知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷

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【前回のあらすじ】
バーン「地上を破壊するために、1つで大陸を吹き飛ばす威力を持つ爆弾を6つ仕掛けた」

レイザー「そのうちの1つがこちらになりまーす」

ポップ「(;゚Д゚)」

【2018/4/9 追記】
今回の話で、6名から誤字脱字のご指摘をいただきました。

いつもありがとうございます。


【第34話】うるせぇ、レイザー押し付けんぞ!

----レオナside----

 

「だから爆破するのは止めてください!!」

 

レイザーがまた変なことを言ったことでバーンが頭を痛くしているようだが、今のうちに私はレイザーが書いた絵を見ていた。

そこには先ほどレイザーが描いたバーンの絵に隠れて文字が書かれ、どうしてヒュンケルやクロコダインではなく私を瞳から戻したか書いてあった。

 

その内容は、今回は本当にふざけている振りをしているようで、大真面目な内容だった。

見た目からはいつもと変わらない様子のレイザーに、ポップ君達もいつもの事と思ってこちらに注目していた様子はない。

 

ここはレイザーの指示に従い、彼からの情報を基に行動に移ろう。

 

…ただし黒の核晶を隠し持っていて私たちに相談しなかったことについては、後で説教させてもらうわ。

 

「貴様の存在そのものが理不尽ということは、もういい。…しかし余が地上の黒の核晶を止めたとして、貴様の手にある核晶はどうするつもりだ?」

 

目の前に黒の核晶を持ってきたという現実をようやく受け入れたバーンが、レイザーの言葉に応じる。

 

バーンの言葉に、レイザーは黒の核晶を袋に入れながら指差す。

 

「勝負をしよう。この袋は俺とクーラしか中に入れた物を取り出すことはできない。俺とクーラの相手をしてくれるなら、このまま袋の中に入れておくよ」

 

「ほぅ。つまり袋に入れたまま貴様らを殺せば、お前に渡った黒の核晶は誰も入手できないということだな。非常に気が進まないが、大魔王である余が格下に背を向けることなど言語道断。…いずれ相手せざるを得ないのなら、ここで戦っても同じであろう」

 

レイザーの話の意図がわかったバーンに続き、クーラも一歩前に出る。

 

「なるほど。前回のリベンジというわけですね。…ダイやハドラー達は手を出すのは控えていただけますか?ここはレイザー様と私がいきます」

 

「え?いや、別に2人だけで挑むとは一言も…」

 

暗黒闘気を高めるクーラに反して「そうじゃない」と言いたげなレイザーが呟くが、バーンの闘志がそれを消し飛ばす。

 

「前回の屈辱を晴らしたいのは、こちらのほうだ。これまで幾多の敵を葬って来たが、余の衣服を剥ぐようなことを仕出かした輩は貴様だけだからな…!」

 

「甘いですね。マキシマムにトドメを刺し、あなたの半身の顔に泥を塗り、ミストバーンを倒すための致命的な隙を作った。これら全てレイザー様が起因ですよ」

 

「…薄々感づいていたが、どれもこれも貴様のせいかっ!」

 

怒気と共にカラミティウォールを放つ。

暗黒闘気を放ち、エネルギー波を噴き上げながら相手に迫る技で、超魔生物となったハドラーでも捨て身で反らすことが精一杯の技だ。

 

初撃で終わったと皆思う中、レイザーは迷わず特技の『地割れ』をすることで地面を叩き割り、地を走るカラミティウォールの勢いを殺す。

更にクーラも暗黒闘気を放出させ、バーンのカラミティウォールを力任せに拡散させる。

 

「乗り気はしないけど、こうなったら仕方ない。俺の嫌がらせを味わってもらうぞ!!」

 

レイザーが叫びながら、バーンに向かってカードを数枚投げる。

それを見た途端、バーンが烈火の如く怒りながらカイザーフェニックスを放つ。

 

「もう十分だ!そしてそのおぞましい札を余に向けるな!」

 

カードを灰にしようとしたバーンだが、カイザーフェニックスがカードに当たった途端、吸い込まれるように消えていった。

 

その光景に驚いたバーンに、クーラがすかさず斬りかかる。

クーラにありったけの補助呪文を唱えながら、レイザーは嫌がらせ目的と思われるが、先ほどの理由を説明し出す。

 

「大層な魔力で放っても、メラゾーマはメラゾーマ。天丼で悪いけどそれはシャナクじゃなくて、マホステの札だよ」

 

「てめ、怪しいカードは全部燃やしたはずだぞ!?」

 

ポップ君の指摘に、レイザーはすました顔で言い返す。

 

「持っていたカードは渡したが、もう作らないと約束した覚えはない。ついでに言うと、このカードを作ったのはさっきの絵を書いていた時だ」

 

話しながらも呪文を唱えていたレイザーだったが、今度は急に動き出し、クーラと入れ違うかのようにバーンの懐に飛び込む。

 

