ガンプラ格闘浪漫 リーオーの門   作:いぶりがっこ

25 / 31
・準決勝第二試合

 モーラ鬼灯(レスリング) VS アムロ・レン(琉球舞踊)
 ビルドノーベル             リ・ガズィ風月




オルフェンズの涙

 ――ハマーン・カーン

 ――カテジナ・ルース

 ――シーマ・ガラハウ

 

 ガンダムとは、女傑の物語である。

 過酷な戦場の現実に触れ、悩み、苦しみと共に成長する少年たちを嘲笑うかのように、凄惨なる過去を踏み台に宇宙へと羽ばたく。

 混迷に満ちた世界に新たな潮流を生み出し、次代への血河を往く。

 ……良きにつけても、悪しきにつけても。

 

 いかに女性の社会進出が目覚ましい現代とは言え、流石に虚構(フィクション)、などと見下す事は出来ない。

 なぜならガノタにとって、ガンダムとは教典(ガンダム)であり人生(ガンダム)であり戦争(ガンダム)であり、即ち真実(ガンダム)なのだ。

 クリエイターの歪んだ妄想が、映像の世界に現実の息遣いを生み出すように。

 液晶を通じて人の情念をモロに浴びた少年少女が、新たなイノベイターへの変革を促される可能性も、決してゼロではないのだ。

 

 こと映像の世界と密接に結びついたガンプラ・バトルに於いては、その傾向が顕著である。

 アイラ・ユルキアイネン。

 レディ・カワグチ。

 時代の転換期にあって彗星の如く現れ、ガンプラバトルに新たな息吹を吹き込んでいく少女達。

 歴史に例外はない。

 表の世界にあっても、そして、『裏』の世界にあっても……。

 

『親愛なるパプテマスよ、照覧あれ!

 今宵、貴方の先見の明に、ようやく時代が追い付こうとしているのです!』

 

 歴史の立会人気取りでMS少女が叫ぶ。

 酔い痴れている。

 状況に、自分の言葉に、今日、この時、この場所に巡り合えた幸運に。

 彼女もまた訓練されたガノタ、救い難き格闘オタク。

 かつて少女と呼ばれた女。

 ガラスの靴を探し求めるシンデレラ。

 

 歓声の中、二つの機体が真っ直ぐに向かい合う。

 しなやかにして強かなる肉体を備えたブロンドのツインテール。

 藍染のスカートアーマーにたなびく真紅のしゃぐま。 

 

 ガンプラ・ファイト準決勝。

 Bブロックを勝ち残って来たのは、奇しくも共に女性同士。

 

 何事につけても、例外、と言う事象はある。

 いかに男性絶対的優位たる格闘技の世界においても、なにせ人類は70億。

 46億年物語の果て、今宵は偶然同士が交錯する必然たる一夜。 

 

「ふふ、そのナリ、随分とサマになってきたようじゃないか?」

 

 192cm 105kg

 神の悪戯によって産み落とされた大理石のような女が、にい、と人懐っこい笑みを作る。

 

「うっさい阿呆、フルヌードにしてやろうか?」

 

 かつてニュータイプと呼ばれた女が、むっつりと頬を膨らませる。

 モーラの言葉を嫌味と捉えたのだ。

 

 成程、確かに今のリ・ガズィ風月の風貌を見れば、言外の当て擦りと思えなくもない。

 ハリマオとの闘いで破損した小袖や、メット後部の可動部は、今やバックリと断ち切られ、いっそシンプルなシルエットとなって、真っ赤なしゃぐまを夜風に孕ませている。

 ナドレが本気になったとも解釈できる鮮やかな現地改修であるが、当のアムロ本人には、眼前の女帝の文字通りの「上から目線」が癪に障るらしかった。

 

 その女帝、ビルドノーベルはと言えば、こちらはまったくの無傷。

 卸したて同然の真紅の鎧を金糸の外套で包み、世界の半分の支配者たる貫禄を万人に立ち示す。

 製作者、エイカ・キミコの補修技術の確かさもあるが、何より特筆するべきはここまでの試合展開であろう。

 

 一回戦 Bブロック優勝候補:ギンザエフ・ターイー

 二回戦 今大会のトリック・スター:アカイ・ハナオ

 

 一癖も二癖あるパワーファイター達を、モーラは月天山のお株を奪う横綱相撲で制して来た。

 他の準決勝進出者の中から無傷の機体を探しても、闘う度に外装を全取換しているリーオーくらいのものである。

 まさしくは、女帝。

 栄えあるガンプラ・ファイト初代王者の栄冠を、一息に掻っ攫わんばかりの闘志が漲っていた。

 

 しかし、だからこそ、と言う事もあるだろう。

 六本腕のニュータイプを倒した、凄い。

 マレー半島に潜む猛虎を倒した、確かに凄い。

 しかし、戦国期の組打ちにまで縁を遡ると言う、篤人流四百年の真髄は、このような近代格闘史の要石相手にこそ、発揮されるべきではあるまいか?

 

 体格、経歴、戦法、実績――。

 どれ一つ取っても、アムロ・レンに勝ち目は無い。

 勝負の行方は明白。

 だからこそ今宵、現代最後の武術(ファンタジー)が見られるのではないか?

 そう思わずにはいられない。

 格闘ファンは誰もが、武術に恋するロマンチストである。

 

「異種格闘技……。

 この業界、私も長いが、思えば今日みたいな趣向は初めてさ。

 ふふ、名に聞く篤人流宗家の業前がどれ程のものか――」

 

「勘違いするなやチャンピオン。

 うぬではない、このわしが、れすりんぐ、とやらの実力を試してやろうと言うのよ」

 

「――と、こいつはまた、とことん嫌われたもんだね」

 

 アムロの発するビリビリとした視線を受け流し、ノーベルが悠然と踵を返す。

 その大きな背を、じっ、と尚も少女が睨み据える。

 

(瞬殺、じゃ)

 

 短く心に刻み、リ・ガズィもまた背を向ける。

 少女の胸に、むくむくと敵愾心が満ち満ちていく。

 何故だかは自分でも良く分からないが、あの女はいちいち癪に障る。

 それは丁度、あの空手小僧、ナガラ・リオと出会った時の感覚に似ている。

 

 才能が無く、要領も悪く、ただ男と言う恵まれた境遇だけを頼りに、必死にアムロと張り合おうとしていた少年。

 気に入らない、ブチのめしてやる。

 あの時も確かにそう思った。

 

 だが、あ奴はバカだ。

 親から学んだ空手以外に物を知らない癖に、それで自分と対等だと勝手に思い込んでいる。

 あまつさえ、二人がまるで同類であるかのように誤解し、気安く好意を寄せてくる節さえある。

 まるで盛りのついた犬だ。

 犬だと思えば、まあ可愛げもある。

 野良犬相手なら人間様の代表として、それなりにあしらえる余裕がアムロにはある。

 

 あの女、モーラ鬼灯は違う。

 上背がある、恵まれた肉体がある、天性の才能がある、頭も良い。

 才能に裏打ちされた戦術があり、才能にもたらされた栄光がある。

 歴史と栄光に裏打ちされた大人の余裕があり、それゆえに性格も人当たりも抜群に良い。

 

 まるで完璧超人。

 それが気に入らない。

 1.92メートルの高みに立って、無自覚に他人を見下そうとする女だ。

 嚙み付かれるのは構わない、じゃれつかれるのも構わない。

 だが、見下されるのだけは我慢ならない。

 

(瞬殺、じゃ)

 

 念入りに殺意を込め直し、アムロが胸中で呟く。

 見下してやる、勝者の頂から――

 

『準決勝第二試合! 勝つのは古刀か、近代兵器かッ!?

