遊戯王GX~鉄砲水の四方山話~   作:久本誠一

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深い意味はないけどまたタイトルのパターン変更。前回異様に短かった反動もあってか、今回はちと長めに。


ターン21 死神の羽は黒い羽根

 万丈目がこっちに帰ってきた日の夜。ちょうど空き部屋が一つあったのでとりあえずそこに入ってもらい、あーだこーだと薄い壁と部屋の中のドアを通して聞こえてくる文句に耳を塞ぐ。せめてこのドアがなければもうちょっと静かだったんだろうけど。ちなみに僕の部屋は十代や翔の部屋と今万丈目がいる部屋の間に位置してるんだけど、なぜか両方の部屋に通じる壁に一つづつドアがついている。いや、なぜかじゃない。こうなったのはだいたい十代が悪い。つい昨日まで空き部屋だったのをいいことに、どうせだから2階の部屋全部通り抜けできるようにしようぜ!とか言い出したのは十代だ。

 

『んで、ハンマーだののこぎりだので嬉々として壁ぶち抜いたのはお前な。挙句の果てに終わってからタイタンのいた寮まで行ってそこら辺のドア引っぺがして持ってくるとかお前ら何がしたいんだ』

「いいじゃないの。どうせ誰も使わない寮なんだし、あそこでホコリかぶってるよりはこっちで部屋の行き来を楽にする役に立つ方が道具としても幸せでしょ」

 

 あらかじめ考えておいた言い訳を口にする。しかしこれ、いまさらとはいえやってることは泥棒だよね。すると、不意にまじめな顔になったユーノがポツリと一言言った。

 

『………明日香が来たらなんて言い訳すんだ?さすがにドアの形ぐらい見りゃ一発でわかるだろ。あれだけ言われて懲りずに入ったどころか備品まで持ち出してきてからに』

「あ」

 

 一瞬だけ時間が止まった。今の話はなかったことにした。別に思考放棄とかそういうんじゃない。断じて違うよ!と、そこで部屋のドア………あ、玄関のある方ね。つまり最初からついてたやつ。それがノックされた。はて、どちらさんだろうか。十代とかなら壁のドア使って入ってくればいいはずだし、わざわざ外からお客さんなんて来るような場所でもないし。どーでもいいけどレッド寮って校舎からも遠いんだよね。だからこそ大徳寺先生以外に監視の目はまずないから大規模な土木工事もできるんだけど。

 

「はいはーい、今開けますよっと」

 

 もう一度ノックされたので、とりあえずドアを開けてみる。そこに立っていたのは、いろんな意味で意外すぎる人物だった。

 

「すいません、サンダー。実は折り入ってご相談が………アレ?」

「えっと、鎧田……だよね?」

 

 そこにいたのはサンダー四天王最後の男、鎧田。何してんのこの人。ノース校の皆、もう帰っちゃったよ?というかサンダー隣の部屋だし。そう言うと一言、

 

「マジか。あー、そりゃ悪かったな。んじゃ」

 

 それだけ言ってドアを閉めようとした。

 

「待て待て待てちょっと待て」

「んー?どした?俺、サンダーに頼みがあってわざわざここに残ってんだけど………ってちょっと待て!お前、遊野清明とかいう奴だろ!」

「僕?うん、確かにそうだけど」

「ちょうどいい、今日の俺にはツキがあるんだな。とりあえずサンダーに会うのは別に後でもいいし、おい、デュエルしろよ!」

 

 へ?………へ?とりあえず後ろで『蟹!?』とか言って跳ね起きた奴のことは無視しよう。てか、今何時だと思ってんのこの人。もう深夜だよ?よい子はもう寝る時間だよ?

 

『ちなみにお前は?』

「悪い子です」

 

 24時間365日、売られたデュエルはいつでもどこでもデッキがある限り受け付けます。

 

 

 

 

 

「よーし、ここら辺でいいかな」

 

 そして今、僕らがいるのは寮からちょっと離れた海辺。暗い海の波の音をバックに向かい合い、デュエルディスクを起動する。なにしろ夜も遅い時間、寮の近くでデュエルしたら近所迷惑なんてレベルじゃないからね。

 

「なあ、始める前に一つ言っておきたいんだが」

「うん?」

「俺は、1ターン目には本気を出さないからな。もし俺のターンを生きてやり過ごすことができたら、そん時は本気を出してやる」

 

 なんだか妙に真剣な顔で、挑発としか思えないセリフをのたまう鎧田。ほほう、言ってくれるじゃないの。ちょーっとカチンときたかな、うん。

 

『煮えたぎってきたぜ、ってか?』

 

 あー、まさにそんな感じ。煮えたぎってきた。ま、その自信がどこから来るのか見せてもらおうじゃん!

