自己満足で描いた女オリ主の話~自書女主話~   作:最下

22 / 27
自書女主話

冷たい風が頬を撫でる放課後。私は特別練の屋上で一人、彼を待ち続ける。思えば色々な事があったね。八幡さんに助けて貰ったのが丁度二週間前。それから八幡さんを探し出してとにかく眼を目的で側にいた。そして土曜日に八幡さんに泣きついて自分の気持ちを整理した。奉仕部に依頼したり、奉仕部が求めるモノを訪ねたり、ああその時に八幡さんを好きなのを自覚したんだったね。八幡さんにお弁当を作ったり一緒に出掛けたりしたね、邪魔な人が絡んできたけどあの後に起きた事を考えればファインプレーだったかもしれない。そして次の日に、八幡さんに馬鹿みたいな大声で告白して逃げた。

 

 

「随分とドタバタしてたね、私は……」

 

 

独り言は白い吐息と共に空に溶けた。今頃八幡さんはあの四人の誰かと出会っているだろうね。もしかしたら誰かの告白を受け入れたかも知れない。もしかしたら全ての告白を拒絶したかも知れない。彼等彼女らを私の我儘に巻き込んで悪いと思ってるよ。

 

 

「ふふ、こんな無意味な謝罪もそうないね……」

 

 

何も面白くないが笑ってしまう。……この屋上は皆が知る「若葉八千代」ではなく、家族しか知らなかった「私」を八幡さんに見せた場所。あの時の私は拒絶は怖くなかった、眼にしか興味が無かったから。でも今は彼が好きで彼に拒絶されることが怖い。大きな変化もあったもんだね。そうだ、ここで一番最初に掛けた言葉は

 

 

「『遅れてすみません。比企谷先輩。』だね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『いや、気にすんな。』か?」

 

 

いつの間にか屋上に来た八幡さんに声を掛けられ硬直してしまった。ふ、ふふ。君が覚えてくれるとはね……。予想を大きく上回ったよ。それにしてもいつの間に入ってきたのかな?まさかこの待ち時間を嫌な事と思ってしまったのかな。

 

 

「ふふ、残念ながら今日はレジャーシートは持ってきてないよ」

「そんなピクニック気分じゃないから必要ねぇよ」

「それもそうだね」

 

 

緊張で自分の声が震えていないか少し心配になる。軽口を叩ける余裕があるうちなら問題ないだろうね。折角だしこの前の再演といこうか、八幡さん

 

 

「君の返事を聞く前に『少し小話を挟ませてもらっていいかな?』」

「……『時間稼ぎか?』」

「『まさか、そんなことしないよ。さて話させてもらうよ。いいかな?』」

 

 

関係も距離も大きく変わった今で過去を再演する。君の眼をあまり意識しない様に見つめる。そして『ふふ、相も変わらず腐ったいい眼をしているよ。』と心の中で呟く。

 

 

「……あるところに宝石を愛でるのが趣味の魔女がおりました。その魔女はある日、一人の少年と出会いました」

「…………」

 

 

魔女は誰か少年は誰か、簡単すぎる例え。邪悪な魔女をやっつけるのがおとぎ話だ。だけど見ず知らずの誰かにやられるのはお断りだけど君に切り裂かれるなら本望かもね。さあ話を続けようか

 

 

「魔女は少年の持つ宝石に強く惹かれました。その宝石を愛でようと心に強く誓いました」

「魔女は少年から宝石を奪うために様々な行動を取りました。ですが上手くいきません」

「ある日少年は問いました。『何故この宝石を望むんだ?』と」

「魔女は泣き崩れました。何故なら宝石に照らされ自分の心の隙に気付いたからです」

「…………」

 

 

私が自分の気持ちを整理したあの日。自分を見つけられると思えた日。君を意識し始めた日。

 

 

「少年は泣き崩れた魔女に手を差し伸べました『俺達と隙を埋めるモノを探そう』と」

「それから魔女と少年、そして二人の少女との四人で探しました」

「巨大な体を持つ化け物や格闘技を使いこなす魔女を乗り越えます」

「そして魔女は気付くわけです。少年といる時の喜びに、恋に」

「…………」

 

 

奉仕部に依頼した日。君と喫茶店で話をした日。私が君の事が好きなのに気付いたあの日。

 

 

「魔女は再び様々な行動を取りました。今度は少年に振り向いてもらうために」

「変化は急激に訪れます。少年の言動に激怒した魔女がいきなり愛を叫んだからです」

「…………」

 

 

我ながらいきなり過ぎたと思うよ。さて物語はクライマックスだよ

 

 

「そして二日の時を流し魔女と少年はある校舎の屋上で向かい合っています」

「…………」

 

 

そう、それが今。物語は未来へと向かっていくよ。

 

 

「魔女はこういいます」

 

 

言葉を切り。眼を閉じ息を吸う。眼を開き八幡さんを真っ直ぐ見て

 

 

「私は君が欲しい。君のものになりたい」

 

 

屋上で再び自分の心を、思いを告げる。

 

 

「……少年は問います」

「俺はお前を幸せに出来る自信は無い。それでもお前はいいのか?」

 

