神栄 碧と暗殺教室   作:invisible

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お ま た せ




第152話 殺し屋達の時間

 

 

「まず俺らから決めさせてもらうよ」

 

 

千葉と速水は迷うことなく赤のダンボール箱から拳銃を取り出す。

 

「誰が、何が、俺たちを育ててくれたのか。そこから目をそらしたくない」

 

 

続いて茅野、奥田、竹林は青のダンボール箱からナイフを取り出す。

 

そのあと、菅谷、三村、岡島は赤の殺す派に入り、更に木村、狭間も殺す派に入る。

 

 

矢田、前原、磯貝は青の助ける派に入り、イトナは殺す派に入る。

 

 

 

 

「碧くん。碧くんはどっちに入るの……?」

 

「……」

 

おそらく、神崎は助ける派に入る。彼女からしたら、共に戦う方が様々な面で楽になる。そういった思いがある。

周囲も、女子の押しに弱い神栄なら助ける派に行くだろう。そんな安易な考えをしていたが、それは大きな間違いだった。

 

 

「……俺は、殺せんせーを殺す。それは俺にとっての意思表示だ。殺すことで、自分が言いたいことを言う場がこの教室だ。それを今更「殺せんせーを助けたい」なんて、ナメた真似するのは腹が立つんだよ。殺すための場所なのに、殺さなくなったらただの教室なんだぞ。俺はそんなのは絶対に嫌だな。悪いが、俺は殺す派に入る。例え有希子、お前が何を言ってもこの意見を変えるつもりはない」

 

 

 

「……わかった。碧くんの意見だもんね。私は止めないよ」

 

やはり心のどこかでは、一緒に戦いたかったという気持ちがあったのか、その気持ちを殺すような表情で神栄を見送る。

 

そのあと、2人は何も言わずに神栄は殺す派、神崎は助ける派の方に向かってしまった。

 

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

(さーて、俺は有希子でも殺りにでも行こうかな)

 

神栄は準備運動と同時に崖の下の方で、皆が作戦を練っているのを見つける。

神栄は、竹林が何やらコソコソしているのを怪しんでいた。

 

「んー……。速水ー、俺が竹林を殺すの失敗したら、竹林撃ってくれ」

 

「え?別にいいけど、って、あんたもしかして崖から飛び降りる気?バカなの?」

 

「いや、バカじゃないんだが。あと、本気で狙ってるのは竹林じゃない。もっと脅威がいる。それの捜索ってものあるな」

 

 

「ふーん……。そう言うことなら別にいいわよ。失敗した時に変なところに飛び降りて竹林をズラしたりしないでね」

 

すると、神栄は目を細め、

 

「俺が失敗するとでも思ってんのか?」

 

いつもよりトーンも低く、まるで叱っているかのような声で速水に言い放つと、神栄は少し遠くでジャンプの準備をし、開始の合図を待つ。

 

 

「…神栄。くれぐれもヘマしないように。せめて3人は殺すこと。いいね?」

 

近くの岩に座っているカルマは、ペンを回すかのごとくナイフをクルクルとさせ、神栄の方を見ずに独り言のように言った。

 

「うるせぇカルマ。有希子殺れたら充分だろ」

 

「…まぁ、それでもいいけど」

 

 

双方の準備が整い、審判の烏間先生の合図で、殺せんせーの暗殺をかけた戦争が始まった。

 

 

合図よりもほんの少し前、神栄は崖から竹林の元へと飛び降りる。

 

「…………え!?」

 

 

ズシャン!という音と共に、竹林の超体育着には赤色のインクがびっしりとついている。

 

「うそだろ……神栄だと!?どこから来たんだ!?」

 

「崖」

 

「…まさか最初の布陣から見られていたのか…。流石だよ」

 

「そんなもんかな。それじゃ、また後で」

 

 

 

 

 

時間はほんの少し戻り、竹林がナイフでインクをつけられた時とほぼ同時刻、片岡は何者かにインクをつけられた。

 

 

「………え?」

 

何が起こったのか、わからないような様子をしている。それもそのはず、自分の周りには誰1人として人がいない。いるとしたら少し先にある山。仮にそこから狙撃したとしても100m以上距離がある。100m以上も距離があるなら、BB弾は対象を大きく外してしまう。

 

だが、片岡はそれを可能にする人物を1人知っている。

 

……千葉 龍之介の超遠距離狙撃だ。

 

 

 

 

 

 

「………まさかすぐ殺られるなんて…」

 

