神栄 碧と暗殺教室   作:invisible

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エイプリルフールって、直訳すると4月馬鹿ですよね。




第156話 可能性の時間

 

「まさか、あのカルマが負けるなんて…」

「いや、番狂わせとかではなかっただろ。鷹岡との勝負や、いろんなところで渚の才能は見えていた。今更驚くようなことでもないとは思うがな」

「そうは言うがな神栄。お前が前原に負けるのも結構番狂わせというか…」

「引き分けだよアレは。道連れにするというのは比喩表現で、結局先に死んだとはいえ俺はナイフケースを投げていたし、負けではないし勝ちでもない。だから引き分け」

「……結構負けず嫌いだな」

 

負け惜しみのような発言をする神栄に、磯貝は呆れていた。

一方渚とカルマは何をしていたのかというと、

 

 

 

「はぁ……まさか素手で勝負して来るとは思ってなかったし、これで俺がナイフで勝っても誰も俺を認めないわな。降参するしかなかったってことか。殺せんせーを助けるんだろ?なんでもいうこと聞くよ」

「………?」

何が起こったのかと言わんばかりの表情を見せる渚に、カルマはいつも通りの口調で話す。

「ボコボコの顔でアホみたいな表情してんなよ。伝染病にかかったネズミみたい」

 

「……何でそんなに悪口がスラスラと出てくるかなぁ、カルマ君は」

「はぁ…。もう俺たち君付けするのやめない?喧嘩終わった後に君付けとか出来る気がしないし」

 

カルマが立ち上がりそう言うと、渚はまだ寝そべりながら話す。

「今更呼び方を変えるのもどうかと思うんだけど……」

「じゃあ俺だけ呼ぶよ。渚」

 

カルマが渚に手を差し伸べると、渚はため息を吐き、

「わかったよ。カルマ」

と笑顔で言った。

 

 

「人は大きな選択を迫られた時に本気で争う。ってことか。ものすごい教育方法だな」

カルマと渚から少し離れたところでは、神栄と殺せんせーが2人で話していた。

「ええそうです神栄くん。本気で戦った者同士だからこそ、普段は見せない部分まで理解し合える。本気の争いだから、仲が深まることだってあるんですよ。ヌルフフフ。

だから神栄くんも神崎さんと色々やっちゃっていいんですよ?」

「するか!!」

 

 

「烏間先生!」

渚が先頭に出て、烏間先生を呼び止める。

無論話すことは決まっている。それは烏間先生もわかっていた。

 

 

『殺せんせーを助ける方法を見つける』

みんなで戦って決めた方針に、異論を唱える人は誰1人としていなかった。

 

「……やむをえんな。だが、1つだけ約束してほしい。方法を探す期間は1ヶ月だ。君たちが暗殺を一時やめたとしても、他の殺し屋が奴を殺しにくる。俺は、他の殺し屋ではなく、君たちに殺してほしいんだ。だから1月の結果がどうであれ、2月からはいつものように暗殺を続けてもらいたい。生かすも殺すも、全力でやってほしい」

 

 

「「「「はい!!!!」」」」

全員の殺る気に満ちた良い声は、山中に響いたのであった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

次の日、竹林が黒板の前に立ち、殺せんせー助命計画についての話をしていた。

竹林によると、殺せんせーを殺すだけの計画をしているようには思えず、殺す計画と同時に助かる可能性を探しているのではないのかと考えている。

その意見は間違っていない。なぜなら本来の目的は、地球を救うことなのだから。

「だから、殺せんせーを助ける計画を探してみないか、と僕は思う」

 

その意見に反論する人はもちろんいない。

だが、烏間先生が立ちふさがった。

 

「おそらくそれは無理だ。こいつを作った研究機関は月の爆発以降その責任を問われ先進国にその研究のデータを譲り渡したからだ。先進国間でプロジェクトチームを形成しているが、当然内容は国家機密レベル。君たちがその研究内容を知るのはとても難しいぞ」

『プロジェクトのデータベースに侵入しました』

 

「……なに!?」

 

『……オンラインで繋がっているCPUなら大体侵入できます。この1年、いっぱい機能拡張しましたから…』

そう言ったのは、律だった。

律が画面を変えると研究項目とスケジュールが並べられた図が表示された。

『ただ、具体的な内容は厳重にされていてわかりません。研究の核心に関する情報は全てオフラインで、それよりさらに重要な情報は、イントラネットすら使われた形跡がありません』

 

「……そういうモンは手渡しでやってるってことか」

「ご名答です神栄くん。原始的な方法ではあるものの、それが一番情報を盗まれにくい。だから手渡しなんですよ」

「……とっとと助ける内容のところだけ探した方が良くないか?」

 

