知らないドラクエ世界で、特技で頑張る   作:鯱出荷
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前回色々悩んでいた結果がこのタイトルです。

ちなみに「大魔王バーン」ではなく「バーン大魔王」となっているのは、間違いではなく元ネタからです。

【2017/02/26 追記】
今回の話で、2名から誤字脱字のご指摘をいただきました。

いつもありがとうございます。


【第22話】バーン大魔王の貴重な脱衣シーン

----レイザーSide----

「レイザー様!起きてください!…ザメハ!!」

呼び声と共にクーラがザメハを唱えてくれたらしく、失っていた意識を取り戻す。
クーラはザメハを覚えていないはずで、腹部がひどく痛いがザメハと言っていたのでザメハで起こしてくれたのだろう。そのはずだ。

とにかく気を失っている間に床に転がされていたらしく、起き上がりながらクーラに現状を訪ねる。

「大丈夫なようですね。先ほどの激しい揺れの際、レイザー様は皆にスクルトを唱えたのはよかったのですが、落石に気づかず頭に当たってしまい、今まで気を失っておりました。そしてダイ達に合流したのですが…」

言いよどむように視線を向けると、悲痛な表情をしたポップ達と倒れこんでいる人間の手を握りしめて泣き叫ぶダイがいた。

「バラン!?ベホマ…は効く様子じゃねぇか。クソッ!!」

一目見て助かるはずがない大怪我を負ったバランを見つけ、俺は袋から『賢者の石』を取り出して地面にぶつけて叩き割る。

「レイザー様!?それは何十個も試作品を作り、ようやく成功した唯一の物では…」

「1回作れたなら、また作れる!それよりも無駄かもしれないが、やれることをやるべきだ!…ダイ!場所を代わってくれ!!」

バランの横に陣取り、砕いた『賢者の石』をバランの周りに並べ、六星の魔法陣を構築する。
皆が不審な目で見てくるが、何かしようとしているのかわかったのか、止めてくる者はいなかった。

「駄目でもともと!全魔力を込めさせてもらう!!」

ザオラルやザオリクさえも使えないため、この呪文が使える保障はないがやるしかない。
魔力を込めた『賢者の石』だった砂が反応したのを確認して、ザオリクより上位の復活呪文を唱える。

「これが俺の知る最高の回復呪文だ!ザオリーマ!!」

唱えた途端、目が開けられない程の光と、急激に魔力が奪われる感覚に襲われる。
その光は徐々に小さくなっていき、完全に消える前にこちらの魔力が尽きて光は止まった。

息を整えながらバランの様子を見ると、傷は治っているのだが未だ目覚めない。
だが傷が消えたということは細胞が活性化したはずなので、クーラにインパスでバランの状態を確認してもらうよう頼む。

