インフィニタスポテンシア~無限の可能性~   作:北欧狐

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愚者の最後、ラストオーダー

旅館の倉庫

ここは元々旅館の倉庫だった物を束さんが【後で直す】という約束のもと女将さんにお願いして改造したものだ。【ある男】を閉じ込めておく為の牢獄として。

 

「!?早く僕をここから出せ!!」

 

「何故彼の元に来る必要があったのですか?」

 

セシリアが今にも奴に殺しにかかりそうな目をしながら束さんに尋ねた。輝が殺されかけたんだ。当然だろう。

 

「そうだね。まずみんなに質問。【転生】ってわかる?」

 

「転生?確か仏教とかでいう【前世の記憶などを持ったまま生まれ変わる事】よね?」

 

「うん、鈴にゃんの言ってるのであってるよ。」

 

鈴にゃんて・・・。

 

「それでその転生をした者を【転生者】って言うんだ。アニメとか小説でも【神様転生】とか言って転生者がいたりするね。そこのクソ野郎がその転生者なんだよ。つまりコイツはこの世界の人じゃないんだ。」

 

「「「!?」」」

 

その話を聞いた全員が驚いた。まさかコイツが異世界の存在だったなんて。

 

「しかも更にタチが悪いことにコイツの転生は【憑依転生型】。その世界の人物に憑依する形での転生したんだよ。」

 

「待ってよ篠ノ之博士!!織斑一夏が憑依された転生者だとしたら【元々の織斑一夏】はどうなったのよ!?」

 

「話は最後まで聞いてよ。確かに織斑一夏は憑依された。なら【本来織斑一夏であるはずの魂】は()()に行くと思う?」

 

「まさか!?」

 

「そう、みんなの想像通り。あっくん。【織斑秋斗】君が本来の織斑一夏なんだよ。」

 

そんな・・・・・・俺が本当は別の存在だったなんて・・・・・・!?

 

「あっくんがショックを受けるのも無理はないよ。しかもひーくんが言うにはひーくんの世界ではこの世界は【小説】になっているらしいんだ。ジャンルは【SF学園バトルラブコメディもの】らしいよ?」

 

ジャンル欲張り過ぎだろ。

 

「そこで主人公である織斑一夏はみんなにモテモテでハーレム状態だったらしいんだ。それを実現する為にコイツが同じ転生者だと思ったあっくんを排除しようとしたんだ。これが今までコイツがあっくんに暴力を振るってきた理由だよ。」

 

そうだったのか。

 

「そしてひーくんはあっくんを守る為に女神様に助っ人として呼ばれたんだよ。」

 

「それでしたら輝さんも!?」

 

「ひーくんの場合は転生ではなく転移。人そのものを異世界に移動してきたんだよ。」

 

 

みんながショックを受けていると束さんはクソ兄貴に近づき逆五角形型の南京錠を胸に押し付けた。するとそこから鎖がたくさん伸びてクソ兄貴に巻きつき始めた。

 

「なんだよこれ!?」

 

「これはねお前用に女神様がひーくんに渡してそれを私が受け取った物だよ。」

 

突然クソ兄貴の後ろに扉が現れた。あれは・・・彫刻家であるロダンが作った

 

「地獄の門・・・。」

 

そう、シャルが言った様に彫刻家ロダンが作った【地獄の門】にそっくりだった。

 

「そう、これは【地獄の門】。ロダンが作ったのとは違ってこっちは本物だけどね。」

 

「なんでそんな物が?」

 

「それは決まってるよ。

 

 

 

コイツを地獄に送る為さ。」

 

「なんで僕が地獄に!?」

 

「当然だろ?本来人は死んだら天国か地獄かの二択。そこで転生をしたんだ。女神様が言うには転生システムは本来の天国行きのチケットを対価にして転生してんだよ。それでも転生先で何も悪いことをしなければ天国に行くこともできるよ?神様の計らいでね?でもコイツは転生した世界で主人公を亡き者にしようとした。当然神様による天国行きのチケット復活はなし。そうなれば行くのは残った地獄だけでしょ?これは神様の力による範囲を外れて地獄に送る為の物だ。お前のようなのを地獄に送るためのな。」