 凄惨なるは女の闘い!

 いざ! ガンプラファイトォ、レディー、ゴオォォ――――ッ!!』

 

 高らかとゴングが打ち鳴らされ、真っ赤なしゃぐまを振り乱してリ・ガズィが振り返る。

 その瞬間にはもう、ノーベルは視界から消え失せていた。

 

(――下!)

 

 あっ、と観客席から驚きの声が上がる。

 先に仕掛けたのは、意外にも女帝。

 

 192cmの巨体を恐ろしく低く使い、長距離から地面スレスレを疾る超弾丸タックル。

 人体構造上、腰から下の標的に、咄嗟に致命打を与え得る選択肢は少ない。

 ましてや体重差は40kg

 一発二発被弾しようとも、意識さえ飛ばされなければ構わない。

 テイクダウンさえ取れればそれで決着、十分に釣りは来る。

 慎重にして剛胆、野心に満ちた闘士(ケンプファー)の吶喊。

 

「カカ」

 

 にぃ、と少女の口元が邪悪な三日月を描く。

 その間にもリ・ガズィの五体は淀みなく動いていた。

 下から迫る相手の姿を確認するでもなく大地を蹴る。

 

 右の跳び膝。

 反応が良い、などと言うレベルでは無い。

 両者の体が間合いに入る前に、既にリ・ガズィは跳んでいた。

 腰元に向うノーベルの顔面が、あらかじめ空中に置かれていた、リ・ガズィの膝に吸い込まれて行くようにすら観衆は感じた。

 

『海を見れば山』

 

 安室流舞踊における初伝。

 手品、大道芸で言う所の所謂、ミスディレクションに該当する。

 何でも無い仕草を大仰に見せて観衆の注意を惹き、その意識の死角を突いて本命(タネ)を仕込む。

 それは単に、その場凌ぎのフェイントに限った話では無い。

 一指し舞うまでの仕手の一挙手一投足、それらの仕草、全てが初伝であり『山』なのだ。

 

 今回の駆け引きで言うならば、二回戦直後から再三に渡り見せつけていたモーラの余裕、その飄々たる態度こそが『山』

 ならば、その裏に隠されている『海』は逆。

 奇襲、急戦、必殺こそがモーラの真意。

 そして『山』の段階で安室流を見せている以上、『海』に仕込むのは別の戦法。

 即ち女帝の十八番。

 

 ニュータイプでもXラウンダーでもない。

 深い人間観察によってのみ辿り着く事の出来る、言わばスーパーパイロットの境地。

 ゆえにアムロ・レンは、悠々と膝を置いておく事が出来たのだ。

 

 

 ――ぐしゃあ 

 

 

 持ち札の公開が終わり、結末だけが残る。

 接触、交錯。

 突き刺さる膝、少女の全体重が乗る。

 瞬殺、崩れ落ちる、決着、邪悪な笑み――

 

「……!」

 

 ぐっ、と崩壊が止まり、不意に腰骨を抱きかかえられた。

 顔面に刺さった右の膝ごと。

 信じ難い。

 会心の一撃だった筈だ。

 生半可な意識で踏み止まれるような衝撃では……、

 

 いや、違う。

 ようやく気付いた。

 読み切ったのではない。

 海を見れば、山。

 誘い込まれたのだ、女帝の戦略に。

 

 アムロの洞察力が膝でのカウンターを選ぶ事まで、モーラ鬼灯は看破していた……の、だろう。

 読み切ったその上で、避けるでも防ぐでも無く、ただ歯を喰いしばって受け止めたのだ。

 女子プロ七冠、モーラが本気で覚悟を固めたならば、その程度の受けは出来る。

 たとえ一発二発被弾しようとも、意識さえ飛ばされなければ構わない。

 テイクダウンさえ取れればそれで決着、十分に釣りは来る。

 さすがモーラだ何ともないぜ!

 

「イィリャァ!」

「……ッ」

 

 束の間の均衡が終わり、落下が始まる。

 反り返る背筋。

 裏投げ。

 高速で沈む視界。

 迫りくる大地。

 死臭。

 危険領域、瞬殺――

 

「クヌッ」

「……ギ!」

 

 今度こそ咄嗟に手が出た。

 落下の瞬間、ふわりと浮いたブロンドのポニーテール。

 はっしと両手で掴み、思い切り倒した。

 女帝の首が反り、金城鉄壁のブリッジが崩れ、死が加速する。

 

 そして、着弾。

 衝撃が走り、土煙が舞い、砂に塗れて両機が転がる。

 

「カハッ」

 

 溜まった緊張感を二酸化炭素と共に一気に吐き出す。

 たちまち背筋が反りかえるほどの痙攣がアムロを襲う。

 ダメージは、おそらく五分。

 女帝の本気の裏投げを、五割まで浴びた。

 出来る事なら、このまましばらく大の字で寝ていたい。

 

(……いくかや!)

 

 必死に鞭打って肉体を蠢かせる。

 レスリング三冠。

 敵はどこぞのビグザムのような、お優しいプロレスラーではない。

 

「チィ!」

 

 来た。

 大地を這う192cmの大蛇。

 あの巨体でかくぞ、と思わせる驚異的な速さで。

 逃れようと仰向けにもがく右足首が、たちまちぐっ、と長い左手に引きずり込まれる。

 何と言う凄まじい握力。

 

「カッ」

 

 意識を尖らせる。

 空いた左脚。

 ディジェより引き継いだ鋭利な爪先に殺意を乗せて、ノーベルの眉間を思い切り、穿つ!

 

 ビギン、と音を立て、たまらずノーベルの頭部が跳ねる。

 握力が僅かに緩み、右足を引き抜いた勢いのまま、リ・ガズィが後方に廻り、跳ね起きる。

 ふっ、と女帝の重圧が遠のく。

 死線を越えたのだ。

 生き延びた、とにかくは瞬殺を免れた。

 

 浅く息を吐いて呼吸を整える。 

 モーラは3メートルほど前方。

 もっともらしく片膝を突いて頭を振るっていたが、その内にっかと少女に戻り、いつもの気さくな笑みを浮かべた。

 

「ッ痛ぅ~っ。

 効いたよ嬢ちゃん、エリカのドロップキックの次くらいにはね」

 

「……そうやってぇ、ひけらかすなや!」

 

 短く吐き捨て、リ・ガズィが再び大地を蹴った。

 モーラ鬼灯の余裕、真実か演技か。

 いずれにせよダメージはある、間違いなく。

 アムロにとっては攻めるべき場面であった。

 

「シッ」

 

 下方から、大きな掌が一直線に伸びてくる。

 長身のリーチと馬力、決して侮る事の出来ぬ掌底。

 迷わず内側からはたき落とし、なお立ち上がろうとするノーベルの右膝を、左足でぐっ、と踏み付ける。

 思いもよらぬ圧力に体が傾ぎ、真紅の巨体が大地に釘付けとなる。

 いかな世界チャンプとは言え、この間合い、この体勢、この駆け引きにおいてのみは古武術の手管に及ばない。

 

「シャアッ」

 

 見上げるノーベルの両の眼目掛け、リ・ガズィがV字に備えた右手を突き出す。

 パン、と一瞬、空気が震え、強欲なる右指がノーベルの太い手に食い止められる。

 ……アムロにとっては、喜ばしい事に。

 

(かかった!)

