遊戯王GX~鉄砲水の四方山話~   作:久本誠一

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ターン4 氷上のプリマ

「皆さん、初めまして。体育教諭の鮎川です。これから三年間、よろしくね」

 

 あのデュエルからはや三日。十代も翔も最初はピンときてないみたいだったけど、業を煮やしたユートが説明途中に割り込み交代。ようやく納得してくれたようだ。もっとも翔は『二重人格ってヤツっスか?』なんて、微妙にわかったんだかわかってないんだか始末に困る反応だったけど。それともう一つ不思議なことが起きた。どうも十代にはユーノの姿が見えるようになったらしい。本人いわく、『ハネクリボーも見えるぜ!ところでお前の横で泳いでるソイツって、もしかしてシャーク・サッカーか?』だそうだ。いや、僕には何も見えないんだけど………。ちなみにユーノの感想は『驚いたな。ま、原作の大まかな流れに変わりはないだろ』とのこと。なんのことだかさっぱりわからない。前からちょいちょい思ってたけど、コイツら会話のキャッチボールをまともにする気があるのかなぁ…………?

 そんなことを考えていたら、頭の中で声がした。

 

『体育…………なあ清明、お前ってボート漕げるか?』

「(は、はい?)」

 

 まるで意味が分からない。体育とボートと一体何の関係があるってんだろう。まあ一応できるっちゃあできるけどさ。

 

『あーいや、別に授業には関係ないんだけどな。今日はボートを漕ぐスキルが必要になる可能性がひじょーに高いから、そのつもりでいろよ』

 

 …………なんで?その後も一日中問いただしてみたけど、結局ユーノが答えてくれることはなかった。ただ、ほかにも気になったことがありまして。

 

「えへへ…………」

「なあ清明、翔の奴一体どうしちまったんだ?」

「さあ?」

 

 ぼんやりと頬杖ついて座り、ニタニタとしまりなく笑ってる翔。

 

「ユーノー、お前はなんか知ってるか?」

『…………………さあな(スーッと明後日の方を向く)』

「「ムッチャ怪しいーー!!?」」

 

 もうよくわかんないので十代と相談して、ある程度注意しながらもそのままほっとくことにした。まあそのうち治るでしょ、うん。

 ――――――――――で、夜。のんびりデッキをいじくってたら、隣の部屋の十代がいきなり飛び込んできた。

 

「清明!!翔がどこ行ったか知らないか!?」

「え、何?何?」

「それが、さっきから翔がどこにも居ないんだ!」

「あれだよほら、忘れ物でも取りに行ったんじゃないの?」

「それでも、もう一時間もたつんだぜ!何かあったんじゃないのか?」

「そんなこと言われてもなぁ…………でもいいよ、手伝おうじゃないの。ところで隼人は?」

 

 隼人…………あー、隼人さんってのは僕らの先輩。なんでも留年生らしいけど、基本的にはいい人。ただちょっと後ろ向きなところもあるんだけど。

 

「それが、『どうせ飯の時間には帰ってくるだろー』って」

「うん…………まあ実際そうだと思うけどなぁ」

「そう……かなー?」

「とりあえず、この辺りからもう一回探し直そ。夕飯になっても帰ってこなかったら、最悪先生のところまで行った方が早いだろうし」

「そっか!じゃあ清明、悪いけどそっちの方探しててくれ!」

「オーケー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まず結論。見つかりませんでした、まる。

 

「帰ってこないね…………」

「どこにも居ない…………」

 

 まったく、人に心配させて。帰ってきたらまず説教でもしてやりますかね。と、そのその時十代のPDL…………だっけ?なんかそんな感じの名前の、入学時に一人一個もらった機械が鳴った。

 

「ん、なんだ?」

 

 そう言ってポケットから引っ張り出し、覗き込む十代。と、驚いたようにメールの文面を見せてくれた。そこには簡単に一言、

 

『翔君のことで、話したいことがあります。ブルーの女子寮まで来なさい』

 

