「こんな作者のシリアスに付き合ってられるか!俺は飛ばすぞ!」という方は、10話あとがきにだいたいの概要を用意致しましたので、そちらまで飛ばしてたぶん大丈夫です。
【2017/02/26 追記】
今回の話で、4名から誤字脱字のご指摘をいただきました。
いつもありがとうございます。
----マァムSide----
豹変。
今のフレイザードを表す言葉に、これ以上の表現はなかった。
初めて会ったときはふざけた道化師にしか見えなかったが、目の前にいるフレイザードは正に氷炎将軍と呼ばれるにふさわしい覇気を放っていた。
「まずは雑魚を蹴散らしていくぞ!…この自慢の踊りでな!」
前回の踊りと違って腰を落とし、腕を激しく回しながら上半身をゆっくりと回る踊りを披露する。
…雰囲気が変わっても、やっぱり踊るのね。
とりあえず魔弾銃で弱めのイオを顔面に撃ちこもうとするが、フレイザードが踊りだした途端、レオナ姫の仲間達が何かに怯えるように叫び、床をのたうちまわっている。
「これは『メダパニダンス』。今叫んでるやつは、体中に虫が這いまわっている幻覚を見ているだろうさ!」
フレイザードは本気で、ふざけていたのは私達のほうだった。
慌てて本気の魔弾銃をセットする前に、痛みに耐えながらポップが起き上がる。
「く…!この期に及んで踊るとか、余裕見せるのもいい加減にしろ!メラゾーマ!」
ポップ自慢の呪文を唱えるが、なぜか不発に終わる。
「これが『氷炎結界呪法』の効果!俺以外の呪文は弱体化し、更に全ての能力を激減させる秘儀だ!」
フレイザードの言葉を無視して何度もポップはメラゾーマを唱えるが、無駄だった。
もしやと思い私も魔弾銃の引き金を引くが、こちらも言うことを聞いてくれない。
ダイが慌てて大地斬を放つも、フレイザードに指1本で止められてしまう。
「うかつに近づいていいのか?『猛毒の霧』!」
ダイとフレイザードが、濃い緑色の霧に包まれる。
霧が晴れたときには、全身に汗をかき、息を荒くしたダイが床に倒れていた。
「ダイ君に何をしたの!?」
「今のは相手に毒を吸わせる技だ。アバンの使徒は、ヒュンケルの奴が言ってたから知ってるだろう。俺はこういった特殊な技が十八番なんだよ!」
慌てて私やレオナ姫がダイにキアリーを唱えるが、この呪文も発動してくれない。
そうしている間にも毒が回っているのか、ダイの顔色がみるみる悪くなっていく。
「フレイザード様。助太刀に来ました。ただ『氷炎結界呪法』は私にも効果があるので、サポートに専念させていただきます」
先ほどのフレイザードがはじけた攻撃を見たからだろうか、クーラが戻ってきてしまった。
レオナ姫がかすかに迷った挙句、はっきりと口にした。
「…皆!ここは引きましょう!この結界呪法を何とかしないと、勝ち目なんかないわ!」
「そんな、待ってくれよ!」
その言葉に、珍しくポップが反論する。
きっと今までの戦いで、逃げることへの抵抗を持ってくれたのだろう。
「マリンを助けないといけないのはわかるけど、このままじゃダイ君も私達も全滅してしまうわ!お願い、わかって!」
「そうじゃない!あの女がフレイザードの部下で、同じ技を使えるってことは…このまま戦っていれば、きっとあのナイスボディが踊りでプルンプルーン!」
…少しでも成長したと思ってた私が馬鹿だったわ。
「あなたが一番、メダパニが効いているよう…ねぇ!」
アバンの使徒の恥さらしをボディブローで眠らせて、襟首を掴んだまま気球船まで引きずる。
しかしどこからか炎と氷の剣を取りだしたクーラが、立ちふさがった。
「通すと思いますか?」
「じゃあ、これが通行料よ」
メラゾーマが入った魔弾銃の弾を放り投げる。
クーラは不思議な様子で、何気なくその弾を剣で切った。
「馬鹿!危ねぇ!」
魔弾銃の弾に切っ先が触れた瞬間、フレイザードがクーラをかばう。
それと同時に爆発が起き、その隙にメダパニにかかっていないメンバーが仲間を気球船に乗せる。
「全員乗ったな!?今すぐ出すのじゃ!」
先に乗っていたメンバーから事情を聞いていたバダックさんが叫ぶと、気球船を出発させる。
遠ざかりながら爆風が晴れた塔の様子を見ると、氷部分がほぼ溶けたフレイザードに向かって、クーラが泣きそうな表情で効果が薄いはずの回復呪文をかけていた。
「…彼女も、あんな顔をするのね」
レオナ姫もダイにキアリーをかけながら同じ風景を見ていたらしく、驚いていた。
回復呪文の効果はなかったようで、フレイザードが回復をやめさせると、クーラがこちらを睨んで何かを放つ。
その攻撃を防ぐ間もなく、バギ系のような何かが気球船の風船をズタズタに切り裂いた。
ゆっくりと落下していく気球船に対して、クーラが大声で叫ぶ。
「氷漬けにした女の命は、3日後の日没までです!フレイザード様を傷つけときながら、いつまでも人質が無事だと思わないことです!」
「…言われるまでもないわ」
決心を固めるように、レオナ姫が呟いた。
ちなみにフレイザードに回復魔法の効果がなかったのは、原作でビースト君が言ってましたが『ヒムが生命体になったからホイミが効いた』=『呪法生命体ではホイミが効かない』という独自解釈からです。
【補足】
感想でご指摘ありましたが、呪法生命体うんぬんではなく、ホイミ系は自己再生能力を活性化される呪文のため、効果がないとのことでした。