ガンプラ格闘浪漫 リーオーの門   作:いぶりがっこ

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獅子の門

 ――門があった。

 

 気が付いた時、目の前には、分厚い鉄扉が立ちはだかっていた。

 

 くすんだ鈍色の、いかにも年季の入った鉄の門が、視界を遮り影を成していた。

 縦拳一つ分くらいの間隙が、すっ、と見上げる上空まで、一直線に走っていた。

 覗いた隙間から見える、深い闇と一筋の光が、この鉄扉の途方も無い重厚さを知らしめていた。

 鉄扉を縁取り打ちつけられたリペットが、拳骨ほどの大きさもあった。

 

 とてつもない大門であった。

 どうするんだったか、これを?

 

 ……そう、抉じ開けるのだ。

 ぶっ叩くのだ、拳で。

 

 

 ガツン!

 

「イギャッ」

 

 思った瞬間、右手を思い切り叩きつけていた。

 後悔はすぐに来た。

 グチャリと指先が鳴いて、ビリビリと脳漿を掻き乱す様な衝撃が、拳から頭部に走った。

 右手に生じた激痛で、関係の無い膝までがガクガクと震えた。

 だがこれで良い。

 おかげで目が覚めた。

 さあ、次だ。

 取り戻した意識が沈まぬ内に、次の拳を叩き付けるのだ。

 

 

 ガツン!

 

「~~~ッッッ」

 

 激痛が、脳天にまで突き刺さる。

 今度は声も出ない。

 電撃でも浴びたかのように、全身が震える。 

 泣くな、馬鹿。

『彼女』がくれた肉体だ。

 世界一強い男の子になれと、祝福してくれた肉体だ。

 痛みごときで、涙を流したりはしない。

 テンポ良く行こう。

 意識の途切れぬ内に。

 

 ガツン。

 

 ガツン。

 

 ガツン。

 

 ガツン。

 

 ガツンいつから、こんな事を続けているんだったか?

 

 ガツン。

 下らぬ事を、考えている。

 余計な事を変えた分だけ、肉体が雑になる。

 

 ガッ

 ほれみろ。

 

 ガツン。

 

 この扉を開ける。

 そのために打つ。

 邪念はいらない。

 

 ガン。

 しかし、どうだろう?

 考えるな、と思ってしまった時点で、人は雑念に捕われている。

 そんなに簡単に悟りが開けるならば、地上はNTだらけになってしまうではないか?

 それならばもう、同じ事だ。

 脳髄が物を思う間は、少なくとも意識は途切れず、次に繋がる。

 

 ガツン。

 

 何だったか?

 そう、いつから、だったか。

 ほんの十分も前か?

 あるいは、一時間? 一日? 一週間?

 

 それとも本当は、もっとずっと前。

 例えば、あの日。

 父に手を引かれ、初めて訪れた三雷会館。

 熱気に満ちた男たちの世界の中で、初めて拳の握り方を学んだ、あの日――。

 あれ以来、ずっと自分は、この門を叩き続けて来たのではないか?

 

 ガツン。

 

 今日のような、夜があった。

 異形の潜む逢魔ヶ辻で、泣きじゃくりながら拳を振るい続けた、八歳の月夜。

 あの日の頑丈な樫の木は、本当は、この門だったのではあるまいか?

 あるいは今も、自分は八歳の夢の中にいて、目を覚ませば樫の木を叩き続けるのかもしれない。

 

 ガツン。

 

 いつまで、叩き続けるのであろうか?

 無論、この門が開くまで。

 あるいは、死ぬまで、なのだろう。

 だが、そのいつか、とは、果たして何時になるのだろうか?

 

 ガツン。

 

 気が付いた時には、この門を叩き続けていた。

 何回も、何十回も、何百回も、何千、何万……、数え切れぬほどに。

 それでも門は、あの日の樫のようにビクともしない。

 このまま、何年、何十年、これを叩き続けていくのか。

 年齢が父を追い越し、それでも尚、道を曲げなければ、この門は開くのであろうか?

 

 ……父は、あの人は、この門の先を見たのであろうか?

 

 ガツン。

 

 お人好しの館長が言った。

 もう、そう言う時代では無い、と。

 日常的な斬った張ったが罷り通る時代など、遠い過去の記憶にしか無い。

 武も又、その求められる価値が変わる時代に来ているのだ。 

 空手道・三雷会は変わろうとしている。

 健全な少年少女の育成に努める、精神修養の場として。

 一角の武術家らしからぬ、あの人の甘さが、自分は大好きだ。

 

 ガツン。

 

 プラモ屋が言った。

 人の一生は短く、最強の武は時間と共に容易く衰える、と。

 ならば、今、自分がこれを叩き続けている意味は、何なのだろうか?

 貴重な青春を浪費し、痛く、惨めで、汗臭い思いをして。

 そうして老いさらばえた先に門が開いたとして、捧げた生涯に見合うほどの価値があるのか。

 

 ガツン!

