「ヌルフフフフ、この写真もいいですねぇ…。おや?これも素晴らしい。全部入れてしまいましょうか」
殺せんせーは数万枚にも及ぶ写真の塔を建てては崩し、卒業アルバムに使用する写真を選別していた。
そんな平和な時間は、一瞬で崩壊した。
「………!?!?」
殺せんせーは何かを察知したのか、教室の窓を壊し、外へ逃げる。
その際、触手の一部が溶かされていた。服を貫通し、触手だけが溶かされていた。
「……これは…!?」
安全な場所へ逃げようとE組の校舎から離れようと少し動くと、目の前に謎の壁が作られていた。
それはバリアのようなもので、殺せんせーがそっと触れると触手が溶けた。
「まさか…」
◇◆◇◆◇
「……なんだよ、あれ」
E組の校舎がある山を巨大な光が囲んでいる。
あそこで何が起こったのかは神栄にはすぐ察しがついた。
体が勝手に学校へ行こうとしたその時、烏間先生からメールが来た。
『自宅待機命令』そして、神栄たちが行ってきた『暗殺』の他言をしないこと。ということを改めて言われた。
「…流石にこれは守れねえな。事態が事態だ」
神栄は制服に着替えて急いで外に出ると、玄関には杉野と神崎が待っていた。
「どういうことだこれ!」
「それは後だ!みんなと合流するぞ」
やや広めの空き地にE組全員が集合していた。
神栄たちは一番最後に到着するが、移動中に皆の話し合いは律を通して聞いていた。
「教室の電波はオールカットか。それに周りには自衛隊がたくさん…か」
「おい!みんな!テレビ機能オンにしろ!今総理大臣が緊急会見開いたぞ!!」
前原が大声で言うと、皆がケータイを見る。
総理大臣は椚ヶ丘市のあの巨大ドームは月を壊した元凶を殺すために使われるものであるということを説明し、さらにその元凶を殺さないと地球が滅びるということ。元凶は自分たち生徒を人質にとって教師として学校に潜伏し、仕事をしていたということ。その他暗殺の準備を各国が進めていたことを話した。
最後に総理大臣はその元凶を殺すためのレーザーの発射日を発表した。
発射日は3月12日。地球が滅びるかもしれない日の前日である。
「……なんだこれは」
生徒たちは無意識に走り始めた。どんなことよりも最優先で、殺せんせーがいる教室まで行こうとした。
椚ヶ丘中学の本校舎前に着くと、自衛隊の人たちがE組へ行く道を塞いでいた。
「なんだね君たちは!」
「生徒だよ!あそこの教室の!バリアの中入れてくれよ!」
「ダメだ!」
自衛隊が必死に生徒達を止めていると、烏間先生がそれを止めに入る。
「やめろ!生徒たちに手荒くするな!」
「烏間先生、アレは一体!?それに、あの総理の声明、明らかに殺せんせーが悪いみたいな表現じゃないですか」
「俺すら直前まで聞かされてなかった…。おそらく奴に気づかれないようにするために知らせなかったのだろう。脅されたと言えば変に詮索されずに済む」
「納得できないです。殺せんせーに会わせてください」
神栄は烏間先生の前に立ち、抵抗する。
「駄目だ。行って人質に取られたら事態が悪化する」
「………は?」
烏間先生から言われた一言は、ありえない一言だった。
今まで殺せんせーがそんなことをしただろうか?答えは否。そんなわけない。
その一言から数秒、数多くの足音が聞こえる。
さらに、無数のフラッシュが神栄たちを襲う。
「メディア…?なんで」
神栄の頭には様々な単語が浮かぶ。
総理の声明、人質、事態の悪化、これだけあれば何が起こっているかがなんとなくわかる。
メディアは自分たちが今までされていたことを取材しようとここに来たのである。
メディア側は自分たちが殺し屋にされていた、と捉えているが、そんなのは嘘っぱちで、殺し屋には自分たちが進んでなったものだ。
だがそれを言っても聞く耳を持たない。
あっという間にメディアに囲まれ、言いたい放題なことを次々と言われていると、磯貝がある提案をする。
全員がその提案に乗ると、一斉に走り出す。流石に若者の脚力には追いつけないメディアは、生徒たちの取材を断念せざるを得なかった。
追っ手が来なくなったのを確認すると、皆は空き地に集まり、今自分たちが何をすべきかを話し合った。
ひとまずは情報収集。特にはバリアの発生装置に関することを探しに行くことになった。
「とはいえだ。こんなに一瞬で世界が変わるのは嫌なもんだ。そのためにも早く見つけないとな」
「うん…」
神栄と有希子が移動中に話していると、後ろからカルマが走ってきた。
「どうしたカルマ」
「やっぱり、バリアの周囲はどこも見張りがいるよ」
「なるほどな。そうなりゃやることは少なくなるな」