 

 リ・ガズィが手首を返し、絡めた相手の左手を捻じり上げる。

 ビクン、とノーベルの両肩が跳ねる。

 不用意に空いた敵の右手。

 迷わずリ・ガズィが残った左手を絡ませていく。

 

「おっ! おっ、おおっ!?」

 

 女帝が困惑の悲鳴を上げる。

 ああ! と観客がざわめく。

 

 手四つ。

 華奢な少女の方から仕掛けていった。

 繊細なるリ・ガズィのしなやかな肢体が、屈強なノーベルを上から押え付けている。

 膂力ではなく、理合。

 指絡め。

 一回戦でヤマモト相手に極めて見せた、篤人流の裏技。

 

 しかし、そうと分かってはいても観衆は驚きを隠せない。

 これほどの技であったのか?

 古武術の理合とは、関節格闘技の頂点をも封じるほどの……。

 

「うぬ?」

 

 不意に、アムロの口から疑念がこぼれた。

 先ほどとは逆。

 リ・ガズィの体が、まるで電気でも走ったかのように一つ、ビクンと震えた。

 手四つ、一方に傾いていた天秤が、徐々に徐々に盛り返し始める。

 

「ぐっ……、ぬぬ……!」

 

 天才少女の眉間に苦悶の皺が寄る。

 ぐっ、ぐっ、と、ジャッキでも差し込んだかのように、ノーベルの体が膨らんでいく。

 必然的に、作用点たるリ・ガズィが震え、その下半身が大地に屈する。

 

『……あ、ああっ! あああああ~~~っ!?』

 

 面妖なる状況。

 異常な事態にいち早く気づいたのは、やはり、エイカ・キミコであった。

 MS少女の叫びに導かれるように、観衆の視点が一点へと集束されて行く。

 

 舞台中央、対峙する二人の女、絡み合う四つの手。

 ノーベルの大きな掌が、いつの間にか拳骨の形に組み直されている。

 その隙間から伸びる、リ・ガズィのしなやかな中指が、人差し指側に不自然に折れ曲がり、つまり……、極められている?

 

『~~~~~ッッ!

 フィギュアッ・フォー・フィンガー・ロォーック!!

 指4の字だァ――なぁつかCぃ~~~~~ッッ!!』

 

 MS少女が吠える、たちまちわっ、と観衆が沸く。

 プロレスの古典にして王道的関節技、4の字固め。

 ショープロレスの天才が、古武術の理合に対して指関節を仕掛けた。

 しかも、効いている。

 何と言う豪壮な反撃である事か。

 

「……くっ、のォ!」

 

 ガツン、と尖った爪先でノーベルの弁慶を蹴り上げる。

「ガッ」とノーベルが動きを止めた間隙を縫って、指先を外して後方に跳ぶ。

 再び、間合いの外。

 共に攻めきれず、極め切れず、いまだ勝負は五分と五分。

 

 アムロはしばし、己が指先を確かめるように、わきわきと結んで開いてを繰り返していたが。

 その内に地の底からでも呻くかのように吐き出した。

 

「……また『外し』よったのぅ?

 決して生半には外せぬ筈の、篤人流の徑脈攻めを」

 

 ギロリ、と鋭い眼光を投げつける。

 アムロの中にあった疑惑が確信に変わり、腹の底よりふつふつと殺意がこみ上げてくる。

 そんな少女の在り様を憐れむように、モーラは軽く首を振って、ぽつりと呟いた。

 

「……他人をそんな、盗人でも見るように睨みつけるもんじゃないよ。

 マリさん譲りの美人が台無しだ」

 

「……ッ なっ、なんじゃとォ!?」

 

 突如、アムロが素っ頓狂な声を上げた。

 観衆の視線がたちまち少女に集まる。

 ざわめきの中、アムロはか細い両肩を小刻みに震わし、酸欠の金魚のようにパクパクと口を動かしていたが、やがてブンブンと首を振り、肺腑を絞るように叫んだ。

 

「なんで……、なんでうぬが、ママの名前を知っておるッ!?」

 

 

「「「 ママ!? 」」」

 

 

 少女の叫びが、そのまま観衆の驚愕となって会場にこだまする。

 両者の間でどのような会話が交わされているのか、第三者には容易には把握できない。

 できない、が、ある程度推測する事くらいは可能だ。

 

 先の攻防に置いて、モーラ鬼灯はアムロの攻めを『外し』た。

 おそらくは、レスリングでもプロレスでもない技術を使って……。

 その謎の鍵となるとなるのが、アムロ・レンの口にした、ママ。

 

 つまり、モーラは過去にアムロの母親と接点を持っており、安室流、篤人流の技を知っていた?

 

 謎が謎を呼び、ざわめきが会場に溢れる中、渦中のモーラは肩を竦めて、ぬけぬけと言った。

 

「だって私、小学生の時に通ってたもん。

 篤人真理(アツト・マリ)先生の舞踊教室」

 

 

 

 炎が舞っていた。

 炎のような、鮮やかな紅の髪の毛だった。

 

(凄い……)

 

 目の前で繰り広げられる幻想的な光景を、食い入るように少女が見つめていた。

 清楚な白の胴衣に生える藍染の袴。

 身長170cmそこそこと言う、スラリと背の高い女性。

 その彼女がまるで、重力から解き放たれたかのような軽やかさで緩やかに踊る。

 ひらり、ひらりと胡蝶のように体が廻り、腰まで伸びた真紅の髪が、風を孕んで宙に広がる。

 

(凄い)

 

 呼吸をするのも忘れていた。

 板間に突いた褐色の両手が、かたかたと震えていた。

 生まれて初めて『美』に触れた。

 芸術などという言葉でしか知らなかった概念が、人ひとりの人生を揺るがすほどの確かな価値である事を、初めて知った。

 

 凄い。

 人の肉体と言う物は、ここまで奔放に軽やかに動くものなのか。

 人はこうまで可憐な存在に成り得るものなのか?

 成れるのか? 彼女に?

 彼女のように。

 

(私も……?)