 

 女々しい言い訳をするな。

 葡萄が本当に酸っぱいかどうかは、その手に取って食ってみりゃあ分かる。

 

 本当は自分は怖いだけだ。

 このまま門が開かないまま年を取り、結局は自分の才の無さを確認するのが怖い。

 だが、思い出せ。

 本当に怖い事は、もっと別にある。

 

 ガツン。

 

 目の前に立ち塞がる敵を、片っ端からブチのめして進むのが、永樂誠一郎の空手だ。

 武の道が、いかにその時々で形を変えようとも、男の道は一つしかない。

 闘って闘って闘い抜いて、それで力及ばず死ぬのなら、それはそれで一向に構わない。

 戦いから逃げ、あの父の背を、二度とまともに見る事も叶わずに生きていく。

 真に恐れるべきは、それだ。

 

 ガツン。

 

 それに自分は、本当はもう知っている。

 この門の先に、全く新たな別天地が広がっている事を。

 

 ――アムロ・レン。

 

 あの炎のような赤髪の娘は、今、この門の先にいる。

 先の闘いで、その武の境地の一端を垣間見た。

 

 凄まじいものだった。

 己が十年を捧げた筈の拳が、てんで歯牙にもかからなかった。

 人間の可能性と言うものに戦慄し、また、素直に感動もした。

 屈辱も、嫉妬も、挫折も無かった。

 そう言う感情が湧き上がるほどのステージにまで、自分の力は達してすらもいなかった。

 いっそ清々しいほどに、負けた。

 完敗であった。

 

 ガツン。

 

 ああ言う世界が、この門の先にあると言うのならば、もう悩む事は何も無い。

 見てみたい、自分の足で到達してみたい。

 ただ真っ直ぐに、ひたすらコイツを叩き続けて行けばよい。

 

 ガツン。

 

 いつかアイツに、もう一度追いついて見せる。

 

 ガツン。

 

 どれほどに時間がかかろうとも、必ず……。

 

 ガツン。

 

 ガツン。

 ガツン。

 ガツン。

 ガツン。

 ガツン。

 

 

 

 ……何か、まだ、自分は何かから逃げている気がした。

 

 ガツン。

 

 アイツ。

 世界最強となったアムロ・レンは、これから一体、どうするのだろうか?

 

 生粋の格闘技オタク、リー・ユンファが世界中から選りすぐった十五名。

 その悉くを蹂躙して、彼女は頂点に立った。

 先代宗家、アツト・フスノリは、既に第一線を退いている。

 彼女をこの道に導いた祖母も、この世の人ではない。

 

 ならばアイツは、この先もずっと独りなのだろうか?

 マリナ・イスマイールのように、誰からも愛されるような女性ではない。

 誰かがもう一度、この門を開けるまで、彼女は独りで、しわくちゃの婆さんになるまで、じっと待ち続けるのだろうか?

 

 ガツン!

 

 女々しい言い訳をするなと言った!

 そうじゃないだろ?

 おい、本当の事を言え。

 

 ガツン。

 

 寂しいのは、俺だ。

 哀しいのも、俺だ。

 

 あの日の根平の砂浜での死闘。

 何か、確かに心の震えるものがあった。

 野良犬同士、繋がり合うものがあったと感じた。

 陰惨な青春の中で見えた、微かな光だ。

 

 あの死闘が、月夜が、アイツにとっては路傍の小石に過ぎなかったと、そう考えるのが辛い。

 心臓が張り裂けんばかりに痛い。

 我も無く喚き散らさんばかりに、気が狂いそうになる。

 

 なら、狂ってしまえばいい。

 

 ガツン。

 

 ヒィロ・ユイが、言った。

「感情で行動するのは、正しい人間の生き方だ」と。

 

 肯定する。

 このどうしようもなく惨めで、女々しく、情けない感情も、全てアイツに伝えるべきだ。

 ここで両者の人生が分かたれてしまうと言うのなら、尚更。

 

 ガツン。

 

 ようやく分かった。

 この門が今、このタイミングで、再び自分の前に現れたワケ。

 

 ガツン。

 

 いつか、ではない。

 今だ。

 今日、この場でこいつを抉じ開ける。

 頭一つ分でいい。

 無理やりにでも押し広げて、叫ぶ。

 

 ガツン。

 

 だがどうやって?

