知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷
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気が付けばほぼ月刊の亀更新で、申し訳ないです。
また前回からの落差が激しい回です。

こういった説明が多くなる Or おふざけが少ない回は苦手で、何度も書き直したり長くなりがちなため自信をなくします…。

【2017/01/20 追記】
今回の話で、1名から誤字脱字のご指摘をいただきました。

いつもありがとうございます。


【第23話】俺の妹が急に低姿勢になって扱いに困る

----クーラSide----

「んぁ…」

先ほどまで意識を失っていたようだったが、断続的にゆりかごで揺らされるような感覚に目を覚ます。
周囲の音や匂いからここは森の中で、今はレイザー様に背負われているようだった。

「クーラ、目を覚ましたか?今安全な場所まで移動しているから、回復はもう少し待ってくれ」

レイザー様の言葉に、ようやく現状を思い出す。
確かバーンの攻撃からレイザー様に庇っていただき、戦場から叩き出されたことまでは覚えているが、なぜ森にいるかが全くわからない。

「そこまで覚えてるんだな?どうしてこうしているかというと、バーンパレスから落下する中、何とか袋から自作のキメラの翼を使ったのはいいんだが、なぜかここに飛ばされたからだ」

恐らく材料となったキメラが持っている、帰巣本能が原因とのことだ。

「それではキメラの巣に突っ込んでしまったということですか?モンスターは大丈夫だったのですか?」

「いや。今は繁殖期ではなかったみたいで、もぬけの殻だった。とりあえず『鷹の目』を使って、最寄りのエルフの村に向かってる。そこでクーラの治療と俺の魔力を回復して、再度ダイ達と合流しよう」

嘘だ。
レイザー様からは焦げ臭い匂いや返り血、それを誤魔化そうとしたのか、すり下ろした薬草を肌にすり込んだ匂いがする。

きっと魔力がない状態で、意識のない私を守りながら多くのキメラを相手にしたのだろう。

「…レイザー様。ありがとうございます」

「どうした?怪我をしているのだから、背負うことぐらい大したことないぞ」

「それだけではありません。バーンとの戦いの中、私を見捨てればまだ戦えたのに、庇ってくれたことです。とても嬉しかったです」

「…気にしなくていい。俺みたいな奴に付き添ってくれる変わり者は、クーラしかいないんだから」

「私にもレイザー様しかおりません。ですからこのままいつまでも、ご一緒させてください。…それにしても、この姿勢は素晴らしいです。レイザー様の耳の裏やうなじが、見放題・なめ放題です」

「いい話だと思ったのに、変貌するな!あと耳元で息を荒くするなら、振り落とすぞ!?」

レイザー様ならやりかねないので、落とされないよう一層強く抱き付き、首筋に顔を埋める。
深呼吸を繰り返す私に何か言いたそうだが、諦めた様子で歩き出す。

私がレイザー様を堪能している間に、ようやく目的地に着いたらしく、誰かが駆け寄ってくる気配がする。
どうせレイザー様に助けられたことから毎回言い寄ってくる、エルフ娘のナーミラだろう。

「わぁ!レイザー君、いらっしゃい!!今日はサボテンボールを狩って来たから果汁…クーラさん、どうしたの!?」

さすがに怪我をして背負われている私には気づいたようで、レイザー様に馴れ馴れしくしつつも、私に話しかける。
先ほど言いかけた果汁をどうするか気になるが、レイザー様に近寄らないよう牽制する。

「あなたには用はありません。この虚乳が」

「出合い頭に悪口言わないでよ!?それに私は、エルフとしては平均なんだから!」

私はこの女が嫌いだ。

この女は村の生贄として育てられたため、常に周囲に笑顔を振りまくような生き方が習慣になっている。
そのせいか表情だけはいつも笑っているのだが、常に濁った池のような目をして不快だからだ。

もし私が天界で周囲に反発することを諦め、媚びを売って生きることを選んでいたら、同じような生き方をしていただろう。
そのため彼女を見ていると、レイザー様と出会えなかった私自身の姿を見ているような気分になることも気に入らない原因だ。

「おぉ、レイザー殿。今日はどうなされたので?」

ナーミラが騒いだせいか、この集落の長老が現れる。
その長老に、レイザー様は普段以上に丁寧に対応する。

「突然の訪問ですまない。ちょっと連れが怪我をしてしまって、回復するまでの間でいいので場所を貸してもらえないだろうか?」

「クーラ殿が怪我をされるとは、近くにそれほどのモンスターが…!?」

「いや、その心配はいらない。戦っていたのは別の場所で、とっさに目的地を定めずに使ったルーラのせいで、印象深かったこの村に着いただけさ」

大魔王と戦っていたことを言わないのは余計な混乱を招くだけでなく、このエルフ達なら私達を村に攻め込ませない交渉材料として魔王軍に差し出す者も出かねないので、このような言い回しをしたのだろう。
…こういった時はとても頭が切れるのに、どうして戦闘中ではああなってしまうのだろうか?

