神栄 碧と暗殺教室   作:invisible

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お久しぶりです。今月来月は受験とかで色々忙しく、今回もその中で書いてたのであんま見せていいレベルのものでは無いですが…ご了承くださいな。
生存報告だと思って見てください(笑)


第163話 狂気の時間 -続-

 

 

 

刺された方の腕が完全に動かないまま、次の日を迎えた。

血は収まったものの、拳を握ることができない状態になっている。このままではペンを握ることすらままならなくなってしまう。

 

「あのナイフに、何か麻酔のような物が含まれてたのか…?だとしても、何のために…」

黒づくめの目的を模索していると、外から聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「あーおーくん!学校いこ!」

「……げぇ。が良いのか悪いのか、とんでもないタイミングで来たな」

急いで制服に着替え、スクールバッグを背負い家を出ると、家の前には神崎がいた。

 

「…?」

神崎は神栄の異変にすぐに気づく。普段行う神栄の行動とは明らかに違うことをしている。

神栄はスクールバッグを右肩にかけてから、右指を鳴らす。某人を喰べる系漫画に出てきた、白髪になった主人公がボコボコにしたあの巨漢の如く指を鳴らす。

いつもの癖だかなんだか知らないが、今日の神栄にそれがない。しかもバッグを左肩にかけている。

これは右手に何かあったに違いない。と思った神崎は神栄の右手に触れようとする。

 

「……ッッ!?」

今まで見たことのないような表情で、神崎の手を振り払う。何かに怯えているような、何かを恐れているような、そんな表情で振り払う。

 

「……頼むからやめてくれ。俺は大丈夫だから。…大丈夫だから」

「……うん。碧くんがそう言うなら。ごめんね…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆

 

 

E組に入るには、まず山を登る必要がある。今更この程度の距離はなんでもなくなってしまったのも、暗殺の仕事のおかげだろうか。

神栄の準備が遅れたため、公道とは違う近道を選んで2人で走る。

 

「すまんね…遅刻になっちまうかも」

「今更大丈夫だよ…。殺せんせーも許してくれるよ」

 

 

 

 

 

 

「いやぁ……遅刻はダメでしょ。もっとも兄さんは学校にすらたどり着けないと思うけど」

 

神栄はその声に反応し立ち止まる。

辺りを見渡すが、人の姿はない。

 

「……あれ?」

神栄は、先ほどまで隣にいた神崎がいなくなっていることに気づく。

いなくなるにしても、一瞬でいなくなるのはいくら何でもおかしい。

「おい!有希子!どこにいる!?」

 

 

「……ここだよオリジナル君」

「……なんの真似だシロ!!」

 

 

 

イトナを初めて連れて来たあの日のように、シロは普通に現れた。

シロの隣には口を封じられた神崎がいた。

一体いつ拘束したのかわからないが、今は神崎救出が何より先だ。

 

「…有希子を返してもらおうか」

「生憎それはできないね。君のトリガーとなるものを見つけるために、彼女は必要なんだよ」

「あと1つ。声がしたがそれは誰だ」

 

「……ああ、それか。それは説明より実際に見てもらった方が早いだろう。…来なさい、督界君」

 

「………は?」

 

 

「へへへ、兄さん。会いたかったよ」

督界、と言う男は、昨日神栄の腕を怪我させた黒づくめだった。

黒づくめは自分の手で被っていたフードを脱ぐと、にっこりと微笑む。

 

 

『第二撃の仕方がまるで神栄さんの動きそのもののように思えてしまって…。随分と似ていたんです。一歩目の足の出し方、その時のナイフの扱い方。どれを取っても神栄さんでしたので……』

律の言っていたことを思い出し、身体中が小刻みに震える。

 

「……おい…」

 

 

「フフ……ッハハハハハ!どうだ!驚いただろう神栄君!その顔!畏怖という言葉がぴったりな顔じゃあないか!」

 

「……なんだよ、これ」

 