 全てを出し尽くし、自分は負けた。

 

 ガツン。

 

 あと一体、何が自分に残っていたか。

 

 ガツン。

 

 何が……。

 

 ガツン。

 

『――この体が、お前の標だ』

 

 父の言葉。

 知っている。

 物を思うのは、義務教育もまともに終えていない頭脳ではない。

 この十年、弱音も吐かずに付いて来てくれた肉体の方だ。

 委ねるべき可能性があるとすれば、それだ。

 

『――やがてガンプラに、神が宿る。

 プラフスキー粒子が、あなたの空手を理解しようとする』

 

 ヒライ・ユイの声。

 ああ、知っているとも。

 

 神は、細部に宿る。

 ガンプラ・トレース・システムを通じ、自分は幾度も、リーオーに宿った神秘に触れている。

 思いもよらず、体が動く。

 自分以上に、自分の肉体を知っている機体だ。

 この分身に、幾度となく助けられた事か。

 ヒライのリーオーがあったからこそ、今日、ここまで辿り着く事が出来た。

 

 ヒライ。

 

 ……ヒライ!

 

 ……ああ、それなのに。

 

 おい!

 ふざけるな。

 

 お前、その事を彼女の前で、一度でも言葉にしようとしたか?

 ありがとう、と、少しでも形にしようと努力をしたか?

 母親の次に世話になった、あの女性(ひと)に。

 

 いいや、全然。

 何で!?

 

 ヒライ・ユイは、自分に取って対等のパートナーだったからだ。

 住む世界が違えど、共に失った誇りを取り戻そうと抗っている相棒だから。

 彼女の作ったリーオーで、戦いに勝利する。

 あくまでも自分の為に。

 それが結果的には、彼女のプライドに繋がる。

 勝利の為に、最善を尽くす。

 それ以外の思考は、全てが邪念だ。

 下らない馴れ合いや傷の舐め合いは、自分の為にも、彼女の為にもなりはしないじゃないか?

 

 

「バカかッ テメェはッッッ」

 

 

 ガツンッ!!!

 

 

 今日、死んだらどうする?

 武術家ならば、事と次第によっては、今日、明日にでも、ひょっこり死ぬだろう。

 いや、武術家だから、ではない。

 人は時に、呆気なく死ぬ。

 病で、事故で、事件で――、とるに足らぬささやかな不注意で、人は容易に死に得る。

 今日だって実は、何度か死んでいた。

 他ならぬヒライ・ユイに、胸を抉られ殺されていた。

 

 ガンプラに臨むヒライの真摯な背中を。敬愛している。

 自分の肉体を体現するリーオーの動きに、一々感動している。

 ヒライの作るリーオーが、どうしようもなく好きだ。

 ヒライのリーオーでここまで共に闘えた事を、心から誇りに思っている。

 

 自分が死んだら、この感動は、興奮は、感謝の想いは何処に行く?

 誰に伝わる事もなく、言霊だけが虚しく宙を漂い続けるのか?

 

 バカな?

 バカか!

 そんなのってあるか?

 クソッ!

 

 

 ガツン!

 

 

 ……今日はどうやら、死ぬには日が良くないらしい。

 

 今さら分かった。

 亡父の言葉の意味を、完全に履き違えていた。

 

 何一つ惜しみなく、その時、その場で死ねると言う事。

 即ち、何一つ悔い無く、生きると言う事。

 一分一秒、あらゆる時間、あらゆる場面を、懸命に、丁寧に、真剣に切実に生きると言う事。

 

 今の自分は、死ねない。

 未練が多すぎる。

 あるいは人生において、死ぬのに良い日など、本当はどこにも存在しないのかもしれない。

 あの父も、結局は畳の上で死んだ。

 やつれ、衰え……、倅が一人立ちできるギリギリまで見極めてから、逝った。

 

 ガツン。

 

 とりあえず、分かった。

 どうすれば良いかはとにかく、何をしなければならないのかは、馬鹿なりに考えがまとまった。

 

 ①アムロ・レンに、気持ちを伝える。

 ②ヒライ・ユイにも、気持ちを伝える。

 ③だから、俺は死なない。

 

 

 ……そうか!

 

 つまり『宇宙の心』だ。

 

 ヒィロ・ユイになれば良いのだ。

 ヒィロ・ユイの駆る、不死身のリーオーになれば良かったのだ。

 

 宇宙の心に寄り添う。

 それ以外の事は、全て忘れてしまって構わない。

 方法は、手段は、全てこの肉体に委ねる。

 プラフスキー粒子の神が宿る、ヒライの拵えたリーオーに、全て任せる。

 

 ……あとは、きっかけが欲しい。

 下らない迷いや、打算や、思い煩いから、この肉体を解き放つための、きっかけ、が。

 

 

『限られたルールの中でよ、お互いに出来る事を全部やって……、だから安心して遊べる。

 そう言うのって、なんて言うか……、良いよな?』

 

 ……?

 あれは、誰の言葉だったか……。

 

『ああ! それ、俺もスッゲー分かります!』

 

 思わずこちらの心まで弾むような、溌剌とした少年の声。

 そちらは良く覚えている。

 

 突き出した掌の先から、己の中の情熱を、歓びを打ち放つように闘う少年だった。

 時間を忘れ、ひとしきり、二人で遊んだ。

 自分はそう言うのがからっきしで、少年を落胆させてしまったようだったが。

 

 ……アレをやれば、良いんだろうか?