「あ…!ステータスが『意識不明』になってます!回復呪文は効果なさそうですが、安静にしていればもしかすると…」

クーラの言葉に、ダイ達が一斉に湧き上がる。
まだ山を越えたわけではないことを伝えようとするが、突然剣を取り出したクーラが切りかかって来た。

「…へー。よく僕の存在に気付いたね?それにそこの魔族も、魔力が足りなくて不完全とはいえ、復活呪文を成功させるとはやるじゃないか」

クーラの剣先は、レムオルのような呪文で姿を消していたキルバーンの鎌を止めていた。
どうやら背後から近づき、俺の首をはねるつもりだったらしい。

キルバーンが距離を取るために大きく下がったのを確認して、クーラに感謝の言葉を伝える。

「助かったよ、クーラ。それにしてもよくキルバーンが来たことがわかったな?」

「私はレイザー様の匂いをかぐため、普段から『盗賊の鼻』をしております。そのため全身から異臭がしているキルバーンのような者がいれば、すぐ気づけます」

なんだろう。
助けてもらったのに、釈然としない。

俺が礼を言いかねていると、キルバーンに続いてミストバーンも現れる。

「一同、控えよ。…大魔王バーン様がお会いになられる」

尋常でない威圧感と共に、魔族の老人が現れる。
きっとこの人物こそが、大魔王バーンなのだろう。

皆がバーンに注目する中クーラは空気を無視して、袋からこれまで作った中でトップレベルの失敗作である『エルフの飲み薬(酷)』を取り出す。

「ちょ…!クーラ、それは味とか異臭とか、色々な意味で封印指定した物…こっちに向けるな!!」

「緊急事態です。先ほどの呪文でレイザー様の魔力は空なのです。今のうちに飲み干してください」

こちらの静止を無視して、飲み薬を口に流し込んでくる。

「おぅぇ…!た、耐えるんだ…!このままだと『ドラゴンクエスト・オブ・リバース』になってしまう…。絶対に耐えるんだ…!!」

「バーン様の御前だから控えろと言っているのがわからんかぁー!!」

ミストバーンが叫ぶが、相手にする余裕がない。

「ごめん。口から『仲間(バブルスライム)を呼ぶ』が発動しそうだから、本当に話しかけないで」

俺の必死の願いが通じたのか、バーンは俺を一瞥するだけで無視してくれた。
ダイ達がバーンと対峙している間に、ザメハやキアリーなどの回復呪文を片っ端から試してこの吐き気をどうにかしようと試みる。

そうしている間にも話は進んでいき、バーンから一つ提案を出された。

それはバーンの計画ではこの時点で俺たちは全滅しているはずだった。
その結果を覆した健闘をたたえて、褒美としてバーンのみで相手するという内容だ。

「なめやがってぇ…!レイザー、もう動けるだろ!?俺たちがまず先行するから、後ろでサポートをしてくれ!!」

ポップがそう提案するが完全に浮き足立っているし、ヒュンケルやクロコダインは大魔王の雰囲気に飲まれ、硬直している。
ましてやダイ達のこれまでの戦い方はバーンにも伝えられているため、こちらの戦法も見抜かれているはずだ。

「…いや。前哨戦は俺に任せろ。これまでずっと、ダイとお前達で戦って来たんだろ?だったら慣れない奴と組んで、チームワークを乱すわけにはいかないだろう」

キアリクで酔いが引いたのを確認して、完全にバーンの雰囲気に飲まれているダイ達に代わって一歩前に出る。

緊迫感で身動きが取れなくなっていたヒュンケルだったが、さすがに俺の行動を止める。

「やめろ!無駄死にするつもりか!?」

「そんな緊張で満足に動けない状態で戦ったら、それこそ無駄死になるって言ってんだよ。…俺が一つでも多くの大魔王の技を引き出して見せるから、見逃さずに対策を立ててくれ」

初見でいきなり大魔王と戦うなんて、いくらダイ達でも無理だろう。
かといって、勇者以外で大魔王を倒せるとは思えない。

ならば勇者パーティーの一員でない自分が矢面に立って、勝算をわずかにでも上げてもらう。

「レイザー様。お供します。…私でしたら連携に問題ありませんから、駄目とは言いませんよね?」

俺に寄り添うクーラは何を言っても引いてくれそうにない雰囲気をかもし出しているので、諦めて頷く。

「…余は構わん。貴様の技はフレイザードの時から興味があった。前座として相手をしてやろう」

「正気ですか!?バーン様!!」

ミストバーンと同じく俺も驚いたが、バーンは俺達の相手をしてくれるらしい。
戦闘前に、俺達が倒れた際にも使える道具を投げ渡す。

「ポップ。念のため、これを渡しておく。いざってときは使え。ただ、これもどのタイミングで壊れるかわからないから過信はするなよ」

『賢者の石』を作る途中で出来た『祝福の杖』を、使い方を教えながら渡した。
これも『祈りの指輪』のようにいつ壊れるかわからないが、それ以外は優秀な回復道具だ。

「もう言い残すことはないな?…そら。挨拶代りのメラだ」

バーンは小さく、ゆっくりとした動きの火球を飛ばしてくる。
見た目は火の玉のようにユラユラとしているが、大魔王から発せられた攻撃である以上、当たってみるのは危険だろう。

「せっかくの挨拶だが、お断りだ!」

その火球に向かって『炎のブーメラン』を投げつけ、こちらへ届く前に爆発させる。
火球の大きさに反比例して、ブーメランが当たった火球は以前俺が作った火災旋風並の火柱が立ち上がる。

