね」

「んくっ!!」

 

 

ある日曜日の昼下がり、小町さんと2人でお茶を飲みながら話して緩やかに時間が流れていくのを楽しむ。そう緩やかに楽しんでいたのに、小町さんが呟いた一言のせいで丁度口に含んでいた熱々のコーヒーを空気と一緒に思いっきり飲み込んでしまう

 

 

「けほっけほっ、いきなり何を言うかな小町さん……?」

「いや八千代さん達って結構ラブラブだけどキスしてないじゃないですか」

 

 

うん、確かにキスはしたことないけど、態々指摘しなくてもいいと思うよ?真実は人を酷く傷つけるし、現に私の胃と肺に大きな痛みが発生してるよ。身体を労わる為にもこの話題は今すぐ終わりにしよう

 

 

「指摘されなくとも少しづつ前に進むから大丈夫だよ、だから」

「でも考えてみてください八千代さん」

 

 

私の話を遮ってまで自分の意見を私にぶつけてくる、小町さんにしては珍しいね。そこまで私に何かを伝えたいなら多少の痛みは大目に見てみようかな。それでもお手柔らかにね

 

 

「確実に進むのも大事ですけど、これは立派な印を簡単に付けれますよ?」

「印……?」

「はい、お兄ちゃんは八千代さんの所有物だって」

 

 

要するに盗難防止策みたいなことかな? だとしたら必要ないよ、私は八幡さんを外敵から保護する気だし盗ろうとする人に容赦する気はないからね

 

 

「八千代さんは積極的な部分が多いですから奥出になるとすぐわかりますよ?」

「それは……」

「八千代さんが立ち往生してる間に他の人が兄に印を付けたら嫌ですよね?」

「……ッ」

 

 

小町さんの言葉が頭の中を侵食していく、思考を組み立てようとも蝕まれた足場じゃ骨組みも作れやしない。私が立ち止まったせいで、八幡さんが私の手から零れ落ちる、八幡さんが盗られる……。そんなの、そんなの、絶対嫌だよ……

 

 

「でも先に印を付ければ、お兄ちゃんを護りやすいですよ」

「…………」

「小町は八千代さんを想って発言しています」

「小町……さん……」

 

 

本当に小町さんの考えてるみたいなことが起きたら、アドバンテージは多いに越したことはない。小町さんは私よりずっと女の子の考えだから私が理解、予想出来ない事が多い。だから、これも、もしかしたら、有り得ない事ではないのかもしれない。なら

 

 

「さっ、八千代さん。小町は夜ご飯まで出かけてくるであります」

「いって……らっしゃい……」

 

 

しばらく小町さんの準備をする音に耳を傾ける。頭を一度カラッポにしたいけど小町さんの言葉が頭の中を反響して思考を逸らすことすら許してくれない。もうこれを解決するには、

 

 

「……いくよ」

 

 

私は憑り付かれたかのように八幡さんの部屋に向かう。結構な頻度で比企谷家に来ているが2階を訪ねることは少ない。理由としては私が小町さんも好きな事と八幡さんが飲み物運ぶのが面倒だから、という理由だった。もう少し八幡さんの部屋でも遊べば良かったかな?

 

 

「入っていいかな……?」

「どーぞー」

「うん……」

 

 

相変らず片付いている部屋。どうやら八幡さんは読書中だったらしく表紙に鮮やかな髪色の女の子がポーズとっている本に栞を挟んでいる。ライトノベルかな、それを呼んでいるときの八幡さんの表情は一般の本を読んでいる時とは違ってだらしなく緩んでいる。私としては楽しそうで構わないけど人前で見せる機会は無いと思うよ

 

 

「どした?小町がドタバタしてたけど」

「晩御飯まで出かけるみたいでね……」

 

 

言葉の数は少ないが十分に伝わる情報を伝える。どうやら八幡さんはそれだけで小町さんの現状、私が部屋に来た理由(建前)が伝わったらしい。普段ならここで本を貸してもらおうか、ベッドを貸してもらおうかと悩むところだけど、今日は違う。君に印を付けに来たよ

 

 

「……体調悪いなら休んどけ」

「あ、うん……」

 

 

どう切り出せばいいのかな……?直球勝負以外に手があるのかな?でも八幡さんの方からキスしてもらいたい感情もある。ダメ、今日は印を付けに来た。シチュエーションに拘ってみたりするのは何時でもできるよ

 

 

「八幡さん……?」

「どうした?水でも欲しいか?」

「違うよ。うー……」

「…………」

 