 

「なれるよ」

 

 いともあっさりと、彼女が言った。

 

「ちゃんと真面目に練習したらね」

 

 そう言って、少女のくしゃくしゃな髪の毛を撫でた。

 

 なれる。

 なれるのだ。

 少女の人生が決まった。

 

 ホオズキ・モーラ。

 八歳の夏の日であった。

 

 

 生まれついてのじゃじゃ馬であった。

 

 薩摩隼人の父とキリマンジェロ生まれの母の間に生まれた、炎の国のサラブレット。

 子宝母さんの四兄弟の下に生まれた待望の一姫。

 しかしてその実態は、血液の代わりにマグマでもが流れているのではないかと思うほどの暴れん坊であった。

 

 南国の潮風を浴びたくしゃくしゃとした髪の毛に、赤道直下の太陽が焦げ付いた褐色の肌。

 幼稚園の頃はよく指さされ、その特異な外見を笑われた。

 そして、その嘲笑すべてに彼女は拳骨で応えた。

 男の子であろうと、年上であろうと、小学校に上がった後も……。

 

 そんな手のつけられない問題児が、ある日を境に変わった。

 せめてもう少し、大和撫子の嗜みを、と、無理やりに連れて行かれた舞踊教室。

 そこで彼女の運命が変わった。

 ほんのちょっぴり齧っただけの、基礎中の基礎の足捌き。

 ぼんやりと母に手を引かれ、家に帰ったその後も、寝食すら忘れ、一心不乱に少女は取り込んでいた。

 彼女の豹変に、親兄弟驚き呆れもしたが、それらの雑音は少女の耳には届かなかった。

 

(なれるよ、ちゃんと真面目に練習したらね)

 

 なれる。

 そう、なれるのだ。

 人は、芸術に成れる。

 限りなく、美、と言う物の本質に近付ける。

 自分もまた、彼女のように、なれる。

 

 憧れ。

 憧れが、憤懣に満ちた少女の日々を、くすんだ過去の光に変えた。

 

 篤人夫妻が、根平から鹿児島にやってくる、半月に一度の舞踊教室。

 必ずしも恵まれた環境ではない。

 しかし、彼女は天才だった。

 頭の回転が速く、物分かりが良い。

 こと肉体を動かすと言う行為に対し、天性の資質があった。

 要領の良さと執念深さ、相反する性が彼女の中に両存していた。

 

 そして何より、彼女には夢があった。

 情熱があり、目指すべき理想像が手を伸ばせば届く場所にいた。

 無駄に発散されていた熱量が丹田に凝縮し、未来へと駆け上がる脚力に変わっていた。

 

(なれる!)

 

 何一つてらいもなく、真っ直ぐに少女は信じていた……。

 

 

 ――結論から言うと、彼女は安室流の仕手には成れなかった。

 

 小学五年生からの一年間で、身長が20cm伸びた。 

 憧れの女性に目線が並び、尚も肉体は成長を止めぬようであった。

 

 安室流舞踊の奔放な振る舞いは、繊細なる所作の連動に裏打ちされている。

 五尺六、七寸の身の丈が、最も観衆の視線に映えるよう計算し尽くされた流派なのだ。

 規格を大きく外れた肉体がその動きを真似るには、どうしてもどこかしらの無理を伴う。

 

 趣味として、あるいはインストラクターとして続ける程度の理想ならば、さしたる誤差にはならないであろう。

 長年学んだ体捌きが、まったく別の分野で花開く可能性もあるかもしれない。

 けれど自分の舞が、あの至高の頂に届く事だけは、絶対に無い。

 天才少女の業前は、その現実を子供ながらに理解できてしまうレベルにまで達していた。

 

 厳しい稽古の合間に手ほどきを受けていた護身術も、結局は無駄になった。

 中学校一年生当時で、身長182cm。

 無名のバレー部を全国大会三位にまで押し上げた、弾丸アタッカー。

 火の国生まれの若き女帝に手を出そう、などとと言う不埒な勇者は、早々に居るものではない。

 

 ロマンスの代わりに少女の下を訪れたのは、名門レスリングジムのスカウトである。

 膂力と執念と判断力が試される闘争の世界は、彼女の本来の性に良く馴染んだ。

 まるで失った物の大きさを埋めるように、彼女は練習にのめり込んだ。

 

 高校一年で国体制覇。

 翌年、若干十六歳にして五輪レスリング女子無差別級の金メダリスト。

 国内最高峰の肉体に、小さじ一杯分の武術。

 女帝・モーラ鬼灯の躍進が始まる。

 

 レスリングの練習は、嫌いではなかった。

 生きがい、そう呼べるものも確かに感じていた。

 だが、強いて難癖を付けるなら、ライバルと呼べる出会いが無かった。

 世界中の何処を探しても。

 

 大会連覇を目指す十九の冬、かつての恩師の訃報を聞いた。

 取る者も取らず駆け付けた根平の旧家で、若き夫妻の忘れ形見は、しゃんと背筋を伸ばした祖母の膝に抱かれ、どこかむくれていた。

 

 成功と賞賛の嵐に包まれながら、モーラの魂の放浪が始まる。

 五輪三連覇後、二十四の最盛期に突然の女子プロレス転向。

 黒船襲来。

 因縁、抗争、激闘、栄冠、怒号、歓声。

 駆け抜けた七年。

 笑いがあり、涙があり、人間模様があった。

 客観的に見れば、自分ほどに充実した半生を遅れた人間はそうあるまい、とモーラは思う。

 

 けれど、それでも心は何処かで渇していた。

 いつだって次のステージを求めていた。

 他愛も無い子供のように夢ばかりが膨らむ。

 

 人類最強。

 年齢も人種も性別すらも関係無い、真の意味でのパウンド・フォー・パウンド。

 それが、行ける所まで行ってみたいと言う、肉体のもたらしたシンプルな欲求なのか。

 それとも、前人未到の頂に、かつてのような鮮烈な出会いを求めているのか。

 女帝の中の焦れつく感情の正体は、当のモーラ本人にも、とっくに分からなくなっていた。

 

 

『衝撃の事実!

 ガンプラファイト開闢の女性対決は、まさかまさかの同門対決だったのだァ!!』

 

 MS少女の盛大なアナウンスに、会場に再び歓声が沸き起こる。

 皆、事情は今イチ呑み込めていない。

 が、一生に一度、有るか無いかの格闘バカの祭典。

 誰も彼もが騒ぎたいのだ。

 世界最強の女帝のバックホーンを支えていたのは、意外にも幼き日に学んだ琉球舞踊。

 騒ぎの種としては申し分ない。

 

 周囲の喧騒に一つ溜息を吐いて、話題の中心たる女帝がぼやく。

 

「良いプロモーターになれるよ、キミちゃん。

 全部知ってたクセに」

 

「……このアングルも、うぬの計算の内かや?」

 

 平静を取り戻したアムロが、抜き身のようなギラリとした視線を疑念と共に投げかける。

 一方のモーラは相も変わらず、飄々とした態度で少女の殺気に応えた。

 

「まさか。

 出来れば私は、アンタとの対決だけは避けたかったのさ。

 私の舞踊が人様に見せられるような代物じゃ無いってのは、自分自身で良く分かってるからね」

 

「…………」

 

「先生の舞。

 安室流の頂点から見下ろしたら、私のダンスなんざ、精々が50点? 60点?