 

「「デュエル!」」

 

 先攻は………僕か。ざっと手札を見て、ドローしたカードと比べ合わせる。さっきのセリフが口だけじゃない場合のことも考えて、まずは様子を見るべきだろう。幸い、今の手札ならそれができる。

 

「僕は、ヒゲアンコウを守備表示で召喚。そして魚族のヒゲアンコウ召喚に合わせて、シャーク・サッカーを特殊召喚!」

 

 巨大なチョウチンアンコウとそこにくっつくコバンザメのコンビ。シャーク・サッカーもさっきまでデッキの中にいたところをいきなりたたき起こされたせいかちょっと眠そうだ。ごめんね。

 

 ヒゲアンコウ 守1600

 シャーク・サッカー 守1000

 

「さらにカードを2枚セットして、ターンエンド」

 

 とりあえず、先攻1ターン目としてはまずまずの布陣だろう。だいたいのデッキには対抗できるはずだ。

 

『ツッコミ待ちだよな?ブラホ一枚で突破できるその布陣でその自信はツッコミ待ちだよな?』

「俺のターン、ドロー!おいおい、その程度じゃ俺のワンキル圏内だぜ?手札のBF、暁のシロッコを通常召喚!こいつはレベル5だが、相手の場にモンスターがいて自分の場が空の時リリースなしで通常召喚できるからな」

 

 BF-暁のシロッコ 攻2000

 

 BF………話には聞いたことがある。大量展開が得意な鴉と鴉天狗の集団だとか。だけどなんだろう、この妙な感じは。一回も戦ったことがないテーマなのに、懐かしいような苦々しいような感じになる。

 

『シロッコか。ヤバいな、とりあえずそれ使っとけ!』

 

 ぼんやりとユーノの声が聞こえた気がしたけど、自分の考えに閉じこもっててよく聞こえなかった。なんだろう、この感覚。間違いなく、一回もこのテーマを相手にしたことはない。なのに、なんだか………。

 

「なにもないならもっと行くぜ?俺の場のモンスターがBF1体だけの時、白夜のグラディウスは特殊召喚できる!そして俺の場にBFがいることで、黒槍のブラストを手札から特殊召喚だ!」

 

 BF(ブラックフェザー)-白夜のグラディウス

効果モンスター

星3/闇属性/鳥獣族/攻 800/守1500

自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが、

「BF-白夜のグラディウス」以外の

「BF」と名のついたモンスター1体のみの場合、

このカードは手札から特殊召喚できる。

このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない。

 

 BF(ブラックフェザー)-黒槍のブラスト

効果モンスター

星4/闇属性/鳥獣族/攻1700/守 800

自分フィールド上に「BF-黒槍のブラスト」以外の

「BF」と名のついたモンスターが存在する場合、

このカードは手札から特殊召喚できる。

このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、

その守備力を攻撃力が超えていれば、

その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

 

 最初の鴉天狗の隣に、大きな槍を持った鴉天狗と銀色の鎧を着た鳥人間が黒い羽根を巻き上げながら姿を見せる。無茶苦茶な展開力だ!

 

「そして俺の場に3体のBFがそろった時、このトラップは手札から発動できる!デルタ・クロウ-アンチ・リバース!」

 

 デルタ・クロウ-アンチ・リバース

通常罠

自分フィールド上に「BF」と名のついたモンスターが存在する場合に発動できる。

相手フィールド上にセットされた魔法・罠カードを全て破壊する。

自分フィールド上の「BF」と名のついたモンスターが3体のみの場合、

このカードは手札から発動できる。

 

『おい馬鹿聞いてんのか!今更遅いが、やらんよりもはるかにマシだ!』

「え?あ、そっか!トラップ発動、フィッシャーチャージ!シャーク・サッカーをリリースして、暁のシロッコ破壊!」

 

 あ、考え込んでて気づかなかった!もう一枚は発動できるカードじゃないけど、せめてこっちだけは通させてもらおう。青い弾丸になったシャーク・サッカーが突撃して、シロッコのどてっ腹をぶち抜くという見ようによってはなかなかエグイ映像を見た後で、ありがたくカードをドローする。

 

 フィッシャーチャージ

通常罠

自分フィールド上の魚族モンスター1体をリリースし、

フィールド上のカード1枚を選択して発動できる。

選択したカードを破壊し、デッキからカードを1枚ドローする。

 

「ほう、ちょっとは楽しめそうだ!何しろ今のコンボ、ノース校じゃあワンキル率7割越えだったからな」

 

 7割………!すさまじい数字だ。そうか、だからあんなに自信があったのか。

 

「だがな、まだ俺のバトルフェイズは始まってすらいないからな?ブラストでヒゲアンコウに攻撃、デス・スパイラル!」

 

 BF-黒槍のブラスト 攻1700→ヒゲアンコウ 守1600(破壊)

 清明 LP4000→3900

 

「ターンエンドだ」

「このエンドフェイズ、白銀のスナイパーの効果発動!特殊召喚して、白夜のグラディウスを破壊!頼むよ、スナイパーさん」

 

 パン、パン、パンと三発の銃声が響き、グラディウスの鎧が銃弾に貫かれる。それをやったのはモンスターゾーンにいつのまにやら潜んでいた、一人のスナイパー。おお、渋い。

 

 白銀のスナイパー

効果モンスター

星4/地属性/戦士族/攻1500/守1300

このカードは魔法カード扱いとして

手札から魔法&罠カードゾーンにセットできる。

魔法&罠カードゾーンにセットされたこのカードが

相手のカードの効果によって破壊され墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時、

このカードを墓地から特殊召喚し、

相手フィールド上のカード1枚を選択して破壊する。

 

「グラディウス!………面白くなってきやがった、久しぶりに本気が出せるぜ!」

 

 清明 LP3900 手札:3 モンスター:白銀のスナイパー(守) 魔法、罠:なし

 鎧田 LP4000 手札:2 モンスター:BF-黒槍のブラスト(攻) 魔法、罠:なし

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 カードを引いた時点で、横のユーノがふと気になったといった感じで声をかけてきた。

