自己満足で描いた女オリ主の話~自書女主話~   作:最下

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人(仮)+αに依頼

「比企谷君、一体どういうことかしら。犯罪はやめておきなさいと何度もいったでしょう?」

「や、犯罪じゃねぇから」

 

 

入れてもらった紅茶に口をつけながら考える。どうしてこうなったのかな?今の状況は八幡さんは床に正座、それから少し離れた位置の椅子に座り、踏みつぶされた虫を見るような目で八幡さんを見つめる雪ノ下先輩。そして私と八幡さんの間に、私を庇うように座っている由比ヶ浜先輩。もう一度言うよ。どうしてこうなったのかな?

 

 

~~~~~

 

 

日曜日はテレビをのんびり眺めて過ごし、今は月曜日の放課後。私は奉仕部を訪ねるために特別連の廊下を歩いている。それにしてもいつ来てもこの校舎には人気がないね、きっと夏になったら少しにぎやかになるかな?ここまで何もなかったら幽霊もお化けも出なさそうだけどね。いや、もしかして相模実行委員長の生霊とか、腐った眼で言葉攻めしてくる男子生徒とかがでてくるのかな?後者は現在進行形で存在してたよ。さて奉仕部についた、少し深呼吸して

 

 

トントン

 

 

「どうぞ」

「失礼します。」

 

 

……次の文化祭は奉仕部でカフェを開くことをお勧めするよ。美人さんはいるし見方によってはイケメンの男子生徒もいるから中々繁盛しそうだよ。売り文句は雪ノ下先輩が入れた紅茶といったところかな。あと奉仕部の知名度も上がるから割といい案かもね。

 

 

「やっちー、やっはろー!」

「こんにちは、若葉さん。」

「はい、こんにちは。雪ノ下先輩、由比ヶ浜先輩、八幡さん。」

 

 

ピタッと雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩の動きが止まり冷気を出し始めた。その冷気は八幡さんに向けて出しているのか八幡さんが一番寒そうにしている。八幡さんの斜め後ろにいる私まで寒いよ。

 

 

「比企谷くん?」

「……なんでしょうか。」

「正座」

「……ハイ」

「やっちーはこっちに座っててねー」

 

 

とりあえず従って椅子に座っておく。雪ノ下先輩が紙コップに紅茶を淹れて出してくれる。いつも通りのいい香りがする紅茶なのに場の雰囲気に侵されたのかそこまで飲む気にならない、それでも多少の礼儀なので口は付けるけどね。

 

 

「さて」

「比企谷君、一体どういうことかしら。犯罪はやめておきなさいと何度もいったでしょう?」

 

 

~~~~~

 

 

「や、犯罪じゃねぇから。後主語をいれろ、主語を」

「ヒッキーを名前呼びするのは、さいちゃんだけだったじゃん!」

「ばか、戸塚だけじゃねーよ、戸塚で十分なんだよ」

「それ、さいちゃん好きすぎだからぁ!」

 

 

結局、説教でもなんでもなくいつもの漫才でしたってオチだね。見ていて飽きるものじゃないけど呆れるよ、まぁ仲良しさんでいいと思うけど本題に入れないのは困るかな。

 

 

「コホン、それでどういうことかしら?比企谷君、若葉さん。」

「あー……」

「小町さんが勧めてくれて私も乗り気だったので名前呼びにしました。」

「……小町ちゃんも知ってるんだ。」

 

 

嘘は言ってない、言ってないことも多いけどね。というかこれ以上は面倒だから八幡さんに聞いてもらおうかな。漫才を見に来たわけでも尋問をされに来たわけでもないからね。

 

 

「今日は依頼をしに来たので続きは八幡さんに聞いてもらえますか?」

「……わかったわ。それでは依頼を聞きましょうか。」

 

 

一度全員定位置に戻る。私はとりあえず八幡さんの近くに椅子一つ分の隙間を開け、椅子をおいて座る。近くで由比ヶ浜先輩が「意外と近い!」って驚いてたね。できればそういうことは言わないで欲しいな、恋愛とかはよく分からないのに、ちょっと意識しそうにもなるからね。

 

 

「私の依頼は『信じられる自分を得たい』です。受けてくれますか?」

「もう少し詳細を喋ってもらいたいものね。」

「そうですね。……先輩たちは胸を張って自分を表現できますか?」

 

 

答えが返ってくるとは思っていない質問。小説の登場人物でもないのに確固とした自分があるのはとてもじゃないけど有り得ないだろうね。それに私たちはまだ十六、十七年しか生きてない少年と少女が十全理解できるとは思っていないよ。

 

 

「それは不可能ね。私達は人間という生物よ。生物は生きるために進化、変化を繰り返さなければならない。わかっているでしょう?」

「ええ、もちろんです。それでも生物は酸素を取り込むのは変わらないですよね?酸素の取り入れ方は多少異なっても、です」

「そうね……」

 

 

