知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷
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残念ながら、引き続きシリアスです。


【第5話】フレイザードは、踊るのを必死にこらえている

----フレイザードSide----

鬼岩城への無駄足に交渉失敗と、意気消沈な気分を地底魔城のモルグさんに数日相談に乗ってもらい、スッキリした気分でバルジ島に帰ったところ、そこで待っていたのは想像以上に緊迫した空間だった。

「お帰りなさいませ、フレイザード様。留守の間は見ての通り、侵入者がいること以外は特にお変わりありません」

「淡々と言うことじゃないし、その侵入者が勇者ってのが一番まずいだろ!」

お家に帰ったら0秒で勇者とか、魔王軍にとってのモンスターハウスだ。
あまりにもひどいこの状況に耐えきれず…

「踊り出しそうだ…!」

「何をするつもりですか。…とりあえず、ご心配なく。敵の主力と思われる女を、氷漬けにすることに成功しました」

「心配ごとオンリーだよ!何で留守の間に、オブジェ作る感覚で殺人未遂してんの!?」

人間を怪物としか思っていないという意味では、クーラはバーン様よりも怖い。

一触即発な空気だが、戦いをしたくない俺は何とか対話を試みる。

「どうどう。とりあえず、お互い言い分を聞かせてくれないか?」

「黙れ!化け物!俺たちの仲間を人質にとって、話すことなんかあるか!」

賢者の格好をした男が怒鳴る。ですよねー。

勇者側は置いといて、まだ話が通じそうなクーラにも尋ねる。

「彼女らは私達の住まいに侵入し、退去を宣告しましたが、拒否されましたので攻撃しました」

「お前が一番話が通じないよ!…アバンの使徒さん、この氷溶かすから、話聞いてもらっていい?」

氷柱を溶かそうとすると、人間嫌いのクーラが止めに入る。

「駄目です、フレイザード様。人間なんて卑怯者ばかりです。溶かそうと目を離した瞬間、氷漬けにした女諸共、亡き者にしようと一斉に攻撃してくるに決まってます」

両者の溝が深い。
というより、人間と精霊の間を取り持つのが魔王軍のボスモンスターとか、斬新なドラクエだな。

…しかたない。ここは俺が一肌脱ぐか。

手刀で自身の腕を切り落とし、アバンの使徒に放り投げる。
驚く人間たちを尻目に、俺は地べたに座って話をする姿勢に入る。

「その腕が勇者様とお話する代金だ。…駄目かい?」

「…レオナ、お願いだ。こいつと話をさせてほしい」

ダイが剣を納めてくれる。
レオナと呼ばれた若い女は、かなり迷った様子だったが頷いてくれた。

周りが姫様と呼んでいるから、たぶん王女だろう。

「ありがとう、ダイに王女様。…クーラ。ややこしくなるから、お前は下がってろ」

背後にいるクーラに命令する。
しばらく無言で睨んでくるが、やがて翼をはばたかせて窓から飛んでってくれた。

「悪いね。あの精霊は以前人間の奴隷だったせいで、彼女にとって人間が一番の魔物なんだ」

最初にクーラの事情を話してから、こちらの都合を話す。

戦いは嫌いだが、ハドラー様からの魔力提供のため、何かしら協力しなければいけないこと。
ヒュンケルの前に現れたのも命令されたからで、クーラと同じくこの島にかくまうつもりだったこと。
そしてこの島で研究を続けることによって、それを理由に人間と戦うのを避けているので、できればそっとしといてほしいことを伝える。

「…お前は人間を憎んでいないのか?」

ダイが尋ねる。

「もちろん。それに俺の夢は、研究した技術を一人でも多くに教える、学校のような施設を作ることだ。そこは人間だろうと魔族だろうと区別なんかせず、全員同じことを学べるんだ。…バーン様のやり方だと、教える人間がいなくなっちまう」

クーラにも言っていない、自身の夢を言う。
せっかく再現した技術を、死蔵させるのはもったいないという理由からだ。

恥ずかしさをこらえて本音を言ったというのに、相手の人間達はこちらの言うことを信じず、罵倒しかしてこない。

ダイ達アバンの使徒や王女様は迷っているが、それを咎めることはしない。

(…やっぱり駄目か)

説得を諦める。

ここがドラクエの世界だと考えて、元の体の持ち主は性格的に途中でやられるキャラな気がする。
その場合、今がそのやられるシーンなのだろう。

それを避けることができないのなら、せめて勇者の糧となって成長してもらい、クーラを助けてもらおう。

先ほどの会話で、クーラは一部の人間に虐待されたことから、俺に騙されて従っていると思っているはずだ。クーラへは俺の死後、人間に協力を命令させれば殺されることはないはずだ。

そして万が一俺なんかに負けるようなら、アバンの使徒は勇者ではなかったということだ。
俺の命をかけてそれを見定めよう。


----ダイSide----

最初の予感通り、フレイザードが邪悪な魔物だとはどうしても思えなかった。特に自分の夢を語る姿は、本当に輝いて見えた。
ポップもマァムもそれがわかったらしく、フレイザードの話に戸惑っている。

だがレオナの仲間は、彼を邪悪な化け物だという。
一斉に攻められる彼の目は、どこか寂しげだった。

途端、その目が何か覚悟を決めた目に変わり、自ら落としたはずの腕が一瞬で生える。

「…だったら交渉は決裂だな!『氷炎爆花散』!」

突然の変わり様に対応できず、部屋中にフレイザードの破片がはじけ飛び、皆その痛みで倒れこむ。

「そら!氷炎魔団ご自慢の『氷炎結界呪法』の完成だ!…お望み通り、とことん殺し合いを始めようじゃねぇか!」



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