その業火に向かって、炎の爪による火球とフィンガー・フレア・ボムズを加えて、合計6発分のメラゾーマを放つ。

「熱いのは嫌いなんでな!全部返すよ!!」

相殺したことで発生した爆炎と自分の呪文で発生した炎を、全て『追い風』によってバーン達の方向へ流す。

炎と黒煙でバーン達の姿は見えないが、見当を付けてロン・ベルクと共通制作した防具を投げ込む。

「クーラ!バーンの身動きを封じさせる!…アムド!!」

先ほど投げたのはヒュンケルの『魔剣の鎧』と同様に体に巻きつくように装備される魔神の鎧で、魔鎧を作る際に失敗して出来たステータスが低下するだけの呪いの鎧だった。
それを相手に強制的に装備させて、身動きを鈍らせる拘束具として改造したものだ。

一度装着したその鎧は音声認識で俺以外では解除できないため、足止めぐらいにはなる。

それを理解しているクーラが炎の中へ飛び込むが、煙の中からクーラの腹部にバーンの手が添えられ、彼女は後方に吹き飛ぶ。
どうやらバーンは暗黒闘気を放出し、『魔神の鎧』も同じく暗黒闘気で内部から破壊したらしい。

「すまんな。せっかく用意してもらった召し物だが、余の体には合わなかったようだ」

阿吽の呼吸のつもりだったクーラとの連携を軽くあしらわれた上、気の利いた冗談を言ってくる。

だがそんなことよりも、クーラの状態が気になるのでバーンから目を離さず、声をかける。
バーンの攻撃が当たった腹部の装備は、メタルキングの鎧と同等の素材にも関わらず破損させられていたため、無傷のはずがない。

「クーラ、大丈夫か?」

「わ、私にはベホマがあります…。どうか私のことは、気にしないでください…!」

「虚勢を張っても無駄だ。バーン様の先ほどの一撃は、圧縮した暗黒闘気だ。回復呪文ではしばらく治療できず、このままでは助からないかもしれないぞ」

ミストバーンが、こちらを揺さぶるように言う。

「『ハッスルダンス』による回復タイムは…」

「やればよかろう。だがそうした途端、余はダイ達に狙いを定めるぞ?」

ワンチャンあるかと聞いてみたが、思った通り駄目だった。

ダイ達にバーンの戦い方を見せることが目的なのだが、このままでは全然情報が不足しているため、こうなったら一人で戦うしかない。
クーラもそれを理解しているのか、ひたすら「大丈夫だから気にしないでほしい」と繰り返し呟いている。

「レイザーよ。戦ってみればわかると思ったが、むしろ疑念が募るばかりだ。…余は貴様の正体が気になる」

こちらが覚悟を決めていると、突然バーンが俺に話しかけてきた。

「貴様が古代技術と言っている『特技』だが、生みの親であるハドラーどころか、余さえも知らない技ばかりだ。それらを幾つも知っていて、更にそれを他の者に教える技量もある。また神々が考え出したチェスと同等と言って良い完成度の、将棋という誰もが知らない遊戯を持ち出した」

俺がこの世界にいる矛盾点を、バーンは一つずつ挙げていく。

「初めは天界からの回し者と思っていたが、命を弄ぶのに等しい転生を行っているため、違うのだろう。…レイザーよ。貴様の正体と目的は何だ?」

「…さぁね。俺はこの世界に生まれた瞬間から、これらを知っていた。そもそも自分が何者か、何のために生まれてきたかなんて、答えられる奴のほうが少ないんじゃないか?」

記憶がどんどんなくなっているのか、やったゲームや内容は覚えているが生前の自分の名前や生活環境については何一つ思い出せない。
だから本当に答えようがないのだ。

「ふむ。ならば、余の所に来ることを許してもよいぞ。貴様の持つ知識はどれも興味深い。退屈することだけはなさそうだ」

バーンが勧誘してくるが、一度捨てられた組織に戻るなんて真っ平御免だ。

「嫌だね。俺はこの特技を、人種差別なしで教える施設を作りたいんだ」

「そうか。…ならば先ほどから練っている魔力で、無駄な抵抗を続けるか?」

隠れて準備をしていたつもりだが、バレバレだったらしい。
どうせ気づかれているならと、堂々と呪文を発動させるための魔法陣を展開する。

「レイザー!ヤケになるな!!メガンテをするつもりか!?」

術式が似ていたためか、ポップがこれから使おうとしている呪文に対してやめろと叫ぶ。

「言われなくても、まだ死ぬつもりはないさ。…全員ぶっとびな!マダンテ!!」

全魔力を解放して、バーンだけでなくミストバーン達をもマダンテに巻き込む。
さすがのバーンもこれは防げなかったらしく、マダンテ発生時に弾け飛ばした周囲の瓦礫と共に、吹き飛ばされた。

