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俺たちは旅館に戻った後とりあえず司令室にいた。福音の迎撃作戦は完了した。だがみんな元気がなく誰も喋らない。当然のことだ。同じ学年の生徒が暴走したのはどうでもいいとして、輝の正体が白銀の輝でしかも何も言わずに飛び去って行ったのだから。
「みんな大変よ!!急いでニュースを見て!!」
みんなが黙っているとトイレに行っていた鈴が慌てた様子で入ってきた。俺たちは言われた通りモニターをニュースのチャンネルに合わせた。
『繰り返します。先ほどドイツにあるISの研究施設が何者かに襲撃されました。』
そして映像が切り替わり恐らくその襲撃の際の映像だろう。映像にはIS6機が円を描くようにマシンガンを構えたまま立っておりその中心には全身白一色の男がいた。白銀の輝だ。一応輝は両手を上げている。
「クラリッサ!!」
「ラウラあいつらを知ってるのか?」
「ああ、私の部隊の奴らだ。」
すると輝は自分の真後ろにいたISの腰に装備されている刀を逆手で抜きその流れで目の前のISの胸部を斬り上げ、その次に左後ろと左前、右後ろと右前のISを斬り最後に真後ろのISを刺した。俺たちは普段からISによる高速戦闘などにより速い動きに目は慣れている。それでも一瞬見えただけだ。その場にいて『躱せ』と言われて実際に躱せるかは分からない。そのぐらいの手際で輝は動いたのだ。
「みんな!?クソっ!!よくもみんなを!!」
「誰も死んでないよ。」
そう言いながら束さんが入ってきた。
「よく見て。ひーくんが斬ったのはISの胸部アーマーだけ。そしてあのISは胸部アーマーの中にPICの制御装置が入ってるんだ。だからひーくんはそれを壊して相手を無力化しただけ。それにひーくんは絶対に人を殺さないよ。仮に本気で殺す気なら6人同時でみんなの目では追うことも出来ないくらい一瞬で片付くからね。」
ならなんでこんなことを?
「それは今からわかるよ。」
『緊急速報です!たった今当局に「ドイツを襲撃した」と名乗るものからのビデオメッセージが届きました。中身の確認はまだですが当事件に関係があると思います。ノーカットでお送りしますのでご覧ください。』
画面がニュースからその映像に切り替わった。そこには黒いヘルメットを被った者が大勢並んでおりその真ん中に輝が立っていた。
『世界中の方に報告します。私たちは【白夜の黒十字】。世界の闇を消し去ってきた者たちです。私たちはこれからIS関係の全てをそして軍事関係の全てを破壊していきます。ISを開発している施設、会社、IS研究所、ISを使っている軍も対象となります。今のこの世界ははっきり言って腐っている。ISを使ったことは愚か、起動させたことさえ無いクセに【女だから】という理由で悪逆非道を尽くす奴ら。【危険だから】などの理由で条約により禁止されているはずのシステムを秘密裏に搭載する愚か者ども。他にもあげれば他にキリがない。それに開発者である篠ノ之束は何の為にISを生み出した?戦争をする為か?今まで弱い立場にいた女たちが男を虐げ差別する為か?違うだろ!!【宇宙に行く為】そうだったはずだ!!それなのに今のISは何だ?ライフル?ブレード?挙げ句の果てアメリカとイスラエルは共同で軍用ISを開発する始末だ。これのどこが【宇宙に行く為】だ!!宇宙に行く前にお互いのせいで人類が滅んでおしまいだ!!だからこそ、私たちはその為に今のこの惨状をつくったISを破壊する。ひいては、この世界を破壊する。私たちはすでにIS学園を占拠した!!当然生徒は人質だ!この世界を、生徒を守りたければIS学園にいる俺を殺してみろ!!』
そこで映像は終わった。
「束さんは輝が白銀の輝と同一人物だって知ってたのか?」
「うん、知ってたよ。私もラビット社にいたしそもそもラビット社は白夜の黒十字のカモフラージュの為につくったものだし。」
「じゃあ、教えてくれ。輝のことを。」
「いいよ。でも教えられるのはひーくんの目的とか事情だけ。力の秘密とか過去は私も知らないから。それじゃあ、ちょっと場所を移そうか」
「なんで場所を移すんだ?」
「ひーくんの事情を説明するのに欠かすことのできない奴のところだよ。」
そう言っている束さんの顔は、いや、顔だけでなくその声すら笑っておらず心の底から怒っているような感じだった。