 

『なあ清明、なーんかさっきから変だぞ。BFになんか恨みでもあんのか?』

「んー、恨みっていうかね。とりあえず孤高のシルバー・ウィンド苦手」

『ああ、出しづらそうだけどわりと厄介だ……よ………な?』

 

 なぜかフリーズしたユーノのことはとりあえず無視するとして。さあ、どうやってこの場をひっくり返そうか。まあ、そんなに変わったことができるわけじゃないけど。ちなみにさっきブラストじゃなくてグラディウスを狙ったのは、こうすることができたからなのさ。

 

「スナイパーを攻撃表示に。アトランティスの戦士を通常召喚して、黒槍のブラストに攻撃!スナイパーさんもダイレクトアタック!」

 

 アトランティスの戦士 攻1900→BF-黒槍のブラスト 攻1700(破壊)

 鎧田 LP4000→3800

 白銀のスナイパー 攻1500→鎧田(直接攻撃)

 鎧田 LP3900→2400

 

「ターンエンド。さあ、本気とやらを見せてみてよ!」

 

 そう言うと、鎧田は二ヤリと笑った。一体、どんな手を見せてくれる?と、そこで固まってたユーノがようやく動き出した。

 

『おい、ちょっと待て今言ったこともう一回繰り返してみろ』

「なに?今すんごく忙しいんだから後にして!」

『それどころじゃね……チッ、わかったわかった。んじゃ俺は寮に戻ってるぞ。どうしても今すぐ確かめたいことがある』

 

 そう言って大急ぎですっ飛んでいくユーノ。一体何なんだろう、確かめたいことって。まあいいさ、今は集中集中。

 

「俺のターン、ドロー………んじゃ、約束だ。俺のデッキの本気を魅せてやらあ!フィールド魔法発動!」

 

 フィールド魔法?BFは闇属性、ダークゾーンでも張るつもりなんだろうか。でも僕のそんな予想は、もろくも崩れ去ることになる。

 

「アンデットワールド!!」

 

 空が黒い不気味な雲に覆われ、すぐ横の海がRPGの毒沼みたいな粘ついた紫色になり、あたりにぼんやりと霧が立ち込めて………様変わりしたフィールドのなか、アトランティスの戦士がまるで落ち武者のようにボロボロの姿になる。

 

 アンデットワールド

フィールド魔法

このカードがフィールド上に存在する限り、

フィールド上及び墓地に存在する全てのモンスターをアンデット族として扱う。

また、このカードがフィールド上に存在する限り

アンデット族以外のモンスターのアドバンス召喚をする事はできない。

 

 アトランティスの戦士 水族→アンデット族

 白銀のスナイパー 戦士族→アンデット族

 

「あ、アンデットワールド!?」

「そう、これこそがこのデッキの真骨頂!元から展開を得意とするBFに展開の上手いアンデット族を混ぜ合わせることでさらに動きを速め、なおかつ相手のアドバンス召喚を封じることでアフターケアも行う最速のデッキ!BFを超えた黒羽、かの有名なUF(アンデットフェザー)の鎧田とはまさに!この!俺のことだぁぁぁ!」

「ごめんそれ初耳!」

「あらら、マジか」

 

 残念ながらマジ。………なんて言ってる場合じゃないよ!

 

「まあいいさ。BF………いや、UF-疾風のゲイルを通常召喚だ!そしてゲイルの効果で、アトランティスの戦士の攻守を半分に!」

 

 UF(アンデットフェザー)-疾風のゲイル

チューナー(効果モンスター)(制限カード)

星3/闇属性/アンデット族/攻1300/守 400

自分フィールド上に「UF-疾風のゲイル」以外の

「UF」と名のついたモンスターが存在する場合、

このカードは手札から特殊召喚できる。

1ターンに1度、相手フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。

選択した相手モンスターの攻撃力・守備力を半分にする。

 

 アトランティスの戦士 攻1900→950 守1200→600

 

「ゲイル、やっちまえ!ブラック・スクラッチ!」

 

 UF-疾風のゲイル 攻1300→アトランティスの戦士 攻950(破壊)

 清明 LP3900→3550

 

「さあ、俺の本気は止められないぜ!これでターンエンドだ」

 

 清明 LP3550 手札:3 モンスター:白銀のスナイパー(攻) 魔法、罠:なし

 鎧田 LP2400 手札:0 モンスター:UF-疾風のゲイル(攻) 魔法、罠:なし

 場:アンデットワールド

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 さて、とりあえずゲイルの効果がとんでもないのはよーくわかった。まずはあっちから叩かないと、どんなモンスターを出してもすぐ突破されちゃう。あのセットカードは多分ゲイルを守るためのものだろうけど、今の手札じゃどうにもできない以上、せめてさっさと使わせないと!