 

束さんが言い終えると地獄の門が開きそこから鎖が何本も伸びてきて転生者とやらの身体中に巻きつき門の中へ引きずり込み始めた。

 

「なんで僕が地獄なんかに!!やだ!!僕は織斑一夏だぞ!?この小説の主人公だぞ!?それなのになんで僕が!!」

 

転生者はなんとか鎖の中から片手を出して必死に門の縁を掴んで鎖が引っ張る力に抵抗していた。

 

「バカなやつだよお前は。転生したのだからその生を満喫するなり原作知識を活かしてみんなを助けて幸せにするなりモブに徹するなりすれば良かったのに。なんで自分の知ってる物語通りにならなかったか教えてあげよっか?」

 

「わかるのか!?さっさと教えろ!!」

 

「実にお前は愚か者だったよ。良いかい?

 

【お前が織斑一夏に憑依し転生してこの世界に織斑秋斗という存在が生まれた。】その時からお前の原作とは離れて全く別の物語になっていたんだよ。所謂【IFの世界】。ここはもしもの世界さ。お前は選択を間違えたんだよ。」

 

束さんは転生者に銃を向けた。

 

「でも、あっくんに酷いことした罰と白式と銀の福音(私の娘たち)を汚した罰は受けてもらうよ?」

 

だが、俺は束さんの手に自分の手を添えるようにして下ろさせた。

 

「あっくん?」

 

そして俺は転生者に近づく。

 

「そうだ!出来損ない!さっさと僕を助けろ!!」

 

 

 

「黙れ!今まで好き勝手してくれた分とセシリアを庇って怪我をした友の分だ!!」

 

そう言って俺は転生者の顔面を全力で殴りとばした。転生者はその衝撃で手を離した。そして門は閉まり転生者はこの世から姿を消した。

 

 

 

「それであっくんはどうする?元々名乗るはずだった織斑一夏に名前を変える?」

 

「いや、もし変えたら今までの俺を否定することになっちまう。だからこのまま【織斑秋斗】として生きるよ。」

 

 

 

「ところで、輝たちの【ラストオーダー】というのはどういう計画なんですか?」

 

そう言えばシャルの言う通りだ。

 

「ああ、ラストオーダーね。簡単に言えば【世界の統一化】が最終目標だよ。人間ってのは古来より憎しみ合い戦いあってきた。でも、お互い共通の敵が現れた場合はお互い力を合わせて敵を倒してきたんだ。ひーくんたちはそれを実現しようとしてるのさ。この世界は【実銃などの旧科学を使う虐げられた男】と【ISという近代科学を使う虐げてきた女】に分かれてる。それでは一生心を1つにするどころか近い内にお互い殺し合って人類滅亡なんてことになるだろうね。そこで【ISも戦争をする為の軍事力もまとめてぶっ壊す】って世界に先生布告する。すると戦闘機やら実銃やらを使う男とISを使う女両方の敵になる。そうすれば男女が手を取り合ってまとまるという算段さ。これが【ラストオーダー】だよ。」

 

輝がそんなことをしようとしてたなんて・・・・・・。でもちょっと待てよ?

 

「でもそんなことをしたら輝さんたちは!?」

 

「うん。確実に集中攻撃されて死亡だろうね。でも、みんなが軍や女どもより早くひーくんの元に行ければその最悪の結果は免れるかもよ?」

 

 

そうか!その手があったか!!

 

「こうしちゃいらんねぇ!みんなIS学園に行くぞ!!」

 

 

こうして俺たちは司令室を飛び出した。

 

 

 

 

「束様も酷い方ですね。」

 

「なんのことかな?くーちゃん」

 

「ラストオーダーは秋斗様とセシリア様がいて初めて本当の最後ではありませんか。」

 

「うん、そうだね。でもねくーちゃん。

 

 

ここで彼の意思に背いたらこの世界は一生1つになれないし彼らの覚悟が無駄になっちゃうよ。私はそんなことできないよ。」

 


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