殺せんせーの過去編を書くのは無理だと判断し、大まかなことだけを書くことにしました。
殺せんせーの口から、死神と呼ばれていた頃から教師に至るまで、余すことなく話してくれた。
唯一の弟子であった人に裏切られ、シロ…柳沢によって反物質の生成の人体実験のモルモットになったこと。
監視役として、茅野の実の姉である雪村 あぐりを置き、彼女は学校の教師をやっていたこと。雪村 あぐりが受け持っていたクラスは、3年E組だということ。
殺せんせーに反物質エネルギーの実験をしているうちに、腕や指先が触手のようになり、それを自由自在に使えたということ。
その他にも、人間より老化が早いマウスを使用して、反物質エネルギーの実験をしたところ、月の7割を消しとばしたこと。
それを見た柳沢は、マウスよりも身体が大きい初代死神にも同じことが起こると判断し、殺害を計画するも、触手を使いこなせるようになった殺せんせーによって左目を失ったこと。
触手まみれになった初代死神を救うかのように、あぐりが殺せんせーに抱きついた瞬間、触手地雷によって腹部を貫通した後、あぐりが死亡したこと。
そして、あぐりが3年E組の教師を殺せんせー任せるといったこと。
殺せんせーが全てを話した後、全員の頭を殺せんせーの思い出が駆け巡る。
今まで逃げてきていた。本当はやらなければとわかっていたのに、逃げていたんだ。
改めて実感する。
この先生を、殺さなくちゃいけないのだ……と。
◆◇◆◇◆
殺せんせーが過去の話をしてから、E組の皆は冬休みを迎え、年が明けた。
1月6日の昼頃、神崎、奥田、杉野、渚の4人は病院で入院している神栄と茅野のお見舞いに来た。
「2人とも大丈夫?」
渚がフルーツ盛り合わせのカゴを机に置くと、心配そうに見つめる。
「大丈夫大丈夫。俺は別に擦り傷だし。今すぐ退院してもいいくらい」
「私も大丈夫だよ。明後日に神栄君と一緒に退院って言われたしね」
「そっか。ならよかったよ」
「あの……茅野に謝らないといけないことが…。あの夜のこと、もしかして…怒ってたりしてたら、ごめん。方法が思いつかなくて…」
あの夜のこと、渚が茅野にキスをしたことだろうか。とんでもないことを渚はしたらしい。
「大丈夫だよ。助けてくれたんだもん。こっちがありがとうって言いたいくらいだよ」
「よかった……」
「あ、そろそろ帰ろ渚君。茅野さん、まだ万全じゃないみたいだし」
神崎が帰るよう促すと、渚たちは病室を後にする。
「……っておい。神栄はなんで来てんだよ」
「帰りたいから」
「ダメだよ碧くん。もし何かあったらどうするの?」
「えっ、あっ、そ、そうですね」
(神栄よぉ……そこは「なら有希子の家で看病してくれよ」だろ…。ヘタレスキルは未だ健在かよ…)
杉野は自分の妄想が混じりつつ、心の中で言うが、もう神栄の場合は完全に手遅れ。
「……んじゃ明後日…またなー」
渋々と病室へと帰ると、茅野がバタバタとしている。
どうやら神栄が帰ってきたのには気づいていない。
「……何してんの茅野」
「はっ!ななななんでもない!なんでもないよ!」
「ふーん………顔を真っ赤にして足バタバタさせていたのの何がなんでもないんだろうな。もしかして、渚に惚れたのか?」
茅野はさらに顔を赤らめると、背を向けてしまう。
「かっ、神栄君だって神崎さんに言いくるめられてたじゃん!このヘタレ!」
「うるせぇ。アレは戦略的撤退だわ」
「そうやっていつも戦略的撤退(笑)してるから歩み寄れないんだよ!」
「じゃあお前も渚に歩み寄れよ」
「うぐっ!」
人のことを言えないにも関わらず、茅野にトドメの一撃を放つ。
反論できなくなった茅野は再び神栄に背を向ける。
「……まぁ安心しな。カルマや中村には言わねぇよ……気づいてるかもしれないけどな」
「…………ありがと」
◆◇◆◇◆
冬休みの間、殺せんせーを暗殺しに来た人は誰1人としていなかったらしく、学校に行くと全員のテンションは最底辺に近い状態だった。
授業でもそのテンションは変わらず、魂が抜けているのか?と思うほどだった。
「みんな……ちょっといいかな」
放課後になると、渚が全員を森の中へと集め、話し始めた。
「で、お前が全員集めるなんて珍しいじゃねーか。なんだよ」
寺坂が問うと、渚は一呼吸置き、
「……殺せんせーを、助ける方法を探したいんだ」