 

「僕は、オイスターマイスターを通常召喚!」

 

 オイスターマイスター 攻1600 魚族→アンデット族

 

「スナイパーさんでゲイルに攻撃!」

「甘いぜ、そんな攻撃がゲイルに届くかよ!手札のUF、極夜のダマスカスの効果発動!こいつを捨てれば、このターンのエンドフェイズまで自分のUF1体………つまりゲイルの攻撃力は500ポイントアップだ!」

 

 白銀のスナイパー 攻1500(破壊)→UF-疾風のゲイル 攻1300→1800

 清明 LP3550→3250

 

 あっちゃー、かわされた……。しかも悪いことに、伏せカードは残したままだ。まずい、攻撃力1800をこんなに越えられない壁に感じたのは人生初かもしんない。できれば一生味わいたくない感覚だけど。

 

「最善の策がダメだったなら、次善の策で何とかするしかない、ってね。カードをセットしてターンエンド」

「次行くぜ次!白い羽根のUF、極北のブリザードを召喚!このカードは特殊召喚できない代わりに、召喚した時レベル4以下のUFを守備表示で特殊召喚できるのさ。カモーン、黒槍のブラスト!」

 

 UF-極北のブリザード 攻1200

 UF-黒槍のブラスト 守800

 

 白い羽根がところどころ抜け落ちて骨が見えている鳥のゾンビが鎧田のデュエルディスクをコンコンと嘴でつつくと、そこから落ち武者のようなボロボロの姿になったブラストが飛び出してくる。しかし、墓地からも特殊召喚してくるなんてこれは予想外すぎる!

 

「ブラストは痛い……けど、トラップ発動!イタクァの暴風!」

 

 竜巻が鎧田の場に吹き荒れると、さすがの鳥たちも飛ぶことができなくなって地面に着地する。よし、このまま次で体勢を立て直そう。

 

 イタクァの暴風

通常罠

相手フィールド上に表側表示で存在する全てのモンスターの表示形式を変更する。

 

 UF-疾風のゲイル 攻1300→守400

 UF-極北のブリザード 攻1200→守0

 UF-黒槍のブラスト 守800→攻1700

 

「ちっ、どのみちこのターンじゃ倒しきれないってのに粘るねえ。ゲイルの効果でオイスターマイスターの攻守半減、そこをブラストで攻撃!」

 

 オイスターマイスター 攻1600→800 守200→100

 UF-黒槍のブラスト 攻1700→オイスターマイスター 攻800(破壊)

 清明 LP3250→2350

 

「これでターンエンドだぜ」

 

 清明 LP2350 手札:2 モンスター:なし 魔法、罠:なし

 鎧田 LP2400 手札:0 モンスター:UF-疾風のゲイル(守)、UF-黒槍のブラスト(攻)、UF-極北のブリザード(守) 魔法、罠:なし

 場:アンデットワールド

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 とりあえず、状況はかなりマズイ。結構追い込まれてる。ライフだけならさっきの暴風のおかげでそこまで変わらないし手札もこっちの方が多いけど、フィールドに差がありすぎる。せめてアンデットワールドさえなんとかできれば、もう少しやりようもあるんだけど………そう思いながら、今引いたカードに目を通す。お、ラッキー。最高のカードじゃあないけど、この状況ならなかなかいいカードだ。結果論だけど、さっきイタクァの暴風を使っといたのは正解だったね。

 

「魔法カード発動、スター・ブラスト!1000のライフを支払って、手札のジョーズマンのレベルを4に!そのまま通常召喚!」

 

 スター・ブラスト

通常魔法

500の倍数のライフポイントを払って発動できる。

自分の手札または自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選び、

そのモンスターのレベルをエンドフェイズ時まで、

払ったライフポイント500ポイントにつき1つ下げる。

 

 清明 LP2350→1350

 ジョーズマン 攻2600 獣戦士族→アンデット族 ☆6→4

 

「おっと、これだけじゃ終わんないよ。墓地の水属性2体、ヒゲアンコウとシャーク・サッカーを除外して、手札のタイダルを特殊召喚!」

 

 爆征竜-タイダル

効果モンスター

星7/水属性/ドラゴン族/攻2600/守2000

自分の手札・墓地からこのカード以外のドラゴン族

または水属性のモンスターを合計2体除外して発動できる。

このカードを手札・墓地から特殊召喚する。

特殊召喚したこのカードは相手のエンドフェイズ時に持ち主の手札に戻る。

また、このカードと水属性モンスター1体を手札から墓地へ捨てる事で、

デッキからモンスター1体を墓地へ送る。

このカードが除外された場合、

デッキからドラゴン族・水属性モンスター1体を手札に加える事ができる。

「瀑征竜-タイダル」の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 爆征竜-タイダル ドラゴン族→アンデット族

 

 これで2体の上級モンスターを揃えられた、さあ一気に反撃開始!

 

「ジョーズマンは自分フィールドの水属性1体につき攻撃力が300上がる………バトル!攻撃力が上がったジョーズマンでブラストを攻撃!」

 

 ジョーズマン 攻2600→2900→UF-黒槍のブラスト 攻1700(破壊)

 鎧田 LP2400→1200

 

「いいぞ!次はタイダル、ゲイルを攻撃だ!」

 

 爆征竜-タイダル 攻2600→UF-疾風のゲイル 守400(破壊)

 

「どうだ、まだまだ負けないよ!エンドフェイズにジョーズマンのレベルが6に戻って、僕はこれでターンエンド」

「俺のターン、ドロー。モンスターをセットしてターンエンドだ」

 

 相手のエンドフェイズを迎えたことで、タイダルが光に包まれ手札に帰ってくる。お疲れ様。また働いてもらうけど。なにしろアンデットワールドのせいでアドバンス召喚が全くできないんだから。