「……兵器を使用してくる相手を予想した強化人間複製計画。強化クローン育成計画、武器を仕込んだ人間の作成。つまり、人間を超えた人間を作り出し、最強の人間を生み出す計画さ!その元となる人間に選ばれたのは君さ。君は狂気状態になることでその辺の人間をはるかに超えるパワーを持っている。さらにその知性、成長具合、全てにおいてパーフェクトな個体なのだよ。神栄君」

 

「嘘だろ…なんだよこれ」

「嘘じゃない。だが実際は奴の殺害に使うただの駒のようなものさ。表向きでは研究だが、本来の用途はただの駒。お前は駒の成長具合を検査するための駒であり、オリジナルが死ぬことで奴がオリジナルになるという、証拠隠滅のためにいる。

もういいだろう。結論はこうだ。

 

 

神栄 碧よ、俺の計画のために死んでくれ」

 

 

この男はどこまでも腐っている。自分のためなら、どんな犠牲を払っても構わない。しかも自分が犠牲になるわけではなく、他人の犠牲によって自分が利益を得ている。

神栄はそんなシロが許せなかった。

一度恐怖に襲われたが、もうそんなことを考える場合じゃあない。

 

 

「……有希子を返せよ…話はそれからだ」

「…そこまで彼女を優先するか。わかったよ。返してやろう」

 

 

シロは神崎を足で強引に前に出した後、口に付けていたテープを剥がし、神栄の方に送りつける。

「碧く………ん?」

 

 

 

 

 

 

サクリ、と音がした。

神崎の腹にはナイフが刺さっていた。

神崎は一度自分の腹を見たあと、ゆっくりと倒れ、神栄に寄りかかる。

「あ…れ?わ、たし……あお……くん、のとこ、ろに…」

 

「有希…子?」

 

ニタァ…と不敵な笑みを浮かべながら、シロは神崎を刺したナイフを服の中へ戻す。

 

 

「〜〜〜〜ッッッ!!!」

神栄からは声にならない怒りが込み上げてくる。

 

 

「生きた状態で返すだなんて、俺は一言も言っていない。それよりも今は君の状態に興味がある。さぁ、薬を使って督界君と戦いたまえ。最高の結果を見せてやろう!!!!」

 

「……お前だけは絶対に許さんぞ、シロ!」

「なんとでも言え。さて督界君。薬の時間だ」

 

シロはいつも見る注射器とは一回り大きいサイズの注射器を取り出すと、躊躇なく督界とやらの首に刺す。

中に入っていた液体を全て体内に送り込んだのを確認すると、シロは督界と一定の距離を置いた。

その後、督界の動きが変わる。

 

「ニイ……サン!」

「…俺はお前の兄さんじゃない。寝言は寝てから言え」

 

「ツカ……エヨ。アンタモ……ツカ、エヨ!」

 

目の色が変わっている状態にも関わらず、言葉を話せる督界は、神栄が所持している狂気薬の使用を促していた。

シロも言っていたように、督界にとってこれは自分の力を試す実験である。最高の結果、とやらを出すためには、相手も同じ状態にならなければならないらしい。

だがそんなのは知ったことではない。

 

今神栄が取るべき行動は、神崎の治療だ。戦闘ではない。

 

「……俺は、戦わない」

「…ハァ?」

 

督界は腑抜けた声をした後、神栄の方へ急接近する。

「ウルセェヨ。タタカエ」

「ぐっ…!」

 

頭を掴まれ、木に押し当てられると、神崎をつかんでいた手を離してしまう。

 

 

「有希子…!起きれるか!起きれるなら……俺を置いて…逃げ…!?」

「ウルセェッテ、イッテンダロ」

「……!!!」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

神栄がシロと対峙した時にまで時間を戻し、場所は山の入り口に場所を移す。

神栄と同様に遅刻ギリギリに山に来た前原は、これまた神栄同様近道をしようとしていた。

 

 

「やっべー。受験終わったからか、寝坊しちまったよ。早く行かねーと殺せんせーになんて言われるやら……」

普段通らない道ゆえ、いつものような華麗な走りができていない。とはいえ、フリーランニングで不慣れな道でも走れるような訓練はしているので、普通の人よりかははるかに速く走れている。

 

無数の木々に囲まれている中を駆け抜けていると、そんなところからは聞こえるはずのない音と、誰かの声が聞こえる。

「……お前…………対…さんぞ!……!」

 

「なんだ?山奥で不良学生が喧嘩してるのか?でもここは椚ヶ丘中学3年E組の校舎の一部だぜ?そんなことが……」

そこで前原が見たものは、神崎を抱きかかえている神栄と、神栄によく似た顔をしている少年と、その隣にシロがいる、といった光景だ。

 

(なんだ!?なんで神栄と神崎さんとシロがいる!?しかも、神崎さんからは……血?)