「レイザー!大丈夫なの!?」

肩で息をしながら次の一手のためにカードをばらまく俺に対して、マァムが叫ぶ。

「平気だよ。今のは簡単に言うと魔力版のメガンテで、命には別条はないさ。…もっとも俺の魔力が足りないのか、技が未完成なのかわからないが、とどめにはならなかったがな」

先ほど出来た瓦礫の山が吹き飛ぶと、多少はダメージがあったようだが誰一人欠けることなくバーン達は立っていた。

「…随分と面白いことをしてくれるね。バーン様との戦闘と言いながら、遠慮なく僕達にも攻撃してくるなんて…!」

バーン以上にダメージがあったらしく、キルバーンが怒気を飛ばしてくるが、『祈りの指輪』で魔力を回復しながら適当に言い返す。

「さっきの技は難易度が高く、指向性に出来ないんだ。巻き込まれる位置にいるのが悪いんだよ。…それに、まだ俺の攻撃は終わってない!」

ばらまいたカードの中で、ちょうどバーンが踏みつけていた物に魔力を送り、仕込んでいた効果を発動させる。

「『トラップカード』オープン!装備外しってな!」

先ほどばらまいたのはシャナクの術式を刻んだカードで、不思議のダンジョンで使われているトラップの装備外しをヒントに作った物だ。
つまり通常は呪われた装備だけを外すシャナクとは違い、発動相手の装備品を問答無用で全て外す効果を発揮する。

ちなみに外すのはあくまで装備品なので、決して衣服などを脱がす効果はない。

…そのはずだったのだが、さすがは大魔王。
身に着けている物は全て一流の武具だったらしく、思ったより多くの装備品が外れる。

結果として、バーンは下着一枚の姿となった。

「…」

「…」

誰もが絶句する中、何か言わなければいけないと思い、とっさに頭に浮かんだ言葉を絞り出す。

「ご、ご立派ですね?(ご老体な割に、体つきが)」

「言いたいことはそれだけだな…!」

慌てるミストバーンに服を着せられながら、バーンは血走った目で豪速球のようなイオラを連発してくる。

マホカンタで返そうと思っても先ほどのマダンテで魔力は尽きて出来ず、仮に出来たとしても反射したイオラを相殺されて爆風でダメージを受けてしまうことだろう。

そのため解決策にならないとわかっていても、『大防御』と『瞑想』で耐えるしかなかった。

直撃するイオラがようやく止まって煙が晴れると、バーンは俺のバギマで作った物とは比較にならない、巨大な竜巻を生成していた。
恐らく、外に弾き飛ばすつもりだ。

「バーン様。レイザー達を確実に始末しなくてよろしいので?」

まだ怒りが収まらない様子のキルバーンが、バーンに尋ねる。

「対峙してミストバーンの気持ちがよくわかったが、余でもこやつは手に負えん。早々に退場願おう。…もっとも魔力が尽きたレイザーと、まともに動けない精霊ならここから落とすだけで終わりだろう」

竜巻を回避できる位置に動こうと思ったが、背後にはクーラがいるため、それもできない。
せめてクーラとはぐれないようにと駆け寄り、彼女を抱きかかえる。

「ダイ、それに皆。…すまない、俺達はここまでのようだ。後は任せたぞ」

「ここまでやってくれてこう言うのも悪いんだが…色々とやり過ぎだよ!キレた大魔王の相手をさせられる俺達の身にもなれ!!」

ポップの叫びに謝罪する前に、バーンが放った豪風によって俺とクーラは戦場から弾き飛ばされた。



【追記1】
「チェスは元々神々が考え出した遊び」というのは、原作でのバーン様からのセリフからです。

【追記2】
「ザオリーマ」は作者オリジナル呪文ではなく、ちゃんとDQ6にも特定条件で出てくる呪文です。
(自分もつい最近まで知らなかった、裏技みたいな呪文ですが)