レイザーとは思えない積極的な行動を予測していなかったのか、バーンは闘気を込めたカラミティエンドではなく通常の手刀を繰り出すが、それをレイザーは『受け流し』で横に反らす。

 

そしてその勢いのまま、レイザーはバーンの背後を取った。

 

「中途半端な攻撃では意味がない…。だったらせめて、次につなげるために全力で妨害行為をさせてもらう!!」

 

レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ…

 

「んはぁぁぁぁん…!」

 

レイザーに猛烈な勢いで耳を舐められるバーンが、この場にそぐわない声で喘ぎ、膝をついた。

 

…ごめんなさい。こんなの連れてきて、本当にごめんなさい。

たぶん大魔王にとって、ここまで扱いに困る敵は前代未聞なんでしょうね。

 

「いや、引かないで。これは『百裂舐め』って特技で、相手の守備力を下げる技だから。…それと弟。こんなんで悪いけど、一応舞台は整ったぞ!!」

 

レイザーがそう言った途端、私の側に置き去りにしていた絵の一枚が光ると、その絵はレイザーに変わる。

そしてレイザーがいたバーンの背後にはハドラー親衛騎団の一人、ブロックが立っていた。

 

「借リ、返ス…!!」

 

片言の言葉を口にし、ブロックの一撃がバーンの脇腹へと直撃する。

さすがのバーンでも、無防備な状態でオリハルコンによる攻撃を受けて何本も骨が折れる音がした。

 

「キャスリングか…!またしても!!」

 

ブロックへ反撃を試みようとするバーンだが、それよりも早くクーラが追い打ちをかける。

 

「レイザー様が言ったはずです。せめてもの嫌がらせと、リベンジをさせてもらうと」

 

いつの間にかクーラは武器を剣から槍に変え、それは一直線にバーンの心臓へと突き刺さる。

 

「デーモンスピアによる『急所突き』です。本当はレイザー様提案の攻撃なんですが」

 

槍をバーンに突き刺した状態のまま、クーラとブロックはバーンから離れる。

ヒュンケルから聞いたがハドラーは心臓が2つあったため、バーンも恐らく同じかそれ以上に持っているはずだから警戒しているのだろう。

 

ハドラーやヒムがブロックに何か言おうとするが、バーンのあまりに怒る様子に口をつぐむ。

 

「口約束とは言え、まさかこうも容易く横やりを入れてくるとはな…!いいだろう。もう地上は消し飛ばす。本当に貴様が持っている黒の核晶で余を止める覚悟があるか、試してみろ!!」

 

バーンが魔力を込め、地上にある5つの黒の核晶に起動命令を出す。

 

ダイ君達が絶望に満ちた表情を浮かべるが、私とレイザーは事情を知っているため、それを黙って見ていた。

 

「…!?レイザー、貴様何をした!地上にある黒の核晶が、1つも起動しないだと…!」

 

「俺は何もしてないよ。頑張ったのは、地上にいる皆だ」

 

レイザーが積極的にバーンの気を引こうとしていたのは、この時間稼ぎのためだった。

 

私が優先的に解放されたのは、アバン先生からもらったフェザーを所有していることに加え、ゴメちゃんの存在があったからだ。

 

神の涙。

レイザーが弱ったゴメちゃんを回復できないかと、インパスで様子を診たときに初めて気づいたゴメちゃんの正体だ。

 

その能力もレイザーは分析できたらしく、どうやら奇跡に等しい現象を任意に発動できる、賢者の石など比較にならないアイテムらしい。

 

ただしその能力と引き換えにゴメちゃんが弱っているらしく、これ以上その力を使ったらゴメちゃんの命の保証はない。

 

だからこそ神の涙としての力を使うかどうかは、ゴメちゃんの友達である私に任せる。

そしてもし使わなくとも、恨むことは決してしないと託されたのだ。

 

私は言われなくても使うつもりはなかったのだが、レイザーが騒ぎはじめてから、頭に直接声がし出した。

 

その声はゴメちゃんからで、もう力を使わなくともまもなく命は尽きてしまう。

だから最後に、皆のために使ってほしいというゴメちゃんからのお願いだ。

 

そして私は出来るだけゴメちゃんの負担をかけない願いを選び、実行してもらった。

 

バーンに私の心を読まれないようにすること。

 

地上にいるフローラ様達と念話をし、今すぐバーンパレスの真下から避難すること。

 

そしてロン・ベルクさんから聞いた黒の核晶を凍結させて停止させる方法を、地上全ての人に伝えること。

 

「…これが私とレイザーがしていたことよ」

 

どんどん小さくなっていき、今や片手に収まる程度までになってしまったゴメちゃんを皆に見せながら話す。

地上を救ったと言えば聞こえはいいが、結局はダイ君の友達を犠牲にしての結果だ。

 

そのことによる罪は背負うつもりだったが、諦めきれない様子のポップ君がレイザーへと叫ぶ。

 

