神栄 碧と暗殺教室   作:invisible

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ラストスパート、かけて行こうぜ!!!


第154話 ぶつかり合う時間

 

「さーて、本気の戦いをする前に、もっと遠い所に行こうか。カルマ達の邪魔にならない程度にな……!」

少しずつ後ずさりしている前原の足元に、一発の弾丸が撃たれた。

「おい。今この状況で、カルマを殺すことが最優先か?俺を野放しにいてもいいのか?答えはNOだね。もっと遠くで、誰にも邪魔されない所で、本気でやろーや」

 

2人の距離は、おおよそ3m。前原が拳銃を使うことが苦手なのはすでに知っているので、万が一ナイフでの攻撃が来たなら、3mくらいから奇襲されても防げると思っているのでこの距離を保っている。

 

「そういえば、転校してきてすぐにお前は烏間先生を倒しかけていたよな。あの時、正直ビックリしたよ。こいつ、強い!ってな。

一緒に過ごしてきて、いろんなことを知れた。勉強も運動もできるくせに、女子と目を合わせられないほどのヘタレだったり、そのくせ純粋だったり、話題に尽きないやつだったよな。俺はそんなお前に憧れていたよ。だから、俺も言ってやるよ……本気でやろうぜ!!」

「うだうだうるさいけど、気持ちだけは酌んでやるよ。じゃあ、やろうか」

 

 

同時刻、カルマと渚はお互いに動かない状態だった。

しかしカルマの一言で、渚は動き出す。

「渚くーん!神栄と前原は完全に遠くへ行ったんだ。俺たちも本気で殺り合おうよ!このまま睨み合ってても、意味がないと思うからさぁ!」

 

カルマはナイフ片手に渚に近づいていく。渚は銃のスコープでカルマを見るが、撃てない。

「おい……撃っちゃえよ!そうして神栄との戦いに奇襲すれば俺たちの勝ちだぞ!?」

 

杉野は敗者席から言うが、茅野がそれを止める。

「渚は撃てないよ…カルマくんの挑戦を断ってカルマくんを倒した挙句、本気のぶつかり合いをしてる神栄くんと前原くんに奇襲なんてしたら、あっち側としては不本意な負け方になっちゃうよ。渚は全員を認めさせたいんだよ」

 

 

 

 

「やっぱり……カルマくんはズルいよ」

渚は銃を置き、カルマの方に向かう。

「そうそう。んじゃ……本気で殺ろうぜ」

 

 

渚とカルマが対面していると、遠くの森からはパパパン!と銃声が聞こえた。

「あいつらも殺りあってることだし、俺たちも殺ろうか」

 

「……」

 

 

 

 

 

「なぁ殺せんせー。これを見てどう思う?」

4人がいるところよりもはるかに高い位置で敗退者達が現在の状況を見ていると、千葉が口を開く。

「そうですねぇ。単純なパワーなら赤が有利ですが、ここは何でもありな場所です。青だって簡単に負ける様な戦い方はしないでしょう……」

 

「って!神栄と前原が戦い始めたぞ!?」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「ほんっと、お前は強いよ。神栄」

「それはどーも。だが死ね」

お互い有効打がないまま時間だけが経っていくが、ほんの少しだけ前原が後ろへと退いてしまっている。

「油断も隙もねぇ奴だな……」

「当然だろ。こちとら本気なんだよ。お前は"助ける"ってことがどんなことだかわかってんのか?今までやってきた訓練や、今までやってきた授業、知識、それらを全て無駄にするんだぞ。

"殺す"という明確な目標があるから、今こうしてこの教室は成り立ってんだ。それをお前らは否定してんだ。そんな甘っちょろいヤツら達に負けるなんざ、絶対に嫌だね。俺は」

「……あー、そうだな。神栄の言ってることは間違ってねーよ。けどな、俺たちだって簡単に助けたい。だなんて言ってるわけじゃねーんだぜ?渚のことなんだ。何か策があるに違いねぇだろ?」

「……その確実性の無い事が…、俺は嫌いなんだよ!!!!」

 

今まで落ち着いた攻撃をしてきた神栄が、ここにきて感情的になって動き出す。

それを見切った前原は神栄から繰り出される連撃を躱す。

「チッ、ギア上げて来てんな…」

「そんな余裕、もう見せられなくしてやるよ」

 

神栄は攻撃を続けるが、その攻撃は今までとは違う速さだった。

前原も避けるのが精一杯で、そこから反撃しようとしても神栄の攻撃が邪魔をする。

完全に後手に回ってしまっている。

 

(くっ……このまま後手に回り続けたら、倒されるのは時間の問題になっちまう!なんとかそれだけは避けねーと!)