 役に立ちもしない口の代わりに、自分の気持ちを、拳から伝える。

 

 そんな生っチョロイやり方が通じるタマだったか、アイツは?

 けれど、立ち止まってしまうよりかは、なんぼかマシだ。

 やってみる価値はありますぜ、と言うヤツなのだろう。

 

 あの少年の流儀を、模倣する。

 まずは……、どうすれば良いんだったか?

 

 確か……。

 

 想い、描く。

 拳の先に。

 

 闘いたい、相手の姿を……。

 

 

 仮初のコロッセオに、ざわり、と言う戸惑いの声が漏れた。

 

 立ち去りかけていた、リ・ガズィの足が、不意に止まった。

 その段になって、アムロはようやく異変に気付いた。

 

 あらためて世界を睥睨する。

 仮初の世界をざわめかせる群衆を、上空から見下ろす。

 間の抜けたようにポカンと開いた口。

 震えるまつ毛。

 立ち合い人、ひとりひとりの表情を見ていた。

 固まってしまった視点、その集中する先に目を向けてみた。

 その一点に向けて、同時にリ・ガズィが振り返った。

 

 

 ――リーオーがそこに、屹立していた。

 

 

「なんで……、じゃ」

 

 吐息すらも凍える氷の世界に、ポツリ、と呟きが零れる。

 なぜ?

 なぜ、あの不垢の一撃を喰らって立ち上がれる。

 奴自身の十年の重みが、そのまま彼奴自身に返り、その不屈の魂までも弾き飛ばした筈だ。

 

 いや、そんな事より……。

 なぜ、立ち上がる奴の姿が見えなかった?

 リーオーに驚く観衆の姿を見て、それでようやく、リーオーが立ち上がっていると言う状況に気が付いた。

 

 佇立するリーオーの姿が見える。

 それでかろうじて、同じように立ち上がっているであろう奴の肉体も、見える。

 だが、リーオーを立ち上がらせたであろう、ナガラ・リオの魂が、どこにも見えない。

 幽鬼のように儚い、粒子のような幻。

 

 ゆらり、と幽鬼が動いた。

 リ・ガズィに対し真横を向いて、あらぬ方向へ構えをとった。

 右手は柔らかく額の前に、左手は柔らかく丹田の脇に。

 堂に入った天地上下の構え。

 だが、リーオーは今、果たして何に対して備えているのか。

 分からない、先が読めない。

 ナガラ・リオの、心が見えない。

 

「シャ」

 

 短く吠え、再びぬるりとリーオーが動き始めた。

 太極拳のようなゆったりとした動き。

 左脚で半歩踏み出し、腰の捻じりと共に打ち出された右拳が、スロー・モーションのように中段の軌道を滑る。

 

 ――ガギン、と。

 

 伸びきったリーオーの拳が、空気の壁を叩いた。

 空気の、壁?

 あるいは、そこに潜む何かを、打った。

 

 呆気に取られる観客を置き去りにして、なおリーオーが淀みなく動く。

 左足を引いて半身を取り、重心を後ろに乗せて微かに右脚を浮かせる。

 ほどなく、やはり、ガギン、と、リーオーの足が何かに触れた。

 浮いた前脚が、側面、外側から軽く叩かれた。

 

 ……『蹴られた』と、見るべきであろう。

 

 やはり、何かが、居る。

 リーオーの手前1メートル。

 空間が時折、錯覚のようにぐにゃりと歪み、そこに何らかの幻影を映し出す。

 

 ミラージュコロイドで、あろうか?

 ハイパージャマーで、あろうか?

 量子化現象で、あろうか?

 あるいは、何やらシュピーゲルめいた忍びの業前で、あろうか?

 

 とにもかくにも『居る』

 仮初の闘技場に武力介入した何者かが、今、リーオーと拳を交えている。

 一人、幻とでも戯れるように、リーオーが動く。

 柔らかく蹴りだした前脚が、何者かの腕を叩く。

 何者かの朧な拳が、リーオーの掛け受けの上を滑る。

 同時に突き出した左の拳が、中空でガッ、とカチ合う(!?)

 

『……え? え、え、 なに……、コレ……?』

 

 実況の仕事も忘れ、MS少女が素の感想を漏らす。

 無理もない。

 アムロ・レンに続いて、とうとうあの空手少年までもが、おかしな世界に突入してしまった。

 一瞬、悪戯好きの主催者のサプライズ、と言う線が頭をよぎったが、それも違うらしい。

 未だアナウンスが無い以上、今頃は李大人も、タワーの特等席で唖然としている事だろう。

 

「シャラァ!」

 

 そんな周囲の目などお構いも無く、リーオーの動きがいよいよ波に乗る。

 ギアが一段上がり、二人(?)が真剣の領域に踏み込んで行く。

 

