知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷
<< 前の話 次の話 >>

9 / 32
今後も含めて、一番のシリアスシーンです。

【2017/02/26 追記】
今回の話で、4名から誤字脱字のご指摘をいただきました。

いつもありがとうございます。


【第8話】フレイザードの、悪あがき!

----ポップSide----

「さすが過ぎるぜ、ダイ…!」

ヒュンケルの野郎が心の目で感じろとか言い出した時は正気か疑ったが、ダイは見事にフレイザードのコアを切り裂いた。

コアを壊されて体の維持が出来なくなったらしく、フレイザードは炎と氷の部分から真っ二つに裂ける。
その瞬間、氷の部分に俺のベギラマが直撃し、フレイザードの体は炎部分を残すのみとなった。

「これまでだな…!俺が引導を渡してやるぞ」

クロコダインのおっさんが斧を構える。
それに対して、フレイザードは静かに答えた。

「無駄なことすんな。…ほっといても、あと1時間もすれば元の石ころに変化するよ。それに人質には毎日ベホマをかけてたから、あと3日は何ともないはずだ」

その声は諦めたような声ではなく、何かを達成したような声だった。

「安心したよ。あんたが勇者で間違いなさそうだ。…一つだけ、遺言を聞いてくれねぇか?」

ダイが剣を構えたまま、耳を傾ける。

「クーラには、生きて塔に上がった奴に今後従うよう言ってある。そして俺が考えた技は全て書物にまとめて、クーラに預けている。その書物と引き換えに、クーラを助けてくれないか?あいつは生まれて初めて優しくされた俺に、騙されて従っていただけなんだ」

体が半分に裂けてまともに動かせないはずなのに、無理やり頭を下げる。だが現在の状態で姿勢を保てるはずもなく、倒れてしまう。
それでも何度も何度も起き上がっては、頭を下げていた。

その光景に何も言えないダイに代わって、レオナ姫がフレイザードに近づく。

「…氷炎将軍。頭を上げなさい」

フレイザードがレオナ姫の顔を見る。

「私達人間が、彼女をひどい目に合わせたというのは間違いないのですね?」

「…あぁ。俺が見つけたときは、首輪をされて牢屋に入れられてたよ。たまに外に出れたと思えば、翼が作り物でない証明として人前で羽をむしり取られて、それを工芸品にされてたらしい」

何を言ってるかわからないといった表情で、レオナ姫を見つめる。

「ならば、彼女が私達人間に敵意を示すのは当然のことです。…だからあなたなんかに言われずとも、私達で彼女に許してもらえるよう努力します。これ以上、彼女をひどい目に合わせないことを誓います」

フレイザードの目をみて、断言する。

「だからあなたが代償として差し出した書物については、他の願いに使ってください。…あなたが私達に対して、何か望むことはありませんか?」

開いた口が塞がらないといった様子のフレイザードに、レオナ姫は更に続ける。

「塔から脱出するとき、あなたはクーラをかばいましたよね?かばって大怪我しておきながら、相手を利用しているなんて言っても説得力ありません。それにあなたを回復させるクーラを見ました。…少し騙したぐらいで、あんな心から心配そうな顔をするほど女の子は単純じゃないんですよ?」

フレイザードの額をつつく。

「…私はあなたが塔で最初に話してくれた、実現させたかったという夢を信じます。そしてこれまで信じてあげれなかったお詫びとして、あなたの最後の願いを聞きたいのです」

レオナ姫の話を、フレイザードは黙って聞いていた。
長い間黙ったままだったが、やがて口を開こうとした瞬間、その前にヒュンケルが叫んだ。

「姫!下がれ!」

慌ててフレイザードからレオナ姫が離れると、その上空にはミストバーンが浮かんでいた。

「…人間に負けるだけではなく、地に頭をこすりつけるとは無様だな。フレイザード」

いつのまにか現れたミストバーンは、レオナ姫には目もくれず、フレイザードを見下していた。

「…やれやれ。どうやら看取りに来てくれたんじゃないようだな?」

黙ったまま空を指差すと、そこには禍々しい鎧が出現した。

「これは我が魔影軍団最強の鎧だ。…お前の頭脳は惜しい。私の部下になることを誓うなら、この鎧を新たな体として与えてやろう」

その言葉を聞いた途端、おかしそうにフレイザードは笑いだす。

「どうした?この鎧を気に入ったのか?」

「気に入った?そのデカブツを?…笑わせんな。氷炎将軍は勇者一行と真面目に戦って、満足してんだ。そもそも俺を従わせたいのなら、オリハルコンかヒヒイロカネで出来たキラーマシンでも持ってこい」

「…自分の状況を理解しているのか?この愚か者め」

近づくと、もうまともに起き上がれないフレイザードの顔を踏みつけ、粉砕し、蹴飛ばす。

「あの野郎…!」

無言で蹴り飛ばす度に、周囲にフレイザードの体を構成していた石が散らばる。
それでも何とか生きてるらしく、フレイザードはうめき声を上げる。

「最後だ。今後は私の手足となって生きろ」

「…帰れ。雨カッパもどき」

これまで以上の勢いでミストバーンが足を持ち上げるが、その足にダイが空裂斬を放つ。

「やめろ!フレイザードは、最後は正面から俺達と戦った!それをこれ以上侮辱するのは許さないぞ!」

無言でダイを見続けるが、ミストバーンはきびすを返すとそのまま消えていった。

それを確認するとダイはフレイザードだった石に駆け寄り、大声で呼びかける。
しかし、もうフレイザードからの返事はなかった。

「…愉快な奴だったのにな」

クロコダインのおっさんが呟く。

まだレオナ姫に最後の願いを伝えてないのに、逝っちまいやがった。
ふざけた奴だったが、未練を残したまま死ぬほど酷い奴じゃなかったというのに。



作者はハッピーエンド主義ですので、オチまでもう少々お待ちを。