「それはつまり、3月に爆発させない方法を見つけるってこと?」
「そう。今はまだアテはないけど、僕たちに色々と教えてくれた先生を、殺すより助けたいって思ったんだ。だから…」
「わたしさんせーい!まだ殺せんせーと色々生き物探したいもん!」
「私も賛成。殺せんせーに恩返しもしたいしね」
「俺も賛成だよ。やれるだけやってみよーぜ!」
倉橋、片岡、杉野が渚の意見に賛成していると、その他にも続々と渚の元へ集まる人が増えてくる。
そんな中、
「こんな状況で言うのもアレだけど、私は反対」
中村が口を開くと、全員が固まる。
「……え?」
「確かにそれなりの恩は感じてるけど、暗殺者と標的が私たちの絆。それを今更助けるのはちょっと違うと思う。暗殺者である以上、殺せんせーを殺すことで感謝の気持ちを表せると思うんだ」
中村の発言の後、そのうしろには寺坂組のメンバーと、カルマが立っていた。
「仮にだけど、助ける方法を模索していて、3月経っちゃったらどうするの?それで殺せんせーは満足するの?そんな無様な結果で、殺せんせーは納得するの?渚くん。随分と調子に乗ってない?」
「………」
カルマの説明は実に正しい。殺せんせーを助ける方法を見つけるのは簡単ではないし、見つけて実行するまでにとてつもない材料が必要になったら、たった2ヶ月で準備できるはずがない。
そんな無謀な賭けに出るのなら、実力がついてきた暗殺に全力を尽くすのは最善の策だと言える。
「E組で一番暗殺力がある人間が暗殺をやめて助ける方法を見つける、今まで殺せんせーを殺してきた人の気持ちも理解せずにそんなことしてるけど……」
「そーゆーのじゃなくて、普通に…!!」
「普通に、何?助けるために殺意すら消すの?殺意が鈍ったらこの教室は成り立たないんだけど。それすらわかんないの?」
渚は何か言いたそうにカルマを見ているが、いう気配はない。
とうとうカルマの目が変わる。
「何それ、文句あんの?言ってみなよ、ホラ!ホラ!」
カルマは渚に近づくと、右手で渚を押す。数発押した後、ネクタイを掴もうとすると、渚はその手を抑え、足を首に巻きつかせる。
強制的に膝をつかせ、首を締め付ける。
「僕だって半端な気持ちで言ってる訳じゃない!そこまで力ずくでっていうなら……!!」
「それが……なんだよ!!」
体重の軽い渚の締めつけを物ともせず、カルマは立ち上がり、空いている左手を握る。
「おいやめろ!ここでケンカしてどうするんだよ!」
磯貝と前原がカルマを止め、渚を杉野が止める。だがカルマは言うことを聞かない。
「こいつ……なんつー馬鹿力だよ!」
殺伐とした空間に、空気を読まないかのようにある生物がやってくる。
「中学生のケンカ、大いに結構!暗殺で始まったクラスなのですから、武器で決めてはどうでしょう?」
殺せんせーはさながらマッカーサーのような姿でケンカの仲裁をしてきた。
事の張本人は赤と青と書かれたダンボール箱を自分の前に置くと、説明を始める。
「先生を殺すべきと思う人は赤、殺すべきでないと思う人は青に入り、赤と青のインクがついた武器で、この山を戦場に戦ってもらいます。相手のインクをつけられたら死亡。つまり退場です。相手チームを全滅させるか、敵陣の旗を奪ったチームの勝利、そのチームの意見がクラス全員の総意とします。これでどうでしょうか?」
「ここに来て力技ってか?」
「そう。多数決も一種の力技ですが、これもまた同じ、多人数有利ですね。ですが今までの経験を活かせば、人数や戦力は関係なくなります。さぁ武器をとりなさい。先生を殺すか、助けるか。全てはあなたたち次第なのです」
殺すか、助けるか。それを決めるのは自分次第。果たして、俺はどうすればいいのだろうか………。
「……殺す……助ける?」
神栄 碧の選択肢は…………
神栄の選択肢、アンケートを取ったのですが、結果は素晴らしい位半々だったんですよ。
次回神栄がどっちに入るか決まるので、〆切は8月いっぱいまでにします。
どっちに入れたいか、自分の活動報告にコメントよろしくお願いします。
あと、知ってる方もいると思いますが、25日にトランサミンさんとケチャップさんとオフ会してきました。色々なことを学べたので良かったです。そして前中後編に分かれたコラボもします。お楽しみに!
次回、神栄は……○○派に!!