と書かれていた。お願いじゃなくて命令口調なのがイラッとくる。けどまあ、

 

「行くしかないよねーこれは」

「よし、じゃあ早速行ってみるか!」

『…………ふむ。ちょい待ち、お二人さん』

 

 ようやく手掛かりが見つかって盛り上がってきたところに、ずっと部屋の隅で精霊体になって寝っ転がってたユーノが声をかける。

 

『女子寮は基本的に男子禁制だぞ?さあ、どうやって潜り込む?』

 

 あ。ど、どうしよ十代。

 

「え、えーっと、なにかいい方法あるか、清明にユーノ?」

 

 うーんと、何か、何か、何か…………。と、そこでふと一つのことを思い出した。それは、今日の昼にユーノが振ってきた、意味の分からない会話。

 

「ボートだ!あれで脇の池から行けばいい!」

「それだ!よし、確かこの寮にも手漕ぎボートなら一隻あるはずだぜ!」

 

 それにしてもユーノ、まさかこうなることを知ってたのかな?いや、まさか、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、所変わってブルー女子寮前…………の池。特徴、デカい。以上。いーかげんボート漕ぐのも飽きてきたんだけどなぁ。

 

「おい、誰だか知らないけど来てやったぜ!翔を返せ!」

「ようやく現れたわね、遊城十代」

「アニキ~、助けて~!」

「あ、翔!…………何やってんのそんなとこで」

 

 ロープでぐるぐる巻きにされた翔が桟橋に放り出されているその姿は、まあなんというか、

 

「みっともないな、翔」

『前々から思ってたけど、お前って結構えぐいとこあるよな』

「ちょっと、そこのあなた!!」

 

 はて、僕のこと…………なんだろうなあ、やっぱり。十代は今あっちの金髪っ娘と何やら喋ってるし。

 

「はーい。何か用?」

「何か用、じゃありません!あっちは明日香さんが直々に呼びつけたのだからまだわかるとしても、貴方は一体誰なんですか?」

「そうよそうよ!部外者の、それもレッド生は特別に見逃してあげるからさっさと帰りなさい!」

 

 いや、レッド関係なくね?と言いたいのはぐっと我慢して、とりあえず当たり障りのない返事を返す。

 

「そりゃどーも。でもまあお気遣いなく。第一、今ここで僕が帰ったら十代が帰れなくなるし」

「なによその態度!貴方、自分がオシリスレッドだという自覚はあるの?」

「そーいや隼人…………先輩も言ってたなー、そんなこと。でもまあ、悪いけど特に気にするつもりはないから」

『へぇ、なかなか言うじゃないの。ちっとは見直したぜ』

「(そう言ってもらえて嬉しいよ)」

『ま、あっちのお二人さんはそう思ってはくれないみたいだけどな』

 

 やっぱりというかなんというか、まあブルーの傾向から考えて当たり前だけど。結構怒ってるねー、二人とも。そしてそのうちの片方(いまだにどっちの名前もわかんないから、こうとしか言いようがない)が口を開いたその時。

 

「二人とも、少し落ち着かなきゃだめだよ?って言ってるよ。それとやっほー、清明。久しぶり~、だってさ」

「あれ?その声…………」

『もしかしなくても、だな』

「あの時はありがとうね、だってさ。夢想ちゃんの登場だよー、なんだって」

「夢想ちゃん!」

「ちょっと貴方、夢想さんに対してなんですかその態度は!」

「え、何夢想ちゃん実はそんな偉い人だったの!?」

「いや、だから二人とも呼び捨てでいいんだけど、って言ってるのに…………。それと清明、別にそういうわけじゃないよ、だってさ」

「え、じゃあなんで?」

「ちょっとね、勝ちすぎたのかな?みたいなの」

「今のブルー女子寮の二大トップと言えば、あそこのドロップアウトと話している天上院明日香さんと、ここにいる河風夢想さんの二人なんです!いやしくもオシリスレッドなんかには、話しかけることさえ許されませんわ!」

「え~と…………どゆこと?」

 