「強行突破とか?」
「そうなるしかないだろ」
偵察に数時間かけ、夜になると再び空き地に集まり、結果の報告をする。
全員の報告をまとめると、先程カルマが言っていたように、バリアの周囲はどこもかしこも見張りがいて、翌日以降はほかの基地からの増援が来るらしく、やはり強行突破するしかない。
それに明日以降増援が来るとなれば強行突破は今日しかない。
「なら…まず一旦家にでも帰って装備をだな」
「そうだね!そのあといろいろ………」
◇◆◇◆◇
一瞬の出来事だった。
皆で話し合っていたはずが、気づいたらよくわからない施設に手を縛られている状態で座っていた。
「なんだよこれ。なんも見えねえよ」
「あー、あー、そうだな。見せてやるよ」
聞いたことのない声の主が、神栄に付けられていた目隠しを外した。
それを皮切りにほかの人たちの目隠しも外されると、そこは白を基調とした清潔な部屋だった。
そこには若くは見えない男性が1人と、明らかに"殺る側"の人たちが数人いた。
「なんだこれ。俺らを捕まえて何する気だよ」
「なんだこのガキ。弱虫ボーヤと違って殺りそうな面ァしてんじゃねェか」
片目を眼帯で覆っているスキンヘッドの男は舌を出しながらこちらを挑発するかのように見ている。
できればあの間抜け面に2、3発拳を入れたいが、あいにく腕は拘束されていて動かすことすらできない。
「殺るか殺らねぇかは今後次第だな。ここはどこだよ。それだけでも教えてくれねーか」
「…ここは今回の作戦の指令本部だ。防衛省の一室をお借りしている。
君たちは標的の暗殺が完了するまで私たちの保護下2置かれることになる」
「………は?」
すなわち、殺せんせーの暗殺を指をくわえてここで見守ってろということである。
「あぁ、親御さんのことは心配しなくてもいい。渦中の娘息子さんたちの安全の確保の為…と言ったら素直に聞いてくれたよ。ごく一部の家庭を除けば」
「はは。それはうちの親が迷惑をかけたな。クソ野郎」
今作戦のリーダー格であろう男に神栄は笑う。
大方くだらない理由で自分の孫を信用もできない機関に保護されることに怒ったのだろうが、それも今となってはどうでもいいことだった。
じいちゃんが怒ろうが怒らなかろうが、結果的にこうして拘束されているのだから。
「強引な手段で君たちをここに運んだことは謝るが、それも今は関係ないな…」
「わーったよ。じゃあ俺らがこのままなのはいいよ。諦めるさ。けど、殺せんせーを殺すのだけは待ってくれよ」
「…何を今更」
「爆発の確率は1%以下だ。殺さなくても問題はないだろう」
「はははっ。何を言うかと思えばそんなことか。バカじゃないのか?世論は100%だろうが1%だろうが『殺せ』と言うだろう。国民は0%という確たる証拠がない限り、騒ぐだろうな。
一度火がついたら、そんなことは通用しないさ」
「…随分と痛いところついてくるな」
「しかも、だ。奴は前世ではひどく残忍な殺し屋だったそうじゃないか。ならば殺されるのも自業自得ということだ。
君たちは殺された人たちのことも考えず、大量殺人をした男をかばうというのかね???」
「この……!!」
神栄が立ち上がろうとしたその時、神栄の隣にいた寺坂が立ち上がり、リーダー格の男に思い切り顔面に蹴りを入れた。
「うるせぇ!!!あのタコをごもっともなド正論で語るんじゃねぇ!!!そもそも誰だテメェ!!」
「なんだと!?私の名は「…どうやら彼らはあの怪物に洗脳されているようだな。連れて行け」
「了解」
左目付近に大きな傷がついている男はリーダー格の男の前に入り、そう促すと不敵な笑みを浮かべる。
「私は君たちのような人が校舎に入らないように監視するのが役目なのでね。そろそろ失礼するよ」
そう言って男が去ると、その取り巻きは足早に神栄たちを部屋に連れて行く。
「…………」
この先一体何が起こるのか、まだ誰にも分からなかった。
最近ストーリー目的(ここ重要)でエロゲーをプレイし始めたら止まらなくなって10時間くらいぶっ通しでやったせいで生活リズム狂いました。
けど創作のモチベーションが上がったので近頃また上がるかもしれません。その時はよろしくお願いします。
次回は…まだ何も決めてないですが、おそらく次の次くらいには僕が前々からやりたかったことをやれるでしょう。
最後に、200万PVありがとうございます。こんな作品が……?と思いましたが、これも読んでくれる読者の方々のおかげです。あと少しで終わると思うので、もう少しお待ちください。ステキな終わり方ができるよう私も全力を尽くしますので!!