 

 ジョーズマン 攻2900→2600

 

 清明 LP1350 手札:1 モンスター:ジョーズマン(攻) 魔法、罠:なし

 鎧田 LP1200 手札:1 モンスター:UF-極北のブリザード(守)、1(セット) 魔法、罠:なし

 場:アンデットワールド

 

「僕のターン、ドロー………うーん、墓地のオイスターマイスターとアトランティスの戦士を除外して、もっかいタイダルを特殊召喚。ジョーズマンでブリザードに攻撃!」

 

 あの手札がまたダマスカスみたいな手札誘発だとしても、ジョーズマンの攻撃力2600を超えてくることはまず無理だろう。第一、向こうのモンスターは全部守備表示なんだから使うメリットもない。ここは、ややこしい事なんて考えずにサクッと攻撃しちゃうに限る。

 

 ジョーズマン 攻2600→2900→UF-極北のブリザード 守0(破壊)

 

「タイダルでセットモンスターに連撃!」

 

 爆征竜-タイダル 攻2600→??? 守600(破壊)

 

「メタモルポットのリバース効果!お互い手札が5枚になるぜ!」

 

 メタモルポット

効果モンスター(制限カード)

星2/地属性/岩石族/攻 700/守 600

リバース:お互いの手札を全て捨てる。

その後、お互いはそれぞれ自分のデッキからカードを5枚ドローする。

 

 たった今攻撃したのは、よりにもよってメタモルポット。ノーコスト5枚ドローとかもうふざけてんでしょ鎧田さんよう。こっちは一枚とはいえ手札捨てなくちゃいけないってのに。いやいかんいかん、落ち着け僕。まだ僕のターン、できることはある。とりあえず……

 

「カードをセットして、ターンエンドっと」

「きしし、反撃してやるぜ?まず永続魔法、黒い旋風を発動。手札のUF-鉄鎖のフェーンを通常召喚だ!」

 

 錆びついてボロボロになった鎖を振り回す鴉天狗の亡霊が、なぜか地面の中から這い出てくる。……そこは空飛ぼうよ。

 

 UF(アンデットフェザー)-鉄鎖のフェーン

効果モンスター

星2/闇属性/アンデット族/攻 500/守 800

このカードは相手プレイヤーに直接攻撃する事ができる。

このカードが直接攻撃によって相手ライフに戦闘ダメージを与えた時、

相手フィールド上に攻撃表示で存在するモンスター1体を守備表示にする。

 

「そしてこの時、黒い旋風の効果も発動だ!俺が攻撃力500のUFを召喚したから、攻撃力0の熱風のギブリをサーチしておくぜ」

 

 黒い旋風

永続魔法(制限カード)

自分フィールド上に「UF」と名のついたモンスターが召喚された時、

そのモンスターの攻撃力より低い攻撃力を持つ

「UF」と名のついたモンスター1体をデッキから手札に加える事ができる。

 

「フェーンの効果で直接攻撃、そのままジョーズマンを守備表示に変更だ!」

 

 UF-鉄鎖のフェーン 攻500→清明(直接攻撃)

 清明 LP1350→850

 ジョーズマン 攻2900→守1600

 

 フェーンの投げつけた長い鎖がジョーズマンとタイダルの間を縫うようにして僕に直接当たり、それを引っ張り上げる際にジョーズマンの足元をすくう。あ、ジョーズマンがこけた。でも、相手ターンでの表示変更なんて別に怖くない。次のターンにはまた表示形式は変更できるんだ!

 

「メイン2にカードを3枚セット、さらに魔法カードの浅すぎた墓穴を発動。モンスターをお互いセット状態で蘇生させて、ターンエンドだぜ!さっさと帰れ、征竜野郎!」

 

 タイダルがまた光に包まれ、手札に戻ってくる。もう僕の墓地の水属性はいないし手札の水属性を使ってあとあとやれることの幅が狭まるのも怖いから、当分タイダルの出番はなさそうだ。本音を言えばもうちょっと戦ってほしいところだけど。ちなみに僕のセットモンスターは内緒。メタモルポットで墓地に行った手札のモンスターだよ。

 

 清明 LP850 手札:5 モンスター:ジョーズマン(攻)1(セット) 魔法、罠:1(伏せ)

 鎧田 LP1200 手札:2 モンスター:UF-鉄鎖のフェーン(攻)、1(セット) 魔法、罠:黒い旋風、3(伏せ)

 場:アンデットワールド

 

「僕のターンドロー……手札の」

「おっと、待ちな。リバース発動、リビングデッドの呼び声!墓地の暁のシロッコを特殊召喚するぜ」

 

 UF-暁のシロッコ 攻2000

 

「ここでシロッコ?そんなことしても、ジョーズマンの攻撃力には勝てないよ?」

「慌てんなって。シロッコの特殊召喚に合わせて、この伏せカードも発動!ブラック・リターン!」

 

 シロッコがぼろぼろの両腕を振り、羽をまき散らしながらジョーズマンに風を吹き付けると、なんとジョーズマンの巨体が吹き飛んでいってしまった。ジョ、ジョーズマーン!?