 いずれにせよ初伝止まりの代物に過ぎない……、けど、ね?」

 

「――ぬ」

 

 すっく、とノーベルが元より高い背筋をピンと伸ばして居を正した。

 逞しい上腕をリ・ガズィ目掛けて一直線に伸ばし、強かな指先でばさりと『扇』を広げる。

 ざわっ、と会場に動揺が走る。

 モーラ鬼灯が『型』に入った。

 仕掛けるつもりなのだ。

 アムロ・レンがハリマオ相手に見せた、あの鵺の歩法を。

 よりによって安室流の宗家に対して……。

 

 ゆらり。

 動くでもなくノーベルが動いた。

 0.1tを超す体重を感じさせぬ、蜉蝣の軽やかさ。

 つらつらと砂地を滑るように間合いを詰める。

 中々どうして堂に入った足運び。

 ……と、思う観者はおそらく三流であろう。

 

 192cmの筋骨隆々たる体駆が艶やかに舞う事は、やはりどこかに無理がある。

 確かに美しい、美しい振る舞いではある。

 が、美しくあろうと意識するあまり、肉体が型に嵌ってしまっている。

 指先の柔らかさが足りない。

 本物の舞術家相手に通用し得る足取りでは無い。

 

 だが、それならば何故、モーラはわざわざそんな未熟な技を敢えて衆目に晒すのか?

 国内最高のアスリートは、同時に国内最高のリアリストでもある。

 現在の自分の立ち位置、その力量について誰よりもシビアに分析できる女だ。

 現に彼女自身が言っていたでは無いか。

 自分の舞踊の業前は、精々が初伝止まり――。

 

(――海を見れば!)

 

 山。

 明察と同時に192cmが跳んできた。

 舞踊の衣を鮮やかに脱ぎ捨てて、褐色の弾丸が大地を疾った。

 至近からの高速タックル。

 間一髪、アムロの読みが間に合った。

 八双跳びにノーベルの体をかわし、刹那、足元を強かに蹴り上げた。

 痛烈な蹴手繰り。

 勢いのままに女帝の体が半回転する。

 

(――! そんなワキャ)

 

 無いだろ。

 レスリングとは、倒す競技、倒されぬ競技。

 体幹の強さが胆の105kgが、おいそれと崩れよう筈も無い。

 と、思った瞬間にリ・ガズィの右足が浮いた。

 

 やはり。

 前試合のハリマオと同じ体捌き。

 蹴られた流れに逆らわず、ノーベルは自ら体を回転させたのだ。

 回転させ、そして、眼前にあるリ・ガズィの踵を、天地上下に取りに来たのだ。

 

 常ならば、外せたであろう搦め手である。

 だが、モーラが亡き母の安室流を使うと言う事実に、ほんの僅かばかり、有るか無いかの動揺が生まれた。

 動揺が反応を鈍らせ、結果、安直な回避に、安直な反撃に動いてしまった。

 全てが女帝の掌の上の出来事である。

 

 神技の正体は、アムロのような霊感でも、ハリマオのような反射神経でも無い。

 ニュータイプとも超兵とも違う。

 弛まぬ努力と経験に裏打ちされた、正しくスーパーパイロットの境地。

 

「くっ」

 

 重厚な掌を振り払って、リ・ガズィが大きく腰を落とす。

 その間にもノーベルは大地に四肢を突いて、追撃の体勢に入っていた。

 

 クラウチング。

 まずい。

 零距離。

 回避不能。

 

(――逸らす!)

 

 かかりの呼吸に合わせ、すっ、と右足を引く。

 一直線に突っ込んで来るであろうノーベルの巨躯を、左の前足を軸に捌き切り、勢いのまま右方向に逃がす。

 捌いて、みせる。

 

 読まれた。

 

 モーラ鬼灯の選択は、変化。

 突撃の直前、くっ、と一瞬タメを作り、アムロの呼吸を外してきた。

 すっ、と下がるリ・ガズィの右脚を見定めた上で、軸足側に回り込んできた。

 サイド取り。

 世界を制した上腕二頭筋が、リ・ガズィの左腿を抱え、崩しにかかる。

 

「くっの……」

 

 小癪な敵の頸椎を叩き伏せるべく、リ・ガズィが手刀をかざす。

 その間合いから逃れるように、ノーベルは外へ外へと旋回し、円の動きを刻む。

 両者の間に立ちはだかる、圧倒的なまでの身体スペックの壁。

 否応も無く振り回され、リ・ガズィの体が廻る。

 

 同じ武術家が相手であれば、こうも無様に後れは取るまい。

 単純なアスリートが相手なら、もっと優雅に翻弄も出来よう。

 

 だが……。

 

「及第点の武術で十分。

 そこにアマレスプロレスを乗せれば、千点でも一万点でも付けられるのがモーラ鬼灯なのさ」

 

 ぼそりとモーラが嘯く、その間にも体は傾く。

 とさり、と背中が白砂を叩く。

 テイクダウン。

 会場が、熱狂に震えた。

 

 

 立ち技格闘技の世界は、残酷である。

 構えを見、思惑を見、幾つもの可能性をちらつかせながら間合いを詰め、そして、仕掛ける。

 その駆け引きは時に、平将棋の指し合いにも似る。

 へぼ将棋のヤケクソが、時に実力者の牙城をも脅かしうる。

 そこに一切の弁解の余地はない。

 

 一方、ならば寝技の攻防は、冷徹な世界とも言うべきであろうか?

 局面としては双方の展開、攻防が終わり、既に詰み筋に入っている。

 体勢が有利な方、体格に秀でた方、キャリアの長い方、ダメージの少ない方、スタミナの残っている方――。

 総合力に勝る方がまず主導権を握り、そして、手損を犯さない限りは確実にそのまま詰む。

 ルール上のブレイクでも無い限りは。

 どれほどに時間がかかろうとも、いずれ、必ず。

 天才の閃きが割り込む余地があるとすれば、それは先方が悪手を打った直後のみである。

 

「ちゃァ!」

 

 ゆえに迷わず、アムロが動いた。

 テイクダウンを奪ったモーラが、足元から這い上がってくるこの瞬間。

 脱出のチャンスは、この時にしか無い。

 

 例によって選択肢は、空いた右足のみ。

 左側に体を捻じりながら、横方向目掛けて思い切り振り抜く。

 尖鋭化した爪先が、鎌首をもたげたノーベルのこめかみを強かに打ち抜いた。

 

 会心の一撃。

 今、地に伏したこの状況で出来る、最善かつ最大限の一撃。

 しかし蹴りながら思う。

 あの女帝が、この程度の会心の一撃に怯むのか、と。

 

「――ひゅぅっ」

 

 やはり。

 今度は逃れられない。

 ノーベルは加えられたベクトルに抗う事無く体をよじらせ、たちまちぐるん、とリ・ガズィがうつ伏せに捻じり返される。

 

(後ろ蹴り)

 

 そう思った、が、駄目。

 いかなる体捌きによるものか、ノーベルはその胸元をリ・ガズィの足元にピタリと寄せ、体圧を加えながら下半身をぐいぐいと這い上がってくる。

 打撃のための間隙が無い。

 長年培ってきた理合を、完全に殺されてしまっている。

 

「ちィ!」

 

 左肘。

 そいつを鼻筋に叩きこもうとした瞬間、ぐるん、と更に体が右に返され、視界が星空を向いた。

 リ・ガズィが上、ノーベルが下。

 そうか。

 60kg強のウェイトを跳ねのけるフィジカルがあれば、そう言う選択肢もあり、なのか?

