神栄 碧と暗殺教室   作:invisible

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連日30度を超えてめちゃくちゃ暑いですが、うちはエアコン縛りしてるのでうちわで過ごしてます。
なんか、エアコンつけたら負けだと思うんですよね。




第160話 バレンタインの時間

 

 

2月13日、世間はバレンタインムード一色だが、それはE組でも例外ではなかった。

女子陣がチョコレート作りに勤しんでいる中、男子は誰にもらえるのだろうか、とソワソワしている。

そんな中、きっと誰よりも良いチョコレートを貰えるであろう男は、3日ほど前から休んでいた。

その男は、もう言うまでもないが神栄だ。

 

「………滑り止めに受かって…ゲホゲホ、安心してたら…ゲホゲホ、ウイルスがスッと入ってきたゲホゲホ。ゲホゲホ」

熱もあり、学校に行ける体力もない神栄は何も出来ずにいた。

 

 

「はぁ……ゲームする気力も失せる…。かと言って勉強もする気起きないんだよなぁ」

布団に入ってから天井を見上げること1時間、空が段々暗くなっていた。

朝から何も食べてない神栄は、腹が鳴りっぱなしだった。

「おおっふ。そろそろご飯をmakeしなければ……とはいえ動きたくない…ゲホゲホ」

布団から出るか出ないかの議論を頭の中でしていると、普段聞こえるはずのない足音が聞こえる。

 

(………不審者か?じいちゃんなら電話なりで一声かけるはず。それがないということは、その可能性が高いな。この部屋に来て、さらにこっちに近づいて来たらぶん殴ってやる)

 

足音はどんどんと鮮明に聞こえるようになり、神栄の部屋の前で止まる。

(……来たか。ここは寝ているフリをするために…寝言でも言っておくか)

「んん〜〜〜っ」

 

と寝返りをしながら言うと、ノックもなしにドアが開く。

「碧くん!?大丈夫!?」

 

聞き覚えのある声、というか、なぜ来れた。有希子さんよ!!!!

 

「何しに来たぁあ!?」

「うわぁ!びっくりした!起きてたの…」

「んなこたぁどうでもいい!なんで来れた!?」

 

「……ピッキング?」

ニッコリ笑顔でそう言うと、神崎は針金を神栄に見せる。

「怖いよ……怖いよ」

「これでも碧くんを心配してたんだからね?どうせロクにご飯も食べてないんでしょ」

「なぜバレたし…」

「全く……ちゃんと食べないとダメだよ?」

「ごめんなさい」

 

その声を聞いた後、神崎はモジモジとしていた。トイレに行きたいのか?と聞こうとしたが、そういうモジモジでは無かった。

「……どうした」

「…あのね?碧くんって……」

 

「……?」

「こういうの、好きなの?」

神崎は袋に入ったものを取り出す。

そこには、過去に竹林のせいで女装したあのメイド喫茶のコンテストの優勝景品があった。

『コレで完璧ナース!ナースコスプレ!』

 

「ちょっと待て!!!それは違「碧くんが見たいのなら…私、着るよ?」

 

「え……?マジで?」

つい本心が口に出てしまった。これではまるで自分が変人みたいではないか。

だが、見たいのは事実。きっと美しいんだろうと想像するだけで夜も眠れないくらい。

 

「……いや、ご飯食べようぜ」

「話逸らさないの。で、どうなの?見たい…の?」

「見t…見たk……」

 

「まだ碧くんにはこれは早かったのね…。じゃあ私、ご飯作ってくるね」

「あ……ほんとすいません」

結局なにもできず神崎のお世話になった神栄は、床の上で大の字になっていた。

 

「…やっぱり、尽くされすぎな気がするんだよな。本来俺が色々するはずなのに、なにもできずにされるがまま…。一度だけでも何かをせねば…。でもなにを?俺がキス…無理無理無理!俺が死ぬ!」

様々な候補を挙げるがどれも自分にはハードルの高いことで、オール却下。

悩んだ挙句じたばたし始めた神栄は、そのあと疲れて寝てしまった。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「うわぁああああ!?!?」

 

 

「碧くん!?大丈夫?」

目覚めた時には、神崎が膝枕をしていた。一体なにが起こったのか両者共にわかっていない。

「…今、なんか変なこと言ったか?」

「え…?そんなこと言ってないよ……」

「なんだこれ…夢、か?今まで見た夢よりも…怖い」

「碧くん、私が料理持ってきた時からずっと、つらそうな顔してたよ。なんというか、うなされてるような感じだった…」

「俺、そんなにヤバかったのか?」

「うん…」

 

今、普通に神崎と話しているが、神栄は違和感を覚える。

神崎の膝が見えている。一見、『普通じゃないか』と思うが、違うのだ。

 

今日の神崎の服装はロングスカート。どう頑張っても膝枕をした際に膝が見えることはほぼ無い。

さらに上を見ると、なんか被ってる。真ん中には白い+が描かれている。

つまり何が言いたいのか。

 

 

神崎さん、ナースコスしてる!!!!

