自己満足で描いた女オリ主の話~自書女主話~   作:最下

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人(仮)と呼び名

「ん、んむぅ」

 

 

……また寝てたみたいだね。日はだいぶ傾いてきて四時か五時ぐらいかな。だとしたらこの家に来て五時間は寝てたということに……、いくらなんでも寝すぎだね。とにかく今の時間は……五時ちょいだね

 

 

「あっ、八千代さん起きましたかー?」

「おはよう、小町さん。」

 

 

すごく水分が足りない。当たり前だね、冬だし暖房利いてるし、何より沢山泣いたからね。親から滅多に泣かない子といわれてたから初めて気が済むまで泣いたかもしれない。……そういえば比企谷さんがいない。

 

 

「はい、お水です。兄は今日発売のラノベがあるとかで出かけました。」

「ありがとう。……私、そんなに分かりやすいかな?」

 

 

この前、奉仕部を訪ねた時もズバリ言い当てられたし聞くまでもない質問だったね。とりあえず水を飲む。うん五臓六腑に染み渡るのを感じるよ、こんなにおいしく感じる水も久しぶりかもしれないね。

 

 

「え?ええ、もんの凄く分かりやすいですよ?見回して小町だけとわかったら少し寂しそうな顔してましたし」

「そんな顔をしていて……」

 

 

完全に無意識だったし寂しいなんて思ったことは記憶の中には無い。それに彼がいなくて悲しむことはあっても寂しいなんて。……いや私の感じ方が変わったのかな?もしかしたら……もしかしたら……っ、やめよう考えるのはもっと判断材料が増えてからの方が効率的だよ。

 

 

「たでーまー」

「っ!?」

「おおーおかえり、お兄ちゃん」

 

 

体が音にすると「ビクゥッ!」という感じに跳ね上がる。鼓動が速くなる。頭に過るのは子供の様にグスグスと泣いて疲れて眠るという記憶。私は見た目だけでなく中身も思ったより幼いのかもね。そうじゃなくてあんなにさらけ出した後にあうのは少し恥ずかしい。

 

 

「……若葉はどうかしたのか?」

「りゃ、にゃんでもないよ」

「………」

 

 

凄く恥ずかしい噛み方したし比企谷さんは中々に心配した眼で見てくる。き、君の眼は好きだけど、いまその眼はダメ。精神を落ち着けたいのに全く落ち着かないよ。

 

 

「……小町。何かあったん?」

「八千代さんも可愛い女の子、ということだよ。」

「容姿はそうだな。」

 

 

君達兄妹は私をどうしたいのかな?少し落ち着いてきた精神が「容姿はそう(可愛い女の子)だな」で乱れて「容姿『は』そうだな」で変に冷却される。せ、精神が持たなそうだよ。

……落ち着いて若葉八千代。大丈夫、大丈夫。問題ない……ね?

 

 

「すーはー、おかえり比企谷さ……八幡さん。」

「な、何で呼び方変えた」

「小町さんは名前呼びだから統一感があったほうがいいかなって。……いやかな?」

「八千代さん!小町も比企谷さんとも呼べるのでそっちの方がいいと思います!」

「………」

 

 

流石小町さん。こういう時すぐこっちに付いてくれるのは凄く助かるよ。大丈夫、ペースを掴めた。普段の私だ。……でもこれは本当に私なのかな。いや私が私を理解できてないから自問自答は無意味だね

 

 

「………………………………はぁ、もう好きにしてくれ」

「そう、八幡さん、うん……八幡さん。」

「……くすぐったいからそんなに噛み締める様に言わんでもらいたいんだが」

 

 

これは自分に馴染ませようとしてるだけで決して他意はないよ。……多分ね。いや実は君の表情が面白くてね。もっとじっくり見てみたい。

 

 

「それじゃあお兄ちゃんもならって八千代さんをや・ち・よって呼んであげないと!」

「は」

「え」

 

 

こ、小町さん?君は、君は背中を押すことしかできないのかな?いや悪いことじゃないけど、今日だけで変化が多すぎて対応できる気がしないよ。……それは私も悪いけどさ。それはともかく今まで私を名前で呼ぶのは親ぐらいだったのにね。小町さん、君には感謝してもしきれないかもね。いつか小町さんを誘って甘いものでも食べに行こう。

 

 

「八幡さん?」

「お兄ちゃん?」

「……えぇー。あぁー」

 

 

……言い訳、誤魔化しの言葉が浮かんで消えてるのが眼から読み取れる。こういう時、君は眼は泳ぐけど視線を逸らそうとしてるというより、文字を読む時の動きに似てる。頭の中の文章でも読んでるのかな?

 

 

「や、や、や、やっちー……」

「………」

「……ごみいちゃん」

 

 

ここでソレを持ってくるのはいくらなんでもいただけないね。いやタイミング関係なくやっちーは嫌だけどさ。まあ君の気持ちを優先するのもいいかもしれないね。無理してまで名前呼びをを強要する気は無いよ。

 

 

「……そんなに、嫌ならいいよ。今まで通り、若葉でね。」

「えー!お兄ちゃんには押しすぎる位でいいんですよ!?」

「小町、それはお前が決めないでくれ。」

 

 

小町さんは頬をリスさんみたいに膨らませてる。そんなに不満なのかな。自分が御膳立てしたのをひっくり返されたら腹も立つね。それに関しては悪かったよ、でもお互いにやり過ぎたと思うよ。引き際も肝心ってね。

 

 

「はぁ~。八千代。これで満足か小町?」

「な」

「な!?ふ、不意打ちというのは小町的にポイントが……OK!」

 

 

~~~~っだから君にモテそうって言ったんだよ八幡さん。退いて退いて最高のタイミングでドカンと来るある意味最悪のスキルだね。それに小町さんのポイントは謎が多すぎるよ。貯まったらどうなるのかな?換金システムとか割引とかのシステムかな。

 

 

「君は、女の敵だね。」

「それは違うな。どちらかというと狩りの対象とか的だ。」

「お兄ちゃん、それは悲しすぎるよ。」

 

 

……君の過去に何があったのかな。小町さんには多くのトラウマがあるという事しか聞いてないし私もそこを深く聞くつもりは無いけどね。いつか聞ける日が来るかな。うん?そろそろ六時を回りそうだね。楽しい時間は一瞬だよ。……いや単純にたくさん寝たからだけどね。とにかく親には友達の家に遊びに行くとしか言ってないから少し心配してるかもしれないし今日は家に帰ろうかな。

 

 

「八幡さん、小町さん。そろそろ私は帰るよ。」

「おう、さいなら」

「わっかりましたー!お兄ちゃん見送り!」

「あいよ」

 

 

外に出ると予想以上の寒さで体が震える。八幡さんも今は薄着だから凄く寒そうに体を摩っている。

 

 

「それでは八幡さん。また明日。」

「はいはい、じゃあな」

「……また明日とは言わないんだね。では」

 

 

とにかく今日は変化と感情の起伏が激しくて疲れたよ。……私は自分を得られるかな。君を信じてみれば分かるかな。君の綺麗な在り方に少しでも近づけるかな。君達を頼りにさせてもらうよ奉仕部さん。

 

 

八千代の日記

 

私は自分を信じられるように、自分を得る。楽しみだね。

 


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