 思う間にぐっと肘元を抑え付けられ、さらにモーラが這い上がる。

 背中に腹隣でも生えているのかと言う力強い動きで。

 

 肘に、そしてついに肩口に手がかかる。

 太く、しなやかで逞しい両の腕。

 常山の蛇。

 192cm、105kgの大蛇。

 するりと柔らかく絡み付き、次の瞬間には骨まで折れんばかりに締め上げる。

 

「――さっき、ちょっとばかり話したがね。

 ナガラくんの拳、アレはやっぱり、こわい」

 

「……ッ」

 

 粛々と締めの作業にかかりながら、耳元でモーラが呟く。

 

「才能が無い、要領が悪い、だから巻藁を突くのをやめない。

 拳が破れ、砕け、変形して、空手が血肉に宿るまでやめない、死ぬまでやめない。

 そう言う狂気が、狂信が、節目節目で顔を出す」

 

「……がッ! ぐぬ……」

 

「アンタは違うね、天才だ。

 一を聞いて百が出来ちまって、そこから先の情念が足りない。

 舞踊も、武術も、ボクシングも、キックも、柔道も――。

 なんでも等しく満点で、ここ一番での拠り所が無い」

 

「~~~~ッッ」

 

 どこか憐れむようなモーラの声。

 否定したい、だが、出来ない。

 何か叫ぼうものなら、その瞬間、太い腕が喉仏に回る事になろう。

 

「汗の量が足りてないんだ。

 腹の底に絶対的な物がない。 

 もう一度、基礎の基礎からやり直すんだね」

 

 モーラの声。

 利いた風な口を聞くな。

 そう思う間にも、首が締まる。

 

 ――月

 

 あの夜もそう。

 仮想空間の望月の柔らかな光は、無様な自分の姿を照らし出していた。

 熱い。

 体が軋む、頸も。

 架空の空が、滲む。

 月光が、柔らかな白を増していく。

 行き場を失った熱がのたうち、足掻き。

 白く、尚も白く。

 輝き、全てが、やがて。

 

 …………

 

 

 霧の中にいた。

 自分の指先までも見えないような、真っ白な靄の只中にあった。

 

 道を失った迷い子のように、当所なく歩を進める。

 踝が、ざぶり、と水音を立てる。

 静寂の中、ただ滾滾と川音だけが耳に届く。

 身を切るような冷気が、足先から背を抜け、つむじにまで抜ける。

 

 寒い。

 先ほどまでの熱は、体のどこにも残っていない。

 心が震える。

 ぼろぼろと大粒の涙がこぼれる。

 

 独りだった。

 ただ独り、震える童女に戻り、泣きながら川面を歩いていた。

 

『汗の量が足りてないんだ、腹の底に絶対的な物がない』

 

 うるさい、黙れ。

 いやいやと、ぐずるように首を振るう。

 奴に一体、何が分かると言うのだ。

 何もかもが恵まれている人間に。

 顔も知らぬママと蜜月を持ち、まっすぐに自分の夢を駆け抜けて来たあいつに。

 

 独りだった。

 大好きだったおばあちゃんは、七つの時に死んだ。

 それからは、ずっと独りでやって来た。

 

 祖母の残した、僅かばかりの覚書。

 倉の奥に眠っていた、古ぼけブレたビデオテープ。

 天賦の才。

 頼れるものはその程度しかなかった。

 断片的な情報を掻き集め、何度も何度も組み合わせ、試し、誤り、求め、繰り返した。

 記憶の底に残る、鮮やかな祖母の姿に近づかんと、もがき続けた。

 

『やめとけぇ、レン、お前にゃ向かん』

 

 ぽっかと煙を吐き出して、呆れたように老人が言った。

 

『お前は確かに天才よ。

 人を殺せる篤人の技を、単に安室の秘奥に近付く手段としか見とらんのだからな』

 

『そこらの玄人相手だったら、お前の敵にもなるまいよ。

 闘い、斃して、調子に乗って……、そんでいつかは何かに躓く。

 まぁ、武術ってのは命の遣り取りだからよ、躓いて、そこで終いよ』

 

 老い先短い身内の忠告、鼻でせせら笑った。

 技術は技術、良く切れる短刀を刺身に使って何が悪い。

 そして天才とは、躓いたり転んだりしないからこそ天才なのだ。

 古ぼけた『武』の概念を嘲笑うかのように試した。

 武術も、ボクシングも、柔道も、キックも、少女にとっては全てが餌だ。

 近代格闘技を覚え、それを制する古流の理合を覚え、そこから遡るように安室流の真髄へと手を伸ばそうとした。

 

 一足跳びに駆け抜け、踏切り……、そして、躓き倒れた。

 

 不器用な少年だった。

 古ぼけ色褪せた空手しか知らない少年だった。

 殺せる、と思った。

 最初に道場で会った時も、二度目の海岸線でもそう思った。

 事実、殺せた。

 だが、前提が間違っていた。

 

 空手の為に死ねる少年だった。

 少年にとっての闘争とは、命の遣り取りとは別の次元にあるもののようであった。

 死して尚、少年は己の信念を曲げず、リーオーの拳が自分を叩いた。

 

 祖父の言った通りであった。

 自分はあの日、あの砂浜で死んだのだ。

 取り返しなど付こう筈も無い。

 

 躓かぬからこその、天才。 

 器が砕け、未来が、潰えた……。

 

 

 ざぶり、ざぶりと、いつしか水流は膝の高さにまで達していた。

 全身が氷のようだった。

 もう、これでいい。

 天才に成り切れなかった。

 せめて独りで来て、独りで去りたい。

 そう思っても、何故かぼろぼろと嗚咽は零れ続けた。

 

 どれほど歩き続けていたのか……?

 

 唐突に、とくん、と一つ、心音が震えた。

 錯覚かと思った。

 アムロ・レンただ一人しかいない白色の世界。

 濃密な霧のカーテンの先に、ゆらり、と黒い影が一瞬揺れた。

 

 心臓が早鐘のように高鳴り、指先が震える。

 思わず駆けだそうとした途端、足が嵌り、水面に沈んだ。

 全身の感覚が消え、それでも尚、足掻き、這い上がり叫んだ。

 

「ばあちゃんッ!」

 

 祖母であった。

 記憶に残るあの頃の姿で、しゃん、と綺麗に背筋を伸ばし、最愛の人がその対岸に立っていた。

 

 アムロ・レンの全てがほどけ、ただ必死で駆けた。

 駆けようとした。

 その脚が、対岸の手前でふっ、と止まった。

 いや、止められた。

 ビクン、と体に電流が走り、そこから一歩も動けなくなった。

 

 知っている。

 その感覚は、祖母が舞に入る際に、いつもその身に感じていたものだ。

 気を、当てられたのだ。

 すっくと居住まいを正した、祖母の立ち姿。

 凛とした安室流宗家の仕手の振る舞い。

 例え天魔外道と謳われる覇王であっても、天下無双の剣豪であっても、今、自分の舞うこの一間半には、決して踏み入らせぬ。

 堂々たる演者の世界がそこにあった。

 

「なんでじゃ!? なんでじゃ、ばあちゃんッ!!」

 