 

前原は彼らから見て見えない位置に隠れ、こっそりと覗いていると、神栄が木に押し当てられていた。

(おい…なんつー速さだ!?あいつ、何なんだよ…!)

 

「有希子!起きれるか!?起きれるなら俺を置いて逃げ…!」

「ウルセェッテ、イッテンダロ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「神崎さん!」

気づけば、体が勝手に神栄たちの方へ走っていた。

なぜかはわからない。きっと、無意識のうちに神栄たちを助けたいと思ったのだろう。

前原は神崎を背負うと、校舎の方へ走っていく。

 

「…マテ!!」

神栄を掴んでいた手を離し、驚異的な速さで前原の方へ向かう。

 

 

 

 

 

「……うっせえ」

神栄はポケットに入っていた錠剤を飲み、奥歯でガリっと噛み砕く。

瞬間、目の色が督界のように変わり、督界のような驚異的な速さで督界の顔面を捉え、一発殴る。

 

「……頼ムぞ…前原ァ!!」

 

 

 

「あ……あお、くん……。ま、さか…くすり…を…」

「とりあえずそんなことは後だ神崎さん!今は殺せんせーのところに…!」

 

 

 

「そんなことをさせるとでも?」

前原の前に、シロが立つ。

「……マジかよ」

「随分と運が悪いな。いま君は死の道を歩いているが、すぐ殺すのもかわいそうだ。君には選択肢をやろう。ここで背負っている彼女を置いていけば、何もしないで家に帰らせてやろう。彼女を置いていかないのなら、君にはこの場から消えてもらう。

どうする。悪い話ではないだろ」

 

「生憎俺には仲間を見捨てるなんてそんな選択肢、無いっスね。だって────」

 

 

 

 

「前原君、それは実に正しい。どんな危機的状況になっても冷静であることは、どんなことよりも大事なことです」

「貴様……!」

 

前原の前にはシロが見えたが一瞬で目の前が真っ暗になった。それは強いトレーナーに負けたからではなく、殺せんせーの服で目の前が真っ暗になっただけである。

「律さんに言われるまで気づきませんでしたがもう大丈夫です。私が来ましたから…」

 

 

 

「…それは、あの光景を見ても言えるのかね」

 

殺せんせーたちが見た光景とは……。

 

 

 

 

 

 





1つ言われそうなので先に言っときます。
神栄くんは督界によって右手が麻痺し、使えない状況になっているはずですが、一発殴りました。
これは督界が打った麻酔の効果が、狂気薬によって緩和、後に消されたからです。
裏設定として、狂気薬には飲んだ人が暴走する効果ともう1つ効果があり、その効果はある程度の治癒能力持っているということです。
どっかのアヴァロンのようにぶん殴られて折れた骨がすぐ治るみたいなそんなチートじみた効果では無いですが、応急処置程度くらいの治癒効果はあります。
ですが、督界が打たれた狂気薬の原液には治癒効果は全くなく、暴走に全振りしてます。10暴走0治癒です。
(神栄くんの狂気薬は6暴走4治癒くらいです)

これ、作中で説明したかったのですが、語る機会がもう無いと思うので言っちゃいます。一応次話に書けたら書きます。(いい感じの文字数稼ぎみたいになだちゃうけど)

それを踏まえた上でもう一度見てもらえると、話の意味が何となくではありますがわかると思います。説明不足で申し訳ありませんでした。

次回、『神栄よ、永遠なれ』
こっからは前々(約3.4ヶ月前)からやりたかった展開に持っていきますよ〜〜。

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