 

 ブラック・リターン

通常罠

「UF」と名のついたモンスター1体が特殊召喚に成功した時、

相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択した相手モンスターの攻撃力分だけ自分のライフを回復し、そのモンスターを持ち主の手札に戻す。

 

 鎧田 LP1200→3800

 

「さ、続けてくれ」

「ぐぐぐ………ハンマー・シャークを召喚して効果発動、レベル3のドリル・バーニカルを特殊召喚!」

 

 ハンマー・シャーク

効果モンスター

星4/水属性/魚族/攻1700/守1500

1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。

このカードのレベルを1つ下げ、

手札から水属性・レベル3以下のモンスター1体を特殊召喚する。

 

 ハンマー・シャーク 魚族→アンデット族 ☆4→3

 ドリル・バーニカル 水族→アンデット族 攻300

 

 毎度おなじみトンカチ型の鮫が、これまたおなじみのでかいフジツボを呼び寄せる。もっとも、僕の狙いはそこじゃない。今回やりたかったことは、このカードの発動!

 

「バーニカルの召喚成功で、このトラップを発動!ディメンション・スライドの効果で、暁のシロッコ除外!」

 

 僕が発動したカード、ディメンション・スライドとは、自分がモンスターを特殊召喚した時に相手の表側モンスター1体をノーコストで除外することができる万能除去カード。本当は今使うつもりはなかったんだけど、ジョーズマンがバウンスされるなんて予想外の事態があった後じゃあシロッコ突破のためにはやむを得ないだろう。いわゆる必要経費ってやつだ。

 

「甘いぜ、甘々だぜ!そんなカード、俺が通すもんかよ!カウンタートラップ、ツタン仮面!」

 

 ツタン仮面

カウンター罠

フィールド上に表側表示で存在するアンデット族モンスター1体を対象にする

魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

 

「こ、これも止めちゃうの!?ならバトルフェイズ!ハンマー・シャークでフェーンに攻撃!」

 

 ハンマー・シャーク 攻1700→UF-鉄鎖のフェーン 攻500(破壊)

 鎧田 LP3800→2600

 

「ドリル・バーニカルは自分の効果で、相手に直接攻撃できる!ドリル・ハリケーン!」

「その攻撃宣言時、手札の熱風のギブリを特殊召喚!」

 

 発射されたドリルの間を縫うようにして、素早い動きで黒と赤の羽をした鳥が羽ばたき羽を広げる。………もっとも、そんなことしたって直接攻撃はするんだけどね。

 

 UF(アンデットフェザー)-熱風のギブリ

効果モンスター

星3/闇属性/アンデット族/攻 0/守1600

相手が直接攻撃を宣言した時、このカードを手札から特殊召喚する事ができる。

1ターンに1度、このカードの元々の攻撃力・守備力を

エンドフェイズ時まで入れ替える事ができる。

 

 ドリル・バーニカル 攻300→鎧田(直接攻撃)

 鎧田 LP2600→2300

 

「バーニカルは直接攻撃に成功するたびに攻撃力が1000アップするよ。とはいえ、次のダメージが怖い……カードを2枚セットしてターンエンド」

 

 あれ、なんか忘れてるような気がする。なんだっ…たっ……け………あー!

 

「せ、セットモンスター表側にするの忘れてた……」

 

 これはヤバい。大チョンボとかピンチとかいうレベルじゃないくらい馬鹿だ。大馬鹿だ。ドアホウだ。え、ちょっと待って?え、ホントになんで僕こんなことしちゃったんだろ。うわー、やらかした。ディメンジョン・スライドからのラッシュで勝つ気満々だったから、カウンターされるなんて予想外すぎたから…………こんなことやってるからオシリスレッドなんだろうな、僕。

 

「ドロー、メイン1にセットモンスターを反転召喚メタモルポット!リバース効果によって、もう一回手札を補充するぜ。ギブリのもう一つの効果発動!そしてシロッコの効果で、このターンシロッコ以外の攻撃を封じる代わりに場のUFすべての力を結集!シロッコでドリル・バーニカルに攻撃、ダークウィングスラッシュ!」

 

 UF-熱風のギブリ 守1600→0 攻0→1600

 UF-暁のシロッコ 攻2000→3600→ドリル・バーニカル 攻1300

 

「そんなの受けたらライフ一撃でなくなるじゃん!リバースカード発動、ポセイドン・ウェーブ!」

 

 大波がシロッコの突撃を防いでくれた。けど、今は全員アンデットだからダメージが入んないんだよねぇ。

 

「それでも、このターンはなんとか首の皮1枚で繋がった、かぁ……」

「だがな、次で仕留めてやるぜ?メイン2に魔法カード、ブラックフェザー・シュートを発動。手札のUF、尖鋭のボーラを捨ててお前が墓穴で蘇生したモンスターを墓地送りに。カードを3枚セットしてターンエンドだ」

 

 ブラックフェザー・シュート

通常魔法

手札から「UF」と名のついたモンスター1体を墓地へ送り、

相手フィールド上に守備表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。

選択したモンスターを墓地へ送る。

 

 UF-熱風のギブリ 守0→1600 攻1600→0

 UF-暁のシロッコ 攻3600→2000

 

 清明 LP350 手札:5 モンスター:ハンマー・シャーク(攻)、ドリル・バーニカル(攻) 魔法、罠:1(伏せ)

 鎧田 LP2300 手札:1 モンスター:UF-暁のシロッコ(攻)、UF-熱風のギブリ(守)、メタモルポット(攻) 魔法、罠:黒い旋風、2(伏せ)