 

八幡さんはベッドに転がっている私を気遣ってくれる。でも今欲しいのはソレじゃないよ。ううん、あれもこれも、やってもらいたいじゃダメだね。覚悟を決めなよ若葉八千代

 

 

「キ……」

「き?」

 

 

今更言い淀んでも時間の無駄だよ。大丈夫、言葉をまっすぐ伝えるだけだよ。少し恥ずかしくもあるけど、そんなのすぐ忘れなれるよ。勢いに任せて。キ、キ、

 

 

「キ、キリン……さん……」

「…………」

 

 

本気で心配した目で見てくる八幡さん。違う、違うよ。えっと、これは恥ずかしさのあまり変な方向に飛んじゃっただけだから、次は、次こそは

 

 

「……お前が不思議ちゃん目指すのはどうかと思うぞ」

「ちが、キ、キ……」

「き?」

 

 

うぅ、恋愛関係以外ではすぐ察してくれるのに、こういうのに限って鈍感さんなのかな……。それとも本当は気付いているのに私に言わせようとしているとか……、いや無いね

 

 

「キス、しようよ……?」

「…………」

 

 

10秒

 

 

「…………」

「…………」

 

 

20秒

 

 

「…………」

「…………」

 

 

30秒

 

 

「何か、何か言ってよ……」

「お、おう、すまん。それでキスか?じゃあこっちこい」

 

 

言われた通り指定された位置に移動し向き合った

 

 

ぱん!

 

 

「っ!!」

「…………」

 

 

瞬間、目の前で手を叩く。つまり猫だましをされた。思わぬ事態に三秒ほど止まる

 

 

「はりゃ、はちゃみゃんしゃん」

「原型残ってないぞ、それ。まあまずは深呼吸して落ち着け」

 

 

心音が通常になるように心を落ち着かせ記憶の整理を始める。記憶にあるのは小町さんの話を鵜呑みにして八幡さんにキスを迫る私。……うぁ、我ながら恥ずかしい事したもんだね。それに凄く馬鹿な事を考えてたよ。八幡さんが盗られることはないのにね

 

 

「よし、落ち着いたな? じゃあ小町に何を言われた?」

 

 

~少女説明中~

 

 

「あれだな、アホかお前」

「うん、アホだったよ……」

 

 

自分の頭の悪さ加減に呆れて自嘲気味に笑ってしまう。君の事を信じているかと思っていたけど信じ切れていなかった自分が憎いよ。……でも、君の周りには女の子が多いからどうしても心配になっちゃうよ、それも悪い事かな?

 

 

「安心しろ、俺は小町と……、お前が好きだからな」

 

 

思わず目を見開いてマジマジと見つめてしまう。顔を限界まで逸らしても真っ赤になった耳までは隠せなくて、八幡さんが如何に真剣に言っていたかがわかる。その想いに応えたいな

 

 

「私は君と小町さんが、大好きだよ」

 

 

そして私も赤く染まった頬を見られない様に顔を逸らす。お互いに口を開かないがこの沈黙は決して気まずいものでは無い、八幡さんが真剣に私の事を「好き」と言ってくれるなら私も君の事を最後まで信じるよ。さてこのまま緩やかに時を過ごすのもいい、もう一勝負仕掛けるのも面白いと思う

 

 

「ね、それで、えっと、キスはしてくれるのかな?」

「お前……、今それを言うか」

 

 

寧ろ今言わなくて何時言えと言うのかな君は、これ以上絶好の機会はそうそう無いよ。だから少し踏み込んでみよう。もう印は必要ない、ただ一つの愛が欲しいだけ。……ちょっと欲張りになっているかな?

 

 

「嫌なら、私からしようかな」

「あー、待て待て。じゃあ眼瞑ってろ」

 

 

今度も言われた通り眼を閉じ顔を上向きにして待つ。待っている時間が凄く長く感じる。何分だろう、いやまだ10秒も立っていないのかもしれない。待てば待つ程緊張してくる。うぅ、早く来てよ八幡さ

 

 

ちゅ

 

 

「これで我慢してくれ」

「ぇ、ぁ、ぅ、うん」

 

 

唇が触れる感触がした。……額に。まったく君は本当に面倒な人だね、でも今日はいいや、別の機会では私からしてみて反応を見ようかな。私はゆっくりでも前に進もう。大丈夫、八幡さんが落とされる訳がない、セキュリティーがとても堅いからね。勿論警戒を怠る理由にはならないけど。さて飲み物でも淹れてきてあげようかな


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