レイザー様の話を鵜呑みにしたエルフの長老は、一転して安心したような表情となる。

「おぉ、それでしたら心配はないですな。…それよりもレイザー殿。急で申し訳ないのですが、我々の頼みを聞いてくれないだろうか?」

「何かお困りのようだな。わかった。話を聞くよ。…それでナーミラさん。俺が長老さんと話している間、悪いけどクーラの手当てを頼めないだろうか?クーラの傷は回復呪文では治療できないから、この村ではナーミラさんにしか頼めないんだ」

このエルフ女をレイザー様が気に入っている一番の理由が、レイザー様以外で唯一踊り系特技を覚えたからだ。
当然『ハッスルダンス』も使えるため、レイザー様からの頼みを嬉しそうに引き受ける。

「うん、任せて!私はレイザー君の一番弟子だから、頑張るよ!!」

「調子に乗らないでください。レイザー様の一番は、起床から就寝まで全て私です」

「一歩間違うとストーカーだから、もうちょっとマイルドに言おうな!?」

私を背から降ろすと、レイザー様は長老と一緒に別の場所に向かう。
そして私はナーミラに再度背負われ、自宅まで連れてかれた。

「待ってて。レイザー君たちの話が終わるまでに、治してあげるから」

レイザー様と同じ踊りのはずなのに、なぜか煌びやかに見える『ハッスルダンス』を舞い始める。
生贄とはいえ、村の巫女として育てられた違いだろうか。

「…あなたを嫌っている私がいうのは変ですが、よくこんな村にいられますね?周りのエルフは、あなたをドラゴンの餌にしようとしたのですよ?」

ナーミラとの付き合いは、レイザー様と共にロン・ベルクの元で作成した武具を試すためエルフの集落付近に行ったところ、ドラゴンの大群が住み着いたことから生贄として選ばれ、餌になる直前にレイザー様がそのドラゴンを倒してからだ。

ドラゴンの生贄にされて何とか助けられたにも関わらず、なお周囲のエルフに愛嬌を振りまき続けていたナーミラをレイザー様が叱ったところ、なぜか「もっと叱ってほしい」と言い寄るようになった。

「…平気だよ。私はいざって時に、頼られるために生きてるんだから。それに皆とはあまり話さないけど、お薬とか譲ってくれるよ」

ちなみに食事に必ず毒消し草を入れるのは、また生贄を育て直すことがないように集落のエルフが教え、習慣化しているらしい。

色々なことが天界にいた頃の私を思い出すきっかけとなり、ひどい顔をしていたようで、ナーミラは恐る恐るなだめるような口調で話しかけてくる。

「そ…そんな怖い顔しないで、仲良くしよう?私、二人と一緒にいるとすごく楽しいの。間違ったことをして叱ったり怒ったりしてくれるの、私にはレイザー君とクーラさんだけだから」

「散れ、このドエムフ」

「いきなり酷い呼び方しないでよ!私はただレイザー君に怒られるのが好きな、普通のエルフです!」

「…少し動かないでください」

特殊性癖を持つこのエルフの目を抑えるように顔を鷲掴みし、呪文を唱える。

「浄化されなさい!ニフラム!!ニフラム!!ニフラム!!」

「いきなり何!?こめかみ痛いし、すごく眩しいし、目がチカチカするからやめてよぉ!」

「弱い者イジメしてんじゃない!なんか光ってると思ったら、何してんだ!?」

話が終わったためか戻って来たレイザー様が、私の頭に手刀を落とす。
痛がる私を差し置いて、レイザー様はナーミラに話しかける。

「それでナーミラさん。さっき長老と話していたことなんだが、俺達と一緒に来てもらうことになった」

突然のレイザー様の話に私が食い付こうとすると、まだ視覚が回復していないナーミラに気づかれないよう、私に手紙を渡す。
表面には「本音」と書かれているため、今からナーミラにする話が建前で、この手紙が実際の引き取る理由なのだろう。

「私がレイザー君達と?それはとっても嬉しいけど、どうして?」

「俺達は魔王軍と戦っているんだが、回復呪文では治療できない攻撃をしてくる奴が多いんだ。だから俺以外に『ハッスルダンス』を使えるナーミラさんに協力してもらえるよう、俺から長老に頼んだからだ」