 説明を求めてチラッと見ると、心底困った顔で答えてきた。

 

「正直私もやめてほしいんだけど何回言っても直らなくて、って言ってるの」

「大変そうだね…………」

「うん」

 

 なんとなく二人でしみじみしていると、そこに十代の大声が響いた。

 

「サンダー・ジャイアントで攻撃!ボルティック・サンダー!!」

「きゃあっ!!」

 

 あ、十代が勝った。それじゃあ、今の今まですっかり忘れてたけど。

 

「ほら翔、さっさと帰って…………説教な」

「何か今殺気を感じたッスよ!?」

「当たり前だって。ったく、何があってこんなトコまで来たかは知らないけど…………そういやそこのお二人さん、一体翔が何したってのさ」

「コイツが覗きをやってたのよ!」

「やっぱ僕ら帰るんでこのメガネは煮るなり焼くなり好きにしてください」

「ちょ、誤解っスよ清明君!なにホントに帰ろうとしてるんスか!」

「だって覗きでしょ?そりゃさすがに庇いきれそうにないわー」

「だから誤解だってば~!」

「とにかく、許すわけにはいきませんわ!」

「別に返してあげていいと思うんだけどな、って言ってるのに」

「いいえ、そんなことを一度でも許したらつけあがるに決まってますわ!」

「そんな~、そもそも僕は覗いてないッスよ!」

『もー収集つかなくなってきたな』

「(だね。どーしようこれ)」

「話は聞かせてもらったわ」

「!?」

「あ、明日香さん!」

 

 ふと後ろを見ると、さっきまで十代とデュエルしてたらしい(見てなかったもん)金髪。そうかそうか、この人がその明日香さんとやらか。

 

「初めまして、遊野清明君。もう知ってるとは思うけど、私は天上院明日香、明日香でいいわ。よろしくね」

 

 ふむ、この人は少なくとも礼儀正しいな。なら、こっちもそれなりの態度をとるべきだろう。別に皮肉を言う理由もないし。

 

「ああ、こっちこそ初めまして。それと、こっちも清明だけで構わないよ」

「それで、翔君の話だけど。どうかしら、その前に私ともデュエル、してくれない?」

「おい明日香、話が違うぞ!俺が勝ったから翔は返してくれるんじゃなかったのかよ!」

「わかってるわよ、十代。これは、私が純粋にデュエルがしたいから頼んでいるだけ。結果がどうなっても今日のことはなかったことにするわ。ジュンコ、ももえ、それでいいわね?」

「「は、はい!」」

「明日香、気を付けたほうがいいよ、だってさ。清明はかなり強いよ、って言いたいみたいだよ」

「わかってるわよ、夢想。クロノス教諭を倒した実力、改めてこの目で見せてもらうわ」

「清明も頑張ってね、だってさ。明日香の強さもなかなかのものだよ、って忠告してるからね」

「わかったわかった…………まったく、人がまだOK出してないのに勝手に盛り上がっちゃって。でもまあ……」

『デュエリストなら、常識だろ?』

『「売られたデュエルは、買うのが礼儀!」…………ってな』

「そう、ありがとう。それじゃあ早速だけど」

 

「「デュエル!!」」

 

「先攻はあなたからでいいわよ」

「ありがとう。それじゃあ僕のターン、ドロー!」

 

 さーて、どうしようか。さっきのデュエルに気づいてなかったせいで、明日香のデッキタイプが掴めない。じゃあ、ここは守りを固めるか。

 

「僕は、ヒゲアンコウを守備表示で召喚」

 

 ずいぶんと強面のチョウチンアンコウが、明日香に向かって牙をむく。

 

 ヒゲアンコウ

効果モンスター

星4/水属性/魚族/攻1500/守1600

水属性モンスターを生け贄召喚する場合、

このモンスター1体で2体分の生け贄とする事ができる。

 

 ヒゲアンコウ 守1600

 

「そしてヒゲアンコウは魚族。その召喚に成功した時、手札からシャーク・サッカーを特殊召喚!」

 