 魂を引き千切るように、少女が叫んだ。

 悲痛な野良犬のような喚き声を上げ、哭いた。

 少女を人間たらしめていた尊厳の箍が、全て弾け飛んでしまったようであった。

 

 ゆっくりと、祖母が右腕を上げた。

 皺枯れた、ほっそりとした指先が持ち上がり、導かれるように、少女が後背に目を向けた。

 

「…………」

 

 

 

 ――無限の宇宙(そら)が、広がっていた。

 

 

 

「……どおりで、寒い、わけじゃの」

 

 ぽつり、と、感嘆が漏れた。

 奇妙な光景であった。

 相変わらず祖母の立つ彼岸は濃密な霧に覆われていたが、川半ばから臨むあちら側は、驚くほどに澄んで見えた。

 

 大小の真珠をばら撒いたような星空の中に、際立って大きく浮かぶ青い星が見えた。

 赤茶けた大陸の極東に、ちっぽけな島国が見えた。

 緑に満ちた関東平野が見えた。

 その山際に、閑散としたアミューズメントパークが見えた。

 真っ暗なプラネタリウムを照らす、オーロラビジョンの光が見えた。

 その電影の世界の中で、絡み合う二体のモビルスーツの姿が見えた。

 

 アムロ・レンは川半ばにあって、今、世界を睥睨していた。

 

 ノーベルの太い腕が、リ・ガズィの首をスリーパーに捕えている。

 だらりと弛緩した少女の肢体。

 決着。

 万人の観衆がそう思っている事が、今の少女にはつぶさに感じ取れた。

 

「……阿呆か、お前は」

 

 まるで他人事のように、ぶっきらぼうにアムロが言う。

 

「両手が空いておるではないか?

 はよう殺れ、ゴングが鳴ってしまうぞ。

 ほれ、まずは右手じゃ」

 

 アムロの声に促されるように、地上のリ・ガズィの右腕が柔らかく動き、そのしなやかな指先が、背面、ノーベルの胸部との隙間にもぞもぞと割り入る。

 

「もうちょい右……、そう、それ、毟り取れ」

「……!」

 

 リ・ガズィが指先をぎゅっ、とすぼめる。

 たちまちビクリとノーベルの肩が竦み、その両腕が小刻みに震え始めた。

 

 死に体のリ・ガズィが仕掛けた。

 ざわざわと困惑する観衆を、天上のアムロが鼻で笑う。

 理合、ではない、経穴、でもない。

 無論、空手バカ二代目のようなピンチ力でもない。

 悪魔の選択はもっとシンプル。

 

 篤人流宗家、渾身の、右乳首攻め。

 笑い事では無い。

 乳頭は鋭敏なる痛覚が集中する超危険ポイント。

 こと女性にあっては、如何ともし難い母性本能が受け手を襲い、闘争心が削ぎ落されてしまう。

 

 例え女帝であっても、いや、女帝であるがゆえに避けられぬダメージ。

 それでも必死で奥歯を喰いしばり、ブンブンと首を揺すって凌ぐ。

 

「それ」

 

 ふわりと泳いだブロンドのポニーテール。

 左手で迷わず掴み取り、ぐっ、と肩口に引き寄せながら、乳房を弄っていた右手を放し、即座に叩き込む。

 

「がッ!?」

 

 今度こそ、女帝が哭いた。

 中指をわずかに浮かせ、鉄菱に固めた右の拳骨。

 そいつで思い切り人中を打ち抜いた。

 絶対急所。

 これに耐えられる者のがいるならば、それはそもそも人間では無い。

 

 のけぞり緩んだノーベルの両腕を潜り抜け、リ・ガズィがあっさりと立ち上がる。

 後背の敵を気にする風も無く、悠然と仮初の大地を闊歩する。

 その様をアムロは川半ばから見ていた。

 ざわめく観衆をリ・ガズィの目で見渡しながら、同時に頭を振るうノーベルを見下ろしていた。

 

 唇の上に痺れる、焼印のような熱を見ていた。

 紅くほてった右の乳房を見ていた。

 大きな背を走る冷たい汗を見ていた。

 屈辱に震える厳つい肩を見ていた。

 逞しい大腿筋に蓄えられる、畳んだバネのような応力を見ていた。

 リ・ガズィの背中に向けられた敵意を見ていた。

 

(タックル!)

「うん、タックルじゃな」

 

 短い打ち合わせを終え、少女が、振り向きもせずにリ・ガズィが跳んだ。

 その下を、ノーベルの大きな体が高速で通過していく。

 迷わず肩口に乗り、崩した。 

 ノーベルは頭から大地に突っ込んだ。

 

 篤人流甲冑術『鵯崩(ひよどりくず)し』

 プロレスで言うならば、カーフ・ブランディングに近い技である。

 後背から敵の背に飛び乗り、二人分の具足の重さを頸椎に叩き込み、或いは脇差で首を落とす。

 本来ならば、戦場で太刀を失った際に、不意打ちとして仕掛けるべき技なのだが、それをアムロは正面から、しかも相手に背を向けた状態で極めた。

 

「成程、のう」

 

 相手のダメージを確かめる事もなく、ゆるり、と歩を進める。

 シン、と水を打ったように静まり返ってしまった舞台の中央で、ぴたり、と足を止める。

 

 

 間

 

 

 やがて、少女がすっ、と右腕を前方に差し出した。

 ぴくん、と軟い電流が万人の頬を撫でた。

 

 ふわり、と少女が、リ・ガズィ廻った。

 真紅のしゃぐまが柔らかく浮き上がり、まるで別個の生命のように燃え上がった。 

 

 炎が舞っていた。

 炎のような、鮮やかな紅の髪の毛だった。

 

「ちい、と、軸足が固いかのぅ」

 

 少女がぼやくと、たちまちリ・ガズィの膝が柔らかく曲がる。

 

「何じゃその手は? だらしがない」

 

 リ・ガズィの人差し指に、ピン、と力が入る。

 

 廻る、廻る、少女が廻る。

 炎が躍る。

 廻りながら近づいて行く。

 芸術に。

 美、その概念の根源に。

 顔も覚えていない母親の姿に。

 少女の始まり、透き通るような祖母の姿に――

 

 

『ばーちゃんは、どおしてそんなに、きれいにおどれるの?』

 

 少女の声が聞こえる。

 

『心をの、飛ばすのよ、ちょうちょのように、ひらひらとな』

 

 在りし日の、祖母の声が聞こえる。

 

『とばすの?』

 

『三途の川……、うぬのママがいる所によ。

 向こうからは此方側が、何もかんもが、妙によう見えよる。

 うぬの顔も、自分の無様な姿も、の』 

 

『うそだ』

 

『カカ、わしの言葉が信じられぬならば、うぬは所詮、そこまでの器よ。

 もっとも、こいつを続けていりゃあ、その内に知るじゃろうよ。

 安室の舞が好きなら、その内にのう』

 

『しゅき』

 

 

「なんだ」

 

 ぽつり、と溜息がこぼれた。

 答えは初めから自分の中にあった。

 

 謎かけのような祖母の言葉。

 その裏にある安室流舞踊の真髄を求め、十数年、独りで這いずり足掻いてきた。

 だが、蓋を開けてみれば何と言う事も無い。

 謎でも何でもなく、それは本当に言葉通りの意味だったのだ。

 