ナーミラに気づかれぬよう手紙を開くと、先ほどのレイザー様の話とは違い、この話は元々エルフの長老から頼まれたことだという。
その理由は、以前この集落のエルフ族がドラゴンの生贄としてナーミラを差し出したことが原因らしい。

レイザー様のおかげでドラゴンは全滅させたものの、生贄としてナーミラを選んだ者達の後ろめたさから確執が生まれ、近頃の彼女は周囲から一層距離を置かれているとのことだ。
長老もなんとか仲裁しようとしたが、その溝は日々大きくなっているらしい。

そのため今の代まで伝統となって引き継がれてきた生贄を今後は誕生させないことと引き換えに、大魔王と戦う生贄という名目で、ナーミラを貰い受けることになったとのことだ。
レイザー様としても、将来特技を教える施設を作る際に、講師として踊り系を使える人材が是が非でもほしかったとも書かれている。

(…なるほど。お優しいレイザー様なら、このような話を断るはずがありませんね)

エルフ族の言い分に思うところもあるが、私としてもこのまま見捨てるには気が引ける。

また先ほどの大魔王バーンとの戦闘で思ったが、レイザー様は良くも悪くも容易く状況を一変できるため、暗黒闘気を使う相手だからといって回復役に一任するのは惜しい気がする。
そう考えると『ハッスルダンス』を使えるナーミラは、レイザー様を自由にできるということも含めて役立つだろう。

「…わかりました。レイザー様が必要だというなら、私はナーミラを連れていくことに反対致しません」

「い、いいの!?ありがとう!私、ずっと一人で食事を作ったり狩りをしてきたから、踊り以外でも家事や弓でも頑張るよ!!」

「ニフラムを連呼していた私が悪いのですが、あなたが話しかけているのは壁です」

しばらくはナーミラの視力回復を待っていようとすると、突然レイザー様が立ち上がる。

「…すまん。ちょっと大事な用が出来たから、別行動だ。それと予定変更でクーラとナーミラさんはダイ達ではなく、レオナ姫の所に行ってくれ。俺も用事が済んだら、すぐに行く」

その様子はどこか慌てていて、有無を言わさぬ緊迫感があるものだった。

「それと、どうやらポップ達も俺達と同じくバーン達の居城から追い出されたらしい。レオナ姫に合流次第、レミラーマを使って助けに行ってほしい」

「レイザー様?どうしてそんな事がわかるのですか?」

「説明している暇がないんだ。必ず戻るから、先に行っててくれ」

私が事情を聴く暇もなく、いつの間にか魔力を回復したらしいレイザー様はリリルーラで姿を消した。


----ハドラーSide----

「ハドラー様、ここなら安全でございます。どうか体をお休めになって下さい」

バーンとの戦いをザボエラの横やりのせいで台無しにされ、自分の部下までも失って満身創痍な俺だが、アルビナスに支えられながらどこかの洞窟にたどり着く。

心身共に限界なのは皆も同じはずだが、シグマもアルビナスと同様に気丈に振る舞う。

「…ヒム。お前のブロックのことを悲しむ気持ちはわかるが、今はこれからのことを考えろ。そうでないと、私たちを逃がしたブロックも報われんぞ。だから涙を拭け」

シグマの言葉に悪態をつくヒムに、レイザーがハンカチを手渡す。

「ほら。これを使えよ、住所不定無職。今日は同じく就職活動中の俺が、新入りのお前達にアドバイスを…」

「曲者っ!ニードルサウザンド!!」

とっさのアルビナスの攻撃に、レイザーは当たり前のようにヒムを盾にしてそれを防ぐ。
ようやく不審者が誰かを認識できたヒムが、全力で抗議する。

「だからお前は俺の扱いがおかしいんだよ!そもそも、どうやって俺達の居場所を突き止めた!?」

「おいおい。以前、リリルーラのパーティー登録をしただろ」

「サババを襲撃した時のことか?だけどあれは俺も含めて全員却下して、未遂のはずだろ」

「兄の言うことに、弟や妹に拒否権があると思ったか?」

種明かしをされたアルビナスが、歯を食いしばる。

「強制契約とは、性質が悪いですね…!」

「まぁまぁ。とりあえず、俺はお前達と敵対するために来たんじゃない。事情はブロックから大体聞いた。バーン達に謀反を起こしたんだってな」

「何!?貴様、どうやって知った!?」

先ほどあったばかりの出来事を知っているレイザーを、問い詰める。

「こいつらのおかげだ。これは元々『復活の球』の失敗作でただの容器だったんだが、俺が使った転生術を利用すれば、呪法生命体の魂を入れられることに気づいたんだ」

レイザーは、懐から淡く光る球を2つ取り出す。

「契約に必要なことは、呪法生命体の核に術式を刻むことだけで、あとは契約相手の肉体が壊れることで履行され、魂だけがこの球に入る仕組みだ。…言っておくが、これの契約は相手の同意がないと出来ないからな」

2つあるということは、もしかすると…!