「おい、レイザー!お前だったら、どうにかゴメ公を救うことが出来る手段を持ってるはずだろ!バランの時みたいに、なんでもいいからやってくれ!頼むよ!!」

 

「へ!?え、えーと、媒体に使えそうな素材は…もうない。イア、イア、ハスター…は違うハスター来そうだし。…どうにでもなれ!!ホンダララッタ、ヘンダララッタ、ドンガラガッタ、フン、フン!」

 

レイザーがうるさいが、もはや消えてしまいそうなゴメちゃんを前にそれどころではないので聞き流す。

 

ダイ君やマァムも寄り添い、ゴメちゃんの最期のときを見つめる。

 

「…言っておくが、なんでもいいって言ったのはお前だからな?」

 

不吉なレイザーの一言が聞こえたが、もはや重みを感じないゴメちゃんを前にお別れの言葉を口にする。

 

「ゴメちゃん、今までありがとう…!ゴメちゃ…?」

 

ふと、手の中にあるスライムの感触が変わったことに気づく。

これまでゼリーのような感覚だったものが、こう何というか、モッチリとした手触りになっているのだ。

 

レイザーのこれまでの行動を省みて嫌な予感がしつつ、恐る恐る自らの手を見てみる。

 

「おめでとりぃぃぃぃ!!」

 

握っていたスライム型の神の涙は、天文学的に頭が悪そうな許容しがたい生物に変貌していた。

 

思わずその餅状のモンスターを投げ捨てるが、レイザーがそれをキャッチする。

そしておずおずと、ダイ君にそのモンスターを差し出した。

 

「…これ、ゴメちゃんです」

 

「そうなった事実を言わないといけないのはわかるけど、もう少しオブラートに包んで言えよ!!そもそもお前、何しやがったぁ!?」

 

これまで以上の勢いで、ポップ君はレイザーの襟首を掴む。

 

「何でもいいって言ったじゃん!?それによく考えてみろ。『ゴールデンメタルスライム』から『メタボっぽいスライム』に変わっただけだ。だろう?」

 

「とりぃぃぃぃ!とりぃぃぃぃ!」

 

姿が変わって混乱している様子のゴメちゃんを落ち着かせるよう、レイザーは言う。

 

「どうどう。あんまり興奮するな。そのモンスターはエッグモンスターの一種で、自爆能力があるから下手すると破裂しちまうぞ」

 

「さらっと危険技能を持たせないで!」

 

本気でレイザーに殴りかかろうと思ったが、当のダイ君は餅となったゴメちゃんを持ち上げ、嬉しそうに回り出す。

 

「ありがとう、レイザー!父さんだけでなく、俺の友達も助けてくれて」

 

「よかったの?これで…?」

 

マァムの一言に、ゴメちゃんが元気よく答える。

 

「おめでとりぃぃぃぃ!」

 

「ちょっと黙っててくれないかな!?」

 

「大丈夫?ハッスルダンスる?」

 

「『ホイミする』みたいな言い方で聞かないで!腹立たしい!!」

 

混乱する私たちを他所に、怒りが収まった様子のバーンが淡々と告げる。

 

「もう今の余でも貴様の相手は務まらん。まともに相手をしようとした余が間違っていた」

 

そう言った瞬間、レイザーの床が抜けた。

咄嗟にトベルーラをしようとしたのだろうが、バーンがレイザーにアストロンをかけてそれを妨害する。

 

「そのまま落ちていけ。そして二度と余の前に姿を現すな」

 

慌てた様子のクーラと、仲間意識のためかブロックがレイザーを追って行った。

…色々ひどいが、現状を受け入れよう。

 

本当の大魔王討伐は、ここからなのだから。




【追記1】
明けましておめでとうございます。
そして新年一発目が、このようなネタで申し訳ございません。

ゴメちゃん変異ですが、動機を言わせていただくとキラーマジンガ戦と合わせて当初から決まっていたシーンでした。
そのため後から見るとかなりひどい内容のため続行するか迷いましたが、実行に移しました。

…現在こちらは、正座をして書いております。
そして土下座の覚悟も出来ております。

【追記2】
知らない方へエッグモンスターの説明させていただくと、ゲーム「半熟英雄」シリーズに登場するモンスターで、FFでいうと10の召喚獣のように代わりに戦ってくれる存在です。

その種類は非常に多い反面、当たりはずれが激しく、言うまでもなく「おめでとり」ははずれの方です。
ちなみに「おめでとり」の見た目は、鏡餅に翼が生えた縁起の良いモンスターです。

【追記3(という名のサブタイトルのボツネタ集です)】
 ■「なんでもいい」って言った結果がこれだよ!
 ■「一回殴ってよかですか?」「嫌ですとも!」
  →私の魂が叫ぶんです。「この芸風は違う」と。

 ■作戦名「命令させて」
 ■作戦名「この人、止めて」
  →シンプルな変更なため、たぶん既出なので止めました。

 ■作戦名「踊るな、光るな、物投げるな」
  →オリ主にこれらは禁止するには無理がありました。

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