 ガギン、とぶつかった肘口が硬質化する。

 ゴギン、と叩き付けた足先が立体的な厚みを持つ。

 打ち込んだ拳が、打たれた胸が、ぶつかり合う度に存在感を増していく。

 あたかもリーオーの打岩によって、虚空に戦士の彫像が削りだされていくかのようであった。

 

 MFであった。

 ナガラ・リオと同じ打撃屋であった。

 ナガラ・リオよりもなお若く、軽く、疾く、そして積極的であった。

 空手家の必殺の間合いに、果敢にも一直線に踏み込んでいく。

 勇敢な拳で先手を取る。

 リーオーはそれを、古流の受けで凌いでいた。

 かろうじて凌ぎながらも、虎視眈々と反撃の一撃を見舞おうとしていた。

 紙一重であった。

 気持ちの良いくらいに噛みあっていた。

 無表情の筈のテレビ顔が、はっきりと目に見えて笑っていた。

 おぼろげな何者かのツインアイも、おそらくは笑っているように見えた。

 

 ワケが分からなかった。

 世界中の格闘オタクの、誰も彼もが混乱していた。

 

 

 

 ――西東京の外れにある、年季の入った趣のある家屋。

 

 今宵、ここに集った少年少女たちもまた、同様に呆然とモニターを見つめ続けていた。

 ただし、彼らが驚愕した理由については、他と少々、事情が異なっていたのだが。

 

「ど、どうし、て……?」

 

 ポニーテールのホシノ先輩が、唇を震わして呟いた。

 その問いに答えられるものなど、いない。

 

「なんで、このリーオー、ビルドバーニングと闘っているの……?」

 

 

「……ビルド、バーニングガンダム」

 

 驚愕を瓶底眼鏡の奥に押し込んで、ヒライ・ユイが、そのガンプラの名前をポツリと呼んだ。

 

 ビルドバーニングガンダム。

 本年度のガンプラバトル選手権・西東京予選において、廃部寸前の聖鳳学園ガンプラバトル部を、大会制覇に導いた原動力である。

 使用ファイターはカミキ・セカイ。

 ブラジリアン覇王流とか言うマイナー拳法の同門だと言う噂が有ったり無かったりするドマイナー拳法の使い手で、流派・東方不敗を彷彿とさせる、格闘能力全振りのアタッカーである。

 

 さすがにヒライはよくチェックしていた。

 何せ、同じガンプラビルダー、同じ中学生、同じ西東京ブロックの大会の話だ。

 更に言うなら、聖鳳はヒライの通う(通っていないが)三区王堤学園から目と鼻の先である。

 

 と、そこまで思い至った所で、ヒライの脳裏に閃光が走った。

 現在の、この状況に対して、思い当たる可能性を見出したのだ。

 

 

 ほんの一週間ほど前、

 ナガラ・リオは、ロールアウトした虎徹の試運転を終え、一人、日課の稽古をしていた。

 型稽古、と言うよりも、対人戦を想定した、シャドーボクシングのようなものだ。

 型稽古さながらに一瞬で終わる事もあれば、時に一分、三分と長丁場に及ぶ事もあった。

 それを少年は、納得の行くまで何本も続けた。

 シュミレーターによる模擬戦の後でも、三雷会の出稽古の帰りでも、その練習を少年は欠かさなかった。

 狭い道場の隅に正座して、その練習の終わりを見届けるのが、ヒライ・ユイの常でもあった。

 

 元々ヒライは、武道、武術に疎い少女である。

 最初の数日は、何も無い空間に払われた所作の意味を、把握できなかった。

 だが、リーオーと重なるファイターの動きを見逃すまいと目を凝らす内に、少しずつ分かる所も出て来るようになった。

 

 踏み込む一歩の距離が変わる。

 蹴り足の高さが変わる。

 受け手の廻す位置が変わる。

 たとえ同じ型であったとしても、一つとして同じ動作は無い。

 

 想定している相手が違うのだ、と、ある日、ふっ、と気が付いた。

 敵の顎の高さが変わる、懐の深さが変わる、相手の構えが変わる。

 自然、ナガラ・リオの動きも変わる。

 その頃にはヒライにも、少年の世界が徐々に見えるようになったいた。

 リオの拳の先にいる敵。

 それは時に、屈強の肉体を持った大男であり、時にしなやかな古武術の使い手であり、時に彼とよく似た同門の空手家のようであった。

 

 けれど、その日の少年の戦い方は、明らかに普段と比べて異質であった。

 

「セイ!」と言う気勢と共に吐き出された右の正拳が、空中でピタリと止まった。

 その瞬間、相手の姿が、ヒライ・ユイにもはっきりと見えた。

 リオの拳は懐にまで届いていない、かと言って、相手に外されたワケでもない。

 

 寸止め。

 眼前の見えざる敵に対して、打撃を当てず、寸で「止め」たのだ。

 

「……なんで?」

 