「さすがのハドラーは気付いたみたいだな。こいつらはフェンブレンとブロックだ。二人とも俺の話に乗って、無事魂だけは残すことができたってわけだ」

「ほ、本当か!?本当にお前達なのか!?」

レイザーが持つ球に駆け寄って覗き込むヒムに、応えるように球はチカチカと光る。

「…ちょっと待て。なんでフェンブレンとブロックが、お前なんかの提案に乗ったんだ」

我に返ったヒムが、レイザーを睨む。
今にも襟首を掴みそうな勢いのヒムだが、レイザーはいつもの調子だ。

「二人とも今のままだと、叶えられない望みがあったからさ。フェンブレンは『最初は弱くてもいいから、技や体を鍛えて成長できるようになりたい』。ブロックは『仲間と会話できるようになりたい』。これを叶えたいから、俺の話に乗ったんだ」

「どうやって肉体を与えるつもりだ?お前は大魔王から肉体を与えられたが、まさか死体集めをするのか?」

俺の言葉に「とんでもない」と言いたげに回答する。

「万が一バーンから肉体を与えられなかったときのため、人工的に肉体を作るホムンクルスの研究を、フレイザードの時には完成させてたんだ。バーン打倒後に、再度肉体を作って約束を果たすつもりだ」

多芸は無芸というがこいつの場合は全く当てはまらず、呆れて声も出ない。
なぜここまで頭が回るのに、魔王軍所属の時は俺の頭痛の種になり続けたのか。

「…そういえばお前、大魔王に何をした?俺がバーンと対峙したとき『レイザーのせいで酷い目に遭った』と罵られ、他の奴はお前がバーンを脱がして襲っていたと言っていたぞ」

「あぁ、うん…。いつもの実験の結果だと思ってほしい。…あと人をレ●パー扱いした奴は誰だ!?」

レイザーの回答に、ハドラー親衛騎団は奴が何かやらかしたことを想像できたらしく、微妙な顔をする。

だがアルビナスが何かに気づいたらしく、突然大声をあげる。

「レイザー…いいえ、レイザー兄様!これまでのご無礼を承知の上で、お願いがございます!あなたのその類稀な頭脳から生み出した転生術で、ハドラー様を助けてください!私程度の首なら喜んで差し上げますので、どうかお願い致します…!」

アルビナスが、レイザーに向かって頭を下げる。

突然のアルビナスの変わりように戸惑いながら、レイザーはアルビナスに頭を上げさせる。

「一回落ち着け。ブロック達からは断片しか聞いてないから、何があったのか詳しく話してくれ」



「…なるほどね。とりあえず要望を聞く前に、俺の転生術について簡単に説明するぞ」

アルビナスから俺の事情を聴いたレイザーが、指先から放ったギラで洞窟の壁面に字を書きながら説明する。

「まず俺の転生術は、呪法生命体限定だ。理由は呪法生命体の魂は仮置きのような状態なため、比較的容易に転移可能なんだ。ただし一度生身に魂を置くと、肉体と紐づいて固定化されてしまう。箇条書きで書くとこんな感じだ」

洞窟の壁面に、可能なケースと不可能なケースの具体的な事例を書いていく。


○転移可能
・呪法生命体→呪法生命体
・呪法生命体→復活の球(空)

×転移不可能
・生身の肉体→呪法生命体
・生身の肉体→生身の肉体


「…要するに、ハドラーの場合は転移できないってことだ」

頭から湯気が出そうなヒムに気を遣ってか、結論だけを言う。

それでも諦めきれないのか、アルビナスは食い掛かる。

「でしたらあの奇抜な『ハッスルダンス』なら!暗黒闘気も無視して回復できるあの儀式なら、治療可能ですよね!?」

色々言いたそうなレイザーだが、インパスで俺の状態を診て、首を横に振る。

「…だめだ。いくら『ハッスルダンス』でも、あくまで回復できるのは自然回復できる場合だけだ。今のハドラーの状態は、最大HPがどんどん減っている状態だから、たとえベホマが効いても意味がない」

つまり俺の命をコップに入った水に例えると、水が減っているのではなく、コップがひび割れ始めている状態ということか。

「命の石で作った賢者の石がもう一個あれば、核晶代わりに埋め込められたんだが…!」

袋の中をあさりながら言うレイザーの呟きに、俺は疑問に思う。

(賢者の石はホイミスライムが原料のはずだったが、一体どうすれば命の石なんかで作れるのだろうか?)