 シャーク・サッカー

効果モンスター

星3/水属性/魚族/攻 200/守1000

自分フィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが召喚・特殊召喚された時、

このカードを手札から特殊召喚する事ができる。

このカードはシンクロ素材とする事はできない。

 

 シャーク・サッカー 守1000

 

「そしてフィールド魔法、忘却の都 レミューリアを発動!」

 

 ゴゴゴゴゴっと地面から生えてくる、忘れ去られた無人の都。ヒゲアンコウもシャーク・サッカーも、それぞれその周りの海の中に飛び込んだ。

 

 忘却の都 レミューリア

フィールド魔法

このカードのカード名は「海」として扱う。

このカードがフィールド上に存在する限り、

フィールド上の水属性モンスターの攻撃力・守備力は200ポイントアップする。

また、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。

このカードがフィールド上に存在する限り、

自分フィールド上の水属性モンスターの数と同じ数だけ、

自分フィールド上の水属性モンスターのレベルをエンドフェイズ時まで上げる。

 

 ヒゲアンコウ 守1600→1800 攻1500→1700

 

 シャーク・サッカー 守1000→1200 攻200→400

 

「カードを二枚伏せて、ターンエンド」

「まずは様子見、といったところかしら?私のターン、ドロー!私はサイバー・チュチュを召喚するわ」

 

 サイバー・チュチュ

効果モンスター

星3/地属性/戦士族/攻1000/守 800

相手フィールド上に存在する全てのモンスターの攻撃力が

このカードの攻撃力よりも高い場合、

このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。

 

 踊るようにしてフィールドに現れる、スケート靴をはいた女性モンスター。さあ、一体どんなデュエルを見せてくれるんだろう。

 

「そして速攻魔法、突進を発動!対象はシャーク・サッカー!」

 

 突進

速攻魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体の攻撃力は

エンドフェイズ時まで700ポイントアップする。

 

 シャーク・サッカー 攻400→1100

 

「んなっ!?」

『あーなるほど、そうきたか。ライフ4000なら確かにそんなゴリ押しでもいけなくはないわな』

「ユーノ、今のは一体どういうことなんだ?自分のモンスターの攻撃力をあげれば、どっちか片方は突破できるのに」

『んー?まあ見てなって十代。どうせすぐに本人が説明してくれるさ』

 

 先に言われちゃったけど、僕の疑問も十代と同じ。いつもどうり、ユーノは全部お見通しみたいだけど。

 

「そしてマジックカード、ダブルアタックを発動。手札のヂェミナイ・エルフを捨てて、このターンサイバー・チュチュが二回攻撃できるようにするわ」

 

 ダブルアタック

通常魔法

自分の手札からモンスターカード1枚を墓地に捨てる。

捨てたモンスターよりもレベルが低いモンスター1体を自分フィールド上から選択する。

選択したモンスター1体はこのターン2回攻撃をする事ができる。

 

 ヂェミナイ・エルフ

通常モンスター

星4/地属性/魔法使い族/攻1900/守 900

交互に攻撃を仕掛けてくる、エルフの双子姉妹。

 

「そしてサイバー・チュチュで攻撃、この瞬間に効果発動!あなたのフィールド上のモンスターの攻撃力がすべてチュチュより上だった場合、チュチュは相手プレイヤーにダイレクトアタックができる!ヌーベル・ポアント!」

 

 スケート靴は凶器じゃありません。良い子の皆さんは、間違っても人を蹴るための道具として使ったりなんてしないでください。

 

「ぐっ!」

 

 サイバー・チュチュ 攻1000→清明(直接攻撃)

 

 清明 LP4000→3000

 

「もう一度ヌーベル・ポアント!」

 

 スケート靴は凶器じゃありませn(ry

 というかそんなん喰らったらいきなりライフ半分じゃないか。く、ここはしょうがない!