 素朴な疑問が、口を突いて出た。

 それまで少年のやる事に、一切の口を出さなかったヒライが、思わず疑問を口にした。

 ナガラ・リオは、はっ、とした表情でヒライの方を振り返り、ついで、悪戯がばれた時のように、恥ずかしげに苦笑した。

 

 

(あの時、だ)

 

 ようやく、ヒライ・ユイにも事情が呑み込め始めていた。

 あの日、あの時点でおそらく、ナガラ・リオは、カミキ・セカイと出会っていたのだ。

 彼と出会い、あるいは拳を交え、そして、彼の姿を想定して稽古をした。

 

 おそらくは、今も。

 

 理屈は分からない。

 ナガラ・リオな高度な一人稽古が、観衆に存在しない『敵』の存在を知覚させる域にまで達したのか。

 あるいは、奔放なプラフスキー粒子の神が見せる戯れか。

 とにかく今、リーオー虎徹はあの日のように闘っている。

 カミキ・セカイの駆る、ビルドバーニングを想定して。

 

(けれど……)

 

 と、ヒライは思う。

 理屈を超え、何とは無しに納得が出来ても、感情にはどうしようもないしこりが残る。

 

 何で?

 どうして?

 

 何で、よりによってビルドバーニングなのか……?

 

 

 ――ガンプラバトル選手権。

 

 男の子が、誰もが一度は地上最強を夢見るように、ガンダムを愛する少年少女たちは皆、ガンプラビルダーの頂点を目指す。

 けれど齢を重ね、様々な事件と出会う内に、多くの人間が挫折し、真っ直ぐに夢を見る事が出来なくなる。

 

 例えば、自分の操縦レベルの低さに気が付いた時。

 例えば、馴染みのプラモ屋で、男の子達に混じって遊ぶ勇気が持てなくなった時。

 例えば、理想とするガンプラが現行のメタとかけ離れている事を実感した時。

 例えば、自分の通う中学校に、模型部が無い事を知った時。

 

 つまり、ヒライ・ユイである。

 彼女の夢は、その麓すら踏む前に、自らの手で閉ざされてしまったワケだ。

 

 まともに学校に通う事も出来ないひきこもりの少女。

 ネットで知り合ったハム姉に、半ば強いられる形で参加した地下ファイトの世界のみが、少女の唯一の居場所であった。

 全ては身から出た錆。

 現常に何か不満がある訳でもない。

 けれど、この季節だけはどうしても駄目だ。

 

 今年度、西東京大会を制し、全国への切符を手に入れた、聖鳳学園ガンプラバトル部。

 世界的ビルダー、イオリ・セイの母校として知られるバトル部だが、今春までは廃部の危機に瀕していたと言う。

 

 それでもバトル部部長、ホシノ・フミナは諦めなかった。

 必死に駆けずり回って部員を集め、模型部との試合を制して部の存続に成功する。

 その後はアーティスティック・ガンプラ・コンテストの覇者、コウサカ・ユウマまでも巻き込んで、チーム「トライ・ファイターズ」を結成。

 文字通り破竹の快進撃で、地区予選の頂点に立ってしまったのだ。

 その台風の目が、元はガンプラとは無縁の世界に居た拳法少年、カミキ・セカイと言う訳だ。

 

 まさに、現代のシンデレラ・ストーリー。

 どうしても意識してしまう。

 

 もしも、星の巡り合わせが変わっていたなら……。

 あるいは自分に、ホシノ・フミナのような勇気があったなら……。

 

 そう言った未来の可能性が、存在していたのではないのか?

 

 自分と、ナガラ・リオの間にも……。

 

 

 嫉妬、などと言う大それた思いでは無い。

 けれど妄想は進む。

 次元覇王流拳法、カミキ・セカイの駆る、ビルドバーニングガンダム。

 同じ格闘機として、自分のリーオーならば、どう挑む?

 

 操縦体系の違いは、この際、置いておこう。

 単純な組手、肉体でのぶつかりあいならば、ナガラ・リオに分があるとヒライは見る。

 体格と経験の差に加え、ナガラの使う空手は実戦、戦争技術だ。

 ガンプラバトルと言う、持てる技の全てを気兼ね無く解放出来る舞台ならば、ナガラに軍配が上がる筈である。

 

 だが、問題があるのはむしろ、自分とリーオーの方だ。

 往年の名機、スタービルドストライクを彷彿とさせる、粒子変容技術の結晶、ビルドバーニングガンダム。

「ガンプラは自由」の言葉を体現する奔放な格闘機に、あの底知れぬ格闘少年が乗り込んだ時、自分は果して、ナガラにどれだけの力を託す事が出来るであろうか?