 

少年の質問はとても馬鹿馬鹿しい内容だった。本気で言っているなら神経を疑うよ。まあ、それが少年の問うものなら魔女として言葉をあげるよ

 

 

「魔女は言います。君はおバカさんだね」

「オイ」

「物語に口を挟むのは無粋だよ?」

「うっ、……すまん」

 

 

八幡さんの苦手な行動「ジトッと見つめる」をするとすぐ謝ってくる。魔女の話を続けよう

 

 

「魔女は呆れて続けます。私がいつ幸せになりたいと言ったのかな?と」

「…………」

「八幡さん。私が欲しいのは、好きなのは幸せじゃない。八幡さんだよ」

 

 

私の持論だけど「幸せ」は作るものじゃない、見つけるものだと思う。この場合ポジティブシンキングが分かりやすい考え方の一例だよ。物事をポジティブに思考できれば多くの幸せを見つけることが出来る。ネガティブに考えれば不幸しか見えなくなる。

 

 

「君に幸せにしてくれと頼む気はないよ。ただ手を繋いで共に歩いてほしいだけでね」

「ふふ、これじゃあプロポーズみたいだね……」

 

 

語りだす前にあった緊張感はとうにほぐれ、余裕を取り戻した私は少し微笑んで見せる。欲を言えば君と同じ景色を見てみたい。でもそれは世界を狭くするだけだから思考から消す。

 

 

「さて少年さん、そろそろ君の気持ちを私に教えてくれないかな?」

 

 

「……少年はいいます」

 

 

暫しの間をおいて八幡さんが口を開く。おいで八幡さん、今の私はどのような答えでも受け止められるよ。魔女と少年の物語、さあエンディングまでの僅かの時間を楽しもう、例えその結末がバッドエンドでもね

 

 

「よっと」

「きゃ」

 

 

突然私の体を抱き寄せて私を腕の中にすっぽり収める八幡さん。ま、待ってよ、何をする気なのかなっ!?

 

 

「こんな俺でも良ければよろしくお願いします」

 

 

耳元に囁く八幡さん。驚愕と感動、緊張の糸が切れ腰が砕けそうになり急ぎ八幡さんの服に掴まる。まったく……もう……目頭が熱いね……

 

 

「うん……、よろしくね、八幡さん。……ぐす」

 

 

赤くなり泣きそうな顔を八幡さんの胸にうずめる。……私ばかり恥ずかしがってるみたいだから少しぐらい慌てさせてあげるよ

 

 

「ふふ、八幡さん……」

「どうした?」

「大好きだよ」

「俺もだよ」

 

 

ボンッ!と自分の顔が爆発しそうなほど熱くなる。……ずるい、ずるいよ。そんなの。嬉しくて舞い上がるに決まってるよ。もう言葉が出せる気がしないので様々な意味を込めてギューと抱き付いてやる。ふふ、大好きだよ八幡さん。

 