 

「待った!二回目の攻撃時にトラップ発動、ポセイドン・ウェーブ!」

 

 スケートの要領で突っ込んでくるサイバー・チュチュを、大津波が押し戻す。

 

 ポセイドン・ウェーブ

通常罠

相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。

相手モンスター1体の攻撃を無効にする。

自分フィールド上に魚族・海竜族・水族モンスターが表側表示で存在する場合、

その数×800ポイントダメージを相手ライフに与える。

 

「このカードの効果でチュチュの攻撃は無効、さらにヒゲアンコウとシャーク・サッカーの存在でダメージは1600だ!」

 

「やるわね!」

 

 明日香 LP4000→2400

 

「やったッス!」

「頑張れー、清明!」

「あのレッド生、よくも明日香さんにダメージを!」

「貴女たち、ちょっと黙っててね…………だってさ。そんなことばっかり言ってると、ブルー寮の品位が下がっちゃうよ?別に私は気にしないけど、なんだって」

「カードを一枚伏せて、ターンエンドよ」

 

 清明 手札:1 フィールド:ヒゲアンコウ(守)、シャーク・サッカー(守) 魔法・罠:1(伏せ)

 明日香 手札:1 フィールド:サイバー・チュチュ(攻) 魔法・罠:1(伏せ)

 場:忘却の都 レミューリア

 

「僕のターン、ドロー」

 

 さて。今のところはこっちが微妙に押してるけど、正直攻めの一手が見つからないな。これを伏せたのは間違いだったかな?ただまあ、あのサイバー・チュチュは残しておくと厄介だ。

 

「ヒゲアンコウを攻撃表示に変更して、サイバー・チュチュを攻撃!」

 

 ヒゲアンコウ 守1800→攻1700

 

 ヒゲアンコウ 攻1700→サイバー・チュチュ 攻1000(破壊?)

 

「なら、ここでトラップ発動!ホーリーライフバリアー!」

 

 ヒゲアンコウが大きな口を開けてサイバー・チュチュに噛みつこうとするも、その真ん中にいきなり表れた青い服の修道女たちがバリアを張って攻撃を防ぐ。あれ、ホーリーライフバリアーの効果って確か…………。

 

 ホーリーライフバリアー

通常罠

手札を1枚捨てる。

このカードを発動したターン、相手から受ける全てのダメージを0にする。

 

『言いたいことはわからんでもないが、残念ながらあのカードならモンスターの戦闘破壊もナシにできるんだよ』

 

 え、そうなの?じゃあ一時k……

 

『念のため言っとくけど、一時休戦あたりではふつーに戦闘破壊されるぞ』

「…………なんで?」

『そんなもんだ、としか言いようがねえな。こればっかりは俺も今一つ理解できなかった』

「ふーん。あ、これでターンエンド」

「私のターン、ドロー!ヂェミナイ・エルフを召喚!」

 

 フィールド上に降り立つ、双子のエルフ姉妹。どーでもいいけどこれって、二人がかりで攻撃力1900なら、一人になると攻撃力950っていうことになるんだろうか。

 

『お前は何を言ってるんだ』

「(…………うん、ごめん。ちょっと反省してる)」

 

 ヂェミナイ・エルフ

省略

 

 ヂェミナイ・エルフ 攻1900

 

「ヂェミナイ・エルフでシャーク・サッカーを攻撃!」

「ごめんよ、シャーク・サッカー」

 

 ヂェミナイ・エルフ 攻1900→シャーク・サッカー 守1200(破壊)

 

「これであなたのモンスターは攻撃力1700のヒゲアンコウ一体…………行きなさい、サイバー・チュチュ!ヌーベル・ポアント!」

 

 本日二回目の、スケート靴によるハイキック。く、さっきのターンで倒せなかったのは痛いな。

 

 サイバー・チュチュ 攻1000→清明 LP3000(直接攻撃)

 

 清明 LP3000→2000

 

「これでターンエンド」

 

 清明 手札:2 フィールド:ヒゲアンコウ(攻) 魔法・罠:1(伏せ)

 明日香 手札:0 フィールド:ヂェミナイ・エルフ(攻)、サイバー・チュチュ(攻) 魔法・罠:0

 場:忘却の都 レミューリア

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 今ならセットカードもない、ここは押し切る!って言いたいところなんだけどなぁ…………。手札が……。