神栄が律の画面をスクロールしていると、1つだけ、殺せんせーを殺す以外の計画を見つけた。

「これしかねーな。現在研究中でなおかつ殺せんせーを助ける系のヤツは。アメリカの研究か。『触手細胞の老化分裂に伴う反物質の破滅的連鎖発生の抑止に関する検証実験』

最終結果サンプルは1月25日、ISSより帰還予定。か」

「ISSって……?」

 

「国際宇宙ステーションかよ。でもまぁ…」

「あり得ます!宇宙じゃないとできない研究とかありますし、爆破するような研究だと、地球で研究するよりも、宇宙の方が被害が少ないですし!」

珍しく奥田が前の方に出てくると、神栄が付け足す。

「確かにそうだが、その結果は地球に帰ったらすぐわかるのか?25日にISSから帰ってきて、31日までにわかるのかよ」

「……おそらくだが、いずれの結論にせよ、君たちに伝わる可能性は低い。最先端のデータであるがゆえ、すぐに公表せずに外交の材料に使うかもしれん。最悪、最後まで君たちに情報が来ることはないかもしれない」

 

そりゃそうだ。そんな最重要データをポンポン他国に教えるのなら、莫大な金を払わせて教えた方が得だ。そんな金を払えない中学生にその情報が来るだなんて、美味しい話にもほどがある。

 

「……どんな結果であれ、俺らは暗殺をやめないよ。烏間先生」

「……カルマ君」

「だけど、半端な気持ちで殺りたくない。救う方法があれば救うし、救う方法が無ければみんなもきっぱり諦める。だからはっきり知りたいんだ。卒業まで堂々と暗殺を続けるために」

 

「むむ……」

久しぶりに烏間先生が悩む姿を見た気がする。

生徒の気持ちを尊重したいけど、情報をどうやって渡そうか。そう言ったところだろうか。

 

「烏間先生、席を外してもらえませんか?ここから先は、あなたの責任問題になりかねませんので……」

土星のような形になった殺せんせーは、ビッチ先生と烏間先生を教室から出すと、話し始めた。

 

「君たちの望みはこうですね?宇宙から戻ったデータがアメリカに渡る前に、ちょっとだけ盗み見させてほしい。と」

全員がコクリと頷くと、殺せんせーは律の画面をスクロールする。

 

「ただ、スケジュールにはこう書いてあります。『研究データを積んだ帰還船は太平洋上に着水する。万が一私に奪取されるのを防ぐため、帰還船ごと研究施設に搬入する』とね。とても素晴らしい警戒態勢です。先生はあまり重いものが持てないし、太平洋上となればほぼ奪えないでしょう。

そこでです!近々これが打ち上げられるのをご存知でしょうか!?」

 

「……は?」

 

「日本で開発中の、有人宇宙往還船の実証試験機です。センサー付きのダミー人形を実際に座らせてロケットを打ち上げ、生命維持に問題がないかを計測し、宇宙でISSとドッキングさせ、荷物を積んで地球へ帰還するという計画です」

 

「………有人、打ち上げ、生命維持。嘘だろ……?」

神栄は嫌な予感がした。まさかこの先生…。

 

「この日本の宇宙船がISSに着くのは、当のアメリカの実験データがISSから離れる3日前です。もしもこの時、ダミー人形ではなく本物の人間が載っていたら……?」

 

「うわぁ……マジでやりやがるのかよ」

「そう!!暗殺教室!季節外れの自由研究テーマ!

『宇宙ステーションをハイジャックして、実験データを盗んでみよう!!!』」

 

「アハハハー、チョウタノシミー」

 

こうして、前代未聞の時期外れな自由研究が始まった。全員最初は怖がっていたが、後々になるにつれ、楽しく訓練をしていた。

殺せんせーの手引きだし、安心もしていた。

だが神栄はずーっとビクビクしていた。

 

 

「さて、今回の計画はいかに相手の眼と耳と手足を乗っ取れるか。出来ますね?律さん」

『はい、お任せください!律の能力の全てを使って宇宙までお連れします!!』

 

 

1月18日、決行の日である。

E組一行は某所の宇宙センターに忍び込んだ。

 





そろそろ神栄くんが助ける派になった場合のお話でも書きましょうかね。
なんとなくの内容は出来たのでw

次回はお忍びISSですかね。そしたら受験からのバレンタイン!!!!
(お話内での)受験前になったらとあるアンケートしたいと考えてます。
内容はまぁ……その時になったら話します。


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