 

 

竹林と同時に、殺された人たちを集める場所に片岡が座ると、殺せんせーがすでに座っていた。

 

「それもそのはず。彼らは片岡さんのチカラを知った上であのような策を講じた。それに、竹林君も何かするつもりだったんでしょう?」

 

竹林はポケットからスイッチと筒状のものを取り出すと、それを見て呟く。

「ええ、これでインクの雨を降らせようと思って……」

 

 

「…これは見ものですよ。君たちもここから学ぶといい。自分たちの意見を聞かせるために、どのような方法で殺るのかを……」

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「流石だな千葉!もっと殺っちまえよ〜。俺がちゃんと守ってやるからよ!」

 

「……おう」

 

千葉のスナイプをみた岡島は、千葉を守るようにエアガンを構える。

 

その瞬間。

 

 

 

 

ズドドドド!と銃声が聞こえると、青色のインクが千葉と岡島にベッタリとついていた。

そこに立っていたのは、神崎 有希子。彼女は手についたインクをペロッと舐めながら笑顔で去った。

 

「え……?何で神崎さんが……?」

 

「思い出した。神崎さんって、オンライン戦場ゲームの達人だった。FPSゲームとかでも結構強いらしいんだ。敵の隠れてそうな場所とかがわかるってことか…!」

 

 

一方、その情報が入ると神栄は顔を強張らせ進んでいた方向を変える。

「ちっ、あんなところにいやがったのか…!」

『神栄。オレだけど、神崎さんを見つけ次第即殺って。これ以上戦力を削られるのはこっちとしても痛いんだよね。最悪相討ちでもいい。頼むよ』

 

無線でカルマからの神崎討伐命令。今回の戦いでは不服だがカルマがリーダー。仕方なく神栄は、命令を遂行する。

「……了解。こちらとしてもタイマンでやりたい。周りに誰もいない状況でやりたいから、俺の周りに1人来てもらえると助かる。誰でもいいから」

『その辺は安心しなよ。オレが見てるから』

「……ならいい、のか?」

 

 

一方、神崎は周囲の状況を確認していた。

(千葉くんと岡島くんを倒して、赤側はこれ以上戦力を削られることを恐れている…多分碧くんがやってくる。逃げないと!)

 

 

「やぁ。奇遇だね。付き合ってる人同士、考えてることは似てるのかなぁ」

 

背後から、聞き覚えのある声がする。

 

「碧くん……なんでここが?」

「さぁ、それは言えないな。こっちに人の居場所がわかるヤツがいるんじゃないか?」

 

 

「やっぱり、戦わなくちゃいけないの?」

「当然。俺は戦うために来たんだ。逃げるなら殺るぞ」

 

神崎は持っている銃を捨て、ナイフを構える。戦う体制になっている。

 

「悪いけど、こっちも本気でやらせてもらうぞ」

神栄は上着を脱ぎ、投げ捨てる。さらに銃も投げ捨てる。

 

神栄は目を細め、神崎の様子をうかがう。

 

(怯えてるのか?若干震えているな。それは早く殺りたくて震えてんのか、本気で怯えてるのか。ここはひとまず待機ってところだな。さぁはよ攻撃をしろ!!!)

 

「碧くん。私は殺せんせーを助けるよ。たとえ碧くん相手でも」

 

神栄を見て笑顔になった神崎は、一瞬神栄の視界から消えた。

 

「……!?」

 

 

「こっち、だよ」

 

左を向いていた神栄とは逆の耳から囁いた神崎は、青のインクが付いたナイフを振り下ろす。

 

「知ってるよ。そんくらい」

 

神栄はすぐにしゃがんで、手を重心として足伸ばして回転させる。

神崎の足を刈るようにして蹴ると、神崎はバランスを崩して倒れる。

 

「有希子。俺はお前が相手だろうと殺せんせーを殺すぞ。それが俺たちにとってのお礼だからな!!」

 

神栄は神崎がやったのと同じように、赤いインクが付いたナイフを振り下ろす……。

 

 





約3ヶ月も待たせてしまい申し訳ありません。
いろいろな理由で萎えていたのが投稿が遅くなった原因の1つです。あとは鬱憤晴らしに遊んでたからです。

そろそろ学業が忙しくなる時期なので、次話もいつ出るかわかりませんが、気長に待っててくださいな。

次回は、神崎さんVS神栄。勝敗はいかに!

最後に、神崎さんのヤンデレはすごくイイと思うんですよね。

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