 

『わー、モンスターが一体もいねぇ』

 

 どう見ても事故です、本当にありがとうございました。

 

「しょうがないか、まずはヒゲアンコウでサイバー・チュチュをもう一度攻撃!」

 

 ヒゲアンコウの噛みつきは、今度こそサイバー・チュチュをしっかりと捉えた。

 

 ヒゲアンコウ 攻1700→サイバー・チュチュ 攻1000(破壊)

 

 明日香 LP2400→1700

 

「カードを一枚セット、ターンエンド」

「私のターン、ドロー。…………そうね、エトワール・サイバーを召喚。そして、ヂェミナイ・エルフでヒゲアンコウを攻撃するわ」

 

 フィールドに降り立つ二人目のプリマは、紅白デザインの衣装を着た長髪の女戦士。

 

 エトワール・サイバー

効果モンスター

星4/地属性/戦士族/攻1200/守1600

このカードは相手プレイヤーを直接攻撃する場合、

ダメージステップの間攻撃力が500ポイントアップする。

 

 エトワール・サイバー 攻1200

 

 くっ、ここでこの伏せカードを使うか?いや、でもここで発動したら後でどうしようもなくなる!

 

『ふむ、ここで見送りか。…………エトワール・サイバーの効果を把握したうえでやってくれてんだよな?」

「へ、効果?」

『もうやだコイツ』

 

 ヂェミナイ・エルフ 攻1900→ヒゲアンコウ 攻1700(破壊)

 

 清明 LP2000→1800

 

「エトワール・サイバーでダイレクトアタック!さらにこの時エトワール・サイバーの効果で、攻撃力が500ポイントアップするわよ」

 

 そんな効果だったのか!ならやっぱり、さっきヒゲアンコウがやられるときにあのカードを使っておけばよかったかな?

 

 エトワール・サイバー 攻1200→1700

 

 エトワール・サイバー 攻1700→清明(直接攻撃)

 

 清明 LP1800→100

 

「うわぁっ!」

『ふむ。鉄壁だな』

 

 いやちょっとユーノさん何落ち着いてんの!!残りライフ100って相当まずいんじゃないの!?

 

『まずいっちゃあまずいんだけどな。すっげー楽しみに見させてもらうぜ、次のお前のターン。自分でやったポカなんだし。わーい鉄壁だー鉄壁だー』

 

 えー、何その反応友達なくすよ?と言いたいのをぐっとこらえる。言ったところでぜんぜん応えないのは目に見えてるし。

 

「エトワール・サイバーの攻撃力が元に戻って、ターンエンド。さあ、あなたのターンよ?」

 

 エトワール・サイバー 攻1700→1200

 

 清明 手札:2 フィールド:0 魔法・罠:2(伏せ)

 明日香 手札:0 フィールド:ヂェミナイ・エルフ(攻)、エトワール・サイバー(攻) 魔法・罠:0

 場:忘却の都 レミューリア

 

「わかってますよ、だ!ドロー!」

 

 頼む、モンスター来い!

 

「よし!オイスターマイスターを召喚!」

 

 もうすっかりお馴染みになった、牡蠣に見えない牡蠣の戦士が池から飛び出してフィールドに着地する。何か今池の方で『マンマミ~ヤ!足をつったのーネ!!』とか聞こえたような気がしたけど、多分空耳だろう。

 

 オイスターマイスター

効果モンスター

星3/水属性/魚族/攻1600/守 200

このカードが戦闘で破壊される以外の方法でフィールド上から墓地へ送られた時、

自分フィールド上に「オイスタートークン」(魚族・水・星1・攻/守0)1体を特殊召喚する。

 

 オイスターマイスター 攻1600→1800 守200→400

 

「オイスターマイスターを対象に、マジックカードアクア・ジェット!」

 

『出た!清明さんのマジックコンb「うるさい」…………はい』

 