 例えば、自転車に乗れる世界がある。

 

 廻り続ける車輪は、ジャイロ効果により倒れる事無く前に進む。

 理屈の上ではそうなっている。

 だが現実には、自転車に乗れる世界と、乗れない世界が確かに存在している。

 

 三輪車に乗る。

 補助輪を付けて、自転車に乗る。

 荷台を支えてもらって、走る。

 何度も何度も、転ぶ。

 

 その内に、ある日、ふっ、と出来るようになる。

 意識せずとも倒れる事無く、自転車は前に進む。

 世界が変わる。

 別の世界にシフトしたのだ。

 

 逆上がりの出来る世界がある。

 跳び箱の跳べる世界がある。

 クロールの出来る世界がある。

 

 幾つもの世界がある。

 乗り越えられる世界もある。

 乗り越えられない世界もある。

 乗り越える度に世界が変わり、別の風景へと変わっていく。

 

 今宵、アムロ・レンは、新たな世界に入門した。

 

 観法『彼岸ノ見』

 篤人流古武術における、無我の境地。

 そして、安室流舞踊の頂である。

 

 

 どれほどの間、舞っていた事であろうか?

 いつの間にか、アムロは一人の少女が舞台に立っている事に気が付いた。

 

 くしゃくしゃの黒い髪の毛に、褐色の肌の、痩せっぽっちの女の子。

 呆然と、アムロの舞を見つめていた。

 小さな指先が、微かに震えていた。

 サファイアのような大粒の瞳に、きらきらと輝く物を堪えていた。

 

「……わしのママの事、そんなに好きだったんかい」

 

 呆れたように、アムロが溜息を吐いた。

 

 何故舞踊をやめた、そう思う。

 自分だったら、身長が2メートルになろうと3メートルになろうとやめない。

 きっと彼女は、見誤ってしまったのだ。

 自分が本当に求めていたもの。

 かけがえの無い、つながり。

 

 無我の境地。

 

 篤人流古武術における、ひとつの到達点。

 自我……、自己と他者との境界を取り払い、その思考と交わる。

 敵の思惑を明確に理解出来たならば、どのようにでも対応が出来る。

 ありとあらゆる攻撃を無力化出来る。

 

 だが、そんなのは所詮、些事だ。

 

 真の意味で他者と一つに成れたならば、もう、敵などと言う者は何処にも存在しない。

 その心の痛みを、悲しみを、欲するものを違わず知る事が出来たならば、そこには諍いも争いも生じず、拳を握る必要が無くなる。

 

 武を捨てる。

 それこそが武術の究極の境地。

 今やアムロは、舞いながらかつての祖母となり、また、キラキラとした女の子の瞳で顔も知らぬ母親を見上げていた。

 

 倒すべき敵など、居ない。

 けれど、それならば自分は、一体どうするべきなのだろう?

 この氷のような宇宙の果てに、独りで……。

 

 そこまで思った所で、じっ、と背中に熱を感じた。

 知っている。

 少女が天空から見下ろす。

 リ・ガズィが振り向きざまに見上げる。

 

 ナガラ・リオ。

 いつ死んでも良い少年だった。

 あの場に居る誰よりも未熟な少年であったが、今のアムロの心境に誰よりも近づけるのは、あるいは彼なのかもしれない。

 

 その少年の、生まれつき色素の薄い瞳が、さながら青い炎のように、少女の体を灼いていた。

 それだけが、絶対零度の世界で唯一の体温だった。

 たちまち世界が、根平の砂浜へと変わる。

 

 

 出会った時から、気に食わない小僧だった。

 才能の欠片も無い癖に、男と言う境遇一つで、自分の前に立ちはだかる馬鹿者だった。

 自分が求めて止まなかったものを、全て持って生まれてきた男だった。

 ブチのめしてやろうと思った。

 

 その少年が、泣いていた。

 腫れ上がった瞼と眼窩の隙間から、清らかな涙を流していた。

 それを見た時、思った。

 ああ、こいつも、かけがえの無い人を亡くしてしまったのか、と。

 

『アムロよォ……、やろうぜ、ガンプラ・ファイト』

 

 野良犬が、哭いた。

 どうしようもなく憐れだった。

 

 アムロ・レンは、万事において天才だ。

 独りで来て独りで去る。

 何処へだって行ける、何にだってなれる。

 

 この男は違う。

 空手しか知らない。

 それ以外のまっとうな生き方を知らない。

 それなのに、繋がり合える相手を無くしてしまった。

 じゃれつく相手を、今はアムロに求めている。

 

 

「いいじゃないか」

 

 あの時はそう思った。

 今だってそう思う。

 今や世界は、アムロ・レンの手の内にある。

 野良犬のささやかな願い、叶えてやって何が悪い?

 

 ゆらり、と、アムロが褐色の女の子の下へと歩みを変えた。

 何かを求めるように、女の子が両腕を広げた。

 その手をすり抜け、アムロの白い指先が、女の子の頸にかかった。

 

 両手の親指と人差し指。

 ちょこんと頸動脈を押さえられ、褐色の女の子は、まどろむように倒れ、眠った。

 

 

 しん、と仮初の夜が静まり返っていた。

 熱狂に飢えていた筈の格闘バカたちが、完全に言葉を失っていた。

 

 地に伏した女帝、ビルドノーベル。

 茫漠とした瞳で月を見上げる、リ・ガズィ風月。

 

 ぎゅっ、と胸の前で組んだ両手に力が入る。

 ぶるぶると、知らず少年の両肩が震えていた。

 

 恐怖に、ではない。

 怒りに、でもない。

 強いて言うならば、悲しい、ような気がした。

 

 いたたまれない。

 

 月明かりに独り佇む少女の姿に、何故だかリオはそう思った……。

 

 

 

 

 

 

 

 




・おまけ MFガンプラ解説⑰

機体名:ビルドノーベル
素体 :フルスクラッチ(ノーベルガンダム)
機体色:赤・白
搭乗者:モーラ鬼灯
必殺技:ジャパニーズ・オーシャン・サイクロン・スープレックス・ホールド
    弾丸タックル
製作者:エイカ・キミコ

 エンジョイ派ガンプラビルダーのマエストロ、エイカ・キミコが、敬愛するモーラ鬼灯のために、全プラモスピリッツを注ぎ込んで製作した、魂のMFである。
「女の子らしい機体ね」と言うモーラのオファーに対し、表向きはノーベルガンダムを素体にする事で応じたキミコであったが、水面下ではまったく別の機体を製作していた。
 192cm105kgの肉体に合わせ、一からパーツを整形し、真紅のビキニアーマーや金糸のマントなど、女帝の名に相応しい装飾を、微に入り細に至るまで仕立て上げて完成とした。
 頭部にはブロンドのポニーテールを丁寧に植毛し、当初の要望の名残をかろうじて残している。
 一方で本機は「女帝の肉体に外部サポートは無粋」と言う製作者の信条から、バーサーカーシステムを搭載していない。
 彼女の言葉通り、モーラは持てる肉体のパフォーマンスを如何なく発揮し、圧倒的な強さで準決勝まで駒を進めた。
 なお、その気になる製作期間は「20タイタス程度」との事。






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