完全に蚊帳の外の八幡さんと由比ヶ浜先輩。八幡さんはこの前相談したのもあってある程度、理解しているようだけど由比ヶ浜先輩はまったく理解できてなさそうだよ。いまも頭の上にクエスチョンマークが見える。……そして雪ノ下先輩。主席で入学してずっとトップでいるだけあって理解も頭の回転も速いね。さっきので伝わったみたいだよ。

 

 

「そう、わかったわ。」

「え、ゆきのん何がわかったの!?」

「それで雪ノ下、どうすんの?」

「無視!?」

 

 

雪ノ下先輩は犬を躾けるみたいに由比ヶ浜先輩に「待て」をしてから少し思考を始めた。それにしても暖房が効いた部屋にいると少し頭がぼーとする。この感覚はうっかり眠りに落ちてしまいそうであまり好きじゃないね。とりあえず雪ノ下先輩が思考してる間に二人の意見を聞こうかな。

 

 

「八幡さん、由比ヶ浜先輩。理解してくれましたか?」

「まぁ俺は大体わかるけどよ。由比ヶ浜は理解してないぞ。」

「うぅー、ヒッキーもう一個!もう一個ヒントちょうだい!」

「あーそうだな。お前がクッキー焼こうとして出来た木炭も雪ノ下が焼いたクッキーも原材料は同じだろ?」

 

 

八幡さんは由比ヶ浜先輩に理解させようと例え話を始める。「クッキー焼こうとして出来た木炭」って何かな?……いや、火加減を間違えたのは分かるけど、火加減って滅多に間違えないよね?

 

 

「若葉さん。あなたの依頼を受理します。」

「では、これからよろしくお願いします。雪ノ下先輩。」

「ええ。」

 

 

さて、問題はこれからだね。私は『自分の中心となるもの』それが『信じられる自分』だと思っている。でもそれが簡単に見つかるとは思えないしすでに持っていて気づいていないだけかもしれない。どっちにしろ時間は掛かると思うよ。

 

 

「じゃあ最初に先輩達から見て私はどのような印象を受けますか?」

「そうね、私は薄っぺらいものを感じていたわ。」

「んーあたしはなんというか、こう、中身がないーみたいな?」

「つまり雪ノ下先輩と同じ、ということですね。」

「たははー、そうだね。」

 

 

同じような印象を受けるようだね。中身がない、何度も言われた言葉だよ。まあ心にも無いことを言ってたら当たり前だけどね。でもこの依頼は私の本心だと思っているよ。君たちがどんな印象を受けてるかまではわからないけどね。そして、一番聞きたいのは八幡さん、君から見た私だよ。どのように見えてるのかな?

 

 

「俺は何考えてんだこいつ、という感じだな。」

「……失礼だね、君は。」

「つーかお前はいっそ素で喋れよ。そっちの方が楽だろ。」

「先輩と話す言葉使いじゃないよ?」

「大丈夫だろ。」

 

 

確かに素で喋った方が楽は楽だけど、いいのかな。由比ヶ浜先輩は許してくれそうだけど、雪ノ下先輩はこういうの厳しそうだよ?……ただの印象だし八幡さんがいいというなら大丈夫かな?

 

 

「わかったよ。素で喋らせてもらうけどいいかな?」

「ええ。出来損ないの仮面を見てるよりずっと精神的負担が少ないわ。」

「うん。素のやっちーの方が絶対いいよ!」

 

 

……やりづらい。二人とも相手にしたことないタイプの女子だよ。それでも嫌悪感を抱かないのは彼女たちが悪意を向ける気が感じ取れないからだね。……羨ましい。君たちは私が欲しい物に近づいてるみたいだね。いや、もう持っているのかな?

 

 

「……羨ましい」

「え?」

「いや、何でもないよ。」

「それで、この質問に意味はあったのかしら。」

「あまりないね。というか八幡さんそれは今もそうなのかな?」

 

 

雪ノ下先輩と由比ヶ浜先輩は仕方ないとしても、君が一番接してる時間長いのに今もそうなら中々ショックだよ?

 

 

「違うっつーの、これは第一印象だ。」

「じゃあ、今はどうかな?」

「そうだな。……子供」

「その心は?」

「大人ぶってるところだな、割と性格も子供らしいし。あと身長?」

「………」

 

 

大人ぶってる、ね。意識はしてなかったけど君からみたらそう見えるのか。でも子供らしいとは心外だね。まあ面白い見方を知れたから少し収穫があったと考えるかな。それでも一言余計だよ。私が身長を気にしてたら喧嘩を売られたようにしか感じられないからね。……? 少し寒い?おかしいね、暖房は効いてるし窓も扉も閉まっているから冷気は入らないと思うけど

 

 

「ヒッキー?やっちーのこと随分と知ってるね?」

「あら?どういう関係か少しお聞かせもらいたいわね。よろしいかしら?」

 

 

 

このあと滅茶苦茶尋問された。


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