進む人は、生徒だけじゃない。
2月。2月である。
2月といえば何があるだろうか。我らE組では、何故かクリスマスパーティーが開かれていた。
「メリー……、クリスマス?」
「疑問形にならない神栄くん!やはり2月といえばクリスマスですね!!」
殺せんせー曰く、2月といえばクリスマスなのである。
「いや、疑問形にならない方がおかしいような」
「おっと、そろそろ良い子は寝る時間です。さぁ、布団に入って!!」
言われるがまま布団に入っていく生徒たち。
電気が消えると、そーっと殺せんせーが大きめの袋を持って入ってきた。
殺せんせーは一人一人の布団の横にプレゼントのような包み箱を置くと、全員が一斉にナイフを突きつけた。
殺せんせーは全て避けると、教室に電気がついた。
「あけましておーめでとー!!!!新年です!今年一年頑張りましょう!!さて。あとは寝正月です」
クリスマスから正月まで、わずか3分である。
さらに全員の服装が和服になっている。
「ご丁寧にありがたいが……なんだよこれは!!」
殺せんせーは聞く耳を持たず、テレビを見る。
だがそのテレビでは自分の分身を使い絶対に笑ってはいけないあのシリーズ、今回は絶対に笑ってはいけない暗殺教室として、お馴染みのメンバーに扮した殺せんせーが色々とやっている。
当時流行ったネタを多めに入れていて、なかなか完成度は高いのだが、なんかこう、ぱっとしない。
当時流行ったネタがもう古いのか、あまり笑わなくなってきているからなのだろうか。
安心してはいてる人や、説明が必要な謎言葉や、ダメなダメダメなど、時期としてはもう終わってるネタばかりが採用されている。
今の時代はwith Bだったり、イエェェェェイ!だったりするのだが…。
「なんだよこれ、マジで」
「アレだよ、年末年始という学園モノの美味しいイベントをやり逃したから、2月で一気に回収しちゃおう…と」
「その通りです不破さん!先生のことで真剣に悩んでいたからこちらからも誘いづらいですし……」
殺せんせーにも殺せんせーなりの悩みがあったのか。とはいえ、クラス中がそういう雰囲気だったというのに、そんな悩みがあるというのはちょっと変ではないのか?と思ったが、何を言っても無駄なのは毎度のことなので何も言わなかった。
「さぁ続きです。冬休みモードで油断してる先生を殺してみなさい!!!」
大晦日の格闘技、正月カウントダウン番組、初詣、駅伝、高校サッカー、成人式、節分……と殺せんせーは全ての役をやりきり、年末年死をやり終えた。結局死んではいないが。
「これで年末年始は思い残すことはありませんね…。では次の段階に進みましょうか」
「次の段階?」
「さぁさぁ!皆さん、暗殺もいいけど受験もね!!」
「「「「……」」」」
先ほどまで完全に冬休みモードだった皆が一斉に固まる。まるで、夢の世界から現実に引き戻されたかのように。
「……急に現実的なこと言ったな」
「当然でしょう。私立は再来週に迫ってます」
そう。自分たちはターゲットを殺す暗殺者であり、普通に中3の受験生でもある。
どちらかを疎かにするなど、暗殺者としてよろしくない。と殺せんせーは言うのだろう。
「みなさんが悩んだり頑張っていた先月も、それぞれの志望校に合わせてきっちり授業はしていましたし、問題はないと思いますが…」
「マジかよ…」
「そして、受験の結果が出た後で再度面談をします。みなさんがE組を出た後、どう言った未来を選びたいのか」
殺せんせーはさらに続ける。
「この先どんなことがあろうとも、君たちの暗殺は卒業で終わりです。ナイフと銃を置き、それぞれの道へ歩き出さなければならないのです」
先ほどのどんちゃん騒ぎなと無かったかのように淡々と話す殺せんせーを見て、自分たちが今おかれている状況を再確認することになる。
地球の危機が遠ざかった今、自分たちは自分自身のことを考えなければならなくなった。
