神栄 碧と暗殺教室   作:invisible

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豪華二本立てとかじゃないんです。


第159話 七三の時間/督界の時間

 

ついに受験が始まった。全員が滑り止めや本命の私立高校の入試が終わり、今日は平常登校の日だった。

いつも通り教室に着くと、淀んだ心全開の竹林が座っていた。

髪もいつも以上にボサッとしており、見るからに志望校が不合格だったんだ…と思わせるその姿に、同じ教室内の生徒は誰も声をかけようとはしなかった。

 

「……聞くまでもないが、竹林はどうしたんだ?」

「あいつ、志望校落ちたってのはわかるだろうけど、落ちた場所が場所なんだよ」

「確か…国内最難関の学校じゃなかったか?」

「そうそう。そりゃ落ちたって無理ないだろうに……」

 

 

 

「なんで僕はあんなところでマークミスしたんだ…。プレッシャーがかかると僕はいつもダメなんだ。E組を離れて1人で戦ったらこの程度さフヘヘへへへへ」

 

「おい趣味変わるほど落ち込んでるぞ。けど、こればっかりは仕方ないしなぁ…」

メガネのレンズはいつもの位置には無く、顔が青ざめているし、ブツブツと何かを言っている。

 

「か…確率の問題こういう不運もありますって!90%は受かってたんです!元気出して!!!」

傷口に塩を塗りたくる殺せんせーを見て皆が呆れている。

そろそろ竹林のライフがゼロになりかけようとしたその時、岡野の一言で殺せんせーは大声を出す。

 

「前原、定期落としたよ」

「落ちるとか滑るって言っちゃダメです!!!!竹林くんが傷つくでしょう!今後一切禁止します!!」

言い出しっぺが大声で竹林の耳元で言うが、もう竹林はなにも反応しない。

 

「受験生は戦う場所が違っても助け合う…!受験は団体戦なんです!ですので以後受験生のヘイト発言をする者は不良生徒と見なし全員七三に手入れします!!」

 

「……なんつーくだらないNGワードゲーム」

「先生の粘液で滑らかに整え……あ」

 

これも言い出しっぺの法則なのだろうか。殺せんせーが早速アウトになったが、殺せんせーには髪は生えてない。なので七三のカツラを被ってゲームが再開した。

「楽しい話をして場を和ませましょう!!神栄くん!!」

「え…えぇ?俺かよ」

 

「はい!神栄くんならではの話でいいです!」

「さ、最近のギャルゲーですっげえ面白そうなのがあったんだよ…。キャストは有名声優ばっかりで、タイトルは……『速攻fall in LOVE♡』ってのなんだけどさ」

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「死にたい」

「fallは『落ちる』なのでアウトです!次!」

 

ぴっちりと七三にされた神栄は、竹林のようにどよーんとしていた。おそらくもう余計なことは喋らないだろう。

「わ……わたしは、どんな髪型の碧くんもす…ふふっ…好きだよ。ふふっ」

「本っっっっっ当に死にたいです…」

 

 

その後、倉橋が七三にされ、三村もやられ、寺坂組も被害にあった。

さらにタチが悪いのが、スベらない話をするとかヌカしてオチのない話をした後皆に「オチは!?!?」と言わせ全員七三にしたことだ。

 

さすがにここで全員は殺せんせーは楽しんでやってるなと思い始め、銃口を向ける。

 

「もうみんな七三にされた今、言えない言葉はない。死ね!!!」

殺せんせーが立っていた床が突然開き、下には対殺せんせー用BB弾がびっちりと敷かれていた。

その後、全員が狙撃するも七三のかつらで防御される。

「人の受験を楽しみやがって!」

 

「ええそうですとも!お祭りなんでよ受験なんて!」

「あっさり認めんな!」

 

「竹林くん!君の刃は一本だけですか!?ニ本目の刃でもちゃんと勝負はできるでしょう?」

「もちろんですよ!滑り止めの学校だろうが僕の進路に影響はない!」

 

「君がなりたいのは医者ですか?それとも爆発物取扱!?」

「医者ですよ!迷ったけどやっぱりなりたい!!」

「それがいい!君に合ってる!!!」

 

 

竹林は怒りながらも殺せんせーを狙ってひたすら撃っている。

だが、だんだんと怒りが無くなり、笑顔になってきた。

 

「よく考えりゃNGワードなんて余計なお世話だ!滑って転んで落ちて、そんなのE組で慣れっこだ!!!」

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

その日の夜、とある研修所では柳沢と科学者がある契約をしていた。

 

「……これが、督界 蒼くんですか?」

「…ええ、間違いなく督界 蒼くんです」

柳沢は冷たい笑顔で督界の肩を叩く。

科学者は資料に載っている写真と、今目の前にいる督界を見て、間違いなく本人だと確認すると、謎の印を押した。

「本当にそっくりだなぁ。これも現代の技術ということか」

「もちろんですとも。なんせ彼らは同じ人物ですから……」

「戦闘的価値を持ち、オリジナルを遥かに超えるパワーを持った督界くんは、今後色々な場所で使われる事だろう……!さらに、何度でも造り直せる。つまりアップデートが行える。これ以上の事があるだろうか」

 

「……フフ、貴方ならそう言うと思いました。ですが、不安材料もあるのです」

柳沢は、もう一枚の資料を科学者に見せる。

 

「オリジナル……いえ、神栄 碧の始末です。彼が2人居ると言うのは、我々には都合が悪いのですよ」

「……ああ、そうだな。督界は1人でいい。神栄などという男などこの世に存在してはならないのだ。存在していいのは、督界だけだ」

「その神栄という男の始末の日程ですが………この日に行おうと考えております」

 

「……ふむ。一石二鳥ではないか。300億は貰え、不安材料も始末できる。私にはメリットしかないな」

「ええ、それでは私はこれで失礼します」

「ああ、また来たまえ。柳沢君」

 

 

 

 

督界と柳沢は、研究所を後にする。

「全てが終わった後、君は彼の元で仕事をするのだ。だが今はそんなことを考える必要はない。最優先事項は奴の始末だ」

「兄さんの……始末」

「ああ…兄さんの始末だ。クックックッ…!」

 

「兄さんを……殺す」

 

 

 

 

 





ここまで来ればなんとなくわかるでしょうが、督界の読み方は『かみさか』です。蒼は言うまでもないでしょう。

入れ替わりの時間は……もう少しお待ちください!
次回、みんな大好きバレンタイン。


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