 

「ななななななんで……!?着ないんじゃなかったのか!?」

「見たいって、言ってたよ?」

「………あーーー。あ?」

 

神崎は『見t』を見たいに聞こえたらしく、実際に着た。ということなのだろうか。

「あっ…あっ、あわわわ。どどどどうすれば…おっおっ俺はななななにを…!?」

 

現実を受け入れることができず、神栄の頭はオーバーヒートしてしまう。

「そ、そこまで驚くと、私まで照れちゃう…」

「だったら着替えてくださいよ…」

「……ここで?」

 

「嘘ですそのままでいてください」

「むー。碧くんは注文が多すぎるよ!」

 

このままでは神崎さんが(お美しい)怒りでなにをしてくるかわからないので、夕食を食べることにした。

 

「…俺ん家はピッキングして開くほどザルドアじゃないと思うんだけど」

「愛情の勝利だよ」

「何言ってんのかよくわかんないけど、今度からちゃんと連絡してくれないか?鍵もあげるから」

「むー、また私の言葉をうやむやにした!前原くんとの戦いみたいにもっとガツガツ行ってもいいんじゃないのー?」

 

「……まだ無理です。ちょっとずつ治して行くつもりだから…ゆっくり気長に待ってくれ」

「う、うん」

 

おそらくものすごい時間がかかると思うが、いつか必ずヘタレなどと呼ばれないような立派な人間になることを誓った神栄は、すぐに夕食を食べ終えた。

「相変わらず美味しいな。流石です」

「ねぇ碧くん。明日は何の日か知ってる?」

「バレンタイン、だっけ」

「そうだよ。で、そのチョコなんだけど…明日渡すのもいいんだけど、その、恥ずかしいから…今…貰ってくれる、かな?」

 

珍しく神崎が顔を赤くして照れている。本当に明日渡すのが恥ずかしいのだろう。

「いいよ。今日もらうよ。俺も何言われるかわかんねーし」

「ありがと!じゃあこれ…なるべく碧くんの好みに合わせたつもりだけど…全部食べてくれると嬉しいな」

 

「もちろん、全部食べるつもりだぞ」

「うん!そろそろ私帰るね!ちゃんと安静にしてないと…ダメだからね?」

 

 

「わかってるよ」

 

 

男として、女子の家まで送らなければならない場面だったが、風邪+ヘタレのせいで送ることは無かった。

 

 

 

神栄は貰ったチョコレートを早速食べる。

(……美味しい。けど俺、有希子に好みとか言ったっけ……?)

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

次の日、神崎が家に来てくれたか、チョコレートを食べたか何かはわからないが、すっかり元気になった神栄は教室内の異様な光景に唖然としていた。

 

「……何で前原が岡野にチョコ渡してんだよ。わけわかめ」

「あ、神栄くん。復活したんだね」

「よう茅野、渚。で、どうなってんだよあれ」

「…かくかくしかじか」

 

どうやら前原は岡野とカラオケへ行った際、殺せんせーを見かけ、カラオケ店で殺ろうとしたらしく、それを岡野に何も言わずに行ったせいで、岡野が怒った…と言ったことらしい。

岡野はカラオケ店でチョコを渡すつもりで、それを邪魔された(?)とか何とかでこうなっている。

 

「まぁ……前原が悪いな。仕方ないな」

「なぁ岡野、速攻で行こうぜ。空きスペースにこのチョコパスするから、ワントラップしてすぐまた俺にくれればいい。それだけでいいから」

「どのツラ下げて司令塔みたいに指示してんだ!!岡島から内申書の話聞いたんだからね!尚更やるもんか!!!」

 

 

暗殺に失敗した挙句、岡野に蹴りを入れられた前原は、カラオケ店で覗き魔殺せんせーに説教された後、宿題を課せられた。

その内容は『明日中に岡野の機嫌を直し、改めて彼女から直接チョコを貰う』だ。

もし貰えなかった場合、前原の内申書の人物評価の欄に、チャラ男。が追加されるらしい。

 

 

「そんなことまで…。可哀想だな。お互いに」

「うん…」

 

「なぁ岡野。ちょっとは前原の話を聞いてあげるってのはど「うるさい!!!!」

直後、高速で椅子が飛んできて神栄の顔面を射抜くと、神栄は目をぐるぐると回しながら倒れた。

「あ、神栄がやられた」

 

 

「こ、これだから女の子って怖いんだよ…」

 

 




ピッキングのところは、ドアが神崎さんに惚れたってことでお許しを。(実際にやっちゃダメだよ)

テストは難しいし、レポート長いし(3,000字)でもう諦めモードです。経済学は難しいですね。

次回はバレンタインの続きor番外編の入れ替わりの時間です。

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