 場:アンデットワールド

 

「僕のターン、ドロー!」

 

 はっきり言って、状況はかなり厳しくなってきた。とりあえずタイダルはまた出せるようになったけど、このままじゃジリ貧………すぐに打つ手がなくなっちゃう。そんな中、思いを込めてドローしたカードは、と。

 

「………あれ、コレ詰んだ?」

 

 手札はいっぱいあるのに、なんも思いつかない。モンスターはいることはいるけど、鎧田がまた1ターン目みたいな展開してきたらひとたまりもないだろう。絶望のまま、ヤケになってエンド宣言をしようとする瞬間。

 

『よ。ヒーローは遅れてやってくる、ってな。しかしあれだな、とっくの昔にやられてるかと思ったら昔一回は天下とったテーマ相手によく粘ってんじゃねーか』

 

 どうしようもなく口が悪い、とびっきりの相方が相変わらずのマイペースっぷりで帰ってきた。

 

「ユーノ、どこ行ってたのさ!」

『調べもんだってーの。もっとも、まるで成果なしだったけどな。その話は後でするとして、どれ、ちょっと手札と墓地と伏せ見せてみろ。………………ふーん、おめでとさん。今はお前のターンなんだろ?ちょいと運任せだが、勝利への方程式はもう5割がた揃ってんぜ』

 

 ユーノの言う『調べ物』が一体何なのかも気になったけど、それよりもセリフの後半が衝撃的だった。勝て……る?僕が?ここから?

 

「ほ、ほんと!?」

『おう、つーか狙ってたわけじゃないのね。………さ、勝つぞ』

「うん!」

 

 本当、頼りになる相方なんだよなぁ。そばにいるだけで、ぐっと心強くなる。それじゃあ、いっちょ勝ちに行こうか!

 

『「手札から魔法カード、死者転生を発動!手札のモンスターカード、グリズリーマザーを捨てることで墓地のモンスターカード1枚、タイダルを手札に。そしてタイダルもう一つの効果により、このカードと水属性のシャーク・サッカーを捨てることでデッキのモンスター1体を墓地に送る!この効果でデッキのシーラカンスを墓地に……ここで死者蘇生、たった今墓地に行ったシーラカンスを特殊召喚!」』

 

 万能蘇生魔法、死者蘇生の効果によって魚の王が地中からさながら鯉の滝登りのように飛び出してくる。いっぺん見てみたいよね、鯉の滝登り。本当に竜になったりするんだろうか。今度それモチーフのモンスターとか出ないかなー。

 

 超古深海王シーラカンス 攻2800

 

「へっ、大型モンスターを出したのは褒めてやるぜ。だけどな、それだって俺にはまだ勝算があるんだよ!」

 

 鎧田よ、そーゆーのをフラグって言うんだよ?もう遅いけど。だって今の状況ならドリル・バーニカルのダイレクトアタックで1300ダメージ、さらにシーラカンスでメタモルポットを破壊して2100ダメージで計3400ダメージ、これなら僕の勝ちだ!

 

『勝算、ねえ。読めたぞ、まずはシーラカンスから攻撃だ!』

「バーニカ……え、わかった!シーラカンスでメタモルポットに攻撃、マリン・ポロロッカ!」

 

 超古深海王シーラカンス 攻3000→メタモルポット 攻700(破壊)

 鎧田 LP2300→200

 

「もういいんだよね?バーニカルで連撃、ドリルアタック!」

 

 ドリル・バーニカル 攻1300→鎧田(直接攻撃)

 

「まだだ、こいつが俺の勝算!トラップ発動、バックフラッシュ!このカードで返り討ちだぜ!」

 

 発射したドリルが命中すると思われた瞬間にいきなり鋭い閃光が弾けて、大量の黒い羽根が僕のモンスターたちに突き刺さって爆発する。ぜ、全滅!?

 

 UF(アンデットフェザー)-バックフラッシュ

通常罠

自分の墓地に「UF」と名のついたモンスターが5体以上存在する場合、

相手モンスターの直接攻撃宣言時に発動する事ができる。

相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。

 

『やっぱり張ってやがったな、トラップを………すまん、お前ら。だが、これで終わりじゃねえんだよ。清明、わかってるとは思うがあのモンスターだぞ』

「うん!リバース発動、リビングデットの呼び声!僕が蘇生させるのは、墓地の青氷の白夜龍!」

 

 青白い氷の竜、僕のデッキで最大攻撃力を誇るモンスター。さっき墓穴で蘇生させたのもこのカードだったんだけど………いや、もうあの事件は忘れよう。忘れようったら忘れよう。ユーノにばれたらどんだけ馬鹿にされることかわかったもんじゃない。

 

 青氷の白夜龍 攻3000 ドラゴン族→アンデット族

 

「白夜龍でシロッコを攻撃、孤高の冬色氷輪弾(ウィンターストリーム)!!」

「もう一枚のトラップ発動、フェイク・フェザー!手札からUF-激震のアブロオロスを捨てて、お前の墓地のポセイドン・ウェーブの効果をもらってくぜ!」

 

 フェイク・フェザー

通常罠

手札から「UF」と名のついたモンスター1体を墓地へ送り、

相手の墓地の通常罠カード1枚を選択して発動できる。

このカードの効果は、選択した通常罠カードの効果と同じになる。

 

 無数の黒い羽根が風もないのにくるくると回り、浮かび上がった大津波の幻影が白夜龍の吐き出すブレスを抑え込もうとする。………でも!