「殺せようが殺せまいが、別れは必ず来るのです。それが教室というものなのだから…」
◇◆◇◆◇◆
渚と神栄はいつものメンバー達と帰っている時にこの時期ならではの質問をしていた。
「カルマはどの高校に行くの?」
「あー、それ俺も気になるな。どこ行くんだ?」
「んー、俺は椚ヶ丘に残ろうと思うんだ」
「……へぇ」
「わざわざ外部受験で入り直すのかよ!?」
「よく考えみなよ。追い出したはずのやつが戻ってきた挙句、自分達の上に立たれるんだよ?そんな奴らの屈辱的なツラをあと三年も拝めるなんて最高じゃん!」
「相変わらずキツイ性格だなぁ。けど、他にも理由はあるだろ?」
神栄はカルマが見ている方向を見ながら呟く。
「まぁ、平均的な学力だったら椚ヶ丘より上の学校はあるけど、タイマンの学力勝負で面白そうな奴って、多分椚ヶ丘にしかいないと思うから。あ、俺の志望校なんか置いといてさ、神栄は神崎さんと同じ学校行くの?」
「180°以上話が変わったなおい」
いつものメンバーの中には、もちろん神崎はいる。
出来ればちゃんと2人きりの時に話したかったが、ここで逃げればいろんな意味で殺されてしまう。ここは、言うしかない。
「……俺の学力ならカルマ同様、どこの学校だって行ける。もちろん有希子と同じ高校に行くのは可能だ。けど、その、なんというか……俺のやりたいこと、目的を果たすためには、有希子とは違う学校に行かなきゃいけないんだよ」
「目的って、どんなの?」
「それは言えないよ。けどまぁそれは表向きの理由だ。本当の理由は、有希子、お前の夢を邪魔したくないからだ」
「……え?」
「少なくとも俺がそばにいる限り、有希子は俺に構ってくるはずだ。さらに色々心配になるはずだ。それが例え、自分が危険な状況に置かれても……だ。それならいっそ同じ場にいない方がいい。別に別れようだなんて言う気はないし、将来希望した仕事に就くまで会わないだなんて言わない。たまに会えるくらいが、俺たち丁度いいんじゃないか?
『会えない時間が、2人の想いを強くする』ってどっかの漫画内の小説でも言ってたし……それで我慢してくれないか…?」
神崎は少し考える。そして、答える。
「……碧くんはいつだって無茶するし、奥手だし、ちょっと変わってるけど、碧くんがそう言うなら私は我慢するよ。でも、毎日ゲームの相手だけはして欲しいな……」
「……もちろん。あ、たまには会いに行くぞ?流石にちょっとは、な」
自分の想いを伝えると、神栄はぐったりとしていた。彼女に面と向かって真剣に話すだけで疲れている神栄を見てみんなが呆れているが、もうそれはいつものことだ。
「俺たち、もうお別れなんだなぁ……。もうすぐで……」
◆◇◆◇◆
神栄が想いを伝えている時とほぼ同時刻、とある研究機関では実験室の様子を常に監視していた。
そこには、シロ…ではなく柳沢が立っていた。
「二代目の研究は確かに重要だ。だがな、俺だって装備しなければなるまい………第二の刃を。クックック………!!!」
資料を見ながら、柳沢は実験室の壁に優しく触れる。
「さぁ、君もそろそろ出陣の時だ。督界くん」
その声を聞いたからか、壁が大きく振動する。その後、ゆっくりと実験室のドアが開く。
「おはよう、督界くん」
「………ああ、おはよう」
「君が殺す相手は、誰だい?」
「神栄…………碧」
「フッ……完璧だ。あの出来損ないに教えてやろうじゃないか。本当のかみさかは、誰かを…」
「………にい、さん」
アンケートの結果兼新キャラの登場です。
想像以上に違う学校がいいと言う人が多くて、びっくりしました。(invisibleは同じ学校派だった)
最後の方のやつは最終暗殺前に書こうかなと思ってます。大した話ではないですけど、よろしくお願いします!
次回は、滑って落ちてetc,
受験生の僕には耳が痛いお話ですね!!