…こいつに原料のことを教えると、ホイミスライムを絶滅しかねないので黙っておくか。

「…これだ!これは『時の砂』を結晶にしたもので、これだけのサイズなら疑似的な核にできるはずだ。それで効能だが、5秒毎に0.5秒前のステータスに戻すことができる使いどころがなかったアイテムだ」

つまり一瞬前に受けたダメージなら、タイミング次第でそれをなかったことにできるということか。
ただし連続で受けたダメージには効果がないようなので、確かに微妙なアイテムだ。

「あぁ…!それならば、ハドラー様の延命処置ができるのですね!?」

歓喜するアルビナスだが、レイザーの表情は晴れない。

「確かにこれを使えば結構長い時間生きられるが、それはあくまで静かに平凡な暮らしをしていく場合だ。…どうする?」

視線で俺にどうするか問いかけてくる。

「迷うまでもない。どうせこのままでは早かれ遅かれ、ただ朽ちていくだけだ。失敗作だろうが、副作用があろうが、可能性があるなら俺に使え。…ダイとの決着の際、わずかでも万全の状態にできるようにな」

俺が最期の戦う相手はバーンではなく、勇者ダイであるべきと始めから決めている。

「俺が生涯を掛けて決着を付けるべき相手は、バーンなどではない。奴らの最も大事なアバンを奪った断罪を受けるためにも、俺は勇者と戦うべきなのだ!」

俺の様子を見て、諦めたようにレイザーは肩を落とす。

「本当ならここで止めるべきなんだろうが、俺程度の実力だと無理だもんな…」

「そういうことだ。私達もハドラー様と同様に、覚悟を決めている」

シグマがレイザーに、妨害は無駄だと釘を刺す。
ヒムも腕を組みながら、大きく頷く。

「わかった。邪魔はしないし、ダイ達にもここであったことは話さない。…たださっき話した応急処置以外で一つ案がないこともないが、賭けてみないか?」

レイザーから賭けの内容を聞く。
その話は成功しないことが前提の夢物語のようなものだが、俺の決闘に支障がなく、デメリットは特にないものだ。

ただし、その賭けに乗るためには条件があるらしい。

「条件は一つ。もし俺が賭けに勝ってさっきの話が成功した場合、四の五の言わず、バーン討伐に手を貸してもらうことだ」

「…いいだろう。その話に乗ってやる。俺の条件としては、ダイとの決着に直接・間接的問わず、お前は邪魔をしないことだ」

「レイザー兄様。私も条件を。…私の望みはハドラー様のご存命のみです。そのためハドラー様が賭けに負け、私だけが勝った場合は即座に葬ってください」

俺とアルビナスの言葉に、シグマも続く。

「私も同様の条件だ。守るべき主を亡くして、どうしてこの世に留まることが出来ようか」

「…俺は降りる。どうしても決着を付けたい相手がいるが、たとえ万が一でも逃げ場になることを用意する舐めた真似はしたくねぇ。…そんな覚悟じゃあ、あいつには勝てないんだ」

どうやらヒムを除いて、全員レイザーの賭けに乗ることに決めたようだ。
ヒムの回答に残念そうな表情を浮かべるが、レイザーはその覚悟に泥を塗るようなことはせず、そのことについて何も言わない。

「わかった。それじゃあ、今から応急処置と賭けの仕込みをするんで、俺の言う通りにしてくれよ」

「レイザー。その前に一つだけ聞きたい。…これからすることは、お前に得はほとんどないはずだ。何故ここまでするんだ?」

俺の言葉に、レイザーは小馬鹿にしたように答える。

「決まってんだろ。兄や姉は弟達をおもちゃにしていい代わりに、いざという時は守る義務があるんだよ。それにたとえ血が繋がってなくとも、弟や妹がいなくなって喜ぶ兄がいるか?」



個人的なことですが、この作品を書き始めてから記憶を混合させないよう、DQは6までしかやらないリアル縛りプレイをしております。

そのため某通販サイトのお勧めとして表示されるDS版DQ8が、「あそこに通販サイトの直リンクがあります」「えぇ、1000円引きの価格表示であります」と常に言われているようで、ガリガリ集中力を削られます。

実際に購入できるのは、いつになる頃やら…。