 アクア・ジェット

通常魔法

自分フィールド上の

魚族・海竜族・水族モンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターの攻撃力は1000ポイントアップする。

 

 オイスターマイスター 攻1800→2800

 

「レベル3で攻撃力2800!?」

 

「行け、オイスターマイスター!エトワール・サイバーに攻撃!オイスターショット!」

 

「やるわね…………!でも、まだライフは100残る!まだ戦えるわ!」

 

「それはどうかな!」

 

「なんですって!?」

 

「トラップ発動!メタル化・魔法反射装甲!!」

 

 そう、これこそが前から伏せてあったとっておき。さっき発動を渋ったのは、素の攻撃力が低いヒゲアンコウじゃあ効果が今一つ薄いと思ったからなんだけど…………結果的にはオイスターマイスターも100しか違わないね。まあいっか。そんなこっちの思いをよそに、右腕にジェットを付けてサイボーグのようになったオイスターマイスターがメタルの鎧を身に着け、いよいよ生き物に見えなくなっていく。もうこれ二足歩行ってことしか原型留めてないんじゃないかってぐらいに。

 

 メタル化・魔法反射装甲

通常罠

発動後このカードは攻撃力・守備力300ポイントアップの装備カードとなり、

モンスター1体に装備する。

装備モンスターが攻撃を行う場合、そのダメージ計算時のみ

装備モンスターの攻撃力は攻撃対象モンスターの攻撃力の半分の数値分アップする。

 

「まず、メタル化の効果で攻守300ポイントアップ!さらに、エトワール・サイバーの攻撃力の半分…………600ポイントの攻撃力アップ!」

 

 オイスターマイスター 攻2800→3100→3700 守400→700

 

「そんな……」

 

 オイスターマイスター 攻3700→エトワール・サイバー 攻1200(破壊)

 

 明日香 LP1700→0

 

 はぁ、勝った…………。へたり込みそうになるのをぐっと踏ん張って、先に座り込んでしまった明日香のところに近づいていく。

 

「えっと、大丈夫?」

「ええ……」

「手ぇ、貸そっか?」

「それじゃ、お願いしようかしr「ちょっと貴方!いくらまぐれで明日香さんに勝ったからって、そんなにいい気にならないでくれる!」…………ごめんなさいね、自分で立たないとまた言われそうだし」

「ちょっと、さすがにそれは言い過ぎじゃ……」

「あー、うん。気にしないから別にいいんだけどさ…………」

『だな』

「それでも同じブルーとして、私からも謝っておくよ、だって。ごめんね?」

「ノープロブレム」

『…………そのカタカナ英語発音やめろ、カッコ悪いぞ』

「え、そうだった!?」

『お前が英語できないことだけはよく伝わってきたな』

「そんな~…………えーい、十代に翔!もう帰ろう!!」

「お、おう!」

「だからアニキ、まずこのロープをほどいてくださいってば~!」

「あ、すまん翔!すっかり忘れてたぜ!」

「ちょっと、二人とも僕の扱いが悪くないっすか?」

「「だって…………なあ?」」

「なんでハモるんスか~!?」

 

 いや、だって今回ここまで来るきっかけは翔なわけだし。

 

「じゃあねー。まあ翔には説教しておくから、それで水に流しといて」

「それじゃあなー。ところで清明、説教っていったいどのくらいなんだ?」

「…………5時間ぶっ続けコース、かな?」

「ひぃっ!?鬼がいたッス!」

「ユート、俺と隼人は今日どこで寝りゃあいいんだろう…………?」

『大徳寺先生かファラオにでも頼みこんだらどうだ?俺も一緒についてくから。巻き込まれちゃかなわん」

「…………だな」

 

 その後、本当に5時間の間翔の悲鳴が響き渡ったかどうかは別の話。ちゃんちゃん♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『怖えなオイ』

「もう済んだこと、気にしない気にしない」




結局サイバー・ブレイダー出せなかった…………融合呪印生物使ってラストターンに呼び出そうと思ってたのに。ごめんなさい明日香さん。


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