 

 

 ヒライが追憶に耽る内に、舞台上での闘いも、均衡が崩れ始めていた。

 リーオーの受けが、徐々に的確になってきている。

 防御に廻した肘がそのまま打撃となり、崩れた相手のガードの上から、更に重い拳を見舞う。

 よろめく相手を追って、ナガラ・リオが攻勢に転じる。

 それはそうだ。

 足を止めての地上でのドツキ合い。

 ビルドバーニングが『必殺技』を使わず、ガンプラ・ファイトのルールに付き合ってくれるならば、当然こう言う展開になる。

 

 だが……。

 

「セイッ!」

 

 鋭く踏み込んだリーオーの前脚が、ビルドバーニングを捉える。

 いや、かろうじてビルドバーニングが受け、後方に「跳ん」だ。

 足裏より放出した粒子を蹴り込み、大きく距離を取った。

 荒々しく大地を踏んで腰を落とし、高らかと両腕を広げる。

 その指先に、煌めく粒子が炎の尾を引く。

 

「……ナガラ!」

 

 ぞくりと戦慄が走り、反射的にヒライは叫んでいた。

 予感があった。

 乗り手の心を反映するかのような、変幻自在の粒子変容技術。

 シャイニング系列機を思わせるフォルムのモビルファイター。

 次元覇王流拳法。

 それらの化学反応が紡ぎ出すもの。

 

『超必殺技』の存在。

 例えば、石破天驚拳のような。

 

 

 ――瞬間、コロッセオが、紅蓮の炎に包まれた。

 

 

『わっちゃあっ!? なっ、何じゃァこりゃァ―――ッ!!??』

 

 熱風がMS少女を吹き飛ばす。

 炎の名を冠する機体より生み出された灼熱の意志が、さながら一個の生命のように翼を広げ、一直線にリーオーへと迫る。

 これだ。

 ビルドストライクより連なる、何者にも縛られない魂の系譜。

 粒子変容技術を持たない虎徹では、抗いようが無い。

 いや、例え通常のガンプラバトル向けの仕様であったとしても、結果は同じ事であろう。

 今のヒライの技術では、到底――。

 

「カァッ!!」

 

 ナガラ・リオが一喝した。

 ゆるりと天地上下に構えた両の掌を、大きな円を描くように廻した。

 掌より生じた蒼い粒子の渦が、空間に波紋を作り出す。

 ビルドバーニングの赤と、リーオー虎徹の蒼が混じり合う。

 波紋の渦が、灼熱の炎を捌き、巻き込み、廻し、ついには逸らし、リーオーをすり抜け、虚空へと無散していく。

 

「あ……、あ、あ……!」

 

 ぞくぞくと、ヒライの背が震えた。

 両脚が力を失い、後背の壁に、どっ、と背中を預ける。

 

「ま……、廻し、受け……」

 

 呻くように呟く。

 同じだった。

 ナガラ・リオの選択は、かつてのヒライ・ユイの妄想と、完全に一致していた。

 

 

 

 確かに自分には、一流のビルダー達に追随出来るような粒子変容技術は無い。

 だが、そもそもが粒子貯蔵能力まかせの火力戦自体が、ヒライ・ユイの本分では無いのだ。

 基幹に据えるべきは、あくまでも永樂流の実戦空手、全局面対応闘争術であるべきだ。

 

 廻し受け。

 空手の掛け受けを防御に応用する。

 指先より放出した微量の粒子を大気中に共鳴させ、波紋の渦を、障壁を作る。

 極大のエネルギーに対し正面から対抗するのでは無く、円の動きでベクトルを逸らし、捌く。

 矢でも、鉄砲でも、火炎放射器でもビームライフルでも弾き返す、古流の空手の真骨頂。

 

 そこまで妄想に及んだ所で、当時のヒライは、ふうっ、と一つ溜息を吐いた。

 随分と、下らない事を考えている。

 思い出せ、自分にはそんな夢を見る資格は無いのだ、と。

 

『――私のプロトリーオーは、そこいらのガンダムに遅れを取るような機体じゃない』

 

 今でもよく覚えている。

 ナガラ・リオと初めて顔を合わせた日に、他ならぬ自分が言った言葉だ。

 あの言葉を取り消したいと、心の底から思っていた。

 けれどガンプラについた傷は消せても、言葉についた傷は消せない。

 

 プロトリーオーのバラシの最中に気が付いた。

 試合のダメージで負った傷とは違う、拳の亀裂。

 自分のリーオーが、空手の威力に耐えられなかったのだと、やがて気付いた。

 結果、最後の貫手は未遂に終わり、ナガラ・リオは敗北した。

 

 武術家にとっての敗北の重み、それはその内に知った。 

 リーオーは兵器で、消耗品だ。

 壊れたら直せばいい、そのために自分がいる。

 

 ナガラ・リオは違う。

 空手家にとって、敗北は死だ。

 たとえ生き永らえても、どれ程に努力を積み重ねても、自分が死んだ事実は消えない。

 あの少年は、敗北の痛みを一生抱えて生きていく。

 そう思うと、ぼろぼろと涙がこぼれた。

 