「何考えてるのか知らないが、俺はそんな事をさせないと言ったんだ。考える暇すら与えず、余裕を無くす事。圧倒的勝利。それが俺の戦い方だ。

ほら、次はもっとスピードアップさせんぞ!前原ァ!!」

 

「うおっ……!?」

 

対殺せんせー用ナイフに付いているインクの量が少なくなり、若干乾き始めているが、神栄は気にする様子がない。

前原はただ避けるだけで、目の前にあるナイフすら取り出す事が出来ない状態になってしまっている。

 

誰もが神栄の方が有利と思われたこの試合。前原は意外な行動に出る。

 

「……ナイフは諦めるか」

「………!?」

 

この一瞬で、前原はナイフを捨てる。

神栄が立ち止まったこの一瞬で、前原は自分の得意分野であるナイフ攻撃を捨てた。

 

「……面白ぇな。やっぱ面白いわ。こんなもん、必要ねぇよな!」

そう言うと神栄はナイフを投げ捨てる。さらに持っている武器を全て自分のはるか後ろに投げ捨てた。

 

「こっから先は本気の喧嘩だぞ!前原ァ!!!!」

「受けてやるぜ!神栄ァ!!!!」

 

2人はニヤリと微笑み、拳を握りお互いの顔面に向けて放つ。

「ぐはっ…!」

「ぐえっ」

同時にパンチはヒットし、お互いに同様の反応を見せる。

 

何度も何度も殴られては殴る。そんなヤンキーの喧嘩のような状態がしばらく続く。

 

 

「ぐはっ…!」

神栄のボディーへの攻撃がクリーンヒットすると、前原はくの字に曲がってしまう。

おそらくみぞおちに直撃したであろうその攻撃の後、前原は倒れこむ。

「はぁ…はぁ…。これで終わりだ…前原」

 

神栄は前原に背を向け、ナイフを拾うと再び前原の元へ戻る。

「俺の勝ちだ前原。楽しかったぜ」

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、俺も楽しかった。俺が勝てて、な」

前原はうずくまっていたと思いきや、何かボール状の物を握っており、それを迷いなく投げる。

超近距離で投げられたものは、青いインクで出来た水風船だった。

「素晴らしいアイデアだよ前原!けど、俺の死に方の問題でこの勝負に勝ちも負けもねぇんだよな。

俺は死ぬときは道連れにするって決めてんだ。1人は寂しいからな。だから…お前も死ぬんだよ!!!」

神栄はナイフ入れを空に向かって投げる。

その直後、神栄は前原の投げた水風船に直撃する。

「………俺は前原の水風船を食らう前にそのナイフ入れを手放していた。よって俺の攻撃はまだ続いている。前原、お前も負けだ」

 

上半身にべったりと青いインクが付いた神栄がそう言うと、前原の頭上に赤いインクが付く。

 

神栄 碧、前原 陽斗、両者死亡。

 

 

 

 

 

「烏間先生!アレはアリなの!?」

敗退者席ではなく、間近で見ていた杉野は今の勝負に付いて反論しようとしていた。

 

「確かに神栄くんの言う通りだ。前原くんの攻撃を食らう前に神栄くんのナイフ入れは手から離れていた。その時点で攻撃は有効になる。よってお互い死亡。引き分けだ」

「うっ…マジか。けど神栄を負かせた前原もすげぇよな。結局は神栄が道連れにした形だけど…」

「勝利への執念、だよ」

「神崎さん…?」

「碧くんは絶対負けないって思いがあるんだよ。多分それはどんな人に対してでも見せるの。現に私に見せつけてきたんだもん。あんな気迫ある戦いに怖気づかなかった前原くんはすごいよ」

 

実際そうだった。神栄の目は完全に倒す目だった。そんな目を見て震えてしまったし、思うように動けなかった。

そんな人に対して本気の勝負を挑んだ前原には、冗談抜きで素晴らしいと思う。

「神栄……腹痛いんだけど」

「馬鹿野郎、超近距離で水風船投げられてこっちは目が死にそうだわ。目ェ開かねえよ」

 

「お疲れさま、2人とも」

2人の勇姿を見た神崎は、2人にタオルを持ってきてあげていた。

「サンキュー神崎。ほら、彼女のタオルだぞ。受け取れよ神栄」

「……前が見えない。本当に」

 

そんな微笑ましい光景とは別に、神栄達とは真逆の方角で戦っているカルマと渚の戦いは、佳境に差し掛かっていた。

 

 





戦闘シーンは本当に出来ませんね。他も言うほど出来ませんがw

次回は時間を戻して渚vsカルマですね。
正直神栄くんを負かすのはこれしかなかった気がします…。
(個人的には、殺す派助ける派どちらに行こうとも原作通りに進めるつもりでした。過去に殺ルート助けルート書くとかほざいてましたけど、多分やりません。やれません。
もしやるのなら全て終わった後ですかね。全部終わった後にやることの方が多くなりそうですね!例えば助ける派に行った話とか)

では、また次回。
そう時間は経たないようにします。

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