 

「確かにこの攻撃が止められたら、僕の負けは確定するよ。でも、僕だって考えなしに白夜龍を出したわけじゃないんだ!白夜龍の効果は、そんな偽物の波なんて突き破る!」

 

 青氷の白夜龍(ブルーアイス・ホワイトナイツ・ドラゴン)

効果モンスター

星8/水属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

このカードを対象にする魔法・罠カードの発動を無効にし破壊する。

自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが攻撃対象に選択された時、

自分フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を墓地に送る事で、

このカードに攻撃対象を変更する事ができる。

 

 青氷の白夜龍 攻3000→BF-暁のシロッコ 攻2000(破壊)

 鎧田 LP200→0

 

 

 

 

 

「ちぇー、負けちまったかー。ま、楽しかったぜ」

「僕もね」

 

 そう言ってよっこらせと起き上がり、右手を差し出す鎧田。僕は、無言でその手を握り返した。二人で寮の方へ戻りながら、ずっと気になってたことを聞いてみる。

 

「ところでさ、こんな言い方もなんだけど、なんでこっちの学校にいるの?」

「んー、それか。サンダーの部屋まで案内してくれよ。そしたらそこでまとめて話すからさ」

「はいはい。おーい、万丈目~」

 

 もう寝ててもおかしくない時間なので、割と強めにノックしながら名前を呼ぶ。意外にもまだ起きてたらしく、反応はすぐにあった。

 

「ええい、うるさいぞ!だいたい俺は万丈目サンダー………鎧田?お前、こんなところでいつまでも何やってるんだ」

「あ、すいませんサンダー、実は……」

「まあいい、とりあえず上がれ。あいにく茶の用意はないがな」

『お構いなく』

「誰がお前に出すといった!」

 

 

 

 

 

「それで?一体何があった」

「はい、実は………」

「「実は?」」

 

 わざわざこんな時間まで学校に残ってたんだ、きっと大事な用なんだろう。

 

「出発前にちょっともよおしてきて、トイレ行ってたら船が帰っちゃって……」

 

 あ、そうですか。うん、まあそんなことだろうとは思ったよ!

 

『さっきと言ってること違うぞ』

「るっさい!」

「………まあ、お前の事情は分かった。明日校長に言って船を出してもらうから、今日はもう泊まってけ」

「ホントですか!ありがとうございます、サンダー!」

「そのかわり、帰ったらノース校の連中をまとめ上げるんだぞ。来年の友好デュエルでつまらん連中でも連れてきたら、この万丈目サンダーが許さんからな!」

「はい!」

 

 さてと、用も終わったし僕も帰って寝よう。壁のドアを開けて部屋に戻ろうとすると、鎧田に呼び止められた。

 

「あ、待ってくれよ」

「どったの?まだなんかあった?」

 

 まだ何か聞きたいことでもあるのかと振り返る。すると違う違うと首を横に振って差し出したのは、1枚のカード。受け取って表にしてみると、そこにはBF-疾風のゲイルの文字が。

 

「今日はありがとな。これ、よかったら受け取ってくれよ」

「え、でもこれって……」

「気にすんなって!どうせ制限カードだから1枚余ってるんだよ、俺が使わないのに持ってるよりもお前に使ってもらう方がゲイルだって幸せだろ?」

 

 ど、どうしよう。正直なところを言うと、このカードは欲しい。フィールド魔法の補助がないと若干素の打点が低めな僕のデッキでは、あの攻守半減効果はかなり使えるだろう。でも、本当にもらっちゃっていいのかな?ちらりと隣を見ると、うなずくユーノの姿。目線を前に戻すと、満面の笑みを浮かべる鎧田。……誰も反対しないみたいだし、じゃあ、もらっとこうかな。

 

「ありがとう、鎧田!」

「おいおい、さっきも言ったろ?気にすんなって」

 

 こうして、僕にとってのノース校友好デュエルは終わりとなった。次の日鎧田は帰っていったけど、なんでもノース校校長になんで万丈目君のアームド・ドラゴンを返してもらってこなかったんだ!って怒られたらしい。自分で忘れてきといて、そりゃいくらなんでもあんまりじゃなかろうか。万丈目も万丈目だけどさ。

 そう言えばあの後、ユーノに気になったことってのは何か聞いてみた。そしたらちょっとデッキ見せてみろって言うから素直に渡したらカードを1枚ずつじっくりと見た後でポツリと『やっぱり、ない……な』っていつもとは違いやたらとシリアスな顔で言ったのが心に引っ掛かった。まったく、一体何を隠してるんだろう。一人で悩んでたって何も解決しないってのに。




夢想「今度こそノース校編もおしまい、だってさ。四天王最後の一人、鎧田の使用デッキは【UF】。自分でもチラッと説明してたみたいだけど、ゴドバを捨ててアンデットサポートを入れた【BF】がコンセプト、みたいだよ。誰か興味持った人は組んでみて欲しいかな、なんだって。感想も教えてくれると嬉しいかも、だって。それにしても、カードのプレゼント………私も清明に何か1枚あげたいんだけど、シナジーがないからちょっと残念だけど今のところは諦めようかな、だってさ」

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