 ナガラ・リオは、ヒライのミスを責めなかった。

 優しく慰めるような事もしなかった。

 その代わり、野良犬のプライドの話をした。

 

『――俺はリーオーが好きだ、それが答えだよ』

 

 少年が言った。

 それが少女の全てだ。

 

 ナガラ・リオの為のリーオーを作る。

 ナガラ・リオの望みを、全て叶えられるリーオーを作る。

 それがヒライのプライドだ。

 それ以外は何もいらない。

 

 ナガラの夢が、自分の夢だ。

 ナガラの望みが、自分の望みだ。

 自分もまた、リーオーのパーツの一部となるのだ。

 だから捨てた、断ち切った。

 下らない妄想も、未練も、全部全部全部――。

 

 それなのに。

 それなのに……。

 

 

(ナガラに、見られて、いた……)

 

 とくん、とくん、と鼓動が高鳴る。

 

 ヒライ・ユイが、リーオーを通してナガラ・リオを見てたように……。

 

 ナガラ・リオもまた、リーオーを通してヒライ・ユイを見ていた。

 

 捨てた筈の、ささやかな少女の、夢――。

 それを一つ一つ丁寧に拾い集めて、ここまで形にされたしまった。

 

 熱風を掻き分け、一直線にリーオーが疾る。

 膝を畳んで、ビルドバーニングも前に出る。

 両者の拳が、再び舞台の中央で交錯する。

 

 踏み込む背中が問い掛けてくる。

 あるんだろ、ヒライ?

 このリーオーには、先が。

 こう言う未来が。

 

 そう、確かに、ある。

 今はまだ、ナガラ・リオの妄想に過ぎない。

 けれどそれは、ヒライが心から望むならば、きっと現実に手の届く未来である筈だ。

 

 つ、と少女の頬を、一筋の涙が伝った。

 ヒライ・ユイの前で、巨大な門が、音を立てて開き始めていた。

 

 

 ――無の境地

 

 篤人流古武術の秘奥に、武の極致として記される概念である。

 大別すると『無我』『無心』と言う、二つの境地に分けられる、と言う。

 

 無我、とは我、即ち自分と他者を区別している、心の境界を取り払う術である。

 無我が成ったならば、自己と他者は既に一個の存在となり、その心境を正確に知る所となる。

 敵が敵で無くなる。

 正しく無敵、と言う訳だ。

 

 寛永期。

 根平の地に流れ着いた当代の篤人は、安室流の女の中に、その秘奥を見た。

 やがて二人は結ばれる所となり、篤人流古武術と安室流舞踊は、表裏一体の看板として、今日まで受け継がれて来たのだ。

 

 ……と、アムロ・レンは推測している。

 

 では『無心』とは、果たして如何なる境地なのであろうか?

 

 篤人流の秘伝には、己の肉体を、人の世の思い煩いから解き放つ術、と書かれている。

 思考の枷が外れ、思いもよらず肉体が動く。

 肉体が本能のままに、森羅万象の理に則って動く。

 魂が思考から解放されるのだ、と。

 

「――つまりは、極め付けのバカ、と言うことじゃな」

 

 呆れたように、ポツリ、とアムロが呟く。

 

 遥か虚空から見下ろす仮初のコロッセオ。

 全てを手中に収めた筈の世界で、ただ二つ、あのリーオーと謎のMFの未来だけが見通せない。

 捉えるべき心が、何処にも無い。

 あれこそが、つまり、無心の境地、と言う事では無いのか?

 

 改めて思い返せば、あの空手小僧には、昔からそう言う所があった。

 思いもよらずに体が動く。

 思いもよらず拳が飛んで来る。

 まっとうに闘っている時よりも、ある意味では意識の跳んでいる時の方が恐ろしい。

 

 安室流の頂に立って、世界の全てを極めた気でいた。

 

 だがどうだ?

 たった一人の馬鹿げた存在によって、アムロの完全な世界は、完全に破壊されてしまった。

 

 見ろ。

 全ての思い煩いから解き放たれた、あのリーオーの奔放な動きを。

 

 踏み込んだ足から、喜びが溢れる。

 打ち込んだ拳から、悦びが溢れる。

 ブン殴られたテレビ顔から、満面の歓びが溢れる。

 ただ魂の求るままに、無我夢中で動き、無心になって闘っている。

 

 ざわざわと、心がざわめく。

 

 一つの山の頂に立って、改めて世界の広さを知る。

 ああ言う頂点もあるのだ。

 ああ言う闘いの仕方も、あるのだ。

 

 この世界は、まだまだ捨てたもんでも無いではないか?

 

 

「……って」

 

 ぷつん、と何かの切れる音がした。

 

 

 

「あんの……! ク ッ ソ た わ け が あ ァ ア ァ ア ァ―――――ッッ!!」

 

 

 

 アムロがトランザムした。 

 

 

 

 

 

 

 

 


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