 

~~~

 

 

「お前な……。いくら疲れてても抱き付いたまま寝るなよ……」

「うっ、ごめんね……」

 

 

あの後抱き付いたまま眠ってしまったみたいで、八幡さんがいくら起こそうとしても起きないから背負って帰ったらしい。君が捕まらなくて良かったよ。いや、本当に申し訳なく思ってるよ。ごめんね八幡さん。

 

 

「ま、いいけどよ」

「ありがとう。……小町さんはまだ帰ってきてないのかな?」

 

 

この時間なら家にいておかしくないはずだけど買い物か友人と遊んでいるとかかな?いくら受験生でも根の詰め過ぎは良くないしね。そんなところだね

 

 

「あー……、小町は俺が背負ってるお前を見たら泊まり込みで勉強会だってよ」

「……小町さん。明日も学校なのによくやるね」

「そういうやつだ、あいつは」

 

 

小町さんからしたら「今日は小町の事を気にせず仲良くやっちゃってください!」みたいな事だろうけど、こう、あれだね。余計なお世話だよ。うん。まあとにかく話したい事もあるし丁度いいかもね

 

 

「さて八幡さん。これからの事で少し話し合いたいけど、いいかな?」

「例えば?」

「奉仕部をどうするか、とかだね」

 

 

告白してきた女子が二人いる部活。私は君じゃないからそれをどう感じるかは分からない。それでも眼を背ける理由にはならないからね。ちょっと酷かもしれないけどお聞かせ願いたいよ

 

 

「……実はそれについては二人と話した」

「聞かせて貰っていいかな?」

「ああ、お前が許可してくれれば奉仕部に行くことになった」

 

 

ふむ。それが君達の解ということだね。バラバラになったにも関わらずもう一度一つになろうとする。つまりそれは君達の求めてる本物に近いものなのかな?関係が変わったように見えない、壊れてもいない。本物、ね。

 

 

「そう、好きにしなよ」

「いいのか?」

「うん。でも浮気したら二度とこの家の敷居を跨げると思わないでね。勿論小町さんに会えない様に手を回すし、何なら芸術に凝ってみようかな?大丈夫、君の眼を際立たせるような作品にしてみせるよ。それが嫌なら浮気しないでね?」

 

 

恐怖を与える脅しをする時は自分が実現できる範囲で脅すようにしている。無理に大きく見せるような行動は威嚇、つまり警戒をしてるように見えてしまうからね。だから静かにゆっくりと重圧をかけるのが効果的な脅し方だよ。

 

 

「わ、わかりました……。マジで出来んの?」

「出来るよ?どれが聞きたいのかな?」

「いやいいです。貴女に愛を捧げます。」

 

 

でも、恐怖で忠誠を誓わせた愛なんて……

 

 

「もし浮気して私と一緒にいたく無くなったら早めにいってね……?傷は浅い方が、あう」

「阿呆。浮気なんてするわけないだろ。ですので泣きそうな声やめてください」

「……うん」

 

 

チョップを食らって少し冷静になる、そしていつの間にか握りしめてしわくちゃになったスカートを放す。後でアイロンかけなくちゃね。それにしても今の私は感情が不安定だね。精神的刺激を減らすべきかもしれないよ

 

 

「……ん」

 

 

八幡さんに寄り添って肩に頭を預ける。八幡さんは反射的に逃げようとしたけど、自分でそれを止め黙って肩を貸してくれた。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

耳からは二人分の呼吸の音。衣服がずれる音。時計の秒針が回る音。微かに聞こえる冷蔵庫の駆動音。自分の心音。鼻からは最早慣れた比企谷家の匂い。八幡さんが好んで飲む甘いコーヒーの匂い。すぐ横にいる八幡さんの匂い。肌からは悪くない柔らかさのソファの感触。そしてすぐ横に八幡さんがいることを教えてくれる温もり。ずっとこうしていたくなる心地良さ。

 

 

「八幡さん……」

「どうした?」

「少し眠るね……?」

「ああ、おやすみ……」

 

 

膝を枕に眠る態勢になった私の髪をゆっくり撫でつける。髪の間を指が通り抜ける感覚が気持ちいい。元々眠かった私にはもうこの眠気に抗う術はなくトロトロと眠りにおちていく……

 

 

「これからもよろしくね……」

「ああ……」

 

 

 




後書き


まず感謝を。そしてまだ「自書女主話」は終わっていません。しかしこれからは一話完結型の話で目的が無いものなので投稿速度は激しく落ちると思います。よろしければこれからもお付き合いのほどよろしくお願いします。

今まで設定の軌跡を乗せておきます。


基本情報
・若葉 八千代(わかば やちよ)
・誕生日は5月10日 登場時16歳
・1年C組 一色とクラスメイト
・家は比企谷家から一分も掛けずに行ける
・一人称「私」

容姿
・身長は小町より二、三センチ小さい。
・基本、半目。というよりジト目?瞳は黒。
・髪は黒のショートカット。赤いシンプルなカチューシャとヘアピンで目に掛からない様にしてる。
・だがカチューシャ、ヘアピンは外してる日もある。
・制服は規定通り。冬は中に黒のセーターを着ている。
・私服は基本ラフなスタイル。変に大人ぶると余計子供らしいとわかっている
・寸胴。

特徴・スキル
・良く寝る
・動物に嫌われる。(カマクラはギリOK)
・料理練習中。
・牛乳を好む。
・決して身長やスタイルを気にしてるわけじゃない。
・少し変なのは自覚してる(気にしない)。
・武道の心得がある(使いたくない)
・目玉焼きは醤油派(塩もOK)。
・言葉の最後は大体「だよ」「だね」「かな」
・「ふふ」と笑う。極稀に「くく」と笑う
・八幡を咎める時はジトッと見つめる。
・オタク趣味に嫌悪はない
・ファッションはよくわからない
・スカートは好きじゃない
・でかくて動くのは怖い
・学力は学年十位以内
・ひらひらと称される

書く機会が無かった設定
・八幡視点なら八千代は「タイプ別陽乃さん」と称された。
 ・ある意味陽乃さんより厄介な部分もあるかも

出来事

1水曜日 八千代ナンパされる 八幡に助けられる。

1木曜日 平塚先生に相談 奉仕部訪問 八幡と下校

1金曜日 八幡、小町と登校 八幡と昼食 奉仕部訪問 小町とガールズトーク

1土曜日 比企谷家に遊びに行く 自分の気持ちを整理する 呼び方変更

1日曜日 カット のんびり過ごした

2月曜日 奉仕部に依頼 材木座、平塚先生に質問 一緒に下校

2火曜日 喫茶店で本物を知る 好きなのを確信

2水曜日 八幡の教室に行く 昼を一緒に食べる 依頼終了 家庭教師 かゆうま

2木、金 カット 少なくとも八幡とお昼を食べた

2土曜日 デート ボーリング サイゼリア 元同級生 まどろみ

2日曜日 比企谷家へ ネコ語 膝枕 ひらひら ハグ ファッション あーん キレる

3月曜日 八幡に好意ある人物達と会談 

3火曜日 八幡に好意ある人物達が告白

3水曜日 八幡が答えをする日 もう一度告白 成立 今後について

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。